「あ〜あ、日本の空は狭いわな」この先の自分の人生のために、もう一度勉強し直そうと思い立ってずいぶん時間が過ぎた。これまでに出会った社長の仕事を手伝ってみたり、飲食店のバイトやホストもやってみたが……これといったものが見つからず、少し焦る日々。「俺は、組長や龍之介に守られてたってわけだ」まんべんなくいろんなことができるだけに、突出してこれ、というものが俺にはない。龍之介はどうやら、斎藤さんに担ぎ出されてメンズスーツのモデルなんて仕事を始めたらしいが……兄貴に負けはないビジュはあると自信はあっても、俺は多分……短い期間で周りのスタッフと揉め事をおこすだろう。龍之介はああ見えて、コミュ力の高い男だ。人を惹きつけて離さない。モデル業なんて最適じゃないの……!?自宅マンションのソファの上、なんとなく時間を持て余して仰向けにひっくり返ってみる。窓の向こうの空が目に入って……同時に視界に入るビル群が、どうしようもなく狭い日本の空を思い出させた。勢いをつけて起き上がり、窓を開けて外の空気を入れる。極道時代は、どちらかというとシノギ担当で、いわゆるインテリヤクザとして金儲けを主に担当していた。俺も龍之介もそれなりの大学を出ている。学んだ知識が頭の中にあったからなのか、それとも生まれつきか、俺はそれらと商売を結びつけるのがうまかった。「自分で、なんかやってみたいわな……」とはいえ、日本の中心であるこの場所には、味方だけではなく敵もいる。それも相当数……龍之介のおかげで難なく組織を抜けられた俺のことを、良く思っていない輩もかなりいるはずだ。「都会を出るか、それとも日本を出るか……」いつかテーブルに放った1枚の名刺が目に入った。それは、知り合いの社長にもらった名刺で、海外を拠点に活動している会社の名前、そして人物の名前が記してある。「………あ、西門蔵之介と申します。山本常務にご紹介いただいて連絡しました。近くそちらに行く用事がありまして、できたらお会いできないかと……」「えっ?蔵之介さん、ヨーロッパに行くの?!」「………声がデカいよ、桜ちゃん」「ご、ごめんなさい。でもあの、どうして急に?」トレーを胸に抱え、ついに目の前の椅子に座ってしまった。「……仕事はいいのか?お客さんが目で呼んでるみたいだけど?」「あ、それなら大丈夫です。今日は渉くん
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