「こずえ……結婚を前提に、付き合ってほしい」それは、いつものように貴生さんと食事をしていた時だった。突然、差し出された小さな箱が、ドラマのようにパカッと開かれる。そこには――指輪があった。あの日から変わらず、私は毎週末、貴生さんと食事をしている。そして何故か、今も野宮邸に住んでいる。一週間が経って帰宅しようとした時、麗子様と野宮会長に引き止められたのが始まりだった。貴生さんは毎日帰りが遅く、顔を合わせるのは帰宅後のほんの少しだけ。その代わり、転勤するまでは毎日、麗子様付きで会社まで送迎されていた。Reiko Nomiyaに異動してからは毎朝一緒に出勤し、職場ではいつの間にか“未来の社長夫人”扱いだ。(……今更だけど)私、完全に外堀埋められてるよね?そう思いながらも、麗さんとの別れから立ち直れたのは、間違いなくこの家のおかげだった。何故、みなさんがこんなにも私に良くしてくれているのかは分からないけど……。それでも、ここで過ごす時間に、何度も救われてきた。そして時折崩れそうになる私を、そっと支えてくれたのは──間違いなく、貴生さんだった。指輪を見つめたまま言葉を失う私に、貴生さんが静かに言う。「今は麗が好きでもいい。ゆっくりでいいから、俺と向き合ってくれればいい」……ずるい。強引に見えて、いつも一番大事なところは私に委ねてくる。私は顔を上げて貴生さんを見つめ、ゆっくりと頭を下げた。「ふつつか者ですが……よろしくお願いいたします」その瞬間。「いや……その……まだ一年と少ししか経ってないし……気が早いよな……」そう言いながら、貴生さんは指輪のケースを閉じようとした。──一拍。「……え?」手が止まり、ゆっくりと顔を上げる。「……今、なんて言った?」私は小さく微笑み、指輪ケースに伸ばされたその手にそっと自分の手を重ねた。「こずえ……いいのか?」信じられないという顔に、私は静かに頷く。「私を……野宮の家族にして
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