Todos os capítulos de 一緒に美味しい朝ゴハンを。: Capítulo 21 - Capítulo 30

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牙を剥く狂気 PAGE2

 あたしたちのテーブルから厨房までは少し離れているので、直也くんが今厨房でどんな作業をしているのかよく見えない。 「……由衣、そういえばスマホの電源切ってるんだよね?」  お冷を飲みながら厨房の様子をチラチラ気にしていたあたしは、料理の写真を撮る気満々の玲奈にそう訊かれた。 「うん、切ってるよ。だって、幸樹さんにこのお店まで押しかけて来られるの迷惑だし、直也くんと万が一鉢合わせたら修羅場になっちゃうじゃない。他のお客さんや従業員さんたちにも迷惑かかっちゃうでしょ」  幸樹さんはきっと、直也くんがあたしとどういう関係だろうと関係なく、彼に嫉妬心を剥き出しにしてくるだろう。 「う~ん、そりゃそうか……。でもさぁ、今ごろあんたの部屋の前で待ってたらどうする? 由衣と連絡も取れないし、居場所も分かんないしで機嫌がマックスに悪くなってたりして」 「……やだなぁもう、やめてよ! 今、あたしがいちばんしたくない想像だわ、それ」  あたしはその光景を思い浮かべてしまい、露骨に顔をしかめた。 たまにこうして彼の〝監視〟から逃れようとして、スマホの電源を切って玲奈や他の友だち(もちろん女の子だ)と出かけることもあるのだけれど。そういう日に限って部屋の玄関前に彼が待ち構えていて、「どこに行ってた?」「誰と一緒だった?」と根掘り葉掘り詮索される。そしてあたしの答えが煮え切らないと、彼は手を上げてくるの
last updateÚltima atualização : 2026-02-22
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牙を剥く狂気 PAGE3

 ――美味しいゴハンとお酒も楽しんで、ほろ酔いで(とはいっても、あたしはお酒が強いのであまり酔ってはいないのだけれど)マンションへ帰ると、管理人の佐野さんに呼び止められた。何だかイヤな予感しかしない。「一ノ瀬さん、今は部屋に帰らない方がいい」「……えっ?」「君の彼氏が来てるんだよ。それも、ものすごく機嫌悪そうでね」 ……やっぱり予想したとおりだった。あたしがスマホの電源を切っていたので連絡が取れず、位置情報も入ってこなかったので、業を煮やした幸樹さんはマンションまで乗り込んできてあたしを待ち伏せているのだ。「でも、帰らないわけにはいきませんから。あたしは大丈夫です。ご心配頂いてありがとうございます」「そうかい? 何かあったら遠慮なく呼んでおくれ」「はい」 正直怖いけれど、あたしは勇気を振り絞ってエレベーターに乗り込んだ。四階で降り、照明は灯っているものの薄暗い廊下を進んでいくと、あたしの部屋――四〇五号室の前に思いっきり不機嫌そうな顔をした幸樹さんがスーツ姿で立っていた。もしかして、会社の帰りにそのままここへ来て、ずっと待っていたのだろうか? だとしたらとんでもない執念である。というか、晩ゴハンくらいは食べに行っていたかもしれないけれど。「――おかえり、由衣。こんな時間までスマホ切って、どこをフラついてたんだ?」「友だちと食事してたんです。お店では電源切るの、常識でしょう?」 本当は所在確認されるのがイヤで切っていただけだけれど、まぁウソは言っていない。「友だちと? 男じゃないだろうな?」「玲奈とです。柴崎玲奈、同じ部署の。それだけ言えば分るでしょう?」 どこまでも疑り深い彼に、あたしはイライラを募らせる。この人はいつもこうなのだ。「…………ふん、まあいい。ところで、今朝江坂部長と本当はどんな話をしてたんだ?」「ここでは他の住人に迷惑がかかりますから、とりあえず中で話しませんか?」 あたしはやむを得ず、彼を部屋の中へ上げた。けれど、それが間違いだった。「まだ詮索するんですか? 『女性同士の話だから、内容を訊くなんて野暮なことはしないように』って言われましたよね?」「正直に答えろ。本当は、オレに関する話をしてたんじゃないのか?」「…………だったら、どうだっていうんですか?」 そう答えた途端、彼はあたしの腕
last updateÚltima atualização : 2026-02-23
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牙を剥く狂気 PAGE4

 ――しばらく泣いた後、あたしは我に返った。いつまでも泣いている場合じゃない。 「……とりあえず、傷の手当てをしないと。その前に、グラスの破片を片付けないと危ないか」  収納スペースからホウキとちり取りを取ってきて、割れたグラスの破片をキレイにかき集めた。落ちたのがセンターラグの上でなくてよかったなと思う。 その後救急箱を取ってきて、傷口に直接消毒液を噴きつける。傷口にも細かい破片がついているかもしれないので、それを洗い流すためだ。 「うーっ、沁みる……」  消毒液と一緒に流れる血はティッシュペーパーで受け止め、傷口が乾いたところに大判の絆創膏を張り付けた。思っていたよりザックリと切れていたようだ。  手当てが済んだところで、あたしはこのことを直也くんに連絡しなければと思い立った。けれど時刻は八時半。お店のラストオーダーは夜九時らしいので、彼はまだ仕事中だろう。帰ってくるのは十時ごろになるだろうか。 「電話しても、出てくれないよね……」  というわけで、彼にはメッセージを送っておくことにした。  〈直也くん、忙しい時にごめんね! 今日はごちそうさま。  実はね、あの後部屋まで彼氏が来てて、あたしまた殴られたの! 直也くんに話聞いてほしくて……。 まだお仕事中だよね? 帰ってきたら、あたしの部屋のインターフォン鳴らししてほしい。 待ってるね。〉   メッセージ
last updateÚltima atualização : 2026-02-24
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牙を剥く狂気 PAGE5

「……ごめんね、直也くん。なんか直也くんの顔見たら安心しちゃって。あんなギャン泣きするつもりじゃなかったのに」  思いっきり泣いてから、あたしは彼にビックリさせてしまったことを謝った。 でも、彼はただ戸惑っていたわけじゃなく、あたしが泣いている間ずっと優しく背中をトントン叩いてくれていた。まるで泣いている小さな子供をあやすお父さんみたいに。 「謝ることねえよ。それだけ怖い思いしてたんだろ? ……とりあえず俺、上がっていい?」 「うん、どうぞ。……あ、あの人が暴れていったから、部屋の中散らかってるけど」  あたしは何の躊躇もなく、彼を招き入れた。それができるのは、彼には完全に心を許せるからだ。 「ありがとな。じゃあおジャマします……っと、うーわー……。こりゃ、マジでひでえなぁ。派手にやられたもんだ」  彼は部屋の中に一歩足を踏み入れるなり、あまりの惨状に苦笑いした。 「でしょ? あんなことのあった後だから片付ける元気もなかったし、直也くんにこのままの状態を見てもらった方がいいかと思って」 「分かるわぁ。こりゃ、ひとりじゃ片付ける気も失せるよなぁ。つうか、お前の彼氏は怪獣か何かか?」 「ふふっ」  あたしは思わず吹き出した。あの人の暴れっぷりに比べたら、怪獣の暴れ方なんてまだ可愛いものだろう。 
last updateÚltima atualização : 2026-02-25
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牙を剥く狂気 PAGE6

「お前は何も悪くねえよ。ケガさせられた被害者じゃん。だから、間違っても『自分が悪い』なんて思うなよ。今朝も言ったと思うけど」  直也くんはやっぱりあたしを責めずに、「お前は悪くない」と言ってくれた。 「でも、今日は彼のワイシャツの袖に血をつけちゃって。『弁償しろ』って言われた。これはさすがにあたしが悪――」 「はぁっ!? バカじゃねえの、そいつ! そこまでいったら恐喝じゃん。由衣、お前は絶対、弁償する必要なんかねえからな?」  これにはさすがに、温厚な性格のはずの直也くんもブチ切れた。 「うん……。でも、血のシミってなかなか落ちないから……って」 「由衣、いいこと教えてやろうか。血のシミはな、大根があれば簡単に落ちるんだぜ?」 「大根?」 「正確にはその汁、だけどな。昔、家庭科で習ったろ? 大根に含まれてる消化酵素がたんぱく質を分解する、ってやつ」 「ああー……、そういえばそんなの習ったかも。さすがは調理師さんだね」  あたしは正直言って、今この瞬間まで忘れていたけれど。彼が憶えていたのはきっと、専門学校でも教わっていたからだろう。 「料理人ってさ、魚の調理の時とかによく血が飛んでシミになるんだよ。そういう時には、大根の汁でシミ抜く方法ってよく使うんだ」 「へぇー」 「だからさ、お前も明日会社に大根おろしを小さいタッパーとかに詰めて、その場でシャツのシミ抜きしてやったら? 『これで弁償する必要はないでしょ
last updateÚltima atualização : 2026-02-25
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別れに向けて PAGE1

 ――直也くんはその後、部屋の片付けまで手伝ってくれて(仕事で疲れて帰ってきているのに申し訳ない! でもありがとう、直也くん!)、十一時ごろに帰っていった。 『明日も朝メシ食いに来いよ。待ってるからな』  帰り際に、彼はそう言ってくれた。今日は幸樹さんにケガまでさせられて、明日の朝は直也くんと顔を合わせづらいなぁと思っていたけれど、彼と一緒に朝ゴハンを食べて元気をチャージしてからじゃないと会社に行けないとまで思うようになった。これってやっぱり、あたしの心が彼を求めているからなんだろうか?  それに、今日どうして幸樹さんから痛めつけられるはめになったのか、その原因を話さなければ……。直也くんは「お前は何も悪くない」と言ってくれたので、原因を話してもきっとあたしを責めることなく幸樹さんの身勝手さに腹を立ててくれるだろう。 「――そうだ。久しぶりに実家に電話してみようかな」  もう半年も実家に帰っていなくて、電話もたまにしかしないので心配をかけている自覚はあった。母の声を聞けば、きっと弱音を吐いたり泣いてしまいそうだったから。でも、直也くんに「実家を頼ってもいいんじゃないか」と言われたのはいいキッカケだったかな。 『――はい、一ノ瀬です』  実家の固定電話にかけると、三コールで母が出た。 「もしもし、お母さん。由衣だけど、夜遅くに電話してごめんね」  父も母もまだ五十代で、現役の勤め人なので朝が早い。だから、もうそろそろ休もうとしていた頃だったかもしれないけれど。 『由衣! 久しぶりねぇ。長いこと家にも帰ってこないから、お父さんもお母さんも心配してたのよ。元気にしてるの?』 「うん……、元気だよ。仕事も楽しいし、ゴハンもちゃんと食べてるし。ただね&helli
last updateÚltima atualização : 2026-02-26
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別れに向けて PAGE2

『知ってたわよ。あの子ね、ちょうど住んでたアパートの契約が切れたとかでこっちに帰ってきてて。ウチに顔出してくれた時に、お母さんが「由衣は社会人になってから青山のマンションでひとり暮らししてるのよ」って教えてあげたら、「じゃあ、由衣の隣の部屋って空いてるんですかね?」って言って。できたら隣の部屋に引っ越したいなって言ってたんだけど、ホントに隣に入居したのねぇ。「由衣のことは俺に任せて下さい」って』 「そうだったんだ」  直也くんは自分から、あたしの隣人になることを選んだのだ。ひとり暮らしだからと心配して。 『多分、半年くらいあんたが帰ってきてないって言ったからだと思うのよ。そういえば、直也くんって専門学校の寮に入ってる時にお母さんが亡くなったでしょう? お父さんとお母さんも、お葬式に出てきたもの。ただ、「由衣には言わないで下さい」って言われたんだけど。あんたも知ってるみたいね』 「うん。昨夜本人から聞いた。直也くん、なんであたしには言うななんて言ったんだろうね? 水臭いよ」  もし知っていたら、あたしも直也くんのお母さんのお葬式に参列していたのに。 『直也くん、由衣から同情されるのがイヤだったんじゃないの? 男の子だからプライドもあっただろうし、昔から由衣はあの子にとって特別な存在だったから』 「特別な存在……か」  直也くんは幼い頃からずっと、あたしのことが好きだったらしい。好きな女の子から同情されたくないという彼の気持ちも分からなくはない。でも、あたしは教えてほしかった。何だか、あたし一人だけがのけ者にされていたような気がしてちょっと淋しいから。 『というか由衣、そんな暴力的な男じゃなく、直也くんと付き合ってればよかったのにねぇ。あの子なら絶対に由衣のこと大事にしてくれるわよ』 「……だよね
last updateÚltima atualização : 2026-02-26
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別れに向けて PAGE3

 ――翌朝。あたしは朝早くからキッチンで大根をすり下ろしていた。たまたま三日前に魚を焼いて食べていたので、その時に大根おろしを作った残りが冷蔵庫に入っていたのだ。「……よし! シミ抜きに使うだけなら、こんなもんでいいか」 今日のお昼は玲奈と一緒に社食で食べる予定にしているので、今日はお弁当は要らない。というわけで大根おろしを詰めた小さなタッパーだけを保冷バッグに入れ、キレイに手を洗ってからメイクをして、服を着替えた。今日は少し寒いので、ハイネックのニットにロング丈のコットンパンツとジャケットというコーデにした。 昨日の朝とほぼ同じ時刻にショートダウンを羽織り、ショートブーツを履いて玄関を出ると、今日もお隣のインターフォンを鳴らす。『――由衣か? おはよ。鍵開いてるから上がっといで。今、朝メシ作ってっから』「うん、分かった」 ドアレバーを回すと、本当に鍵は開いている。あたしは玄関でブーツを脱いで、用意されていたスリッパに履き替えて勝手に上がらせてもらった。 そういえば、昨日の朝もちゃんとスリッパが用意されていた気がするけれど、これって元々は来客用だったんじゃないだろうか。「おはよう、直也くん。……わぁ、いい匂い!」 ダイニングスペースの椅子に腰を下ろすと、今朝は何やらバターの甘い香りがする。今日は昨日とは違うメニューみたいだ。「おはよ、由衣。 昨夜はよく眠れたか?」「うん。手の傷はまだ少し痛むけどね。今日の朝ゴハンは何?」「今日はフレンチトーストにした。それとソーセージとゆで卵入りのシーザーサラダな。今日はタンパク質多めのメニューにしたんだ」 シーザーサラダのドレッシングにはチーズが入っているし、ゆで卵も入っているならサラダだけでもタンパク質が摂れるということだ。「へぇ、美味しそう! もしかしてケガしてるから?」「それもあるけど、女子って生理とかで貧血起こしやすいだろ? お前も思春期の頃、毎月のように貧血起こしてたらしいじゃん? おばさんから聞いたことあるけど」「あー、そっか。ありがと」 この世の中、女性の生理問題に疎かったり、興味や理解がない男性が多いと言われる中で、直也くんはそういうところをキチンと理解してくれているのはありがたいなと思う。 ちなみに、幸樹さんはまったく理解のない方の人だ。「……あ、そうだ。あたし、
last updateÚltima atualização : 2026-02-27
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別れに向けて PAGE4

「だろ? それ、朝早くから仕込んでたからな。お前には美味い朝メシ食ってもらって、元気に仕事に行ってもらいたいんだよ。昨日みたいなことがあるとなおさらな」 「……うん。ありがと」  今日も彼が作ってくれる美味しい朝ゴハンのおかげで、あたしは一日頑張れそうな気がする。もちろん、ゴハンだけが理由じゃないことはもう、自分でも分かっているし認めるしかないところまで来ているけれど。 「俺、できることならお前の涙は見たくねえんだ。お前にはできるだけ笑っててほしいから」 「それって……、俺の前では泣いてほしくないって言ってる?」 「そうじゃなくて……。お前がもし泣いてたら、その涙は受け止めるけど。お前を泣かせたヤツが許せないって言ってんだよ」 「……あ、そっちか」  彼は今でも、昨夜あたしを泣かせた幸樹さんにご立腹みたいだ。もし直也くんとあの人が街中で鉢合わせとかしてしまったら、一体どうなるんだろう? ちょっと想像するのが怖い……。 「そういや昨夜、なんでお前はそいつにそこまで痛めつけられたんだ?」  ……やっぱり話すしかないのか。でも、直也くんならきっと分かってくれるはず。あたしにはまったく非がないことを。 「……まぁ、そういう約束になってるから話すけど。あたしね、昨日上司に話したのよ。あの人があたしの仕事の手柄を全部横取りしてたこと。『あたしから聞いたことは言わないで下さい』ってお願いして」 「うん。お前は間違ってねえよな」 「でしょ? ところがね、そ
last updateÚltima atualização : 2026-02-28
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別れに向けて PAGE5

「今回のケガは、あたしの不注意でしちゃったようなもんだし。あんな危ない人をホイホイ部屋に上げちゃったあたしが悪いの」 「だから、お前に責任はないって――」 「分かってるよ、直也くんならそう言ってくれるって。でも、今回ばかりはあたしにも責任があるって思ってるから」  直也くんはすかさず反論しようとしたけれど、自分にも非があったと自覚しているあたしはそれを遮った。 「……そっか。お前が自分でそう思ってるなら、俺が否定するのも違うよな。分かった」 「ありがと。でも、それ以外はあたし、悪くないんだもんね? あの人から詫びの言葉一つないからって、腹立ててもいいんだよね」 「そうそう。つうかそいつ、昨日のこと謝って来てないんかい」 「うん。昨日のことどころか、一度もあたしに『悪かった』って言ってくれたことないんだよ? ひどくない?」  あたしは唇を尖らせる。DV男の中には、彼女もしくは奥さんを殴った後に「ごめん」と謝って許してもらおうとする人もいるらしいのだけれど。幸樹さんにはそれすらないのが余計に腹立たしい。 「お前さぁ、そんなヤツとどうしてすぐに別れられねえんだよ? 俺がお前の立場だったら、相手の本性分かった時点でもうムリだけどな」 「そうだよねぇ……。多分、あたしの方から『付き合って下さい!』って言った手前、あたしから『別れてほしい』っていうのは勝手なんじゃないかって思ってるからかも」 「それ、関係なくねぇ? じゃあさ、|
last updateÚltima atualização : 2026-03-01
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