Todos los capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 51 - Capítulo 60

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51話

「──胡桃。それ、私の服でしょう……?」 もみじの放った言葉に、髙野辺はぎょっと目を見開く。 そして、自分の腕に絡みついていた胡桃を振り払う。 「昨夜は、私と誠司の家に泊まったみたいね。……汚されたくないから、ちゃんと家に戻して。それに、あなたは髙野辺さんと殆ど面識が無いのでしょう?初対面の方に馴れ馴れし過ぎるわ。不快にさせたら駄目よ」 ぴしゃり、ともみじに告げられた胡桃は、羞恥に顔を赤くした。 「しょ、初対面じゃないわ!あの日、この方は助けてくれたんだから!!」 「──えっ?髙野辺さん、胡桃と会った事があったんですか?それでしたら、すみません」 胡桃の言葉に、もみじが慌てて髙野辺を仰ぎ見る。 すると、髙野辺は首を横に振って答えた。 「いえ、初対面ですよ。新島さんの妹さんと会った事はないです。誰かと勘違いされているんでは……?」 もみじと髙野辺。2人の会話を聞いた胡桃は、更に顔を赤くした。 羞恥や、怒りに頭が混乱してくる。 「──えっ、ええ!?病院で倒れそうになった私を助けてくれたじゃありませんか!!」 「……?そんな事ありましたかね……?」 「そっ、そんな……っ」 「すみません、私は覚えていないので……。それより、新島さんの旦那さん……。新島さんもこう仰っていますし、妹さんは旦那さんが連れ帰ってあげてください。服、新島さんの物なのでしょう?」 「──っ、も、もみじ!!これには訳があって……!」 髙野辺の言葉に、ようやく誠司ははっとすると、顔を青くしながらもみじに駆け寄った。 車椅子に座っているもみじは、誠司を見ようともしない。 だが、そんな中でも誠司は構わず、もみじに続けた。 「もみじ、お前が入院しているせいで、俺の身の回りの世話が出来ないだろう?それを心配した胡桃が、昨夜俺の所に来てくれたんだ。食事を作っている時に服を汚したから、一時的にお前の服を借りたんだよ。そ、そもそも……お前が入院していなければ、胡桃は服を汚す事はなかった!だから、胡桃の服を詫びとして買いに来ていたんだ、変な邪推はするなよ!」 慌てたようにそう捲し立てる誠司に、もみじは自分の中で誠司への気持ちがすぅっと消えてなくなるような感覚に陥る。 (誠司は、私を馬鹿にしているの……?そんな言葉で、私に責任を転嫁して……それで、私が申し訳なく思って……謝る
last updateÚltima actualización : 2026-02-18
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52話

もみじに、今までそんな態度を取られた事のなかった誠司は、たじろいだ。 「も、もみじ──」 「誠司。……私を馬鹿にしないで」 「──は」 「胡桃の胸元、もう少しきっちりと閉じた方がいいわよ。ちゃんと見てあげていて」 もみじは、それだけを言うと無理やり笑顔を作り、髙野辺を見上げた。 「すみません、髙野辺さん。行きましょう……?」 「……いいんですか、新島さん」 「ええ、大丈夫です」 「分かりました」 もみじと髙野辺。 2人だけで会話を済ませ、もみじの乗った車椅子を髙野辺が押して誠司達から離れて行く。 自分から離れ、他の男の手を借りるもみじに、誠司はむかむかとした感情が胸に込み上げてきて、慌ててもみじを追った。 「もみじ!」 自分を追いかけてくる誠司に、今までのもみじだったら嬉しくてすぐに誠司に飛びついていただろう。 だが、今のもみじは誠司の気持ちが分からない。 それに、胡桃と関係を持つ誠司とこれ以上顔を合わせたくなくて。 誠司を振り向いたもみじは、鋭い声を上げた。 「──胡桃の胸元をちゃんと整えてあげてって言ってるでしょう!?見たくもない物を、私に見せないで!」 「──は?」 もみじが瞳に涙を溜めて、苦しそうに顔を歪める。 その姿を見た誠司は、唖然としつつもみじの言う通り、胡桃に視線を向けた。 誠司の腕に胡桃は自分の胸を押し付けるように絡めていて。 背の高い誠司から、少し空いた胡桃の胸元がくっきりと見えた。 「──しまっ」 胡桃の胸元を見た瞬間、誠司は顔を真っ青に変えた。 胡桃の胸には、昨夜と今朝。 自分が付けたキスマークが、いくつも散らばっていたのだ。 それも、ついさっき付いたばかりと言うような真新しい物までしっかりと見える。 「もっ、もみじ──」 もみじがこれを見てしまったのなら。 胡桃と体を重ねた、と知ってしまったのかもしれない。 誠司は慌ててもみじを追いかけようとしたが、もみじの乗った車椅子はとっくに視界から消えていて。 走り出そうとした誠司を、胡桃は絡めた腕に力を込めてぐっと引き止めた。 「誠司さん?どうしてそんなに慌てているの?」 「──胡桃っ、もみじが俺が胡桃と寝ている事に気付いたかもしれない……!流石にバレるのは不味いだろう!?追いかけて、違うと伝えなければ……!」 慌てふためく
last updateÚltima actualización : 2026-02-19
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53話

誠司達と別れたもみじは、髙野辺に車椅子を押してもらい、本屋の駐車場に戻ってきていた。 「……髙野辺さん。変な事に巻き込んでしまい、ごめんなさい」 もみじが肩を落とし、申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつ髙野辺に謝罪をする。 すると、髙野辺は優しく笑いながら首を横に振った。 「気にしないでください、新島さん。俺は少しも気にしていませんよ。……さあ、病院に戻りましょうか!」 わざと明るく振る舞ってくれているのだろう。 そんな髙野辺の優しさにもみじは弱々しく笑い、頷いた。 ◇ 「悪い、胡桃。今日の買い物はまた今度だ。俺は少し用事が出来た。家に送る」 「──えっ、誠司さん!?どうして!お姉ちゃんの所に行くの!?」 誠司の言葉に、胡桃が泣きそうに顔を歪める。 誠司は悲しそうに自分に抱きつく胡桃を抱きしめ、慰めてやりつつ答える。 「いや、違う。少し仕事を残しているんだ。……会社に向かうから……」 「そうなの……?本当に?お姉ちゃんの所に行っちゃわない?」 「ああ、本当に仕事だ。胡桃を送ったら、会社に行くだけだよ」 「……分かったわ、誠司さん。私だと、手伝えないお仕事なのね……」 「ああ……新しいブランドに関してだからな……。胡桃の手助けは、また今度。別な時にお願いするよ」 誠司は宥めるように胡桃の額に口付けを落とす。 ようやくそれで納得してくれた胡桃は、誠司から離れた。 誠司は胡桃を連れて、車へと戻った。 ◇ 胡桃を家に送り届けた後、誠司は自分の会社が入っているビルへやって来ていた。 社長室に向かうと、パソコンを立ち上げ、メールをチェックする。 だが──。 「まだ、Seaから返信は来ていない、か……」 ため息を吐きつつ、本来の目的はこれじゃない、と誠司は自分の社用スマホを取り出して秘書の田島の名前を呼び出した。 そして、躊躇いなく田島に電話をかける。 数コールもしない内に電話に出た田島に、誠司は一方的に話した。 〈はい。社長?どうなさったんですか──〉 「田島。週明け1番に妻のもみじの入院している病院の病室を突き止めておけ。病院の情報は、既にスマホに送ってある。いいか、週明け急いで調べろ」 〈か、かしこまりました社長──〉 誠司は、田島が返事をするとすぐに電話を切ってしまう。 椅子に深く座り直し、背もたれに背を
last updateÚltima actualización : 2026-02-19
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54話

週明け。 朝、誠司は会社に出社し、パソコンを立ち上げてメールを確認した。 だが、時間が経ってもそこには──。 「何故、Seaから連絡が返ってきていない!!」 誠司は苛立ちを顕にして、デスクに強く拳を叩きつけた。 今回、誠司の会社では新しくアクセサリーの販売を手掛ける。 アクセサリーにはジュエリーが付き物。 質の良いジュエリーには、最高のデザイナーがデザインしてくれた物が相応しい。 だからこそ、誠司は国内──いや、海外でも最高のデザイナーであるSeaに仕事を依頼したのだ。 誠司がデザイン会社を立ち上げ、まだ会社が軌道に乗っていない頃。 毎日残業続きで、体を壊す寸前まで悩み、苦しんだ時期。 国内デザイナーに様々なデザイン案を依頼していたが、どれもぴんと来なかった。 それもそのはず。 有名なデザイナーは、大抵が他社と専属契約なりをしている。 それに、出来たばかりの誠司の会社に、力のあるデザイナーが自分の作品を預けてくれる事など、ほぼ無いに等しい。 地獄のような毎日を送っていたある日。 誠司がくたくたになって帰ると、妻のもみじが見かねてアイデアを出してくれた。 デザインコンテストを主催するのはどうだ、と誠司に提案したのだ。 コンテストを開催し、賞金を出せばもしかしたら名のあるデザイナーもデザインを応募してくれるかもしれない。 他にも、埋もれた才能を発掘するいい機会だ、ともみじの提案と、励ましによって誠司はコンテストを開き、そこで──。 なんと、あの世界的に有名な【Sea】が誠司の会社で開催したコンテストに応募してくれたのだ。 あの時、もみじにどれ程感謝しただろうか。 Seaと知り合う機会を貰えたのは、もみじの提案がきっかけだった。 それから、Seaは誠司の依頼を快く受けてくれて、こんなに返信に時間が掛かった事は無かったのに──。 「もしかして、Seaに何かあったのか……?」 最早、理由はそれしか考えられない──。 「病気や、怪我で……もしかして療養している、とか……?」 誠司はぶつぶつと呟きつつ、パソコンで急いでSeaを検索する。 元々、Seaは謎多き人物だ。 誠司本人も、いつもメールでのやり取りだけで、実際Seaと直接話した事は無い。 だから、性別も何も分からないのだが、どこかの記事でSeaは女性ではないか、
last updateÚltima actualización : 2026-02-20
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55話

「──胡桃!?」 「誠司さん、おはよう♡朝食を買ってきたの。一緒に食べましょう?」 「あ、ああ……。分かった──」 誠司はパソコンに目を向け、そこで一通のメールが届いている事に気が付いた。 「──メール!」 待ち侘びたSeaからのメールだろうか。 誠司は慌てて椅子に座り直すと、急いでメールを確認する。 誠司が自分ではなく、仕事を優先した事にぷくっと頬を膨らませた胡桃は、不機嫌さを隠しもせずに誠司に向かって口を開いた。 「誠司さん……っ、ご飯冷めちゃうわ……!早く来てっ」 「ちょっと待っていてくれ、胡桃!」 「──もうっ!どうして私より仕事を優先するの!?」 胡桃は、まだ何かを不満そうに口にしている。 だが、今の誠司はそれどころでは無い。 急いでメールを確認すると、届いたメールはやはり待ち侘びていたSeaからだった。 「誠司さぁん!」 「──っ!?」 突然、胡桃の声がすぐ傍から聞こえ、誠司の腕が引っ張られる。 ぐいっと強く腕を引っ張られた事で、誠司の腕が動いてしまい、パソコンに置いていた指がズレてしまった。 そのせいでSeaからのメールを開封出来なかった事に、誠司は苛立ちが募る。 「胡桃!頼むから仕事の邪魔をしないでくれ!」 「──っ」 誠司の一喝に、胡桃はびくっと肩を震わせ、今にも泣きそうにくしゃりと表情を歪める。 誠司は瞬時に「しまった」と思ったが、今はSeaからのメールの方が大事だ。 胡桃の隙をついて、一瞬でSeaからのメールを開封した。 そして、メールの内容を確認した誠司は、目を見開き──。 「──はぁ!?」 と、声を上げて勢い良く立ち上がった。 ◇ 病院、もみじの病室。 「──はぁ」 もみじは、たった今メールを送り終えて、スマホを閉じた。 「……誠司からの仕事依頼、断っちゃった」 今までだったら、どんな条件でだって誠司からの依頼は受けて来た。 しかも、他に仕事があったとしても、誠司の仕事だけは最優先にして受けてきたのだ。 だけど、もみじは今回。 それを初めて断った。 「……こんな気持ちで、誠司からの依頼を受けられる訳が無いわ……こんな状態じゃあ、良いデザインだって描けない」 もみじは、それだけは絶対に起きてはいけない事だと思っている。 自分のデザインに誇りを持っているし、手を抜い
last updateÚltima actualización : 2026-02-20
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56話

もみじは、膝を抱えて丸くなる。 「誠司と結婚して、どれくらい離婚を口に出されたんだろう……。10回……?いいえ、もっと多い……絶対20回以上は言われているわ……」 結婚して、2年しか経っていないと言うのに、20回以上も夫に離婚を口に出されている。 これだけ滑稽な事はないだろう。 「はっ、はは……馬鹿みたい……だけど……。まだ誠司が好きなのよ……」 もみじはぐっと自分の額を膝に押し付ける。 子供の頃から、誠司が好きだった。 母が幼い頃に亡くなり、それからすぐにもみじの父親は今の義母と再婚した。 もみじが小学校に上がる前ではあったが、その時既に胡桃は生まれていた。 父親は、もみじの母が生前の頃から胡桃の母親と不倫をしていたのだろう。 だからこそ、自分の妻が死んで間も無いというのに、新しい妻を迎えたのだ。 その頃、もみじはまだ新しい母親──胡桃の母になじめず、家で浮いていた。 そんなもみじを、父親は母の実家──祖父母の所に暫く預けたのだ。 もみじが元気になるまで、と表向きはそう言っていた父親だったが、もみじが単に邪魔だったのだろう。 もみじが、自分の母の死を受け入れ、新しい家族とやって行こうと思えるようになった頃。 もみじは父親と義母、そして胡桃の住む家に戻った。 そうしたら、その家の近くに誠司の一家が引っ越して来ていたのだ。 誠司と胡桃は既に仲良くなっており、もみじの境遇を知った誠司は、幼いながらももみじを慰め、優しく接してくれた。 だが、胡桃は誠司を取られた、と思ったのだろう。 その頃を境に、胡桃は誠司に執着するようになり、もみじを邪魔者扱いするようになったのだ。 そして、当時は暗かったもみじに比べ、可愛く明るい胡桃を誠司もとても可愛がっていた。 だけど、年頃になるにつれ、もみじも誠司も、お互いを意識するようになった。 お互いの初恋は、多分お互いだろう。 胡桃の事も可愛がっていた誠司だったから、最終的にもみじを選んだのかが、もみじ本人にも分からない。 それに、もみじと誠司はまだ体を繋げた事は1度も無いのだ。 それに比べ、恐らく誠司は胡桃と体の関係を持っている。 「……そんな事、知りたくなかった……っ、だけどっこの間……胡桃は私たちの家に泊まったし……っ、胡桃の肌にはキスマークが……っ」 どうして。 もみじの頭
last updateÚltima actualización : 2026-02-21
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57話

「失礼しますね──!?新島さん、どうしたんですか!?」 髙野辺はもみじの病室に入ってくるなり、もみじの目から溢れそうになっている涙を見て、ぎょっとした。 慌てて部屋に入って来ると、もみじに駆け寄る。 「ど、どこか体調が悪いんですか!?医者を呼びますか!?」 「ち、違うんです髙野辺さん!大丈夫です……っ!その、ただあくびをしていただけで……!」 もみじは、咄嗟に髙野辺に嘘をつく。 普段から散々髙野辺に良くしてもらっているのだ。 これ以上迷惑はかけられない──。 そう思ったもみじは、無理やり笑顔を浮かべると、ぱぱっと溢れそうになっていた涙を拭った。 そして、笑顔のまま髙野辺に話しかける。 「それより──どうしました?」 「……え、ああ……。その、以前話していた本を持ってきたんです。この間本屋で探しても無かった、と言っていたでしょう?」 髙野辺はもみじの問いにはっとすると、抱えていた紙袋をもみじに差し出した。 「──っ!ありがとうございます、髙野辺さん!」 ぱあっと、もみじの顔が明るくなる。 髙野辺から紙袋を受け取り、お礼を告げた。 「いえ、入院生活もあと少しですよね?」 「そうですね。あと2日で退院です」 「じゃあ、あと2日間。無茶はしないでくださいね?怪我が悪化したら大変ですから」 「ふふっ、ありがとうございます髙野辺さん。しっかり安静に過ごしますね」 髙野辺と軽く世間話をしていると、あっという間に時間が過ぎる。 2人が会話に花を咲かせていると、途中で髙野辺がハッとして、腕時計に視線を向けた。 「すみません、新島さん!会社に行ってきます!」 「わ、分かりました!朝の忙しい時にわざわざすみませんっ、ありがとうございます。行ってらっしゃい!」 もみじは慌てて部屋を出て行こうとしている髙野辺にそう声をかける。 すると、もみじの言葉を聞いた瞬間、部屋の扉に手をかけていた髙野辺の体が、ぴくりと反応して足が止まった。 急いでいるのに、どうしたのだろう──。 もみじが不思議に思っていると、髙野辺はどこか気恥しそうな表情でちらりともみじを振り向き、笑った。 「ええ、行ってきます。また、来ます──」 そう口にした髙野辺は、部屋から出て行き慌ただしい足音がもみじの部屋から遠ざかって行く。 髙野辺を見送ったもみじは、紙袋に入っ
last updateÚltima actualización : 2026-02-21
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58話

もみじの退院、当日。 その日まで、結局誠司は1度ももみじの病院には姿を現さなかった。 それどころか、もみじが今日退院すると言う事も、誠司は知らないだろう。 「──誠司は、今はそれ所じゃないものね」 もみじは、意味深に呟く。 呟いた瞬間、もみじのスマホが仕事用の着信を知らせる。 もみじはスマホを一瞥し、送り主の名前を確認した瞬間、興味を失ったようにスマホから顔を逸らした。 送り主は、誠司だ。 【Sea】宛に、あれから何度も連絡が来ていたのだ。 だが、誠司からの連絡に、もみじは1度も連絡を返していない。 正式な依頼に、Seaも正式に断りの連絡を入れている。 だからこれ以上、連絡を取る必要はなかった。 しかも、誠司の連絡はどれもが「1度直接会って話を」と言う連絡ばかり。 【Sea】の正体を隠しているもみじが誠司と会うなど、以ての外だ。 もみじが退院の支度をしていると、扉をノックする音が聞こえる。 「新島さん、俺です」 「髙野辺さん?どうぞ!」 髙野辺の声が聞こえ、もみじは扉に顔を向けると答える。 すると、扉を開けて入ってきた髙野辺は、後ろに人を従えた状態で挨拶をした。 「新島さん、退院の準備は出来ました?ご自宅に持って帰る荷物があれば、ちょうど知り合いとそこで会ったので、知り合いに車に運んでもらいます」 「──えっ!?でも、悪いです!」 「大丈夫ですよ、ちょうど知り合いもこれから帰るみたいで。先に駐車場に行くようなので、ついでに荷物を運んでもらいます」 そう答える髙野辺に、もみじは申し訳なさそうに彼の背後に居る男性にちらりと視線を向けた。 もみじの視線を受けた男性は、スーツをキチッと着込んだ真面目そうな男性で。 その男性は、もみじに顔を向けると軽く頭を下げる。 「ついでなので、問題ないですよ」 その男性からもそう言われ、もみじは「それなら……」と荷物をお願いする事にした。 正直、そう言ってもらえてとても助かったのは事実。 沢山の本をこの病室に持ち込んでしまっていたので、車まで持って行くのが大変だな、ともみじは思っていたのだ。 「すみません……こちらの本なんですが、沢山あって……」 もみじが申し訳なさそうに本が入った袋を取り出すと、男性は「問題ないです」と言い、もみじの手からその袋を受け取った。 「では、車に
last updateÚltima actualización : 2026-02-22
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59話

退院手続きを終えたもみじと髙野辺2人は、病院の駐車場に向かっていた。 もみじはまだ車椅子に乗ったまま。 もみじを自宅まで送り届けてくれた髙野辺が、会社に向かう道すがら、病院に車椅子を返してくれるそうだ。 「本当に……何から何まですみません、髙野辺さん」 「いいえ、気にしないでください新島さん。困った時はお互い様でしょう?」 笑顔でそう言ってくれる髙野辺に、もみじは心から感動する。 (こんなに優しい人が、世の中にいるのね……私も、髙野辺さんのように人に優しく生きていきたいわ……) 駐車場に着いた2人は、髙野辺に手助けしてもらい、車に乗り込む。 もみじは誠司と住む自分の自宅の住所を告げ、カーナビに住所をセットした髙野辺はアクセルを踏み込んだ。 ◇ もみじと誠司の家──。 そこには、数日前から胡桃の姿があった。 誠司のお世話をもみじが出来ないから、と言う理由で家に転がり込んで来た胡桃は、その日の朝も誠司のワイシャツ1枚だけを着た姿で朝食を作っていた。 ここ数日──。 誠司が、仕事の事でいらいらして以来、甘い一時を過ごす事は無くなった。 だけど、せっかくもみじが入院して、家にいない今がチャンスなのだ。 胡桃はわざと刺激的な格好で、誠司が起きてくるのを待っていた。 「──胡桃!?なんて格好をしているんだ!?」 「あっ、誠司さん♡おはよう♡」 寝室の扉を開け、リビングにやって来た誠司は、胡桃の姿を見てぎょっと目を見開いた。 寝室で、同じベッドで胡桃と寝てはいるものの、あの日以来、誠司は胡桃に手を出していなかった。 あの日──胡桃と一緒にいる所をもみじに見られてしまってから。 誠司は胡桃を抱いてはいない。 だが、こんな格好をして目の前に胡桃がいると、誠司も男である以上、意識してしまう。 誠司は胡桃からさっと視線を逸らし、口を開いた。 「早く服を整えてくるんだ……!もみじがいない間、俺の身の回りの世話をしてくれるのは助かるが……!」 「そんなに気にしなくていいのに……。昨夜泊まった時も、着替えの服を忘れちゃって……。一時的に誠司さんの服を借りただけよ?」 「──〜っ、今、秘書に服を届けさせる」 「ええ?お姉ちゃんの服で大丈夫よ?この間もそうしたんだし」 そう言いながら、胡桃は誠司の腕に抱きつく。 薄いワイシャツだけを着
last updateÚltima actualización : 2026-02-22
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60話

◇ 髙野辺に、自宅玄関の前まで送ってもらったもみじは、そこで髙野辺と別れた。 久しぶりの我が家に、些か緊張しながら鍵を取り出して、施錠を解く。 そして、玄関扉を開いた所で、もみじは女性物のパンプスが玄関にあるのを見て、目を見開いた。 「これ──」 見覚えがあるパンプスだ。 ピンクの色合いがとても可愛くて、もみじはひっそりと憧れていたのだ。 雑誌を見て一目惚れしたもみじは、以前、誠司にそれとなく強請ってみた事があった。 だが、誠司はもみじの言葉を「お前には似合わない」とあっさりと一蹴してしまった。 だけど、その数日後──。 誠司がもみじが強請ったパンプスが入ったブランドの袋を持っていた事を覚えている。 もしかしたら、あんな風に言ったけどプレゼントするために買ってきてくれたのでは──。 もみじは、そんな淡い期待を抱いたが、いくら待てども誠司がパンプスをプレゼントしてくれる事は無かった。 肩を落としたもみじだったが、なんて事は無い。 誠司は、胡桃にプレゼントしたのだろう──。 その証拠に、廊下の先にあるリビングからは胡桃の高い声がもみじの耳に薄っすらと聞こえて来ている。 「……はは、信じられない。私が入院している間、まさか毎日のように胡桃をここに連れ込んでいるなんて……」 誠司は、一体どれだけもみじを裏切るのだろうか。 どれだけ自分を裏切っていたのだろうか、ともみじは考える。 「何も気付かずに、私だけ蚊帳の外で浮かれて……バカみたいじゃない……」 一体、どんな甘い朝を過ごしているのだろう。 もみじは、痛む足を引きずりながらリビングのドアに向かう。 近付くにつれて、誠司の声も。もみじの声もはっきりと聞こえてきたもみじは、話している内容を耳にして、目を見開いた。 「もう……誠司さんったら……。今までは黙ってたけど……誠司さんが必死に探していたSeaは、私なのよ?誠司さんが探していたSeaは、私なの。今まで黙っていて、ごめんね……?」 「──何だとっ、胡桃がSea!?何故今まで黙っていたんだ!?」 「ごめんなさい……私がSeaだって事を誠司さんに言ったら、ますますお姉ちゃんの肩身が狭くなっちゃうでしょ……?」 「胡桃……、まさかもみじが大学を中退した事を気にして……?」 「うん……だって、お姉ちゃんもデザイナーに憧れてい
last updateÚltima actualización : 2026-02-23
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