その時、野宮部長が言った。 「じゃあ、頬にキスで許す」 「はぁ?」私より先に、鳩村課長が叫んだ。 (なんで鳩村課長が怒るの?)首を傾げていると、 「じゃあ、俺にもキスさせろ! 二回目だから二回な!」と、さらに意味不明なことを言い出した。 「させるわけないだろう!」 「麗、お前が口出すな! これは俺とこずえの問題だ!」 「だったら、こずえちゃんのファーストキスを奪ったのは、僕とこずえちゃんだけの問題だ!」 ……私の頭上で、狼二匹が『ガルル』と威嚇している気配がします。でも待って。私、乙女ゲームのヒロインでも、少女漫画のヒロインでもないんですよ?ただの腐った壁なんです。なんなんでしょう、この“ヒロイン扱い”。 ……解釈違いです。 「貴生さん、麗さん?」ご立腹です。言い争う二人を睨み上げて、言い切りました。 「私のファーストキスがどうとか、頬のキスがどうとか。ぶっちゃけ、どうでも良いです!」二人がぴたりと止まる。 「それより大事なことがあります。お二人は、もう少し腐女子製造メーカーとしての自覚をお持ち下さい!」えぇ。重要案件です。お二人はポカンとした顔で、 「どうでも……」 「良い?」 と呟いた。さすが黒鷹×白鳩コンビ。息ぴったりです。 「はい! お二人は、私たち腐女子に与える供給の尊さを……あまりにも分かっていなさすぎます! いいですか、私はK・A・B・E、壁なんです!」力説する私を、唖然と見つめる二人。 「壁……ねぇ……」野宮部長が呟いたかと思うと、 「じゃあ遠慮なくキスして良いんだな? 壁さんよ〜」と、私の腰を抱いてきた。──が、ベリッと。鳩村課長が私を引き剥がした。
Last Updated : 2026-02-24 Read more