「──胡桃。それ、私の服でしょう……?」 もみじの放った言葉に、髙野辺はぎょっと目を見開く。 そして、自分の腕に絡みついていた胡桃を振り払う。 「昨夜は、私と誠司の家に泊まったみたいね。……汚されたくないから、ちゃんと家に戻して。それに、あなたは髙野辺さんと殆ど面識が無いのでしょう?初対面の方に馴れ馴れし過ぎるわ。不快にさせたら駄目よ」 ぴしゃり、ともみじに告げられた胡桃は、羞恥に顔を赤くした。 「しょ、初対面じゃないわ!あの日、この方は助けてくれたんだから!!」 「──えっ?髙野辺さん、胡桃と会った事があったんですか?それでしたら、すみません」 胡桃の言葉に、もみじが慌てて髙野辺を仰ぎ見る。 すると、髙野辺は首を横に振って答えた。 「いえ、初対面ですよ。新島さんの妹さんと会った事はないです。誰かと勘違いされているんでは……?」 もみじと髙野辺。2人の会話を聞いた胡桃は、更に顔を赤くした。 羞恥や、怒りに頭が混乱してくる。 「──えっ、ええ!?病院で倒れそうになった私を助けてくれたじゃありませんか!!」 「……?そんな事ありましたかね……?」 「そっ、そんな……っ」 「すみません、私は覚えていないので……。それより、新島さんの旦那さん……。新島さんもこう仰っていますし、妹さんは旦那さんが連れ帰ってあげてください。服、新島さんの物なのでしょう?」 「──っ、も、もみじ!!これには訳があって……!」 髙野辺の言葉に、ようやく誠司ははっとすると、顔を青くしながらもみじに駆け寄った。 車椅子に座っているもみじは、誠司を見ようともしない。 だが、そんな中でも誠司は構わず、もみじに続けた。 「もみじ、お前が入院しているせいで、俺の身の回りの世話が出来ないだろう?それを心配した胡桃が、昨夜俺の所に来てくれたんだ。食事を作っている時に服を汚したから、一時的にお前の服を借りたんだよ。そ、そもそも……お前が入院していなければ、胡桃は服を汚す事はなかった!だから、胡桃の服を詫びとして買いに来ていたんだ、変な邪推はするなよ!」 慌てたようにそう捲し立てる誠司に、もみじは自分の中で誠司への気持ちがすぅっと消えてなくなるような感覚に陥る。 (誠司は、私を馬鹿にしているの……?そんな言葉で、私に責任を転嫁して……それで、私が申し訳なく思って……謝る
Última actualización : 2026-02-18 Leer más