Semua Bab 組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~: Bab 111 - Bab 120

150 Bab

31.特注の……③

(あ、でも京ちゃん、今、特注って言った……? それって京ちゃんが私のためだけに手配してくれた指輪ってことだよね? だとしたら、すっごくすっごく嬉しい!) そんなアレコレを考えて、芽生がすぐさま肯定しなかったからだろう。京介がどこか決まり悪そうな顔をして「あー、やっぱ転用は嫌だよな? すまん。婚約指輪はちゃんと別のを手配するから……今のは忘れろ」とか言い出すから、芽生は慌ててフルフルと首を横に振った。「ヤダ! 忘れない! 私、京ちゃんが私のために特注してくれた指輪、婚約指輪にしたい!」 どんなデザインの指輪かは分からない。 でも、京介が自分のためを思って注文してくれた。それだけで、芽生にとってその指輪は特別な価値を持つ、唯一無二になる。 芽生の言葉に京介が「分かった」と言ってくれて、芽生は心の底からホッとした。 京介が女性店員に引換証のようなものを渡すと、彼女は「相良さま、無事仕上がっております。少々お待ちくださいませ」と恭しく一礼する。 芽生が京介のすぐ横。奥の方へ入っていく女性の後ろ姿を眺めていたら、京介がボソリと「その、俺が勝手に選んだモンだし……その、気に入らなかったらそう言ってくれて全然構わねえから」とつぶやいた。 その言い方がなんだか芽生の反応を恐れているように見えて、芽生は京介には申し訳ないけれど、そんな彼のことを可愛い! と思ってしまった。 京介は基本余裕綽々な態度を貫く大人の男だ。だけど、時折こんな風に自信なさげにすることがあるのだと知って、芽生は何だかすごく嬉しくなった。もしも、それが自分だけに見せられるものだとしたら、これほど幸せなことはない。「京ちゃんが選んでくれたの、私が気に入らないわけないじゃない!」 ギュッとそんな京介の手を握って下から彼の顔を見上げたら、すぐさまそっぽを向かれて「バーカ」と吐き捨てられる。(なんて素直じゃないの!) このところのアレコレで、京介は照れさせるとそういう可愛くない態度を取ることを頭では理
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31.特注の……④

 栄蔵の家へ迎えに行ったときから感じているのだが、京介は庇護者の勘とでも言おうか。何となく芽生の体調が芳しくないように思えて仕方がないのだ。 外に出る予定ではなかったから、二人とも上着を羽織っていないのもあって、やはり死ぬほど寒い。 春先や秋口のように外で過ごすのに心地よい時節にはそこで弁当を広げたりしている家族連れが多かったりもするのだが、さすがに年の瀬も迫った時期ともなると人出はまばらだ。 しかも、チラチラと白いものまで舞っている。「雪か……。冷えるわけだ」 聞かせるとはなしに京介がつぶやいたら、芽生も京介同様空を見上げた。「うん……」 そうポツンと力なくつぶやく芽生の様が、いつも小鳥みたいに囀りまくる彼女らしくなくて、京介は内心(どうした?)と思わずにはいられない。 先ほどジュエリーショップで指輪を目にしたときの反応からするに、気に入らなかったということはないだろう。 だが、あまりにも芽生が静かだから、京介は落ち着かないのだ。 もしかしたら、芽生は京介がこれを注文した時の真意に気付いたのではないだろうか? そんな思いまで去来する。「芽生?」 沈黙に耐えかねてつい胸元の煙草を探って……芽生の前だったと指先を掠めた箱から手を放せば、そんな京介を芽生が物言いたげな眼差しでじっと見詰めてくる視線とかち合った。 さぁっと吹き抜けた風の冷たさに芽生が縮こまるのを見て、無意識に風上に立って芽生を寒さから守れば、意を決したように芽生が「京ちゃん」と口を開く。 そうして先程ジュエリーショップで手渡された小さな紙袋の中からリングケースを取り出すと、寒さからだろうか。小さく震える手で、それを京介に差し出してきた。「あのね、京ちゃん。……私、これ、京ちゃんにつけて欲しいの……」 それは、京介も完成したリングを見たときからずっと考えていたこと
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32.芽生を手放す覚悟①

 京介は、|芽生《めい》の家が放火だと知った時、彼女が自分のせいで命を狙われたんだと思った。 とりあえずは問題が解決するまでの間――。 そう思って、一旦は芽生を自分の住まいに引き寄せて保護してみたものの、自分さえ芽生の傍にいなければ、芽生は焼け出されることもなかったのに……という後悔がずっと消えなかった。 思えば、|千崎《せんざき》にもさんざん言われてきたことだ。『本気で|裏社会《こちら》側へ彼女を引き込む気がないならば、|神田《かんだ》さんから離れるべきです』 と――。『そうしないと、|京介《カシラ》にとって神田さんが特別な存在だと周りに知らしめているも同然な現状です。いずれ神田さんがカシラの|弱点《ウィークポイント》だと判断されて、貴方のことを快く思わない連中から彼女がターゲットにされる日が来るのも時間の問題だと思いますがね?』 そんなことは京介にだって分かっていたが、自分を慕ってくれる純粋な瞳が愛しくて、なかなか手放してやることが出来なかった。 その結果、芽生が命を落としそうになってしまったのだ。悔やまなかったわけがない。 千崎からも、『だから私が再三申し上げたでしょう』と呆れ顔をされてしまった。 それで、今更にも思えたが……全てが解決したら、今度こそ。芽生から離れようと決意した京介である。 例年ならば|懇意《こんい》にしている花屋に無理を言って、季節外れの冬――芽生の誕生日に合わせてチューリップの|生花《せいか》を注文していたのだが、今年で最後だと思ったら枯れない花を贈りたい、と思ってしまった。 だってこの先、京介は芽生にチューリップを渡せなくなるのだから。 ある意味、京介から芽生への、最後にして最大の執着とでも呼べるものの具現化が、いま芽生が左手薬指に|嵌《は》めている指輪だったのだ。「おたくなら、好きなデザインで指輪、作れるって聞いたんだが――」 ワオンモール内。フランス語で『|綴《つづ》る宝石』を意味するらしい名を冠した『|Écri Bijou《エクリ・ビジュー》』という宝石店に出向いたの
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32.芽生を手放す覚悟②

 |正直《ぶっちゃけ》そんなことを誰かに吐露するのは死ぬほど気恥ずかしかった京介だが、|芽生《めい》の泣きそうな憂い顔を前にしては、話すしかないではないか。「花も……ちゃんと手配してあるから安心しろ」 言いながら芽生を|ぎ《・》|こ《・》|ち《・》|な《・》|く《・》腕の中へ抱き寄せれば、芽生が「本当?」と涙に潤んだ瞳で京介を見上げてきた。「今更そんな嘘ついても仕方ねぇだろ」 実際手配していなかったなら、こんな雪が舞い散るような頃合いに、季節外れの春の花なんて渡せるはずがない。「お前が|懸念《けねん》した通り、俺はお前を手放すつもりでその指輪を作った」 先月の半ば――それをオーダーした時の本心を黙ったままでいることはフェアじゃない気がしてポツンと落とせば、芽生が京介の腕の中でキュッと身体を縮こまらせたのがわかった。「京……ちゃん……」 泣きそうな顔をする芽生に小さく吐息を落とすと、京介はいつも通り。照れくささに芽生の目を見ることが出来なくて、ふっと視線を外した。「バーカ。注文した時はどうあれ……今はそんなつもり、|塵《ちり》ほどもねぇから心配すんなや」 とても安心出来そうにないつっけんどんな声音で言い放ったら、当然というべきか――。「本当……? 信じても……いいの?」 不安が|微塵《みじん》も|拭《ぬぐ》えていないのが分かる声音で芽生から問い掛けられてしまった。そんな芽生を腕に抱き締めたまま。京介は先程車内で|石矢《いしや》からミラー越し、『カシラ、そういうことは目を見て言うもんです』的な非難がましい目で見詰められたのを思い出して密かに苦笑する。「芽生」 それで観念したように芽生の名をそっと呼べば、芽生が不安に揺れる瞳でじっと京介を見上げてきた。「俺、お前を|娶《めと》るって約束しただろ? 今更手放してなんてやれるかよ」 そこまで言って、ついいつもの癖。 気まずさに視線を|逸《そ》らしそ
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33.京ちゃん、そばにいてくれてありがとう①

 ちょっとだけだと念押ししたはずなのに、案外長いこと外へ居過ぎたため、京介も芽生も、すっかり身体が冷え切ってしまった。 芽生の身体を温めたいみたいに、指輪を付けた彼女の左手をギュッと握って中庭からワオンモール内へ戻ると、京介はそこで一旦石矢へ電話を掛けた。「ああ、石矢か。そろそろ戻ろうと思うんだが、俺も芽生も身体が冷えちまってんだわ。悪が、エンジン掛けて車内を温めておいてくれ」 すぐに戻ったのでは、まだ温まり切っていないかも知れない。京介は芽生の照れ顔を眺めながら、のんびり歩こう、と思った。***「なぁ芽生。お前、調子悪いんじゃねぇのか?」 それは田畑栄蔵のところへ芽生を迎えに行った時から何となく感じていたことだ。だが、あまりにも芽生がいつも通りに過ごすから……京介は気のせいだと思い込もうとしてしまっていた。 もしかしたら自分自身、芽生に対していい加減ちゃんとケジメを付けなければいけないと思っていて、平常心ではなかったからかも知れない。「えー? 大丈夫だよ? もぉー、京ちゃんってばホント心配性なんだから」 芽生はそう言って笑ったが、目がどことなくトロンとして潤んでいるし、声にも何となくいつもの覇気がない。 ワオンモール内を駐車場に向けてのんびり歩いていた時に伝わってきた、芽生の体温。それから時折自分の方を見上げてくる眼差し。そのどれもが、いつもと微妙に違っていて、京介は車に乗り込むなり、「大丈夫だよ?」と訴える芽生を無視して彼女の額へ手を当てていた。「バカ! お前、これ、絶対熱あんだろ!」 芽生の頬に赤みがさして見えたのは、何も彼女が京介からのアレコレに照れていたから……ばかりではなかったらしい。 栄蔵の家へ芽生を迎えに行った時から異変は何となく感じ取っていたのに、芽生が平気そうに振る舞うから。つい独占欲が勝って、〝芽生は俺のだ〟という指輪をつけるのを優先してしまっ
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33.京ちゃん、そばにいてくれてありがとう②

 注文した当初は芽生が思った通り、芽生から離れるつもりで指輪を作ったのだと吐露した上で、京介は〝すべては過ぎ去ったこと〟だと断言してくれた。全部杞憂だったと知った時の喜び。 それを思い出して、芽生はマスクの中で、ほんのちょっぴり口角を上げた。*** やはり自覚してしまったのがいけなかったんだろうか。 段々しんどくなってきて、芽生は病院後、車内で力なく窓へ寄り掛かるようにして身体を支えた。 そうしながら、一生懸命しっかり座っていようと頑張ったのだけれど、そんなのお見通しみたいに京介から引き寄せられて、彼の腿の上へ頭を乗せられてしまう。(ひゃー。京ちゃんの膝枕っ) 現状に、頭の中では忙しなくもう一人の自分が騒いでいるけれど、実際には身体がぐったりと重怠くて、ぼんやりと京介を見上げることしか出来ない。 そんな芽生の視界を塞ぐように京介の大きな掌が目の上へ降りてきて「寝ろ」と促された。 運転席の石矢にも病院でもらったマスクを手渡した京介が、ほんの少しだけ窓を開けて換気を命じる様をぼんやりとした意識の片隅で捉えながら、芽生はトロトロと微睡んだ。*** 帰宅後、すぐさまパジャマに着替えさせられた芽生は、京介から追い立てられるようにして寝室へ入った。「京ちゃん……」 不安げに瞳を揺らせて京介を見上げたら、京介が「そばにいてやるから安心して休め」と布団を着せかけてくれる。「でも……」 実は京介も自分も、今マスクをしていない。マスクをしたままは息苦しかったから、外せたこと自体は有難かった芽生だけれど、こんなに京介との距離が近いと彼に感染してしまいそうで怖い。「石矢は帰したんだから、マスクなんざ必要ない」と京介は言ったけれど、芽生としては京介がいる時点で気が気じゃないのだ。「ひょっとして俺のことを心配してんのか?
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33.京ちゃん、そばにいてくれてありがとう③

 午前中、ワオンモールへ出向いた上、病院にまで付き添ってもらってしまったけれど、大丈夫なんだろうか? 京介の言葉にコクコクと首肯したら、頭がずきりと痛んだ。その反動に眉根を寄せたら、京介に「大丈夫か?」と心配されてしまった。 そんな京介に、「大丈夫」と答えながらも、芽生は京介のことが気になって仕方がない。「ホント、お前は……。そんなに仕事のことが気になるか?」 真面目過ぎんだろ、と盛大な溜め息とともにそう問い掛けられた芽生は、「だって……」とつぶやいた。 大好きな人が大切にしている人たちや、それに絡んだお仕事のことを気にしないでいられるわけがない。 なのにどうやら京介は、芽生が自分自身の仕事のことを気にしていると勘違いしたらしい。「心配すんな。長谷川にゃぁ、さっき、しばらくインフルで休ませてもらうって連絡しておいたから。この時期だ。そのまま年末年始の休みに突入しちまうだろうから、仕事のことは気にせずしっかり身体を休めろってよ」 そこでふっと口角を緩めた京介が、「そーいやぁ、静月ちゃんと一緒に見舞いへ来たいって言われたぞ?」と芽生を見つめてくる。 その言葉に、芽生は瞳を見開いた。 なにしろ芽生は風邪ではなく、インフルエンザなのだ。『長谷川社長や静月さんに感染したら大変だからお断りして?』と口を開こうとしたら、「丁重に断っておいたから安心しろ」とニヤリとされる。 こういう時にもそっと意地悪を忍ばせてくるのが京介らしくて憎らしい。でも、それと同じくらい、そんな京介のことが、芽生は愛しくて堪らないのだ。 だが、それはそれとして――。「違……うの、京ちゃん。私が心配して……る、のは貴方、のお仕事……の方……だよ」 それだけは言わなくちゃ、と思った。 途端、京介がキョトンとした顔をするから芽生は拍子抜けしてしまう。「京、ちゃん
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33.京ちゃん、そばにいてくれてありがとう④

 今までクリスマスと一緒にしか祝われたことのない誕生日だ。それを、生れて初めて個別に祝ってもらえるチャンスだったのに、それも駄目にしてしまったと思うと、自分の不甲斐なさが情けなくてたまらない。 閉じたまま開けられない瞼の隙間を縫うように、涙がぽろりと芽生の眦から、こめかみの方へと静かに流れた。 ――このままにしておいたら涙が通ったところカピカピになっちゃう。 そう思うのに、指の一本ですら動かすのが億劫で、芽生は目も開けられないまま、涙が枕を濡らすのを待つ。 頭の下に敷かれた氷枕は、いつの間にかすっかり温もってしまっていたらしい。ただチャプチャプと水音を立てるだけの役立たずになっていた。 ――京ちゃん、早く戻ってきて? そう声なき声でつぶやいたと同時、不意に冷たい感触がスッと目元に触れてきて、芽生は気合を総動員して目を開ける。「京、ちゃ……」 言って、ベッドサイドへ戻って来てくれた京介の方を見遣ったら、額から布がずり落ちた。 ここに横たわってすぐ、京介が頭に載せてくれた濡れタオルは、あれから幾度となく京介が洗っては冷たさを取り戻させて芽生の額へ戻してくれていたけれど、ハッキリ言ってイタチごっこだった。 芽生の熱を吸って熱くなっているそれを手に取ると、京介が「しんどそうだな」と眉根を寄せる。「熱さまし、飲むか?」 問われてコクッと頷いたら、京介に身体をそっと起こされた。 そうして差し出されたグラスと解熱鎮痛剤を見て、芽生は(あらかじめ用意してくれていたのかな?)とぼんやり思う。 水はひんやり冷えていたから、(京ちゃん、ここへ戻ってくるときにウォーターサーバーから注いで来てくれたのかな?)とどうでもいいことを考えた。 病院でインフルエンザAと診断されてすぐ、院内で吸入タイプの抗ウイルス薬を吸わされた。 その時点で熱は三十八度を超えてはいたけれど、それほどしんどくなかったから「飲んどいた方がいいんじゃねぇか?」と京介が勧めてくれたのに、芽生はフルフルと首を横に振って解熱鎮痛剤
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34.それは恋人の呼び名じゃない①

 目を覚ますと、薄暗い部屋の中、芽生は一人ぼっちだった。「京、ちゃ……」 体調不良な上に寝起きなことも手伝って、京介の名を呼ぶ声は弱々しく掠れていた。応答がないのは声が小さすぎたのか、聞こえないくらい離れた場所に彼がいるからか、どちらだろう? ふと足元に視線を転じると、寝室の扉が薄く開いていて、あちら側からの光が差し込んでいた。(京ちゃん、リビング?) 解熱鎮痛剤のお陰で痛みなどから解放されたからだろう。薬を飲んですぐ、芽生はしんどいのに眠れなかったのを取り戻すみたいに意識を手放した。 あれからどのくらい時間が経ったのか分からない。一時間? 二時間? それとももっと――? 芽生が眠ったのを確認した京介が、束の間自分の傍を離れたからといって、一体誰が彼を責められるだろうか。 頭ではそう分かっているのに、寂しさと心細さがそれを許してくれない。(京ちゃんのバカ。ずっとそばにいてくれるって言ったのに……) そんなことを思ってしまって、芽生は自分の考えにハッとした。(私、なんてイヤなやつなの) 熱で意識が朦朧としている間、京介がずっと自分の横にいてくれたのは明白な事実だ。なのに――。 涙目になりながら己の心の狭さに打ちひしがれていたら、光の筋が大きくなって、京介が寝室へ戻ってきた。「起きたのか?」 汗で額に張り付いた髪の毛を優しく払いのけてくれながら、京介に柔らかく微笑みかけられた芽生は、我慢出来なくなってほろりと涙を決壊させる。 京介から濃い煙草の香りがふわりと漂ってきて、(京ちゃん、煙草を吸いに行ってたのかな?)と思ったら、自分のためにそういうのも我慢させていたんだと気が付いて、キュッと胸が痛くなった。「おい、どうした? しんどいのか!?」 途端京介が心底心配そうな表情をして芽生の体調を気遣ってくれるから……芽生はフルフルと首を横に振る。頭を動かすとくらりと目眩がして、頭が痛んだけ
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34.それは恋人の呼び名じゃない②

 そう判断して神田さんも一緒の方がいいかと問い掛けてみたものの、電話口から盛大な溜め息が聞こえてきて、佐山はすぐさま失言だったと後悔した。 攫われた神田芽生を助けに行ったときは不可抗力だったとして、彼女と自分が二人きりになるのはカシラ的にまだ納得のいかない部分があるのかも知れない。「あ、あの……カシラ?」 そう思い至って恐る恐る電話口へ声を掛ければ、『……ああ、すまん。連れてってやれたら喜ぶんだろうが……実はその芽生が今、インフルでダウンしちまっててな。外出は当分無理なんだわ』 きっと煙草をくゆらせているんだろう。長い吐息とともにそんな言葉が落とされた。「え? でも昨日お会いした時は……」『ああ。俺にも元気に見えたんだがなぁ。色々あって、精神的にも肉体的にも限界を越えちまったのかも知れねぇな』 疲れたようにこぼされた『可哀想なことをした』というカシラのつぶやきに、佐山は(確かに……)と納得する。 飼い猫の体調不良を心配している最中にクソ男から拉致されて、無理矢理婚姻届を書かされたりしたのだ。提出前に何とか食い止めることは出来たものの、そこからは怒涛のように猫の入院、カシラからの告白、本当の血縁との再会……と、それはもう目まぐるしい一日だったと聞いている。 神田芽生は線の細い小柄な女性だ。 ホッとしたと同時に体調を崩しても、仕方ないと思えた。*** 突然京介に真剣な顔で見詰められた芽生は、(何を言われるんだろう?)とドキドキした。〝悪い〟と断られた時点でいい話じゃないことは明白だから、その思いは一入だ。「さっきな、お前が寝てる間に葛西組の方から召集が掛かっちまってな。どうしても行って来なけりゃなんなくなった」 京介は相良組の組長さんであると同時に、葛西組の若頭さ
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