伏見は音羽の腰を抱き、倒れてしまわないように自分に引き寄せている。 そして、音羽は倒れそうになって咄嗟に目の前の伏見に縋ってしまった。 両手で伏見に抱き着く音羽を楽しげに見下ろしていた伏見は、喉奥でくつりと笑うと更に音羽に身を寄せた。 まるで、音羽の体に覆い被さるようなその行動に、音羽はぎょっと目を見開く。 「随分と大胆だな、玉櫛 音羽──」 「なっ、なん……っ」 伏見の揶揄うような態度に、音羽の顔が真っ赤に染まる──。 音羽は、自分を抱き寄せてくれている伏見から離れようとした。 その瞬間。 「──音羽、何をやっている!!」 公園に、男の声──。 玉櫛 樹、かつては音羽の夫だった男の怒声が響いた。 「──は?樹……?」 音羽は、唖然としたまま声が聞こえた方向に顔を向ける。 伏見は楽しそうに目を細めたまま、まるで樹に見せつけるように音羽を更に抱き寄せた。 音羽と伏見の密着度合いが増した瞬間、樹の瞳に怒りが募るのを、伏見は見逃さなかった。 「こんな真昼間から、こんな場所で……!男と抱き合うなど恥ずかしい真似をするな!」 「ま、まあまあ樹さん。落ち着いて?」 「裕衣!お前は口を挟むな!」 樹を宥めようとした裕衣だったが、樹にぴしゃりと怒鳴られ、裕衣は悔しそうに口を噤んだ。 ガツガツと足音荒く音羽と伏見の元へやってきた樹は、ベンチに座り、未だに抱き合い密着している音羽と伏見を苦虫を噛み潰したように見つめた。 「音羽──お前は、俺の妻だと言う自覚が──」 「やだ、樹さん。今のあなたの妻は私でしょう?音羽さんとは離婚したじゃない?」 樹の言葉が最後まで言い終える前に、すかさず裕衣が言葉を挟む。 また、離婚と言う単語──。 先程、樹の家に行った時に使用人に言われた言葉を思い出した音羽は、伏見から離れて樹に向き直った。 「──そ、そうよ樹!離婚ってどう言う事!?私は、あなたと離婚した記憶は無いわ!離婚届にだって署名していない!」 「……それは」 音羽の言葉に、樹が答えようとした時。 再び裕衣が割って入る。 「音羽さん、1回聞いて分からないの?樹は、犯罪者のあなたとはもう離婚したの。犯罪者の妻も、母親もいらないのよ。離婚届なんて、こっちでいくらでも対応出来るの。あなたはもう、玉櫛家とは何の関係もないのよ」 裕衣が憐れむ
Huling Na-update : 2026-02-27 Magbasa pa