髙野辺に新住所を送って、数十分。 1時間もしない内に髙野辺が到着したらしく、連絡が来た。 もみじが急いで下に降りると、髙野辺の車の前には髙野辺本人と、田島が一緒に待っていた。 「──あれ、田島さん?」 「新島さん。お久しぶりです」 ぺこり、と頭を下げた田島に、もみじも頭を下げて挨拶を返す。 どうして田島が一緒に──。 そう疑問を感じたもみじだったが、その疑問にはすぐに髙野辺が答えてくれた。 「新島さんは今、旦那さんと離婚について話し合っている最中でしょう?そんな中で新島さんが他の男と2人きりで会っている所を万が一見られたら余計な火種になってしまうので……」 「な、なるほど……!お気遣いいただいてすみません……!ありがとうございます!」 そこまで頭が回っていなかった。 確かに、もみじと髙野辺が2人だけで会っている所を万が一見られたら。 何の疚しい事もない知り合いだけど、誤解されてしまう可能性の方が高い。 だが、これが2人きりではなく田島も同席していれば、何か仕事の関係で会っていたのかもしれないと思ってもらえる。 それに、今回向かう先は服屋だ。 スーツを購入するだけだから、何の疚しい用事でもない。 「さあ、行きましょうか新島さん。俺が普段利用している店なんですが、女性物も種類が豊富なんです」 「本当ですか!?凄い有難いです、ありがとうございます髙野辺さん」 もみじから満面の笑みを向けられた髙野辺は、微かに頬を赤く染める。 小さく咳払いをすると「出発しますね」と一言告げてから車のエンジンをかけた。 ◇ 自分の雇い主──しかも、冷徹で厳しい会社の社長が、1人の女性の言葉で一喜一憂し、頬まで染めている姿を後部座席から見ていた田島は、何だか見てはいけない物を見ているような気がしてそっと視線を逸らした。 (新島さんから連絡が来た時の社長の反応……凄かったな……) もみじから連絡を受けた時、髙野辺は会議中だった。 だが、スマホを確認した途端髙野辺の表情がさっと変わり、会議を恐ろしいスピードで詰め、終わらせた。 どこか浮かれているような気がして、田島は何となしに声をかけたのだ。 「急ぎの用事ですか?」と。 その瞬間、髙野辺の足がぴたりと止まり、田島に振り返った時の表情は普段見慣れている冷静で氷のように冷たい「社長」の顔に戻って
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-05-07 อ่านเพิ่มเติม