「もみじさん、すみませんお待たせしました……!」 「──いえ、大丈夫ですよ。えっと……、あの女性、大丈夫でしたか?」 「え?……ああ、大丈夫です!以前、あのお客さんに忘れ物を届けた事があって。それのお礼を言われていたんです」 「──!そう、だったんですね」 どこかほっとしたように笑うもみじに、髙野辺は首を傾げたが、もみじは特にそれ以上何も言わず、2人並んで会社に戻った。 TK株式会社。 「髙野辺さん、私はどこでお待ちしていればいいですか?」 「──え?」 「流石に社長室に着いて行く訳にもいきませんし、どこか休憩スペースなどがあれば……」 「いえ、もみじさんも社長室にどうぞ。荷物があるし、置いて行ってください。帰りは車でお送りしますよ」 社長専用のエレベーターに乗り込む髙野辺は、戸惑うもみじを手招きする。 もみじが乗るまでずっと待っていそうな髙野辺に、もみじは根負けしてエレベーターに乗り込んだ。 ◇ 一方、TK株式会社を飛び出した誠司。 誠司はあの場所にいる気まずさから自分の会社に戻って来ていた。 「──くそっ、くそっ!どいつもこいつも、俺をあんな目で見やがって……!」 車のハンドルを力任せに殴り付ける。 「会社の奴らも、みんな気に食わない……!俺をあんな、嫌悪感丸出しの目で見やがって……!誰のお陰で働けていると思っているんだ……!社長を馬鹿にして、首にしてやるからな!」 実際、そんな事をすれば不当解雇にあたる。 訴えられてしまっては誠司の会社に勝ち目は無い。 だからそんな事は出来ないが、誠司は溜まった鬱憤を吐き出すように車の中で叫び続けた。 「どうして俺だけが悪者扱いなんだ……!既婚者の俺にモーションをかけてきたのは胡桃なんだぞ!?胡桃だって悪い……!それなのにっ!くそっ!」 ごつん、とハンドルに頭を押し付ける。 「……救いなのは、胡桃がSeaだって事だけだな……。Seaの名前を使って、胡桃から搾り取れるだけ取ってやる……。俺の子供だって証拠は無い、万が一腹の子が俺の子供じゃなかったら、ただじゃおかない……!」 誠司は荒ぶる感情を何とか抑えると、息を整えて車から降りる。 駐車場から直接社長室があるフロア直通のエレベーターを使ってフロアに向かう。 すると、社長室の前で秘書の中野がおろおろとしながらスマホを見つめて
Last Updated : 2026-06-03 Read more