――翌日の土曜日、あたしは久しぶりに目黒の実家へ帰った。正樹さんとの離婚の意思を伝えるつもりだったので、夫婦一緒ではなくひとりだ。いや、お腹の赤ちゃんと二人というべきか。 大智はやっぱりついて来ていない。彼の名誉を守りたいというあたしの意思をちゃんと汲んでくれたのだろう。 「――里桜、おかえりなさい。久しぶりねぇ」 「俺は二ヶ月ぶりくらいか? 一度会社に顔を出してくれたもんな」 リビングで向き合った父と、キッチンで冷たい麦茶を入れてきてくれた母は、嬉しそうに一人娘のあたしを迎えてくれた。 父には一度、〈田澤フーズ〉で顔を見せている。母には電話くらいはしていたけれど、こうして顔を見せるのは結婚式の時以来三ヶ月ぶりになる。 「……ただいま、お母さん、お父さん。昨日は急に連絡してゴメンね。ビックリしたでしょ」 「そんなことないわよ。お母さん、嬉しかったわ。『久しぶりに実家に帰ってもいい?』なんて。――今日、正樹さんは一緒じゃないのね」 「うん。あたしがお願いしたの。『ひとりで帰りたいから、ついて来ないで下さい』って。彼も今日何か予定があったみたいでね、『分かった。ひとりで行っておいで』だって。まあ、ついて来なくて安心したけどね。今日話したかったこと、あの人のいる前では言いづらかったし」 ――昨夜そう言った時、彼がどうしてもついていくと言うんじゃないかと心配だった。でも、快く送り出してくれたのでホッとしたけれど、あたしはちょっと拍子抜けした。 それにしても、彼の予定って何だったん
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