芽生が仕事へ戻ってから、暇つぶしのため毎朝事務所から持ち出させてもらっている地方紙を広げた佐山は、経済面の片隅に『さかえグループ』社長・田畑栄蔵の容体が芳しくないと載っているのを見つけた。 さかえグループは国内で三本の指に入る大企業だが、本社が東京でなく栄蔵の出身地だというこの辺りにあることで、地元への貢献度とともに市民からの好感度・興味関心ともに高い会社である。 実際、そんなに経済に精通していない佐山もそれとなく色々情報を知っているくらいだ。 何十年も前に当時副社長だった現社長・栄蔵の息子・栄一郎が突然死を遂げたこともセンセーショナルに騒がれたのを覚えている。 結局結婚もしておらず、跡取りを残していなかった息子に代わり、今に至るまでずっと栄蔵がワンマンで会社を引っ張ってきたはずだが、その男が死にかけているとは。(何か荒れそうだな) ふとそんなことを思いながら、そう言えばうちの姐さん(候補)に付き纏っていた細波とかいう男もさかえグループの人間だったなと思い出した佐山だ。 社長と血縁とか言ってた割に、こんな一大事に女の尻を追い掛けてるとかバカなのか? と思って。もしあの男しか後継者になれないとしたらさかえグループも終わりかなと我知らず吐息を落とす。 直接的に相良組やその上の一次団体に影響があるとは思えないが、あれだけの企業だ。なにかあればどんな余波があるか分からない。 そんなこと、下っ端の自分にだって分かるというのに――。「マジで細波ってヤローはクソだな」 佐山は、誰にともなくつぶやいていた。*** 今日は十二月二十日だ。 京介の家に居候をするようになって以来、何だかんだで外出がままならない状態の芽生は、例年ほどクリスマスムードを満喫出来ていない。だが、佐山が運転する車の外を流れていく街の景色は、そこかしこがクリスマスめいていてワクワクする。 なのに、ツリーもリースもない京介の家の殺風景さに、芽生はちょっぴり不満を|抱《い
Last Updated : 2026-03-07 Read more