All Chapters of 組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~: Chapter 61 - Chapter 70

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17.殿様②

「なぁ芽生。お前、今までもそんなん着けてたのか?」 頑なに今のままでいいと言われて、実はそういう下着に慣れているのか? となんとなくムカついた京介は、よく考えもせずそんなことを聞いてしまった。 途端芽生から「京ちゃんのエッチ!」と反撃されて言葉に詰まる。「男がスケベで何が悪い」 悔しまぎれにそう言ったら、キョトンとされた。「ね、京ちゃん。ひょっとして……私にも、そういう気持ちになってくれたり……する?」(この娘は、公共の場で何てことを聞いてくんだよ!) 『今まさにヤバかったわ!』という言葉を呑み込んで、『少しは恥じらいを持て!』と言い掛けた京介だったけれど、存外芽生の表情が真剣で、茶化せなかった。「お前も……一応女だろうが」 〝一応〟にわざとらしく力を込めたが、『そうなる』と答えたも同然ではないか。苦々しくそんなことを思いながらも、京介はこの話は終わりだとばかりに話題を変える。「下着は……金渡すから自分で好きなの選べ」 店の前まで付き添いは必要だろうが、案外千崎辺りなら芽生も気負わずにいられるんじゃないだろうか。 芽生に言ったら『異性な時点で一緒!』と怒られてしまうだろうに、そのことに気付けない程度には、京介は普通の女の子の乙女心に疎かった。「だから! 京ちゃんがくれたのでいいって言ってるのに」「俺が! 落ち着かなくてイヤなんだよ。お前があーいうイヤラシイの、身に着けてんの」 テンパりすぎていて、芽生がそのセリフを聞いた瞬間、「そっか。京ちゃん落ち着かないんだ……」と嬉しそうにつぶやいたことにも気
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17.殿様③

 そもそも目の前にいる芽生が、養護施設ではクリスマス会のついでのように誕生日を祝われていたことを知っている京介としては、自分と一緒にいる間くらいは芽生の誕生日のついでにクリスマスを祝うくらいのスタンスでいいと思っている。 なのに、当の本人が、「私の誕生日はクリスマスと一緒でいいよ」などとあっけらかんと言うのが、京介には腹立たしくてたまらないのだ。「あ? 一緒とか有り得ねぇだろ。別々にやんぞ?」「そんな……。もったいない」「もったいなくねぇわ。祝い事は多い方が盛り上がんだろーが。とりあえずケーキは俺が用意すっからわざわざ買うな。分かったな?」 実はすでに人脈と金に物を言わせて一流パティシエに、誕生日ケーキを手配してある。 この時期には市内、どこのケーキ屋も示し合わせたみたいにクリスマスケーキしか受け付けない感じになるのが、正直京介には納得いかないのだ。(クリスマス生まれの人間にゃぁ誕生日を祝う権利はねぇのかよ) それもこれも芽生の誕生日がその日だからそう感じるに過ぎないのだが、何が楽しくて芽生の誕生日によく知りもしない神の子とやらの生誕祭を祝わねばならないのだろう。「本当?」 芽生は、今年は出遅れてどこのケーキ屋さんもクリスマスケーキの予約受け付けを終了していたのだと声を落としてから、「京ちゃん有難う」と礼を述べた。 芽生が、手配されているのはクリスマスケーキだと勘違いしていると気付いていた京介だったけれど、あえて訂正はしないでおいた。その方が、誕生日ケーキを出された時に芽生が喜ぶ気がしたからだ。 芽生が施設を出てからは、毎年芽生の誕生日には食事へ連れ出して、プレゼントをたんまり渡すのが常になっていた京介だったが、今年は家でのんびり祝うのも悪くないな、と思う。 ケーキは結構でかいホールを
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17.殿様④

荷物自体は、後ほど石矢が部屋まで運んでくれるらしい。 毎年のことながら、京介は年に一回の芽生の誕生日をクリスマスとは別、浴びるほどの物品とともにとことん祝ってくれる。いつもなら年に一回だしと思って甘んじて受け入れる芽生なのだが、今年は間借りもしている身。なんだか申し訳なさが先立った。 「お前を甘やかすのは俺の特権だ。文句言わずに受け入れろ」 京介はそう言うけれど、こんなにしてもらったら、芽生から京介へのネクタイなんて塵くらいの価値しかなくなりそうで困る。 京介は「稼ぎが違うんだから気にするな」と言ってくれるけれど、芽生はそんな彼に少し自粛して欲しい。 「お願いだからもう少しクールダウンして?」 そう苦言を呈しながら車を降りた芽生だったのだけれど、マンションの車寄せ近くの植え込み前に段ボール箱があるのが目について話が中断する。近寄ってみれば、中には白黒の子猫がいた。 「京ちゃん」 「あ? 猫か」 痩せこけていて毛もボサボサ。全体的に汚げなその子猫を、芽生は京介が止める隙も与えず何の躊躇いもなく抱き上げた。 「おい、芽生!」 下手に野良に触れれば病気や寄生虫をうつされかねない。怖がる猫に、引っ掻かれたり噛みつかれたりして怪我を負う可能性だってある。 そんな京介の懸念を、全部すっ飛ばした芽生が、泣きそうな顔で京介を見上げてくる。 幸い人慣れしているのか、猫は芽生の腕の中でおとなしかった。 「京ちゃん、この子」 「あー! んな目で見てくんな! 残念ながらうちはペット禁止じゃねぇし気になるってんなら」 芽生の視線につい絆されてしまった京介だ。素直じゃない言い方ながらも、飼えないこともないと芽生に告げてしまった。 外は寒い。このままここへ置き去りにすれば、きっとこの小さな生き物は野垂れ死んでしまうだろう。 そう思うと、芽生が抱き上げてしまった手前、もう一度元の場所に戻して放置も寝覚めが悪いと思った。それだけのことだ。 そう自分に言い聞かせている京介は、芽生にとことん甘い。そうしてこういうときにもその甘さを存分に発揮してしまうのだ。 芽生の満面の笑みを
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18.芽生にできること①

 マンションの部屋に入って程なくしてチャイムが鳴った。『石矢です』 京介が部屋内に設置されたインターホンへ応答すると、モニター画面に荷物を抱えた石矢が映る。 京介が「すまねぇな」とねぎらいの声を掛けてロックを解除すると、入口ドアが開いたらしく石矢がモニターから消えた。 京介の操作でこの階直通のエレベーターが一階まで降りて、石矢を運んでくるはずだ。 部屋の外扉にもカメラ付きのインターホンが設置されていて、階下からの時とは違う音で来訪者を知らせてくれる。 京介がそれに応答して再度石矢の姿を確認して玄関ロックを解除すると、やっと部屋の中まで入って来られる仕組みだ。(いつものことながらセキュリティ凄いな) マンション入口ドア、エレベーター、玄関扉。この三つの関所を室内から操作してもらわないと、鍵のない人間はこの部屋の中へ入れない。 京介の稼業を思えば当然なのかも知れないが、叩き割れば簡単に壊れそうな木製ドアに鍵が掛かるだけの古い一軒家に住んでいた芽生としては驚きの連続だ。 今は京介のお陰で、芽生もとても安全かつ快適に住まわせてもらっている。 京介が出してくれた真っ白なタオルを、部屋から持ってきた衣装ケース――とりあえず中身はベッドの上へ出した――へ敷いて、中に子猫を下ろした。 京介に手洗いと着替えを指示されて全部済ませてリビングへ戻ってみると、当たり前だけど石矢が来ていた。「なぁ芽生。荷物は後から適当に部屋へ運ぶんでいいよな?」 京介の声に部屋の片隅を見遣れば、石矢が運んできてくれた荷物の山に占拠されていた。「うん、それで大丈夫。――あの、石矢さん、沢山あったのに有難うございます。重かったでしょう?」 京介の言葉に頷きながら、芽生が石矢へ声を掛ける。「温かいココアを入れようと思うんですけど、石矢さんも飲みませんか?」 窓際に立つ京介へ「いいよね?」と尋ねたら「ああ。けど俺はコーヒーで」と、返ってきた。 京介はいつもコーヒーメ
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18.芽生にできること②

 そう思った芽生は、無言でココアを飲む石矢に視線を向けると、「あの、石矢さん。実はさっき、下で子猫を拾ったんです」と衣装ケースを指さした。「ああ、カシラから聞きました」「それで……」「餌とか寝床とか必要なモン、そろえに行くんでしょう?」 どうやらすでに京介からそんな話が通っているらしい。皆まで言わずともそう示唆してくれた石矢に、芽生はコクコク頷いた。「お手数おかけします」 言いながら頭を下げたら、「仕事ですから」とそっけない返事。 佐山なら嫌味のひとつでも返ってくるところだなと思って、芽生は吐息を落とした。(ダメ、ダメ。ブンブンと比べたら石矢さんに悪い) というより、京介を怒らせてしまう。(京ちゃんには沢山プレゼントを買ってもらったし、殿様のものは自分で買わなきゃ) これ以上京介に負担を掛けるわけにはいかない。***「芽生、ちょっと出てこなきゃなんなくなった」 上着を羽織りながら京介が石矢に目配せをする。石矢は京介の視線を受けるなり、飲み掛けのココアを「すみません」とテーブルに置いた。石矢は猫舌ではないんだろう。芽生が半分も飲めていないのに、カップには三分の一くらいしか残っていなかった。「京ちゃん、コーヒー」 邪魔になるかも? と思いながらも、芽生は保温ボトルにコーヒーを入れて京介に差し出す。「おう、悪ぃーな」 京介はイヤな顔一つせずそれを受け取ってくれると、逆に申し訳なさそうな顔をして芽生の髪の毛をワシャワシャとかき回した。「子猫の通院とかグッズ選びとか……俺が帰って来たらすぐ行こうな? もし無理そうなら……」 衣装ケースの方を見ながらそこまで言って、一瞬だけ言葉を止めると「佐山を来させる」と京介が付け加えてくる。「えっ? でも……」 てっきり千崎あたりに白羽の矢が立
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18.芽生にできること③

 京介は基本芽生に対しては物凄く過保護で心配性だ。静かな部屋で一人になると、京介に〝守られている〟のだとやたら実感させられて、自分の不甲斐なさにキュッと胸を締め付けられた。 京介を心配させないよう、彼の方から何らかのアクション――例えば佐山が派遣されてくるとか――がない限り、今日こそは家でおとなしく待っていよう、と心に誓う。そのぐらいしか出来ないのが何とも情けないけれど、それしか出来ないならそれをやるしかない。 リビングまで戻って扉を開けると、甘いココアと芳しいコーヒーの残り香に混ざって、なにやら生臭いにおいがする。「殿様?」 ふと違和感に気が付いて子猫へ駆け寄ると、さっきまで大人しく眠っていたはずの殿様が、嘔吐と下痢で、タオルあちこち汚していた。 慌てて抱き上げた殿様はぐったりしていて、体温も何だか下がっている気がする。 芽生はオロオロしながら京介に電話を掛けたが、先に京介が宣言した通りバタバタしているんだろうか。一向に繋がる気配がない。 涙目になりながらスマートフォンで「動物病院」を検索したら、徒歩一〇分圏内にひとつあって、そこなら殿様を保温しながら抱えて、なんとか駆け付けられそうな気がした。 芽生は物凄く迷ったけれど、殿様をフリース素材のひざ掛けで包むと、ハンカチで包んだ使い捨てカイロを敷いた小箱へ入れて、空気穴を開けた蓋を軽く閉めてから手提げ袋の中へ入れた。箱と袋は、京介に買ってもらった品々が収納されていたものを使ったので、買ってもらったばかりの品物が床へばらまかれてしまったけれど、それに頓着していられる気分ではなかった。 芽生は震える手をなんとか鼓舞して携帯で京介に『殿様が下痢と嘔吐をしてぐったりしているので、動物病院へ行ってきます』とメッセージを打ち込んで送信してから、どこの動物病院を目指すのか書き忘れていたことに気が付いて、『みしょう動物病院』と行き先を添えた。 芽生が、カードキーとお金が入った鞄を引っ掴んで家を出たのは、京介たちが出掛けてからおよそ十五分後くらいのことだった。***
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18.芽生にできること④

「細波さん……」 車が違うことに違和感を覚えつつ声の主の名をつぶやいてみたものの、今の芽生はそれどころではない。 殿様が入っている袋を持つ手に力を込めると、「すみません、今、急いでるので」と一礼して歩き出したのだけれど――。「急いでるならなおさら送っていくよ! 行き先は動物病院でいいよね?」 芽生の歩く数メートル先へ停車された車から降りてきた細波に行く手を阻まれた芽生は、思わず細波を見つめた。「なぜ行き先を?」 殿様は袋の中にいて見えない。なのに動物病院へ行こうとしていることを言い当てられてゾクッとした芽生である。なのに細波はあっけらかんと「なぜって……僕がいつも芽生ちゃんのことを考えてるからに決まってるじゃない」と気持ちの悪いことをサラリと言う。 その上で畳み掛けるように「ほら。車で行った方が温かいし、その方が断然猫ちゃんのためだよ? 芽生ちゃんはその子を死なせたくなくて頑張っているんでしょ?」と言い募ってくるのだ。 細波が、芽生が子猫を保護しているのを知っている矛盾を掻き消してしまうくらい、『死なせたくなくて頑張っている』という言葉に引っ張られてしまった芽生は、思わず泣きそうな顔で細波を見詰めた。「ほら、乗って!?」 芽生の迷いを見極めたように細波が腕の中の紙袋を取り上げ、開け放たれた助手席へ放り込む。それを追いかけた芽生は、気が付けばこれまで散々拒否し続けてきたはずの細波の車の中だった。 今日の細波がなぜかいつものように香水のニオイをプンプンさせていないことも、車種が違うことも妙に芽生の不安を煽ってくる。 知らない車の中からは、香水のニオイの代わりに別の香りがした。「……灯油?」 なんの気なし。感じたま
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19.人質①

 千崎から、相良組が管理しているランジェリーショップ『YURIKA』が燃えていると連絡を受けたのは、芽生とともに子猫を伴って帰宅して間もなくのことだった。 被害に遭った店舗は、芽生に下着を見繕ってもらった馴染みの店で、もっというと千崎が囲っている情婦が経営しているショップでもある。 石矢とともにココアを飲んでいる芽生を気にしつつ、「百合香は?」と低めた声音でオーナーの名を出せば、『腕に少し火傷をしたようですが、無事です』と返る。他のショップ店員たちも大きな怪我などなく逃げおおせたと聞いてホッと肩の力を抜いた京介だ。 にしても――。「放火か?」 思わず苦々しく吐き出せば、『……のようです』と予想していた通りの答えが返ってきて、つい眉間の皺が深くなった。 そもそもあの店には火元になるようなものがないのだ。 給湯室にあるのは流しと小さな冷蔵庫と急速沸騰機能付きの電気ポット、そしてコーヒーメーカーだけ。 もちろんコンセント差し込み口付近から火花が出ないとも言い切れないが、百合香は綺麗好きな女だ。埃が溜まって云々自体考えにくい。 芽生が住んでいた借家も、放火による火災だと断定されている。その犯人がまだ捕まっていない状態で、またしても不審火が起きたことを、さすがに偶然とは思えなかった。 借家の火災時、一番に細波鳴矢を疑った京介だったが、残念ながらあの男には芽生の家の出火時にアリバイがあって、早々に容疑者リストから外された。だが、今回はどうだろう?(長谷川建設にも何かないとは言い切れねぇし、警戒を強めるか) 芽生を主軸に、不審火が起きている気がする。だとしたら友人の会社も危ない気がして、京介は以前芽生を攫って行ったことがある事務所に電話を掛けた。下の者を長谷川建設の警備に付けようと考えたからだ。 だが、何度コールをしても誰も出る気配がない。こんなことはあり得ないことだ。
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19.人質②

『カシラ、電話、出られなくてすみません! 実は事務所が入ったビルに火がつけられまして……今みんな外へ出されてます。下着屋の件もあって大変でしょうが、落ち着いたらこっちにも顔出してやってください。下の者たちがざわついてまして……わたしじゃ抑え切れる自信がありません』 千崎も『YURIKA』の火事騒動へ駆り出されていて不在な状態での出火騒ぎとなると、事務所の方は大変なはずだ。あの事務所は部屋住みの者たちが寝起きするスペースも取ってあるから、そこを焼け出されたとあっては、その混乱ぶりは想像に難くない。 京介はすぐさま千崎に電話を掛けると、「すまん。事務所からも火が出た。俺はそっちに行くから……YURIKAの方はお前に頼んで構わねぇか?」と問い掛けた。 電話口から千崎が息を呑む気配がして、すぐさま『分かりました。こちらは私にお任せください』という声が返ってくる。 京介は苦々しい思いを噛み殺しながら、ハンドルを握る石矢に行き先変更を告げた。 よりによって、自分が不在にしている日に立て続けにこんなことが起こったのは、偶然だろうか?*** 先ほど細波に酷い扱いをされたけれど、子猫は無事だろうか? そっと上から覗き込むと、箱が横倒しになっていて、慌ててそれを元に戻したら、小さな声で「ニィ……」と鳴かれて、胸が苦しくなる。 シートベルトをしないまま、足の上に載せた紙袋をギュッと握りしめて、芽生は窓外を流れていく景色を険しい顔でじっと見つめた。 自分ひとりならある程度スピードが緩んだ隙をついて車から飛び降りるとか出来るかも知れないけれど、弱っている殿様のことを考えると、なかなか決心がつかない。「芽生ちゃん、変なことは考えない方がいいよ?」 前方を見詰めたままの細波からそう声を掛けられて、芽生は顔に企みが出ていたのかとドキッとする。「シートベルトをしようとしないのは
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19.人質③

 芽生がワオンモールに行けば必ず立ち寄る行きつけの菓子屋付近で、夕方毎日のように張り込んでいた甲斐があったと付け加えられて、それはもはや偶然というより必然だったのでは? と思ってしまった芽生である。 見つけた時点で芽生を捕まえられたらベストだったらしいのが、そうできなかったときに備えての保険が盗聴器だったらしい。「芽生ちゃんがワオンモール、大好きなのは知っていたし、備えあれば憂いなしっていうでしょ?」「でもそんなの私がティッシュを使ったら……」「多分見つかっちゃってただろうね。けど、大丈夫だったでしょう? 盗聴器の電池だってそんなに長くは持たないし、ある種の賭けだったんだ。で、僕はどうやらその賭けに勝ったみたいだね♪」 芽生が京介に引っ立てられるようにしてワオンモールを出た後を、タクシーで追いかけたのだと細波が言う。「僕の車はさ、良くも悪くも目立っちゃうから」 追跡には不向きだと思ってタクシーにしたらしい。とすると、今日いつもの車じゃないのも同じ理由からということか。 細波は、芽生が思っている以上に悪知恵が働く男なのかもしれない。「芽生ちゃん、すっごいセキュリティのマンションに住んでるんだもん。びっくりしちゃった。ヤクザって儲からないって聞いてたけど、君のパトロンは相当上手に稼いでるみたいだね」 言われて、「京ちゃんはパトロンなんかじゃ!」と思わず抗議した芽生だったけれど無視されてしまう。「新しい住まいは分かったけどなかなか手出しできなくて焦っちゃった。あの男が芽生ちゃんから離れるタイミングを探ろうって思ってたんだけど、待つより作る方がいいかなぁって……路線変更♪」「作、る……?」「そう」 細波は芽生が抱えた紙袋に視線を移すと、「僕からのプレゼント、気に入ってくれた?」 と微笑んだ。「それって……どういう」「ん? 芽生ちゃんが帰ってくる時間に合わせて、僕が置いたんだよ、その
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