「大智……」「オレならもっと、お前のこと幸せにしてやれる。その自信があるから。……だからお前が早く自由になれるように、できることはやってみるよ。とりあえず、今日からは同じ会社の仲間としてよろしく」「うん。……あ、そうだ。会社では大智のこと何て呼んだらいい? やっぱり社長?」 彼の会社で働けることになったのはいいけれど、会社のトップである彼のことを何て呼べばいいんだろう? 「大智」と名前で呼ぶのは公私混同な気がするし、会社では社長と社員という関係になるわけだし。「いや、社長は……ちょっと堅苦しいかな。ウチは役職とか序列とか何もなくてみんな対等だからさ。この際、お前が元カノだってバレてもいいなら大智でいいけど」「分かった。じゃあ会社でも大智って呼ぶよ」「オッケー。――もうすぐ着くぞ」「うん。どんな会社なんだろ……。楽しみだなぁ。あと、ちょっと緊張する」「そんな緊張することねぇよ。会社の雰囲気は大学のサークルみたいな感じかな。みんな和気あいあいとしてて、賑やかで楽しいよ。男女半々くらいの割合だけど、セクハラするようなヤツは一人もいないし。つうか、いちばんセクハラしそうなのはオレだし」「あははっ」 あたしはまた笑った。でも、結婚前に勤めていた商社で実際にセクハラに遭っていたから、大智に何をされたってセクハラだとは思わない。 むしろ、彼には付き合っていた頃みたいに色んなことをしてほしいとさえ望んでいる。 * * * * ――大智の会社・〈Oプランニング〉が入っているビルは、麹町の一等地の一画に建っている。でも、さすがにまだ自社ビルを構えるほどではないか……。「ウチの会社は、ここの五階1フロアー全体を借りてる。個人で経営してる会社にしてはけっこう広いだろ?」「うん、スゴいねー。あたし、もっと小ぢんまりしてると思ってた」「まぁな。頑張って広い物件借りたんだよ。最初は賃貸料払うだけで精一杯でさ、給料はオレの個人資産から払ってたけど。今は収益も上がってきたからかなり余裕があるんだ」 だからこそ、彼は今このタイミングであたしにここで働かないかと声をかけてくれたんだろう。「勤怠の管理は社員証でやってるから。それがIDで、出勤した時と帰る時にこのリーダーにタッチすること。いいな? これを忘れたら、給料の計算が面倒になる
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