「どうしてた?あれから……コンビニの駐車場で、龍之介が車から出て行ってから」「私は……」久しぶりに再会した蔵之介が、私の様子を気にかけながら聞いてくれた。……ここは近くの料亭。蔵之介が連れて来てくれた。古風な門構えの落ち着いた佇まいは、あの日……龍之介と泊まった旅館を思い出させて、一瞬……胸が痛む。「私は、突然知らない人に車のドアを開けられて……驚いて声も出なくて」……土砂降りの雨が舞い上げた土ぼこりの匂いが、鼻の奥によみがえる。さっき涙を拭いたハンカチを、無意識に鼻先に当てていた。「腕を引っ張って降ろされて、別の車に乗せられたあと、アパート近くで降ろされました……」何が起きているのかわからず、不安で胸が張り裂けそうだった当時を思い出す。「何の説明もなく龍之介さんと離されて、驚いて不安で……すぐに窓を覗き込んで龍之介さんの姿を探したんです」「龍之介は、コンビニの軒先で俺からの着信を繋いでた。……ちょうど見えない場所にいたんだな」蔵之介は申し訳なさそうに続ける。「あの日、携帯を鳴らしていたのは、俺だ」ふと顔を上げて蔵之介を見ると、眉間にシワを寄せ、苦しそうな表情を浮かべていた。「龍之介も不意打ちをくらって一瞬で意識を失って……屋敷に運ばれてきた。やったのは、志田川の若い奴らだ。桜ちゃんを連れて行ったのも、おそらく」「それは……麗香さんの指示だったんですか?」「いや……こっちで、ちょっとマズい事が起きてな。龍之介を呼び戻さないわけにはいかなかった」そうだったのか……それを聞いて、桜はほんの少しだけ救われた気がした。それは……やはり気が変わって、自分は捨てられたのではないかと、悲しい予想が拭えなかったから。「龍之介は、桜ちゃんを連れてどっか、逃げるつもりだったんだな」「それは……」「いいって……誰に言うつもりもない。龍之介は桜ちゃんに会って、もう気持ちを抑えられなかったんだろ」寂しそうな表情に、わずかな悔しさを乗せる蔵之介。その理由が淡々と語られた。「麗香を抑えとくから、その間に桜ちゃんに会いに行けって言ったのは俺なのに……不測の事態になったら龍之介がどうしても必要だった」「不測の事態……というのは?」「……和哉が、死んだんだ」蔵之介は視線を横に流し、目元に悲しみを浮かべた。「情報屋の警察に引き渡したはずの坂上が
Last Updated : 2026-05-12 Read more