「わざわざ会社まで押しかけて、何のつもりだ?」 社長室に向かい、入室したもみじを迎えたのは、誠司のそんな心無い冷たい言葉だった。 呆れたように額を手のひらで抑え、溜息を吐き出す誠司。 そして、誠司の後ろにあるソファには胡桃が当然のように座っていて。 もみじは、まさか開口一番、誠司にそんな言葉を言われるとは思っていなかった。 「何のつもりって……。どうして私が誠司の会社に来ただけで、そんな事を言われなくちゃ……」 「俺は仕事で忙しいのに、どうして俺を煩わせる?話があるなら、帰ってからでもいいだろう?急ぎの用事なんてもみじには無いだろうに……」 はあー、と深い溜息を吐き出す誠司に、もみじは悲しみで視界がだんだんと歪んで行くのを感じる。 そんなもみじを見て、誠司の瞳に一瞬申し訳なさそうな感情が浮かんだ。 だが、次の瞬間──。 「もう、お義姉ちゃん。誠司さんは忙しいのに煩わせちゃ駄目じゃない。お義姉ちゃんには誠司さんがどんな仕事をしているか何も分からないでしょ?誠司さんはとっても忙しいのよ?邪魔したら駄目だよ。家で大人しく料理や掃除しておかないと〜」 くすくす、とどこか嘲笑を孕んだ胡桃の言葉。 ソファから立ち上がり、もみじに近付きながらそう告げる胡桃は、誠司の隣にやって来ると、自然な動作でするりと誠司の腕に自分の腕を絡ませた。 「胡桃──。……そう、だな。胡桃の言う通りだ。もみじ、君には何も分からないだろう?俺が今どんな仕事をしているかも、どんな取引をしているかも分からないんだから、会社に来てもただ俺の貴重な時間を消費するだけなんだよ」 先程、誠司の瞳に一瞬だけ浮かんだもみじへの申し訳ないと言う気持ちは、胡桃の言葉によって呆気なく霧散した。 胡桃の言う通り、もみじには学がない。 そう、誠司は思い込んでいる。 もみじは大学在学中に誠司と結婚したのだ。 大学3年の時、誠司からプロポーズを受け、プロポーズを受けたもみじに、誠司は家庭に入って欲しいとそう願った。 誠司は起業のために忙しく毎日を過ごしていた。 だから、もみじには家庭に入って支えて欲しい。朝も、夜ももみじに送り出してもらって、出迎えて欲しい、と誠司は結婚後にもみじにそう願いを伝えたのだ。 大学卒業まであと1年だった。 だけど、
Zuletzt aktualisiert : 2026-01-28 Mehr lesen