Masuk受けだと思っていた美人上司が、実は甘い野獣でした。 腐女子の私は、今日も安全な距離で推しカプを見守るはずだったのに――。 女子校育ちのぽっちゃり腐女子・木野こずえは、社内公認の推しカプ「黒鷹×白鳩」を愛でる腐安(ファン)の一人。 余裕と色気を纏うスーパー攻め様・野宮部長と、妖艶で中性的なスーパー受け様・鳩村課長は、誰もが認める理想の組み合わせ……のはずだった。 しかしある朝、目覚めたこずえは、鳩村課長に抱き枕にされている自分に気付いてしまう。 保護のつもりだった白鳩と、最初から狙っていた黒鷹。 勘違い腐女子を巡る、甘くて危険な三角関係が始まる――。
Lihat lebih banyakねぇ……よくドラマで、朝目覚めたら会社のイケメンと朝チュンしてたぁ~ってみるじゃない?
それがもし、自分の身に降り掛かっていたらどうする? 私、木野こずえ(25歳)彼氏いない歴、年齢。 女子校出身の私が、今、まさにその状態なんだけど! しかも、隣で寝ているのが……イケメンじゃなくて、妖艶な美人(♂)だったらどうする? しかも私、下着は──下の一枚だけ。 鳩村課長は、シルクのナイトガウンを着ているが、胸元がはだけて色気全開。 しかも、私をガッツリ抱き締めているじゃない! どういうこと? 真っ青になって固まっていると、上司の手が私のマシュマロボディのお腹を撫でた。 その瞬間──何故か納得した顔をして小さく頷き、そのままスヤスヤ眠り始めた。 待って、待って、待って! 普通、そこは胸でしょう? 何でお腹? 一応、私は女性なのよ! ──って、違う! この状況、何なの? 何故、私はスーパー受け様の白鳩様こと、鳩村課長とベッドを共にしているの? こんなの、黒鷹×白鳩腐安(ファン)にバレたら殺される。 私は心の中で、腐安の心得を復唱する。 ①腐安たるもの、黒鷹×白鳩を遠くからめでるべし! ②腐安たるもの、黒鷹×白鳩に色仕掛けするべからず! ③腐安たるもの…… ダメだ。 冷静に考えられない。 私、木野こずえ。 当事者ではなく、黒鷹×白鳩の壁になりたいと思った朝を迎えていた。翌日、会社に行くと、何故か野宮部長が飛んできた。「こずえ、指輪外せ!」いきなり言われて「え?なんでですか?」と聞いた瞬間、麗さんからLINEが入った。『こずえちゃん、今だけ指輪外しておいて!』鳩がごめんねと謝っているスタンプが飛んでくる。理由はよく分からないけど、私は指輪を外して鞄の内ポケットに入れた。「おはようございます」事務所に入ると、何故か麗さんにべったりくっついている綺麗な女性が見えた。「あなたは、この部署のかた?」「はい」私の頭からつま先まで眺めると、鼻で笑われた。「良かった~。この部署には、麗の好みのタイプが一人もいなかったわ。麗、モデルみたいな人が好きだものね。歴代の彼女、みんな綺麗だったものね」その話を聞いて(そりゃあ、そうだよね)と納得していると「あら、もしかして貴生の彼女?」なんて言い出した。「その服、麗子さんのお店の服よね」事務所内がザワッとして、女性の視線が痛いです。「はぁ?違うだろ。それより、部外者は帰れよ」野宮部長が麗さんのお姉さんを睨んだ。「嫌よ!麗の女を見つけに来たんだから!」そう叫んだ麗さんのお姉さんに「はぁ?麗の女?いるわけないだろ」野宮部長はそう言うと「麗は俺の女だから」そう言って麗さんの腰を抱き寄せると、みんなの目の前で頬にキスをしたのだ。女子社員、全員心のシャッターを切っていたのを感じました!「バカじゃないの!」怒り出した麗さんのお姉さんに、麗さんは俯いて「貴生、みんなの前で……恥ずかしいじゃないか……」と、野宮部長の肩に顔を埋めた。ブラボーです!麗さん、貴生さん!全私がスタンディングオベーションしていると「そんなふうに誤魔化しても、必ず見つけ出すから!」捨て台詞を吐いて、お姉さんは事務所を出て行こうとした。「麗!なにしてるの?さっさと私を家に送りなさいよ!」すると野宮部長が電話をして「あ、お袋?こっちに麗奈が来てるんだわ。撤収よろしく」そう言うと、麗さんをバックハグして「悪いけど、麗は俺のなんで……」と言って、お姉さんにシッシッと手を振る。すると「麗……酷いわ!」と言うなり、突然倒れた。「姉さん!」「麗、麗は私を見捨てたりしないわよね?」慌てて倒れたお姉さんを抱き起こす麗さんに抱きつきながら、そう呟いた。その瞬間、女子社員
「それ、女よ!」その日、仕事終わりに秘書課の小川さんと経理の安川さんに誘われて、ご飯に行ったときのことだった。「女って……お姉さんだから、女性ですよ?」と答えた私に、安川さんと小川さんが同時にコケる仕草をした。「違うわよ! 浮気しているのか、こずえが浮気相手なのか分からないけど、もう一人女がいるのよ!」テーブルを叩き、怒り心頭の小川さん。「待って、ひーちゃん。それは早計すぎるよ」小川さんを宥める安川さん。「で、こずえ的にはどう思うの?」肩で息をしながら、小川さんにそう聞かれた。「私は……れ、彼を信じたいです」そう答えた。「ただ……夜のアレだけの関係みたいになってて、ちょっと嫌かな……とは思ってて」えへへっと笑いながら、重くならないように話したつもりだった。……そう、つもりだったんです。しかしその瞬間、二人の目が同時に据わった。「はぁ? 絶倫ヤバ雄、デートしないくせにやることやってんの?」「はぁ? 絶倫ヤバ雄のくせに、うちらの木野ちゃんをなんだと思ってるの?」二人の顔が……怖いです。実際、実家に帰るようになってから、麗さんが私にひっつく頻度は上がっていて。最近、ソファーに一人でゆっくり座った記憶がない。必ず麗さんの前に座らされて、バックハグされた状態でソファーに座っています。夜も……実家から帰ってきてからは激しいと言いますか……何度か本気で殺されるんじゃないかと思いました。麗さんにとって、私に触れることが精神安定剤代わりだと分かっているものの、やっぱり普通に過ごす時間も欲しいんですよね。「はぁ……」一つ溜め息をつくと、「あ! ごめん。一番傷付いてるのは、こずえなのに……」私の溜め息をどう受け取ったのか、安川さんと、怒涛の絶倫ヤバ雄クレームを言いまくっていた小川さんが、私の顔を見て呟いた。「木
それは、麗さんと食事をしている時のことだった。スマホの着信音が鳴り響き、麗さんは画面を見ると深く溜め息をついた。「ごめん、こずえちゃん。ちょっと席を外すね」「はい」麗さんはスマホに出ると、「はい、麗です。姉さん、どうしたの?」そう言いながら部屋の奥へ歩いて行った。(お姉さん?)この時の私は深く考えず、食事を続けていた。──しかし、この日を境に、麗さんのお姉さんからの電話は頻繁になった。この日も、麗さんにキスされて押し倒された瞬間、家の電話が鳴り響いた。「こずえちゃん、無視してていいよ」そう言われたものの、留守電に切り替わった瞬間。「麗……麗……どうして電話に出ないの? 誰か一緒にいるの?」明らかに泣いている声だった。麗さんは深く溜め息をつくと、「ごめん、留守電切るの忘れてた」そう言ってベッドから起き上がり、サイドテーブルのスマホを手にした。「姉さん、こんな夜遅くに何? ……誰もいないよ。……違う、疲れて寝てただけ」明らかに疲れた表情で会話している。額に手を当てながら、「姉さん、分かったから。もう泣かないで。今週末? それは……」そう言って私を見た。私がジェスチャーで『どうぞ』と伝えると、麗さんは片手を上げて『ごめん』の仕草をする。「分かったよ……帰るよ。どこに行きたいの?」麗さんは優しい声でそう言いながら、リビングへと移動していった。私がうとうとした頃、麗さんはベッドに戻ってきた。そして背後から私を抱き締めると、「こずえちゃん、ごめんね。映画……見る約束だったのに……」ポツリと呟いた。「麗さん? ……大丈夫ですよ。映画なら、まだ上映されたばかりですし、今度観に行きましょう」「本当に……ごめんね」私に縋り付くように抱き締める麗さんに、私は小さく笑って頷くことしかできなかった。──結局、行こうと話していた映画は、観ることが出来ないまま、月日は流れた。
今週、野宮部長と麗さんは二人で仙台の出張所へ応援に行っていて留守だ。私は毎日、麗さんからテレビ電話が来ていたので顔を合わせてはいたけど、事務所はお通夜のようだった。最初こそ「え? 黒鷹×白鳩で出張!? しかも部屋は一つ!? ヤバくない?」と盛り上がっていたが、いかんせん潤いが足りない。「ねぇ、お二人って……いつ出張から戻るんだっけ?」二人が出張に行って三日目には、誰もがそう口にしていた。「あぁ……白鳩様の、あの王子様スマイルが恋しい!」「黒鷹様の、あのオラオラ系なのに仕事となると紳士になるあのギャップ! 見たい~!」皆、まるでゾンビのようになりながら呟いている。お二人の出張が残り二日となった日のことだった。「ただいま戻りました」社内で、あと定時まで残り三十分という時間に、突然麗さんの声が響いた。その瞬間、屍だった女子社員たちの顔に生気が戻った。「鳩村課長? お戻りは二日後でしたよね?」「あぁ、うん。でも……残りは野宮部長がいれば大丈夫そうだったから、先に戻って来たんだ。はい、これ。みんなにお土産だよ」爽やかな王子様スマイルで、麗さんが営業部の古参の先輩にお菓子の箱を手渡した。あぁ……。麗さんがいるだけで、まるで社内に空気清浄機がついたみたいに空気がクリーンになった気がする。そんなことを考えていると、麗さんと目が合った。にっこりと微笑んだ麗さんの目の下には、うっすらとクマが出来ていた。みんなでお菓子を頂いている間に、就業時間の終わりを告げるベルが鳴り響く。麗さんはそそくさと帰り支度を済ませ、女子社員たちからの「あと少しでいいから残って下さい」という視線に見向きもせず帰宅して行った。「白鳩様、やつれていたわね」「目の下のクマ、見た?」そんな皆の会話を横目に、「お先に失礼します」と、私もそそくさと帰宅した。自宅に帰ると、案の定。「こずえちゃん、会いたかった~」と、麗さんが抱きついてきた。「貴生さん、置いて来て良かったんですか?」「はぁ? あいつと一週間も同じ部屋とか、マジで無理!」そう言いながら、麗さんは私の髪をくんくん嗅いでいる。「やっぱり、こずえちゃんがいないと安眠出来ないし」そう呟いた麗さんの言葉に、私はホッとした。じゃあ、今夜は速攻寝落ちですね?と。――そう思ったのに。「……嘘つき~