All Chapters of 腐女子の私、推しカプのはずの美人上司に抱き枕認定されました。: Chapter 31 - Chapter 40

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第三十一話:だから、私は壁です!

その時、野宮部長が言った。 「じゃあ、頬にキスで許す」 「はぁ?」私より先に、鳩村課長が叫んだ。 (なんで鳩村課長が怒るの?)首を傾げていると、 「じゃあ、俺にもキスさせろ! 二回目だから二回な!」と、さらに意味不明なことを言い出した。 「させるわけないだろう!」 「麗、お前が口出すな! これは俺とこずえの問題だ!」 「だったら、こずえちゃんのファーストキスを奪ったのは、僕とこずえちゃんだけの問題だ!」 ……私の頭上で、狼二匹が『ガルル』と威嚇している気配がします。でも待って。私、乙女ゲームのヒロインでも、少女漫画のヒロインでもないんですよ?ただの腐った壁なんです。なんなんでしょう、この“ヒロイン扱い”。 ……解釈違いです。 「貴生さん、麗さん?」ご立腹です。言い争う二人を睨み上げて、言い切りました。 「私のファーストキスがどうとか、頬のキスがどうとか。ぶっちゃけ、どうでも良いです!」二人がぴたりと止まる。 「それより大事なことがあります。お二人は、もう少し腐女子製造メーカーとしての自覚をお持ち下さい!」えぇ。重要案件です。お二人はポカンとした顔で、 「どうでも……」 「良い?」 と呟いた。さすが黒鷹×白鳩コンビ。息ぴったりです。 「はい! お二人は、私たち腐女子に与える供給の尊さを……あまりにも分かっていなさすぎます! いいですか、私はK・A・B・E、壁なんです!」力説する私を、唖然と見つめる二人。 「壁……ねぇ……」野宮部長が呟いたかと思うと、 「じゃあ遠慮なくキスして良いんだな? 壁さんよ〜」と、私の腰を抱いてきた。──が、ベリッと。鳩村課長が私を引き剥がした。
last updateLast Updated : 2026-02-24
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第三十二話:触れたくない想い

「麗さん?」 急に黙り込んだ鳩村課長を見上げると、とても申し訳なさそうな顔をしていた。 「チッ。その程度の覚悟かよ」 野宮部長は吐き捨てるように言うと、 「死ぬ気でかかって来ないなら、邪魔すんじゃねぇよ」 そう言って、私の肩を抱いて歩き出した。 「あの……貴生さん? 麗さんはどうしたんですか?」野宮部長の車へと連れて行かれながら戸惑っていると、鳩村課長が私たちの前に立ちはだかった。 「貴生、ごめん。やっぱり譲れない」そう言ったかと思うと、私の腕を掴んで引き寄せる。そして、私の肩に掛けられていた野宮部長のジャケットを脱がせ、それを本人に突き返した。 「今日は、ずっと貴生が独り占めしていたんだから。帰りは僕に送らせて」そう言って自分のジャケットを脱ぎ、私の肩に掛けると、そのまま腰を抱いて歩き出す。 「???」意味不明のやり取りと、よく分からない展開に戸惑っているうちに、麗さんの車へと到着した。 「こずえちゃん、困らせてごめんね」悲しそうで、どこか寂しげな笑顔に、胸の奥がぎゅっと痛む。私が首を横に振ると、彼は滑らかな動きで助手席のドアを開け、私をエスコートした。その仕草はあまりにも自然で、普段から誰かにこうしてきたのだろうか、と一瞬よぎる。胸の奥が、もやりとした。 ……なんで?そんな自分に、私は小さく首を傾げる。鳩村課長が運転席に座る。エンジンを掛けようとした手を止め、ハンドルに両腕を乗せて、私の顔を見た。 「今日はメイクしてるんだね。お洒落したこずえちゃんも可愛いけど、僕はノーメイクのこずえちゃんが好きだよ」ふわりと微笑まれて言われた、その一言。ドクリと心臓が跳ねる。胸が、きゅっと締め付けられる。見つめ合う私と鳩村課長。なんだろう……この、少女漫画みたいな展開。そう
last updateLast Updated : 2026-02-25
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第三十三話:少しずつ変わり行く関係

「こずえ? お~い、こずえ」あの夜のことを、つい反芻していると、野宮部長が私の顔を覗き込んできた。私はその顔を両手で掴み、「貴生さん、顔近い!」と呟いて、ぐいっと後ろに押す。「こずえ! お前、最近、俺の扱い雑じゃねぇか?」「え? そうですか?」首を傾げると、「ちょっと前までは、キラキラした目で俺を見てたのによ」そう言って、私が運ぼうとしていたサラダボウルを奪い、さっさと並べ始める。「そんなことないですよ。今でも、貴生さんと麗さんは私の推しです」にっこり微笑むと、野宮部長は唇を尖らせた。「じゃあなにか? 推しの顔面を掴んだ挙句、後ろに押し返すのか?」拗ねた口調に、思わず苦笑い。──あの日。私は、麗さんの長~いキスの意味を考えた。考えて、考えて……気付いたら寝落ちしていた。翌朝、少しだけ緊張しながらキッチンに顔を出すと、「おはよう、こずえちゃん」いつもと変わらない、眩しい鳩村課長の笑顔。その瞬間、察した。あれは少し過度だったけれど、鳩村課長なりの“ファンサ”だったのだと。……いやぁ~、焦りましたよ。まさか麗さんが私を? なんて一瞬でも思ってしまった自分を、何度平手打ちしたことか。私のような腐った壁紙を、鳩村課長のような麗しきお方が……なんて。私、私……恐ろしい子!でも、あの日から微妙に……鳩村課長の距離が近い。ちょっと目を離すと、すぐ腰に手を回すし。抱き枕なはずなのに、「こずえちゃん、おやすみ」と、毎晩のように頬にキスをしてくる。……抱き枕って、こんなに甘い仕様でしたっけ?野宮部長は野宮部長で、ソファーでは必ず私を隣に座らせ、肩を抱く。隙あらば頬にキス。お二人とも、隙あらば……です。最初こそ抵抗しましたが、今やもう……慣れま
last updateLast Updated : 2026-02-26
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第三十四話:壁……崩壊

そんなこんなで、私は本来、お二人を見守る“壁”のはずだったのに──気付けば今や、お二人の“壁”になっているような気がする今日この頃。一度、実家に戻る提案もしてみたのですが、速攻で却下されました。きっと、餌付けした子が離れるのが寂しい親の気分なのでしょう。(何せ、鳩村ママですから)そんな生活にも慣れてきた頃、事件は起きた。最近、鳩村課長が実家に呼び出されることが多く、休日は野宮部長と過ごす時間が増えた。そのたびに、野宮部長は私をいろいろな場所へ連れて行ってくれる。普段の自分では体験できないような時間を、たくさん。え? どんな体験かって?カップルシートでプラネタリウムとか。豪華クルージングで、夜景を眺めながらの食事とか。そのたびに野宮麗子様にもお世話になり、大変恐縮しております。いつの間にか、デート中に肩や腰を抱かれても平気になっていまして……。で、我に返りそうになると、「こずえ、俺は?」「壁が好きな変態さんなんですよね?」このやり取りが、もはやワンセット。ある夜、クルージングで真っ暗な海を眺めていると──「なぁ、こずえ……」髪に触れられ、甘い声で呼ばれる。思わず見上げた、その瞬間。唇に、野宮部長の唇が触れた。抱き締められて、胸がどくんと跳ねる。(待って……私は壁なのにぃ~!)完全にパニックになった私は、「貴生さんのキスは、短くて安心しました。麗さんのキスって長いから、窒息しそうになったんですよ」なんて、とんでもない爆弾を投下してしまった。その瞬間。野宮部長の目が、すっと冷えた。「はぁ? あれ以外、あいつ、こずえにキスしたのか?」低い声。しまった、と思った時にはもう遅い。両頬をがっちり掴まれ、逃げ場のないキスが降ってきた。……あ、これ長いやつだ。本気で窒息しかけて、私は野宮部長の腕を叩きまくる。ようやく解放されたと思ったら、「こずえを譲る気、俺にもねぇから!」そう言い放ち、今度は首元に噛みつくようなキス。……あ、食われた。その夜、私は狼に食べられた赤ずきんちゃんの気持ちを、ほんの少しだけ理解したのでした。
last updateLast Updated : 2026-02-27
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第三十五話:麗さんの腹痛の正体は?

その日、クルージングを終えて帰宅すると、鳩村課長がかなり参った様子でソファーに座っていた。「麗さん? 帰っていたんですか」足早に近付くと、ソファーに身体を預け、目元に置いていた手をゆっくりと下ろして私を見た。「こずえちゃんもおかえり。楽しかった?」無理に笑う鳩村課長が痛々しい。すると遅れて野宮部長も現れ「なんだ……麗、随分と疲れてるな」と言いながら、鳩村課長の隣に腰掛けた。「うん……まぁ、いつものことだよ」苦笑いを浮かべる鳩村課長の笑顔が辛そうで、思わず鳩村課長を抱き締めた。「こずえちゃん?」驚く鳩村課長の背中を優しく撫でながら「辛いなら、いくらでも私の胸を貸します!だから、無理に笑わないで下さい!」そう言い切った私の身体を、鳩村課長がゆっくりと押し戻した。「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ」弱々しく笑う鳩村課長に「麗さん、無理しないで下さい!」そう言って、ぎゅっと鳩村課長の頭を抱き締めた。その瞬間、鳩村課長の身体がカッチーンと固まった。(あれ?……どうしたんだろう?)首を傾げて麗さんを見ると、耳まで真っ赤にしている。そして、そっと私の身体を引き剥がし「……本当に大丈夫だから」そう言いながら、前のめりになっている。「麗さん、お腹痛いんですか?」慌てる私に、鳩村課長は片手を私側に向けてストップとジェスチャーした。「少し放っておいてくれるかな? そうしたら落ち着くから」明らかに苦笑いを浮かべる麗さんに、隣の野宮部長が爆笑している。そして私を鳩村課長から引き剥がすと、腰を抱き寄せて野宮部長の膝の上に座らせるじゃない!「の、の、野宮部長、重いですよ」「大丈夫だ。こずえの重みは、心地良い」そう言って、私の肩に顎を乗せた。すると、野宮部長の胸倉を鳩村課長が掴んで引き剥がし「僕の前で、好き勝手させないから!」と、前屈みのまま睨んだ。そんな鳩村課長に野宮部長は再び吹き出して笑うと「どんなカッコイイセリフも、そんな姿じゃサマになんねぇな」と爆笑していた。「麗さん、お腹痛いならお薬持ってきましょうか?」心配して聞いた私に「ありがとう、大丈夫だから。気持ちだけもらうね」と言われた。男の人は、腹痛でも耐えなくちゃならないなんて、大変です。
last updateLast Updated : 2026-02-28
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第三十六話:夢現で見たものは……

その夜、私はいつもの如く、鳩村課長の抱き枕でした。でも……珍しく眠れないみたいで、夜中にそっとベッドを抜け出す気配に、ぼんやりと目を覚ました。遂に……私の抱き枕効果も、薄れてきたのかな?そんな事を考えていると、鳩村課長はほどなくして戻って来た。隣に静かに潜り込みながら、「こずえちゃん? 起こしちゃった?」優しい声が、耳元に落ちる。やっぱり鳩村課長の声は、1/fゆらぎに違いない。聞いていると、不思議と安心してしまう。そのまま声に包まれるように、うとうとと微睡んでいると――野宮部長がふざけて付けた噛み跡に、そっと触れられた。「こずえちゃんは……本当に無防備だよね」ぽつりと零れたその声が、どこか切なげに聞こえるのは……何故だろう。瞼を開けようとしても、どんどん重くなっていく。「ねぇ……僕以外の奴に、こんな跡を付けさせたりしないでよ」低く囁いたかと思うと、首元にチリッと鈍い痛みが走った。……ん?今度は吸血鬼でも現れたの?「麗さん……危ない……吸血鬼が……」寝言なのか、言葉にならない声が零れる。「こずえちゃん?」覗き込む気配。「ふふ、寝言かな?」そう言って、そっと頬に触れる指先。そして――「ねぇ、こずえちゃん。いつになったら、僕のこの気持ちに気付いてくれるの?」震えるような、切ない声。気持ち? ……なんの?意識が、ゆっくりと沈んでいく。その時、手をきゅっと握られた気がした。「そんなに無防備だと、狼さんに食べられちゃうよ」甘く囁きながら、唇が重なる。優しいはずなのに、どこか強い。「こずえちゃんの全部を……」ほんの一瞬、言葉が途切れる。「……僕のものに出来たら良いのに……」重たい本音。何か言おうと開いた唇を、再び塞がれる。長いキス。逃げるでも、拒むでもなく、私はただ受け止めたまま――意識を完全に手放した。***ガバッと飛び起きる。隣では、いつものように鳩村課長が私のお腹に手を回し、穏やかに眠っている。その寝顔は、まるで絵画の聖母マリア様。私は自分の頬をぺちんと叩いた。「こんな清らかな人で、なんつー夢を見てるの、私!」そっとベッドを抜け出し、壁にコツンと額をぶつける。「私は壁! 私は壁!」言い聞かせるように呟いても、――“僕のものに出来たら良いのに”あの声が、頭から離れない。し
last updateLast Updated : 2026-03-01
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第三十七話:嫉妬

「ねぇ、聞いた?」「聞いた聞いた! 白鳩様の恋人の話でしょう?」その日、野宮部長も鳩村課長も外回りで、私は久しぶりに食堂で昼食をとっていた。すると、あちこちのテーブルからヒソヒソとした声が聞こえてくる。なんの話だろう? と首を傾げていると、「こずえ、聞いた? 白鳩様の恋人の話」と声をかけられた。「え? 鳩村課長の恋人?」「あんた最近、こっちでご飯食べないから知らないのよ」そう言われ、苦笑いを返す。「この間の日曜日、総務の秋川さんが見たんだって」(この間の日曜日って……確か麗さんは実家に帰ってた日だよね)「誰を?」「白鳩様を」一瞬、ざわりと胸の奥が騒いだ。「めちゃくちゃ美人と腕組んで歩いてたらしいよ」「え……?」「白鳩様を“麗”って呼んでたんだってさ~。白鳩様の滑らかなエスコートで、二人、車に乗って夜の街に消えてったらしいよ」その瞬間、胸の奥がじわりと冷えた。「こずえ?」固まった私を、小川ちゃんが心配そうに覗き込む。「こずえ、黒鷹×白鳩信者だからショックよね」背中をぽんと叩かれ、私は慌てて笑った。「あ、いや……」すると別の声が飛ぶ。「ねぇ、こずえ。あんた、痩せた?」「え? ……痩せたかな?」エヘッと笑うと、黙っていた渡辺さんが突然叫んだ。「恋か!? 恋したのか!?」「えぇっ、そんなんじゃないよ! 知り合いのエステティシャンの方のモニターになっただけ!」「羨ましい~! 最近綺麗になったって噂だよ? どうやったらなれるの?」テーブルが一気に盛り上がる。「えっと……普段はモニターとかしてなくて。何故か私、気に入られちゃって……」アタフタしていると、「肌も髪も艶々だし、痩せて綺麗になってさ~
last updateLast Updated : 2026-03-02
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第三十八話:悩みと憧れ

今日は麗子様の施術日だ。「貴生、毎月第四日曜日はこずえちゃんを連れて来て」その一言で、私は月に一度、ピカピカに磨かれている。お陰様で身体は引き締まり、鳩村課長の料理で健康体。気付けば10kgも落ちていた。(ゴッドハンド&麗さんの健康食、恐るべし!)鳩村課長は「こずえちゃんのプニプニお腹が~」と嘆いていたけれど、「エアー脂肪で我慢する」と言っていた。(エアー脂肪って、何?)……でも。恋人が出来たのなら。私は、もうお役目御免なのではないだろうか。そう思うと、胸がチクリと痛む。あの夜に見た鳩村課長は、やっぱり夢だったのだと。ガッカリしている自分に、苦笑いしてしまう。すると、いつもは黙々と施術をしている麗子様が、ふと口を開いた。「こずえちゃん、何か悩み?」「え?……あ、いえ」「貴生の母親だと、話しづらい?」そう言われ、言葉を探していると、「大丈夫よ。ここで聞いた話は誰にも言わないから」その一言に背中を押され、私は慎重に言葉を選ぶ。「友達の話なんですけどね……」(バレバレの常套句だ)「なるほどね。実家に帰ると言っていた人が、綺麗な女性と歩いているところを見られた、と。で、その人が彼女ではないかと噂になっている、と」事情を知る麗子様には、当然お見通しだろう。「それで、こずえちゃんはどう思ってるの?」突然振られ、私は正直に答えた。「信じたい気持ちと……もしかしたら、の気持ちで複雑です」「その“複雑”って、何から来ていると思う?」問われ、私は首を傾げる。「ふふふ。まだまだね。その気持ちの意味は、自分で探しなさい」優しく頭を撫でられる。そして静かに言った。「不安なら、本人に聞くのも一つよ。答えを持っているのは、麗だけな
last updateLast Updated : 2026-03-03
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第三十九話:買い出し……じゃないだと?

『コンコン』その日は、ノックの音から始まった。「はい?」部屋のドアを開けると、鳩村課長が立っていた。「こずえちゃん、この後時間ある?」そう聞かれ、私は(買い出しかな?)と思いながら、「はい、大丈夫ですよ」と微笑んだ。「良かった……。じゃあ、すぐ用意するから出掛けよう。リビングで待ってるね」そう言われ、私はドアを閉めた。クローゼットを開くと、麗子様のサロンに行くたびに新しく用意されている、お高いワンピースが並んでいる。(買い出しだしなぁ~)そう思いながらも、麗子様に似合うと褒められたワンピースを手にしている自分に苦笑いする。ふと、(このワンピースを着るのに、下着はいつもので良いのか?)と、自分に問いかけた。答えは――否!たとえ買い出しでも、白鳩様と並んで歩くなら、きちんとしなければ!そう思い、結局、麗子様のサロンで用意されたままの一式を身に付けた。髪を整え、軽くメイクをしてリビングへ向かう。すると――茶色のアウターにワインレッドのインナー。ベージュのボトム。眩しい。「わぁ、こずえちゃん。可愛いね」最近、一泊二日で自宅に帰っている鳩村課長は、直近の麗子様コーデを知らないのだ。「麗子様コーデですけど……」エヘへ、と笑うと、「麗子さんのセンスは良いからね」そう言って微笑んだ。「じゃあ、行こうか」そう言って歩き出す。並んで歩き、いつもの車に乗り込んだ。「今日は何の買い出しですか?」シートベルトを締めながら聞くと、「買い出し?」鳩村課長が首を傾げる。「え?……これから買い出しに行くんですよね?」「……」「え?違うんですか?」慌てる私に、「こずえちゃんは、貴生とはデートするのに、僕とは買い出しだけなの?」ぷくっと頬を膨らませた。ガハッ。何? その可愛いむくれ顔。今、私の全穴という穴から出血しましたが?「そ……そうじゃないですけど」「分かってて可愛い服装してくれたと思ってたのに」唇を尖らせる鳩村課長。……私を出血多量で殺す気ですか?そんなことを考えていると、車は麗子さんのサロンへ入っていった。「いらっしゃいませ、鳩村様。野宮は今接客中ですが……。ご予約ですか?」戸惑うスタッフの皆様に、鳩村課長は笑顔で答える。「あ、今日は洋服を見に来ただけなんだ」(洋服?麗子様のお店っ
last updateLast Updated : 2026-03-05
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第四十話:デート……ですと?

「うん、よく似合うよ。こずえちゃん」ご機嫌な笑顔を浮かべる鳩村課長に、私は戸惑いながら自分の服を見下ろした。「これは……?」今の私は、全身“鳩村課長コーデ”。野宮部長のコーデは甘め。麗子様は、きちんとしていながら少し甘め。それに比べて鳩村課長のコーデは、シックで品のある大人の雰囲気。三者三様の好みなんだなぁ……と思いながら、「あの……今日の服装、気に入らなかったですか?」しょんぼりしながら尋ねると、鳩村課長は優しく首を振った。「今日の服装も素敵だったよ。でもね、僕がコーディネートした服も着てほしかったんだ。迷惑だった?」目をきゅるるんっと潤ませながら、私の手を取り、小首を傾げる。グッハ……。吐血案件です。鳩村課長、その可愛い顔は反則です。ドキドキする胸を押さえていると、「あら!麗じゃない?」奥の扉から、麗子様が現れた。「こんにちは、麗子さん。忙しいだろうから挨拶はいいって言ったのに」苦笑いする鳩村課長に、麗子様はふふっと笑う。「何言ってるのよ。たまには可愛い甥っ子の顔、見たいじゃない?」そう言って、鳩村課長の頭を優しく撫でた。そして、私を見ると、「あらあら……独占欲、丸出しね」小さく笑った。(……独占欲?)首を傾げる私をよそに、二人は普通に会話を続ける。「あぁ、そうだ。売上貢献ありがとうね」「いえ。女性の服のサイズは分からないので、行きつけの麗子さんのお店なら、デザインを選べばいいだけですから」「はぁ……。うちのバカ息子も、麗くらい賢いといいのに」「貴生は……天才肌ですからね。僕みたいな凡人は、貴生に追いつくだけで精一杯ですよ」二人の会話を聞いているうちに、私の腐女子スイッチが入った。(なんか今の会話……嫁姑っぽい!)
last updateLast Updated : 2026-03-06
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