何で? どうして、胡桃を抱きしめているの──? もみじの心の中は、そんな疑問でいっぱいになっていた。 扉を開けていたからだろうか。 誠司の低く、落ち着いた声と。甘えるような胡桃の声が聞きたくもないのにもみじの耳に届いた。 「ねえ、誠司さん♡ここは今私たち2人だけしかいないじゃない?ね?だからいつもみたいに……」 「──だが……。まだもみじが見つかっていないんだ。そんな状況で、俺は……」 「もうっ、お姉ちゃんならきっと不貞腐れてどこかに隠れているだけよ!誠司さんに迷惑をかけて、心配してもらいたいだけ!」 「そ、そうだろうか──……」 「そうに決まってるわ。お姉ちゃんは昔っからいっつもそうだったから!」 胡桃はそう言うなり、誠司にぎゅうっと強く抱きつく。 誠司は戸惑いつつ、胡桃を拒絶する素振りは見せず、抱きつく胡桃を受け止め、抱きしめ返しているのが見える。 「ねぇ、誠司さん……。私、昨日お姉ちゃんに突き飛ばされて凄く悲しくて……。落ち込んでるの……。誠司さんにキスしてもらったら元気が出るわ。ねえ、だからキスして?」 「──しょうがないな、胡桃は」 甘ったるい胡桃の声と、しょうがないと言いつつ嬉しそうな誠司の声が聞こえる。 そして、もみじの目の前で。 胡桃は誠司に体を擦り寄せ、誠司は胡桃を引き寄せた。 2人は当然のようにキスをする。 まるで、何度もキスをしてきたかのように、その仕草はとても自然で。 胡桃が甘い吐息を零し、誠司の後頭部に手を回し、誠司は胡桃を強く引き寄せた。 深くなる2人のキスに、もみじは自分の頬に伝う何かに気がついた。 「──……っ、」 声にならない泣き声を零し、もみじは自分の頬に伝った涙を手のひらで拭う。 もう、我慢ならない──。 キスなんかして、どう言うつもりなのか──。 もみじは、個室に乱入してやろう、と取っ手にかけていた自分の手に力を入れた。 所で。 「こんな所に居たんですね?どうしたんですか、新島さん」 「──っ、かた、のべさん」 背後から髙野辺の声が聞こえ、もみじははっとして振り向いた。 涙に濡れたもみじの頬と、潤んだ瞳を見て髙野辺は目を見開くと、急いでもみじへ駆け寄る。 「──どう」 「……しっ、喋らないでください、髙野辺さん……」 もみじが、自分の唇に人差し指を当てて髙野
Last Updated : 2026-02-08 Read more