บททั้งหมดของ 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: บทที่ 201 - บทที่ 210

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201話

髙野辺に新住所を送って、数十分。 1時間もしない内に髙野辺が到着したらしく、連絡が来た。 もみじが急いで下に降りると、髙野辺の車の前には髙野辺本人と、田島が一緒に待っていた。 「──あれ、田島さん?」 「新島さん。お久しぶりです」 ぺこり、と頭を下げた田島に、もみじも頭を下げて挨拶を返す。 どうして田島が一緒に──。 そう疑問を感じたもみじだったが、その疑問にはすぐに髙野辺が答えてくれた。 「新島さんは今、旦那さんと離婚について話し合っている最中でしょう?そんな中で新島さんが他の男と2人きりで会っている所を万が一見られたら余計な火種になってしまうので……」 「な、なるほど……!お気遣いいただいてすみません……!ありがとうございます!」 そこまで頭が回っていなかった。 確かに、もみじと髙野辺が2人だけで会っている所を万が一見られたら。 何の疚しい事もない知り合いだけど、誤解されてしまう可能性の方が高い。 だが、これが2人きりではなく田島も同席していれば、何か仕事の関係で会っていたのかもしれないと思ってもらえる。 それに、今回向かう先は服屋だ。 スーツを購入するだけだから、何の疚しい用事でもない。 「さあ、行きましょうか新島さん。俺が普段利用している店なんですが、女性物も種類が豊富なんです」 「本当ですか!?凄い有難いです、ありがとうございます髙野辺さん」 もみじから満面の笑みを向けられた髙野辺は、微かに頬を赤く染める。 小さく咳払いをすると「出発しますね」と一言告げてから車のエンジンをかけた。 ◇ 自分の雇い主──しかも、冷徹で厳しい会社の社長が、1人の女性の言葉で一喜一憂し、頬まで染めている姿を後部座席から見ていた田島は、何だか見てはいけない物を見ているような気がしてそっと視線を逸らした。 (新島さんから連絡が来た時の社長の反応……凄かったな……) もみじから連絡を受けた時、髙野辺は会議中だった。 だが、スマホを確認した途端髙野辺の表情がさっと変わり、会議を恐ろしいスピードで詰め、終わらせた。 どこか浮かれているような気がして、田島は何となしに声をかけたのだ。 「急ぎの用事ですか?」と。 その瞬間、髙野辺の足がぴたりと止まり、田島に振り返った時の表情は普段見慣れている冷静で氷のように冷たい「社長」の顔に戻って
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202話

◇ 「──〜また電話を切りやがった……!」 誠司は病院の病室で、怒りを顕にしてスマホを床に叩き付ける。 ガシャン!と大きな音がして、その音にはっとした誠司は慌ててしゃがみ込み、スマホを拾い上げた。 「──くそっ!」 画面がひび割れてしまっていて、誠司は壊れてしまっていないか、スマホを操作して確認する。 幸いにもスマホは壊れていなかったが、画面がバリバリに割れてしまい、新調する他ない。 「……何で田島をクビにしてしまったのか」 ちらり、と背後を確認する。 いつも誠司の背後には、優秀な秘書田島が控えていた。 今回のスマホの件も、もみじへの連絡も、そして駅舎の情報だって、田島をクビにさえしなければ田島が全て対応してくれていただろう。 それだけ、田島は優秀な秘書だったのだ。 それを一時の感情に流され、クビにしてしまった事を今でも誠司は後悔していた。 「……田島に連絡を入れてみるか?いや、だが……社員達は田島を軽蔑している。もう、俺の会社で雇う事は無理だ……それなら、新会社を立ち上げるか……?」 病室をうろうろと歩き回りながら、ぶつぶつと呟く。 「検査待ちは一体どれだけ待つんだ……?胡桃が検査に行ってからもう小一時間は経つ……」 まさか、何か病気ではないだろうな──。 そんな不安が誠司の胸に過ぎる。 だが、付き添いはここで待っているように、と言われてしまえばどうする事も出来ない。 誠司は仕事用のタブレットを取り出すと、胡桃の検査が終わるまでの間、会社の仕事を少しでも片付けようと集中した。 「──誠司、お待たせ……」 「胡桃!」 タブレットで仕事を捌いて数十分。 病室の扉を開けて、検査着を着たままの胡桃が姿を現した。 「大丈夫だったか?顔色が真っ青だぞ……!?」 「う、うん……大丈夫、よ……あっ」 誠司が丸椅子から立ち上がり、胡桃に歩み寄りつつ声をかける。 胡桃は力なくにこり、と笑うとふらりと大きくよろめいた。 「大丈夫か、胡桃!」 倒れてしまう寸前の胡桃の体を、誠司は慌てて支える。 すると、その拍子に胡桃が持っていた書類がバサバサ、と派手な音を立てて床に落ちてしまった。 「──っ、いやっ、見ないで……!」 書類を拾おうとした誠司を静止するように、胡桃が悲鳴のような声を上げる。 「ど、どうしたんだ胡桃!そんな
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203話

「──は、」 酷く喉が渇くような感覚。 目の前がぐらぐらと揺れているような感覚に陥った誠司は、ふらり、とよろめいた。 だが、自分の腕の中には胡桃が居る。 誠司は優しく胡桃をベッドまで連れて行き、ベッドに横たえた。 そして、自らは胡桃が落としてしまった書類を拾うためにそちらに歩いて行く。 「──ぃやっ、見ないで、拾わないで誠司っ」 「──……っ」 背後からは胡桃のか細く、悲痛な声が落ちる。 だが、胡桃の静止を振り切り、誠司は床にしゃがみ込んで書類を1枚1枚拾い上げた。 「……ぁっ」 拾っていく内に、書類は中絶手術の説明や、同意書だけではない事に気がついた。 エコー写真や、現在が何週目なのか、そして妊娠初期に気をつけなければいけない事などが記載されている書類も混ざっている。 「……な、ん……」 誠司の頭の中は真っ白になっていた。 どうして。 胡桃と抱き合う時は避妊具を欠かした事などないのに。 それなのに、どうして胡桃が妊娠を──。 週数を確認してみれば、恐らくE国で抱き合っている内に出来てしまったのだろう、と何となく察せれた。 誠司はE国に渡ってからと言うものの、タガが外れたように胡桃の体に欲情し、毎日のように抱き合っていた事を思い出す。 「──あの期間に……っ」 前髪をぐしゃり、と握り潰しつつ口からは低く呻くような声が漏れる。 いつの間にやってきたのだろう。 背後までやって来ていた胡桃が、誠司の手から書類を奪い取った。 「だ、大丈夫よ誠司……!心配しないで、この子は……っ、この子はちゃんと……堕ろす、から……っ!お姉ちゃんと誠司の幸せを、壊せないっ、から……っ」 ぶわり、と胡桃の目には涙が溢れ、そして堪えきれなかった涙がボタボタと床に降り注ぐ。 「胡桃……っ」 「大丈夫、大丈夫、よ……っ、ちゃんと、するからっ」 嗚咽混じりに泣きじゃくりながら、胡桃は誠司の手を引いてベッドのサイドテーブルに彼を誘導していく。 誠司は頭の中が真っ白のまま、理解が追いついていない。 そんな誠司を椅子に座らせた胡桃は、戸棚から筆記用具を取り出すと泣きじゃくりながらそっと誠司の様子を窺った。 誠司は、心ここに在らず、といった体で呆然としている。 目の焦点も合っていないように見えた。 確実に頭の中はパニック状態に陥っていて、判
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204話

◇ 一方、もみじ達は和気あいあいと買い物をしていた。 「新島さん、これとか似合いそうですね」 「本当ですか?それじゃあ、試着してみます……!」 髙野辺の秘書、田島が笑顔でもみじに似合いそうなスーツを持ってくる。 そんな田島にもみじが笑顔で応じ、田島からスーツを受け取っていた。 そんな2人から少し離れた場所で仕事対応の電話をしていた髙野辺は、楽しげに会話と買い物を満喫しているもみじと田島にじとっとした目を向けてしまう。 髙野辺の視線に気がついたのだろう。 田島は楽しそうに笑っていた表情から一変し、すんっと無表情になる。 田島の突然の変貌にもみじが驚いていると電話を終えた髙野辺が歩いて来た。 「新島さん、購入するスーツは決まりましたか?」 「──あっ、髙野辺さん!はい、田島さんと話していて、これが似合うんじゃないかって言っていただけました」 もみじは笑顔で振り向くと、髙野辺にスーツを見せる。 買い物を楽しんでいる様子のもみじに、髙野辺も笑顔を浮かべつつ頷いた。 「ええ、新島さんに良く似合いそうですね。だけど、スーツは何着か持っていると楽ですよ。──これとか、どうですか?」 髙野辺はそう話しつつ、近くにあったスーツの中からもみじに似合いそうなスーツを手に取って見せる。 もみじに似合いそうな清楚な雰囲気のデザインだ。 体のラインもすっきりと見せ、多少値が張るものの、一目見ただけで上等な品物だと分かる。 もみじも、一目見ただけでそのスーツが気に入り、髙野辺から受け取ってまじまじと眺めた。 「──確かに!凄く好みです……!」 「それなら良かったです」 にっこり、と笑みを浮かべる髙野辺。 もみじは満足気にあと数着スーツを選び、インナーと長いパンツ、スカートも髙野辺と田島の助言を貰いながら数着を手に取った。 「髙野辺さんに相談して良かったです、田島さんもお付き合いいただいてありがとうございます!私、レジで買ってきますね!」 もみじはカゴを持ち、レジに向かって行く。 レジに向かうもみじを見送っていた髙野辺の後ろ姿に、田島は話しかけた。 「……社長が購入して差し上げるのかと思っていました……」 「俺が?本当は出したいが、そんな事をしたら新島さんが気に病むだろう。……今後、新島さんと契約をした際にお給料を弾むよ。彼女には、それだけ
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205話

もみじは、髙野辺達との買い物が終わり、家まで送ってもらうと自宅に入った。 新しい自分の城だ。 スーツも購入した。 誠司と暮らしていた家も、出た。 もみじは、新生活にワクワクとしていた。 これから、新しい生活が始まるのだ。 「まずは、今日買ったスーツをクローゼットにしまわないと……!」 もみじは弾む足取りで寝室のクローゼットに向かい、新しく購入したスーツや私服をしまっていった。 ◇ 誠司と暮らしていた家を出て、数日。 それまで度々誠司から連絡が来ていたと言うのに、この数日間はぱったりと来なくなった。 何かあったのだろうか、ともみじは考えたが自分からは連絡をしない。 もみじは夕食を食べつつスマホでスケジュールを確認する。 「デザインコンテストの最終選考の面接は、2日後。明日は誠司の家に引越し業者が来るから、立ち会わなくちゃ……」 その時に、もしかしたら誠司と鉢合わせるかもしれない。 だが、引越し業者が来るのは午後1番の時間帯。 平日のため、誠司は会社に行っているだろう。 「誰もいないといいんだけど……」 もみじはそんな事を呟きつつ、お茶碗に残っていた最後のご飯を口に運んだ。 翌朝。 少しゆっくり起きたもみじは出かける支度をして家を出た。 車に乗りこみ、かつて誠司と暮らしていた家に向かう。 「今から行けば、十分余裕を持って着くわね」 車内の時計を確認しつつ、呟く。 「そう言えば、勝手に家を出て来てから実家の掃除に行かなくなったけど……。義母からは何の連絡も無いわね……」 毎日掃除に行け、と誠司は言っていたが胡桃が帰国した今、もう必要無いと言う事だろうか。 義母からも連絡が来る事はないのでそのままにしていたが、もみじは少しだけ引っかかりを覚えていた。 少しだけもやもやとした物を感じつつ、車を走らせ続けて家に向かう。 家に着いたもみじは、駐車場に車を停めて玄関に向かう。 電子ロックの番号を変えられてしまっていないか、と不安だったがそんな事はなく。 あっさりと施錠を解除し、もみじは家に入った。 「……無事入れて良かった」 玄関を進み、リビングに入る。 するとそこは、もみじが出て行った時のまま何も変わっていなかった。 いや──。 正確に言えば、誠司の着替えや食べ終えた食事の器や、食べ残しなどがそこら辺に放置
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206話

もみじは、震える手で書類を持ちながら急いでスマホを取り出す。 すぐに久保田の名前を呼び出すと、躊躇いなく電話をかけた。 「──っ!も、もしもし!」 もみじが電話をかけて、数コール。 数コールで久保田が電話に出てくれて、もみじは急いで声を発した。 〈もしもし?どうなさいましたか、新島さん〉 不思議そうな久保田の声がもみじの耳に届く。 もみじは、急いで言葉を返した。 「あ、あの……っ!以前作成いただいた離婚届と、協議書に……!夫が署名を……!」 〈──本当ですか!?すぐに拝見します、新島さん今日はご在宅ですか!?〉 「あ、あのっ!今は引越しの準備で、昔の家に……!引越しが住んだら今の家に行きます、そこで確認していただく事は可能ですか?」 〈ええ、分かりました……!それでしたら本日の夕方……17時に新島さんのご自宅で如何ですか?〉 「分かりました、それでお願いします!」 もみじは久保田と約束を取り付けると、書類を大切そうにバッグにしまい込む。 そして、それ程時間が経たない内に引越し業者がやって来た。 ◇ 引越しが終わり、もみじは今の自分の家に戻ってきた。 業者にお礼を告げ、部屋の中をある程度片付けた時には久保田との約束の時間になっていた。 「──あ、もうすぐ17時になるわね。久保田先生ももうすぐ来るはず」 来客を出迎える準備をしていると、約束の時間になり、インターホンが鳴った。 「──はい!」 もみじはパタパタと玄関に向かい、玄関を開ける。 そこには予想していた通り久保田がやって来ていた。 ◇ 「──うん、問題ないですね」 「本当ですか!?」 誠司が署名した離婚届と離婚協議書。 それを久保田に確認してもらっていたもみじは、久保田の言葉にほっと胸を撫で下ろした。 「ええ、書類を偽造されている痕跡もありませんし、文章に手を加えられている痕跡も見当たりません。これを役所に提出すれば、問題なく新島さんの離婚は成立しますよ」 笑顔でそう口にした後、久保田は言葉を続ける。 「お疲れ様でした。これで一旦は落ち着けますね」 「──ええ、本当に……!ありがとうございます、久保田先生」 「いえいえ。ただ……気がかりなのは本人から渡されたものではなく、新島さんの自室に置かれていた、と言う点ですね。……無いとは思いますが、後々ト
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207話

【大好きな彼との間に♡】 そんな文章の後に、1枚の写真が載せられている。 それは、誰がどう見ても分かる。 赤ちゃんのエコー写真だった。 「──え……?」 もみじは唖然として、ぽつりと呟く。 「な、に……?赤ちゃん……?大好きな人って……誠司、よね……?」 どうして、こんな。 そう、もみじは信じられない想いで呟く。 「だから……誠司は離婚届に署名をしてくれた、の……?」 胡桃が妊娠したから。 大事な胡桃が妊娠したから、ようやくもみじの言葉を聞き入れる気になったのか──。 「でも……まだ離婚届は提出していないのに……。それなのに、これって酷過ぎるわ……」 結婚してからの2年間。 そして、それまでに付き合っていた期間は、一体何だったのだろうか、ともみじは自分の体から力が抜けてしまう。 「誠司は、ずっと胡桃が好きだったの……?それじゃあ、どうして私と結婚したのよ……。それに、今までかけてくれていた言葉は、みんな嘘だったの……」 もみじの胸に、ぽっかりと穴が空いたような気がする。 何だか全てが虚しく思えてしまって。 体から力が抜け、ガタンと音を立てて椅子に座り込んだ。 明日は、大事な最終選考があるのに。 それなのに、何だか頭がぐちゃぐちゃだ。 「どうして……」 呆然としていると、もみじのスマホが着信を知らせた。 一体、誰だろう。 そう思ったもみじがちらり、とスマホを見ると。 そこには──。 「──っ」 誠司の名前が表示されている。 もみじは、弾かれたようにスマホを手に取ると、誠司からの着信に出た。 「──もしもし」 〈……やっと出たか〉 「何の用なの?」 常より低く、何の温度もないもみじの声。 だが、そんなもみじの些細な変化など誠司は全く気が付かなかった。 〈一体いつになったら戻ってくる?〉 それどころか、誠司の口から信じられない言葉が飛び出て来て、もみじは言葉を失った。 「──は……?」 〈聞こえなかったのか?いつになったら家に戻る?いつまで拗ねているんだ、お前は。いい加減にしろ。胡桃の具合が悪いんだ。早く戻って胡桃の世話をしてやれ〉 胡桃の世話──。 一体、誠司は自分を何だと思っているのか。 「私は、あなた達の家政婦じゃないのよ……」 〈──は?〉 「私が出て行って、心置き無く胡桃と新
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208話

◇ 「──んふっ♡」 胡桃は投稿したばかりの自分のSNSを見つめ、にいっと目を細めた。 時間が経つにつれて次々とコメントが増えて行く。 「やだー♡みんなお祝いしてくれてるー♡」 胡桃は甘ったるい声を出すと、ちらりと部屋の扉を見つめた。 ここは、NEW ISLANDのデザイン部屋。 胡桃のためだけに誠司が用意した一室だ。 施錠もしっかりしたし、外から聞き耳を立てても中の声を聞かれる心配が無い、防音設備のしっかりした部屋だ。 胡桃は椅子に深く背を預け、くるりと回った。 「それにしても誠司もお馬鹿さんよねー。堕ろす訳ないじゃん♡これでもみじの存在理由なんて無くなったし、離婚届も誠司に名前を書いてもらったし♡後はもみじがあれを提出するだけね」 胡桃は含み笑いを漏らしつつ、母親・桔梗から送られた画像をパソコン画面上に表示する。 それは、もみじがデザインした駅舎のラフ。 ボツになったものだ。 だが、胡桃も。桔梗も。 このラフ画はもみじの母・舞奈がもみじに遺した遺作だと勘違いしている。 「お父さんが調べてる件に、私のデザインを潜り込ませる事が出来たら……!私がSeaだと全世界に知らしめる事が出来るわ!」 ああ、笑いが止まらない! そう声を漏らす胡桃。 胡桃は自分のお腹に手を当てると、念じるように呟いた。 「早く育ってよ〜、もう堕ろす事が出来ないくらい大きくなったら誠司だって私を捨てる事が出来ないんだから。出来れば女の子がいいわね……。次は男の子かしら?誠司が私から離れられないようにしなくちゃ」 社長夫人なんて、最初からもみじには分不相応だったのだ。 「なーんの役にも立たないもみじより、可愛くて若くて、才能がある私の方が誠司に相応しいもの。……絶対に誠司を手放さないわ……!」 ぎゅっと拳を握り、胡桃は自分に言い聞かせるように呟く。 ここまで来てしまったのだ。 もう、後戻りは出来ないし、するつもりはない。 「私が世界的有名デザイナーになるのよ。もみじの母親なんて目じゃないわ……!」 自分にはデザイン会社社長の誠司だっているし、大企業とまではいかないがそこそこ大きな会社を経営している父親だってついている。 「お母さんが叶えたかった夢まで、あと一歩よ。後は私が有名なデザイナーになるの。もみじの母親の名声なんて、私が全部ぶっ潰して
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-05-11
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209話

「あっ、あの!私、デザインコンテストの最終選考に参りました。玖渡川 もみじ、と申します……!」 もみじは受付に向かうと、緊張した面持ちで告げる。 すると、受付の担当がにこやかに微笑み「伺っております」と答えてくれた。 もみじが差し出した最終選考の通過通知を確認し終えた受付は、どこかに電話をかける。 「──受付です。お見えになりました。……はい、はい。かしこまりました」 言葉少なに電話を切った受付女性は、笑顔のままもみじに声をかける。 「最終選考の会場は6階です。エレベーターで6階に向かい、降りたら左に進んでいただきますと、大会議室がございます。その入口に係りの者がおりますので、通過通知を提示ください」 「あっ、ありがとうございます……!」 ぺこり、と頭を下げてからもみじはエレベーターに向かう。 今は午後。 本当は今日の午前中に役所に行って、離婚届を提出するつもりだった。 だが、出かけにもみじの車が原因不明の故障をしてしまい、その対応に時間を取られてしまって役所に行く事が出来なかった。 本当は離婚を済ませ、すっきりとした晴れやかな気分で面接に挑みたかったもみじだったのだが、不測の事態が起きてしまったのだ。 車の故障ばかりはどうにもならない。 (この面接が終わって……夜間窓口、は……難しそうね。この面接がどれくらいで終わるか分からないし……。明日、提出しに行こう) 役所は別に逃げないのだから。 それに、双方署名済の離婚届と協議書はもみじの手元にある。 焦らずとも、いつでも離婚が出来るのだ。 (そうよ……、今は誠司の事なんて考えずにこの先の面接の事を考えなくちゃ……!私にとって大事なのはこの先の面接よ……!) どきどき、と緊張に胸が逸る。 エレベーターに乗り込み、6階に着いたもみじは左に顔を向けた。 「──あ、あそこね」 大会議室、と言っていた。 その入口には受付が設置されており、最終選考に通過した人であろう人物が書類を見せて中に通される所がもみじに見えた。 もみじも自分の鞄から書類を取り出し、受付に向かって歩いて行く。 受付までやってくると、もみじは口を開いた。 「こんにちは、最終選考に参りました玖渡川 もみじです。通過通知はこちらです」 「お待ちしておりました。書類を拝見します」 受付の男性がもみじから渡され
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-05-11
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210話

(──えっ、え……?どうして、ここに髙野辺さんが──) 唖然としたもみじに気が付いた髙野辺から、視線を向けられる。 髙野辺の顔がもみじに向き、もみじはびくり、と肩を震わせた。 ふわり、と嬉しそうに笑みを浮かべた髙野辺に、もみじは勿論、最終選考の面接に来ている人達も皆、目を見開いた。 (えっ、え……?待っ、待って……髙野辺さんが座る席って──) もみじが驚いていると、髙野辺は1番上座。 「社長」と書かれているプレートのある席に腰を下ろした。 (──しゃ、ちょう……?) もみじが髙野辺を見つめていると、髙野辺からももみじに視線を向けられた。 申し訳なさそうに眉を下げ、困ったように苦笑いを浮かべる髙野辺。 そして、髙野辺の後ろに控える田島が、もみじに申し訳なさそうに軽く頭を下げた。 (──えっ、え……。え……?) もみじが何が何だか分からない、と混乱していると、つんつん、と隣の席の人に腕をつつかれる。 「──っ!?」 びっくりしてもみじか横を見ると、先程時間ギリギリにやって来た金髪の大学生風の男性だった。 その金髪の男性は、こそりと声を潜めてもみじに告げる。 「次、おねーさんっすよ。番号と、名前、名前!」 「あっ、ありがとうございます……!」 もみじは金髪の男性にお礼を言うと、慌てて自分の通過番号と名前を告げる。 混乱してしまい、ぼうっとするなんて。 そんな失態を見せてしまったもみじは、気持ちを切り替えるためにふるふると頭を振って気合いを入れた。 ◇ 最終選考は、スムーズに進んでいた。 どうやらもみじは最後の面談になるらしく、それより前の人達の面談を緊張した面持ちで見守っていた。 面談をする人間は、長机に座る会社の重役達の前にある椅子に座り、彼らの質問に答えているようだった。 大きな声で面談をしている訳ではないので、質問の詳細や、通過者が答える内容の詳細までは聞こえないが、ある程度の質問内容は察せれた。 (……コンテストに応募した動機、今までの活動内容など……当たり障りの無い質問のようね……) 難しい質問はされないようだ、ともみじがほっとしていると、先程もみじの腕をつついて助けてくれた金髪の男性の順番になったようだ。 「──よろしくお願いします!」 金髪の男性は、通過者達の誰よりも大きくて明るい声で椅子に向かっ
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