誰だ、これは──。 あんなに可憐で。 可愛らしく甘えていた胡桃が。 こんなに冷たく、背筋が凍るような表情をするだろうか──。 こんな女、俺は知らない──。 誠司の喉が、ひゅっと鳴る。 胡桃に抱きつかれた腕を抜こうとしたが、まるで蛇のように執念深く巻き付く胡桃の腕から逃れる事ができず、誠司は真っ青になった。 「お姉ちゃんと離婚するんでしょう?私たちの結婚式はいつにしようかな?お姉ちゃんとした結婚式より、もっともっと豪勢な式にしましょうね、誠司♡」 にんまりと笑みを浮かべた胡桃は、背伸びをして誠司の耳元で囁く。 「私はSeaなんだから、私を裏切ったり、捨てたりしたらSeaの力を持って全力で誠司の会社を潰しちゃうかも。二度と、デザインの仕事なんて出来ないようにしてあげる♡」 胡桃の言葉を聞いた瞬間、誠司の腕から力が抜けた。 ◇ 一方、もみじの家、リビング。 役所に離婚届を提出したのは、昨日。 今日は、コンテストの結果が発表される日だ。 時間は正午。 もみじは起きてからずっとそわそわと落ち着かない気持ちで過ごしていた。 「も、もうそろそろかしら……?ああ、心臓に悪いわ……!」 どうか一思いにズバッと発表してくれれば!ともみじは思ってしまう。 ご飯を食べていても。 デザインの仕事をしていても。 何も手につかない。 そうこうしている内に、更に時間は経った。 もみじがテーブルに置いていたスマホが通知を知らせる。 メールの通知だ。 「──っ!」 もみじは急いでスマホを手に取ると、届いたメールを確認する。 すると、画面に表示されていたのは。 「──きたっ!」 もみじの瞳がキラキラと煌めく。 心待ちにしていた、デザインコンテストの結果通知だ。 もみじは震える指先で画面をタップし、メールを開封する。 すると、そこには──。 「──受かっ、た……?」 最終選考通過、の文字が。 確かに「玖渡川 もみじ」受賞と記載されている。 しかも、もみじが選ばれたのは「大賞」だ。 その文字を見ていると、じわじわと実感が湧いてきて、もみじは歓声を上げてしまった。 「う、受かったわ!嘘みたい……!大賞……っ!!」 きゃああ!と叫び、その場に飛び跳ねてしまう。 そして、コンテストの受賞発表、パーティーのお知らせも記載されている。
Last Updated : 2026-05-19 Read more