あたしたちのテーブルから厨房までは少し離れているので、直也くんが今厨房でどんな作業をしているのかよく見えない。 「……由衣、そういえばスマホの電源切ってるんだよね?」 お冷を飲みながら厨房の様子をチラチラ気にしていたあたしは、料理の写真を撮る気満々の玲奈にそう訊かれた。 「うん、切ってるよ。だって、幸樹さんにこのお店まで押しかけて来られるの迷惑だし、直也くんと万が一鉢合わせたら修羅場になっちゃうじゃない。他のお客さんや従業員さんたちにも迷惑かかっちゃうでしょ」 幸樹さんはきっと、直也くんがあたしとどういう関係だろうと関係なく、彼に嫉妬心を剥き出しにしてくるだろう。 「う~ん、そりゃそうか……。でもさぁ、今ごろあんたの部屋の前で待ってたらどうする? 由衣と連絡も取れないし、居場所も分かんないしで機嫌がマックスに悪くなってたりして」 「……やだなぁもう、やめてよ! 今、あたしがいちばんしたくない想像だわ、それ」 あたしはその光景を思い浮かべてしまい、露骨に顔をしかめた。 たまにこうして彼の〝監視〟から逃れようとして、スマホの電源を切って玲奈や他の友だち(もちろん女の子だ)と出かけることもあるのだけれど。そういう日に限って部屋の玄関前に彼が待ち構えていて、「どこに行ってた?」「誰と一緒だった?」と根掘り葉掘り詮索される。そしてあたしの答えが煮え切らないと、彼は手を上げてくるの
Última atualização : 2026-02-22 Ler mais