ところが、そこには既に凛華がいて二人で静かに寄り添っていた。二人の親密な様子を見た途端に胸の辺りがちくりと痛んだ気がした。その為にすぐに声を掛けることができずに控室のドアの前に佇んでいた。少ししてビョルンが身体を起こして凛華の方を見て言った。「ありがとう、凛華。もう大丈夫。凛華も疲れてるだろう?そろそろ戻って休んで。」凛華は、目元に力が戻り落ち着きを取り戻したビョルンを見て、ほっとした。「よかった、じゃあ……。」と言って立ち上がりかけた所で、「ビョルン、お待たせ!凛華も一緒?ちょうどよかった。いっぱい買ってきたから一緒に食べよう。少しくらいなら時間あるだろ。」フローデが今戻ったかのように部屋に入って来た。「フローデ。あなたもお疲れ様たったわね。本当に私もいいの?」「もちろん!ビョルンもいいだろう?」「ああ。」3人はそれぞれ好みの飲み物とパンやデザートを分け合って空腹を満たした。一息ついたところでフローデが尋ねた。「ビョルンのママの容態はどうなの?」「腹部の傷は何とか処置をして落ち着いているわ。内臓の損傷部位はそんなに大きくなかったから回復後の後遺症は殆どないと思うわ。でも骨折はそれなりに時間がかかるから当分は入院になると思う。問題は目ね。街灯が壊れてその破片が入っていたの。全部取り除いたのだけど、一つだけ少し刺さっていたのがあってね。視力にかなり影響が出ると思う。今は傷の手当てをしているだけで、見え方については患者さんが目覚めてからになるわ。」「視力が……?」言葉を失うビョルンに凛華が慌てて説明を加えた。「そんなに深い傷ではなかったから、全く見えなくなったりはしないわ。ただ、暫くはお仕事をお休みする事になると思う。」ビョルンの母はこの国の伝統刺繍の技術者だ。作品は何度も見せてもらったことがある。繊細な技術と鮮やかな色彩のとても美しい作品だった。彼の父はその作品を扱うインテリア雑貨の会社を営んでいる。今は商談の為にD国に出張中で、中々戻って来られないらしい。「そうか。今は急ぎの仕事はなかったと思うから大丈夫だ。」「よかった。だったら焦らずに治療に専念してもらえそうね。」その後ビョルン達と別れた凛華は、外科の医師の執務室に向かった。院長に呼び出されたロルフが気になったからだ。ロルフは既に戻っていた。「ロルフ先生、お疲れ様でし
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