アクセルが踏み込まれる。 強烈なGが全身を襲い、背中がシートに叩きつけられた。 タイヤがコンクリートの床を激しく擦り、鼓膜を劈くようなスキール音が地下駐車場に反響する。 車体は弾かれたように前に飛び出し、急勾配のスロープを一気に駆け上がった。 地上に出た瞬間。 視界を暴力的に染め上げたのは、けたたましく回転する赤と青の閃光だった。「包囲網……っ」 思わず声が漏れる。 駐車場の出口を取り囲むように、数台のパトカーが鼻先を突き合わせてバリケードを作っていた。制服警官たちが、パトカーのドアを盾にしてこちらへ銃口を向けている。 止まる気配はない。 千隼の右足が、さらに深くアクセルペダルを床に押し付けた。 エンジンの回転数が跳ね上がり、車内を満たす機械音が悲鳴のように甲高く変わる。「伏せて!」 千隼の怒声。 私は両手で頭を抱え、ダッシュボードの下へ身を屈めた。 直後、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が車内を揺るがした。 凄まじい衝撃。 金属と金属が噛み合い、ひしゃげ、千切れる不快な音が連続して鳴り響く。車体が大きく左へ傾き、右側のタイヤが完全に宙に浮いたのがわかった。「くそっ……!」 千隼の腕が急激にハンドルを切り返す。 タイヤがアスファルトを削り取る焦げ臭い匂いが、エアコンの吹き出し口から一気に流れ込んできた。 ガンッ、と重い音を立てて車体が水平に戻る。 フロントガラスには巨大な蜘蛛の巣状のヒビが走り、視界はひどく歪んでいた。それでもSUVはバリケードを粉砕し、夜の幹線道路へと強引に躍り出た。 背後から、無数のサイレンの音が追いかけてくる。「怪我は!?」「ないわ。あなたは!?」 身を起こしながら叫ぶ。 千隼の横顔は、ダッシュボードのメーターの光に青白く照らされていた。額からの出血が増えている。ワイシャツの袖口は完全に赤く染まり、ハンドルを握る手のひらから、ポタポタと黒い滴がフロアマットに落ちてい
Last Updated : 2026-03-04 Read more