All Chapters of 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Chapter 231 - Chapter 240

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231話

カツカツ、とヒールの音を響かせ、もみじが壇上に現れると、会場に居た来場者は息を呑んだ。 煌びやかなスポットライトに照らされたもみじは、その煌めきにも負けない程の輝きを放っている。 来場者達はみな、壇上に現れたもみじの美しさに魅了され、ほうっと感嘆のため息を零した。 「おめでとうございます、玖渡川さん。今後、我が社で一緒に働ける事を楽しみにしています」 「ありがとうございます。御社のお力に少しでも役に立てれれば幸いです」 髙野辺からトロフィーを受け取り、握手を求められる。 もみじと髙野辺はにこやかに笑顔を交わし、固く握手をした。 その場面を、会場にいた報道陣がここぞとばかりに撮る。 沢山のフラッシュに包まれたもみじと髙野辺を、唖然と見つめる男が1人。 「──は?あれ、は……もみじ……?」 「え……なんで、お姉ちゃんが……」 唖然とする男──それは、誠司だ。 そして、誠司と同じく目を見開き、ぽかんと口を開ける胡桃。 その2人を、少し後ろから怪訝そうに見つめる秘書──中野。 中野は、もみじを見て、そして唖然としている前の2人を見つめた。 (──もみじ?それに、お姉ちゃん……?もしかして、あの壇上にいる女性が社長の奥様……?あんなに綺麗な女性が奥さんだったの?胡桃より全然綺麗じゃない) 自分でも、あんな綺麗な女性には敵わない、と中野はあっさりと負けを認めた。 それに、こんなに大きなコンテストで金賞を受賞しているのだ。 デザインの才能も、全く自分では敵わない。 (奥様が優秀過ぎるから、社長は嫌なのかしらね……?なら、馬鹿な女、か弱い女が好きなのね。だから社長は胡桃と不倫したんだわ) ふうん、と中野は鼻を鳴らした。 中野がそんな事を考えている間、誠司の頭の中はパニックに陥っていた。 (なんで、どうしてもみじが……?それに、玖渡川って……。もみじの祖父母の苗字だろう。確か、死んだ実母の苗字……どうして新島を名乗らない……!?) 顔を真っ青にしている誠司の横で、胡桃は悔しげに爪を噛んだ。 (なんでもみじが……っ、どうして私より目立つ場所にいるのよ……!しかも、どうしてあんな女があれだけ格好いい男の人達に囲まれているの!?ずるいっ、ずるいわ!あの女には分不相応だわ!あの男達も、デザインコンテストの受賞だって、私の方が相応しいのに……
last updateLast Updated : 2026-05-24
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232話

◇ 煌びやかな会場。 その中心部で、もみじは沢山の人に囲まれていた。 彼女の隣には同じコンテストで優秀賞を受賞した坂崎が。 反対側の隣には髙野辺が居る。 「玖渡川さん、坂崎さん。こちら、都内にデザイン事務所を構えている、デザイナーの田中さんと、社長の山田さん」 「初めまして、玖渡川です」 「坂崎です」 髙野辺が、もみじや坂崎に挨拶のために近づいて来る人達を一人一人紹介してくれる。 もみじや坂崎は笑顔で相手から差し出された手を握り、賛辞にお礼を述べる。 時にはアルコールを進められ、グラスを酌み交わし会話に盛り上がる。 坂崎のデザインへの知識も相当だが、もみじはそれを遥かに上回っていた。 だが、もみじより更に知識を持つ男が常に2人の隣に居てくれる。 もみじと坂崎、2人より知識に富んだ髙野辺が要所要所で助け舟を出してくれ、そして挨拶にやってくる人達を誰1人として間違える事なく2人に紹介してくれる。 そんな髙野辺の存在に、もみじも坂崎もとても助かっていた。 恐らく、自分達だけではこんなにスムーズに、それに相手に失礼のないように対応など出来なかっただろう。 もみじは髙野辺のスマートさ、そして対応力の高さ、知識量の多さに舌を巻いた。 (私も、デザインの事はかなり勉強している……、と自信があったけど……髙野辺さんに比べたらまだまだ全然足元にも及ばないわ……。これから、こんな人の下で共に働く事が出来るなんて……!) もみじがそんな事を考え、キラキラとした目で髙野辺を見ていると、招待客との会話が一段落ついたのだろう。 もみじの視線を受けた髙野辺が、不思議そうに首を傾げた。 「大丈夫ですか、もみじさんに坂崎さん。立ちっぱなしで疲れたでしょう?会場の端に座れる場所がある。そこに移動しましょうか」 「あ、ありがとうございます、髙野辺さん……!」 「確かに、少し小腹が空いてきました。何かつまみたいっすね!」 坂崎も緊張しっぱなしだったのだろう。 髙野辺の提案にほっと安堵したような顔を見せ、学生らしく砕けた口調になる。 そんな坂崎に笑みを向けながら、髙野辺は頷いた。 「では、場所を移動しましょう。……これから先は、ビジネスに関する話が多くなると思うので、軽くお腹に何か入れておいたほうがいいです」 「──ひえっ、ほ、本当ですか」 「はは
last updateLast Updated : 2026-05-25
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233話

そんな誠司の後ろ姿に、秘書の中野は焦ったように声をかける。 「しゃ、社長……!どちらに行かれるんですか!?目的の人物はあそこに──」 過去、駅舎の仕事をした企業の重役がすぐそこにいるのだ。 今日の目的は、あの人物と接触して話を聞く事。 誠司も、そのつもりで色々と準備をしていたのを中野は知っている。 だが、中野の言葉に誠司は冷たく返す。 「そんなもの、今はどうでもいい!それより、もみじだ……!玖渡川、だと!?どう言うつもりでその苗字を名乗っているのか、問いたださないと……!」 「社長……っ」 「あの女っ!また性懲りも無くデザインなんて……っ!妻がデザインしたなら、そのデザインの権利は俺にある!こんなコンテスト、無効だ……!もみじに強く言って聞かせないと……!」 「せ、せいじぃ……」 興奮する誠司に、彼の腕にもたれかかっていた胡桃はか細い泣き声を漏らす。 「こんな忙しい時に、なんだ胡桃……!」 苛立ちを隠す事なく、誠司が胡桃に告げる。 こんな風に荒い口調で話す誠司に、中野は怯んだ。 だが胡桃はちっとも怯む事なく、庇護欲を誘うような顔で誠司の腕に縋り付いた。 「お、お姉ちゃんのあのデザイン……、わ、私の……っ、私のデザインかもしれない……っ」 「──は?何だと……?」 胡桃の言葉に、誠司の足がぴたりと止まる。 そして、その言葉は背後を歩いていた中野の耳にも当然届いていた。 中野が驚きに目を見開いていると、胡桃はえぐえぐと泣きながら言葉を続けた。 「あ、あのデザイン……っ、私がっ、私が大学に在学中……っ、デザインした物に、酷似しているの……っ、おっ、お姉ちゃ……っ、ここ最近、実家に行ったでしょう……っ?せ、誠司、そう言ったよね?……もしかしたらっ、その時に私の部屋に入ったお姉ちゃんがっ」 顔を覆い、わっと泣き出す胡桃。 そして、崩れるようにその場にしゃがみ込む胡桃に誠司は唖然とした。 「た、確かに……確かにもみじは……実家の家事をしに行っている……俺が、海外に居る間、何度も……!まさか、もみじはまた胡桃のデザインを盗んだのか!?」 「やっ、やめて……っ、誠司っ、慣れてるっ、私は慣れてるからっ」 大きな声で騒ぐ2人に、周囲の注目は集まる。 その様子を見ていた中野は、真っ青になりつつ慌てて2人の会話を止めようと動いた。
last updateLast Updated : 2026-05-25
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234話

◇ 誠司達が近付いて来ている事を知らないもみじ達。 会場の端にあるソファに腰を下ろし、坂崎は軽食を取りに。 髙野辺はドリンクを取りにもみじの傍を一旦離れる。 「もみじさん、少しだけ待っていてください」 「すみません、髙野辺さん。ありがとうございます」 「いいえ、もみじさんと坂崎さんに楽しんでもらいたいので。すぐに戻って来ます」 笑顔でその場を離れる髙野辺に、もみじは手を振って答えると、ソファに深く座り直した。 「──ふぅ」 そして、今まで緊張していた体の強ばりを解すように息を深く吐き出した。 「き、緊張したぁ……。話しかけて下さる方々、みんな私でも知っているような大企業の重役なんだもの……。それに、国内でも有名なデザイナーさん達とのお話は楽しかったなぁ……」 デザイナー数名と、色々会話をした。 その時の事を思い出してもみじがにこにこしていると、ふ、ともみじの目の前に影が出来た。 「髙野辺さん──」 髙野辺が戻ってきたのだろう。 そう思い、もみじが笑顔で顔を上げると。 「随分楽しそうだな、もみじ」 不機嫌さを隠しもせず、顔を顰めて怒りに滲んだ低い声で誠司がもみじに話しかけた。 「──誠司?どうして、ここに……」 「はっ、俺はデザイン会社の社長だ。こういった場に呼ばれる事くらいある」 誠司は息をするように簡単に嘘を吐く。 誠司くらいの会社に、招待状は送られていない。 そもそも、このパーティーに招待された人達は髙野辺が厳選した優秀な経営者や優秀なデザイナーのみだ。 私情を含めなくとも、まだまだ誠司の会社が招待される事も。 そして──。 もみじは、ちらりと胡桃に視線を向ける。 (胡桃のようなデザイナーが招待されるはずが無いわ。……不正をして、潜り込んだのね) もみじから視線を向けられた胡桃は「ううっ」と声を出し、誠司に縋り泣き出した。 (誠司と胡桃の後ろにいるのは……新しい秘書?可哀想に、顔が真っ青だわ……) もみじが冷静に状況を把握していると、そんなもみじの態度が気に食わなかったのだろう。 誠司が声を張り上げた。 「おい!聞いているのか、もみじ!お前、自分のデザインじゃなくて胡桃のデザインを盗んでコンテストに応募したくせに、何を堂々としているんだ!即刻辞退しろ!」 「──何ですって?」 今度はどんな文句
last updateLast Updated : 2026-05-26
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235話

「それに、俺に構って欲しくてこんな事をしでかしたんだろうが、逆効果だぞ!いつまでこんな事をしている!本当に俺に捨てられてもいいのか!?」 突き飛ばしたもみじを見下ろしながら、誠司は非難を続ける。 ソファに倒れ込んだまま、もみじはちらりと見上げた。 すると、誠司の隣にいる胡桃はもみじを見下ろしながら醜い笑みを浮かべていて。 それを目にした瞬間、もみじはなるほど、と納得した。 (いつも身に覚えのない事で糾弾されていたけど、こう言う事だったのね。胡桃が誠司に嘘を吹き込んでいた……私の話を一切聞かないのも、いつも通りだわ) 「おい、もみじ!早く主催者に辞退を申し出ろ!そしてその栄光は胡桃に渡すんだ!」 「──っ痛」 倒れ込んだもみじの腕を強く掴み、誠司が無理矢理引き上げようとする。 そこで──。 「──おい!何をやっているんだ!」 両手に持っていたグラスを落とし、誠司に乱暴を働かれているもみじに気が付いた髙野辺が駆け寄って来た。 「お前……っ」 誠司も髙野辺の姿に反応を見せる。 先程の発表の際、もみじにばかり目がいっていた誠司は、髙野辺の姿に気が付いていなかったのだ。 その変わり、胡桃は壇上にいた髙野辺に気が付いていた。 髙野辺があの有名なTK株式会社の社長だと言う事をあの時に知り、密かに興奮していたのだ。 「また、もみじに付き纏っているのか!?こんな所にまでのこのこ着いて来て、お前如きがこのパーティーに参加するなど、烏滸がましいにも程がある!もみじを置いてさっさと帰れ!」 誠司の言葉に、周囲にいた招待客達は顔を真っ青にした。 そして、髙野辺の事を知らない誠司に信じられないと言うような目を向ける。 「髙野辺さぁん!お姉ちゃん、酷いんですっ、昔からお姉ちゃんは私のデザインを──」 胡桃は誠司の腕から自分の手を離すと、もみじに近付いていた髙野辺に縋りつこうと手を伸ばした。 だが、髙野辺は誠司も、胡桃も一切気にする事なくもみじに手を伸ばす。 「もみじさん、大丈夫ですか?手を見せてください」 「髙野辺さん……。すみません、こんな事に……」 「何を言うんですか。むしろ、こちらこそ申し訳ない。招待客に、招かれざる客が紛れ込んでいたようだ……」 ああ、赤くなっている。 そう悲しそうに呟いた髙野辺が、もみじの肩を優しく支え、その場に
last updateLast Updated : 2026-05-26
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236話

「──は?どうして、お前がここに……」 「やだ……っ、誠司っ、怖い!どうして田島さんがここにいるの!?もしかしたら、自分を首にした誠司を恨んでこんな所まで着いて来たの!?」 胡桃の言葉に、誠司ははっとして咄嗟に胡桃を庇う。 背後に胡桃を隠すようにしながら、目の前にいる田島を睨め付けるように見た。 「答えろ、田島。胡桃の言う通り、俺たちを着けてきたのか?」 誠司の言葉に、田島は呆れたような溜息を吐き出すと答えた。 「そんなに暇じゃありません。それより、お2人とも髙野辺社長にも、玖渡川 もみじさんにも近寄らないでください」 「──髙野辺、社長……?」 田島は言いたい事だけを言うと、誠司と胡桃から完全に視線を外し、手首を痛めているもみじを心配するように声をかけた。 「玖渡川さん、控え室に。社長、玖渡川さんを支えて差し上げてください」 「ああ、そのつもりだ。もみじさん、俺に掴まって。手当をしに行こう」 「ありがとうございます、髙野辺さん」 まるで誠司や胡桃の存在など、最初から無かったようにもみじと髙野辺は会話をしている。 一切自分を見ないもみじに、誠司は悔しくて奥歯を噛み締めた。 「お、おいもみじ──」 誠司が一歩足を踏み出し、もみじに近付こうとする。 だが、田島が素早く両者の間に立ち塞がり、誠司の行動を静止した。 自分の行動を阻む田島に、誠司は苛立ちを募らせる。 「おい!逃げるのか、もみじ!お前は事の重大性を分かっていない!この場で胡桃に謝罪しろ、そしてコンテストの受賞を辞退するんだ!そうすれば、俺も許してやるから!」 一体、どれだけ恥を晒すのだろうか。 もみじは、自分を支えて控え室に向かおうとしてくれている髙野辺に顔を向け、口を開いた。 「髙野辺さん、いい機会ですから彼にはっきりと言います」 「だが、もみじさん……」 「このままだと、他の招待客のご迷惑に……。もう、遅いかもしれませんが」 「あなたが気にする事はないですよ。この場の損害は、当人に払っていただきますから」 髙野辺はもみじを支えたまま、声を潜めて田島に指示をした。 「田島秘書、警備員を。もみじさんの話が終わったら、摘み出してくれ」 「かしこまりました、社長」 頭を下げてその場を離れる田島。 その後ろ姿を見送っていたもみじは、視線を田島から目の前にい
last updateLast Updated : 2026-05-27
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237話

「はっ、何を……っ、妊娠……、」 どうしてもみじがその事を知っているんだ──。 誠司の顔は、見る見るうちに真っ青になって行く。 そんな誠司を見たもみじは、何をそんなに驚いているんだろう、と首を傾げた。 「知っているに決まっているでしょう?胡桃があんなに嬉しそうに報告していたじゃないですか」 SNSの投稿を、もみじも見てしまったのか──。 誠司は慌てて胡桃から手を離すと、もみじに近付いた。 「ちがっ、あれは、胡桃が勝手に……!そんなつもりじゃなかったんだ!あれはっ、ただ……」 「──?だから、離婚届に署名したんでしょう?胡桃が妊娠したから、もう私と夫婦でいる意味は無い。そう判断したから署名して、テーブルに置いていたんでしょう」 「──は?署名……?」 誠司には、もみじが言っている事の意味が分からなかった。 完全に混乱しているようで、顔を真っ青にして狼狽えている。 「ま、待て……待ってくれ……。俺は、そんなの知らない。俺は、離婚届に署名なんてしていない……」 よろ、とよろめく誠司に今度はもみじが戸惑う。 「あれは確かに新島社長の筆跡でしたよ。だから私はそのまま提出したんですから」 「──は?」 もう、話はいいですか?そうそっけなく告げ、その場を離れようとしているもみじに、誠司は慌てて言葉を返す。 「ま、待てもみじ……!提出って、どう言う事だ!?俺は、お前の夫で──」 「何を言っているんですか?もうとっくに離婚届は役所に提出済です。受理されているので、私と新島社長は随分前からただの他人ですよ」 あっさりと、何の未練もなく告げられ、誠司はその場に立ち尽くす。 ぐにゃり、と視界が一気に歪んだような気がして、ふらついた。 「ま、待て……。俺は、離婚するなんて……そんなつもり、無かった……」 ぼそぼそ、と呟く誠司の声はもみじにも髙野辺の耳にも届かない。 誠司を置いて、控え室に向かって行く2人の後ろ姿を、ただただ呆然と見つめる事しか誠司には出来なかった。 ◇ 「思い出したぞ、あの顔どこかで見た事があると思っていたんだ」 「私も思い出した。あれって、NEW ISLANDの新島社長よね?」 「既婚者だとは聞いていたが……。奥さんがあの玖渡川さんだったのか?」 「それに、聞いた?玖渡川さんの妹さん、新島社長の子供を妊娠しているっ
last updateLast Updated : 2026-05-27
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238話

ずんずんと迷いない足取りでこちらにやってくる警備員。 そして、自分たちに集まる奇異の視線の多さ。 誠司の顔も知られていた。 このままここに居ては、社長の誠司におかしな噂が浮上してしまう。 それを恐れた中野は、慌てて誠司と胡桃の腕を取り退出を促した。 「社長!それに、胡桃も!今は早くこの場を離れないと……!警備員が来ています、騒ぎになる前にお早く……!」 中野の言葉に、ようやく誠司が反応する。 険しい表情で自分達に向かって歩いて来る警備員の姿を目にした誠司は、慌てて足を動かした。 「分かった」 「お早く……!胡桃、胡桃も早く!」 「な、中野せんぱあい……」 ぐしぐし、と泣き真似を未だ続けている胡桃を追い立て、3人は大急ぎでその場を後にした。 その姿を離れた所から見ていた男──坂崎は、構えていたスマホを下ろした。 「……玖渡川さん、結婚していたのか……」 ちえっ、と悔しそうに呟いた後、坂崎ははっとする。 「いや、だが待てよ……!玖渡川さんは離婚って言ってたし……それに、旦那が浮気?不倫?してたんだよな。そっか、それで離婚……」 それなら、俺にもチャンスはあるかな。 そう呟いた坂崎は、もみじと髙野辺が居るであろう控え室に急いで向かった。 ◇ 控え室。 誠司に強い力で腕を掴まれたもみじは、髙野辺の手当を受けていた。 ソファにしゅんと座り、もみじは謝罪を口にする。 「ごめんなさい、髙野辺さん。大事なパーティーで、こんな騒ぎを起こして……」 もみじの謝罪に、ぎょっとした髙野辺は顔を上げる。 「どうしてもみじさんが謝るんですか!?悪いのはもみじさんの元夫と、妹さんでしょう?もみじさんが申し訳なく思う事は1つもないですよ」 それに、と髙野辺は続ける。 「招待していない人物をこの会場に招き入れてしまったのは、我が社の落ち度です。改めて正式に謝罪します」 「た、髙野辺さんこそ頭を上げてください!逆に、私は今回彼らと直接話せて良かったですから。元夫にも離婚の事を伝えられましたし……!」 ぶんぶんと首を横に振ってそう答えるもみじに、髙野辺は申し訳なさそうな表情を浮かべたままだ。 髙野辺が口を開こうとした所で、傍に控えていた田島が先に言葉を発した。 「──それにしても、新島社長は離婚届の署名の事も、離婚の事も何も知らなかったんで
last updateLast Updated : 2026-05-28
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239話

「間違いなく本人の署名ですし、そもそも元夫は過去に何度ももみじさんに対して離婚を切り出していたでしょう?スマホにその証拠も残っているし、正式に受理されていますから、彼が騒ごうとも今更離婚の事実は変えられません」 「ほ、本当ですか……!」 「──ええ。ただ、離婚協議書について難癖をつけてくる可能性があります。今日、もみじさんが素晴らしいデザイナーだと知ったでしょう?だから、もみじさんの能力を惜しみ、離婚は認めても財産分与については争うかもしれない……」 髙野辺の言葉に、もみじは眉を顰める。 「争いになったら……離婚協議書を、見直しする可能性があると言う事ですか……?」 「──可能性はゼロではありませんが、限りなく低いと思います。有責はあちらにありますからね。不倫の証拠も揃っている。……そもそも、争えばもみじさんが妻だった事も周囲にバレますし、離婚の理由が報じられれば会社の信用問題にも発展します。……会社を傾けたくなければ、大人しく口を噤むしかないと思いますよ」 だから安心してください、と微笑む髙野辺にようやくもみじも笑顔が浮かぶ。 「良かった……。もう、あの人達とは関わりたくないです」 「ええ、そうですね。こちらからは極力接触しないようにしましょう」 こくり、と頷く髙野辺に手を差し出され、もみじはその手を取る。 「手の痛みはもう大丈夫ですか?」 「ええ、ありがとうございます髙野辺さん。会場に戻りましょうか」 もみじ達が控え室を出ようとした時、坂崎が部屋にやって来た。 「玖渡川さん!大丈夫でした!?」 「わっ、坂崎さん?びっくりした、大丈夫ですよ。騒がしくしてしまってごめんなさい」 「玖渡川さんは悪くないですよ。あの非常識な人達が悪いんですから」 誠司や胡桃の事をきっぱりと悪い、と言い切ってくれる坂崎の言葉にもみじは笑った。 「そうですね。あんな人達に悩まされるのは馬鹿馬鹿しいです」 「そうですよ。これから俺たちは忙しくなるんですから!」 明るく笑い飛ばしてくれる坂崎に、優しく気遣ってくれる髙野辺。 その2人にエスコートをされながら、もみじはパーティー会場に戻った。 あの騒動を周りで見ていた招待客達は、もみじが会場に戻るなり心配をしてくれた。 誠司や胡桃を非常識な人達だ、と一蹴し、もみじを気遣う言葉をかけてくれる。 大き
last updateLast Updated : 2026-05-28
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240話

◇ 【デザイン会社 N社長の不倫相手はまさかの義妹!?】 【N社長の隠された本妻 実の妹に夫を取られる!?】 翌日のネットニュースでは、そんな記事がいくつも上がっていた。 そんな事など露知らず、もみじはパーティーでの疲れを癒すため、ぐっすりと眠っていた。 もみじが起きたのは、9時頃。昨夜パーティー会場を出て、髙野辺に送ってもらって家に帰ってきたのは夜中の0時を回っていた。 それから寝る支度をして、布団に入ったのが1時過ぎ。 「──たっぷり8時間も寝ちゃったんだ……」 夢も見ずにぐっすりと眠ったのはいったいいつぶりだろうか。 もみじは軽くのびをして、顔を洗いに行く。 簡単な朝食を準備しながら、日課になっているメールチェックをしていると、親友の蘭からメッセージが届いているのに気が付いた。 「蘭……?どうしたんだろう?」 時刻を見れば、数時間前にメッセージが送られている。 もみじは首を傾げつつ蘭のメッセージを開封し、内容に目を通した。 瞬間、みるみる内にもみじの目が驚愕に見開かれて行く。 「な、何ですって……!?昨日の騒動が記事に……!?」 もみじは大慌てでネットニュースを確認する。 すると、そこには顔にモザイクはかかっているが、明らかに映っているのは誠司と自分の姿だ。 何枚かの写真がアップされていて、もみじが誠司に腕を掴まれている所や、まるで暴力を振るわれているように見えるような画像まである。 「ま、待って……どうしてこんな記事が……」 内容を確認してみれば、記事内容は誠司の不倫に関する事だった。 そして、もみじが妻だと言う事もしっかりと書かれている。 胡桃にもモザイク処理はされているが、しっかりと胡桃の事を「不倫相手 夫の義妹」と書かれているではないか。 そして、胡桃の妊娠の事まで書かれてしまっている。 「か、会社は……っ、髙野辺さんの会社は大丈夫……!?」 髙野辺の会社が協賛したデザインコンテストのパーティー会場でこんな事が起きたのだ。 会社の評判は、株価にダメージなどは、ともみじは大急ぎで確認する。 幸いな事に、髙野辺の会社TK株式会社は無傷のようで、もみじはほっと胸を撫で下ろした。 それより、大ダメージを負ったのは誠司の会社、NEW ISLANDだ。 NEW ISLANDの株価は暴落、ストップ値まで落
last updateLast Updated : 2026-05-29
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