「あ……あ、のね、京ちゃっ……私っ……」 思いっきり泣いたせいで、そのつもりはないのにヒクヒクとしゃくり上げてしまう。それをもどかしく感じながら、どう説明しようか考えていたら逆にそれが功を奏したのか、「怖い夢でも見たのか?」と優しく涙を拭われて、芽生は渡りに船とばかりにコクコクとうなずいていた。頬に触れる京介の大きな手から香ってくる煙草のにおいにさえドキドキしてしまうのは、恋心のせいだろうか? それとも京介に嘘をついてしまっている罪悪感からだろうか。 (京ちゃん、嘘つきでごめんなさい) そう心の中で謝りながら、芽生は京介の服をギュッと握った。 「ひ、とりで寝るのっ、怖、いの。……こ、んやは……ここで寝ちゃ、ダメ?」 怖い夢を見て、つい京介に縋りついてしまった。 そんな体を演じながら京介をじっと見上げていたら、自分でも驚くようなセリフが口をついていた。 きっと京介を一人にしたら、またさっきの〝怖い京ちゃん〟に戻ってしまいそうで怖かったから――。芽生は何とも不埒なおねだりに、懸命にもっともらしい理由を付けた。 *** 腕の中でフルフルと震えながら、幼い頃から見知った娘が、大きな目で自分を見上げてくる。 その姿に庇護欲をくすぐられた京介がほぼ無意識、芽生の頬を伝う涙を拭ってやったと同時、「今夜はここで寝ちゃ、ダメ?」とか……。まるで添い寝を求めているとも取れるとんでもない言葉が彼女の口から飛び出してきて、京介は思わず瞳を見開いた。 もちろん、異性から一緒に寝て欲しいと請われたことなんて初めてじゃない。実際その望みを叶えてやったことだって何度もあったし、その見返りにそんな女たちの身体を有難く頂いてきた京介だったが、芽生からそんなことを言われるとは思ってもいなかった。正直物凄い不意打ちを喰らった気分だ。 だが、芽生の泣き濡れた瞳を見下ろして、京介はすぐに自分の考えの愚かさに舌打ちする。
Dernière mise à jour : 2026-02-15 Read More