◇ もみじが起きる、数時間前。誠司の家。 「なっ、何よこれぇ!?」 寝室に、胡桃の悲鳴が響き渡った。 胡桃はいつものように起きると、日課となっているSNSチェックをしていた。 すると、自分の投稿に沢山の通知が来ていたのだ。 胡桃はまた何かバズったの?と嬉しそうに確認したのだが、それは心無い誹謗中傷のコメントの数々だった。 あれだけ胡桃を褒め讃え、媚びをうっていた人達が皆、手のひらを返したかのように胡桃を口汚く攻撃している。 「な、何なのよっ、何で……っ、何で私が不倫ってバレて……っ」 胡桃の顔は真っ青になる。 自分のアカウントから移動し、ネットニュースを確認する。 「──あっ、あ……」 すると、そこには。 昨夜潜り込んだパーティーでの出来事が写真付きで取り上げられていたのだ。 不倫、略奪、愛人──。 好き勝手に色々と書かれ、しまいには妊娠の事まで書かれている。 「せっ、誠司……っ、誠司ぃ……っ」 胡桃は大慌てで誠司の寝室に走る。 ドタバタと足音を立てて誠司の寝室に到着すると、ノックもせずに扉を開けた。 「せっ、誠司ぃっ!昨日のパーティーの事が……っ」 「──ああ、そうだ。記事の削除を……。すぐに会社に向かう。頼んだ、中野」 誠司は既に起きていたらしく、中野秘書と電話中だった。 部屋に入ってきた胡桃をちら、と見るがすぐに視線を外し、電話を切る。 そして身支度の続きを始めた。 胡桃は、自分が部屋にやってきたと言うのに誠司が何も声をかけてくれない事に憤りを覚えた。 どうして無視をするのか──。 胡桃はドスドスと足音荒く誠司に詰め寄り、ワイシャツを掴んだ。 「誠司っ!どうして無視するのよ!ちゃんと返事をしてよ……っ!」 「──〜っ、うるさい!俺は忙しいんだ!これから会社に行ってこの騒動を収めなくちゃならない!お前に構っている暇はないんだよ!」 「ひっ、酷いわ誠司ぃっ、そんな言い方ってないわ……っ。私のせいじゃないのに……っ」 ぐすぐす、と泣き出す胡桃に誠司はぐっと眉根を寄せる。 「……そもそも、胡桃が妊娠した事をSNSに書かなければこんな事にはならなかった……!もみじにだって離婚届を出される事はなかったんだ!中絶すると言っていたくせに……っ!あの時、俺に何を──」 額に手をあて、誠司は叫ぶ。 だが、言葉を
Last Updated : 2026-05-29 Read more