Todos os capítulos de 一緒に美味しい朝ゴハンを。: Capítulo 31 - Capítulo 40

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別れに向けて PAGE6

「だって、シャツを弁償してやるよりはマシでしょ? そこまでやったらあたし、ホンモノのお人好しだよ」「……まあ、確かになぁ」 わざわざ自腹を切って新しいワイシャツを買ってあげるくらいなら、タダでできる大根おろしでシミを抜いてあげる方がだいぶマシだと思う。直也くんもそこは理解してくれたみたいだ。「でも、こうして一緒に朝ゴハン食べてるとさ、なんか直也くんの方があたしの彼氏らしいよね。一緒にいて落ち着くし」「そうか? 由衣にそう言ってもらえたら俺も嬉しい」 幸樹さんと一緒に食事をすることもあるけれど、何だか落ち着かないのだ。特に、お酒が入った時には彼がいつ機嫌を損ねて手を上げてくるかとヒヤヒヤしてしまう。「あたし、もっと早くに直也くんと再会してたらよかったなぁ……。そしたら、間違ってもあんな人を好きになることなんかなかったのに」「で、俺と付き合ってたかもって? 後悔してるんだ? そいつに惚れちまったこと」「まあ、多少はね。あたし、今まで人を好きになって、『こんなはずじゃなかった』って後悔したことなんかなかったの。幸樹さんが初めてなんだよね」 あたしも一応、二十六年生きてきた中で何度かは恋をしたことがあった。幸樹さんに出会う前に交際にまで発展した人もいる。でも、その相手とは割と後腐れのない別れ方をしたので、後悔はなかった。「平気で人に暴力を振るうような人を好きになったの、彼が初めてだったからさぁ」「まあ、相手の本性なんて付き合ってみるまで分かんねえもんな。俺も一応、何人かと付き合った経験はあるけど。結局誰ともうまくいかなかったよ。やっぱり、由衣がいつも心の中にいたからかなって」「…………そっか。直也くんって一途だったんだね」「お前、今ごろ気づいたんかい。俺は小さい頃からずーーーっと、お前一筋だったっつうの。毎年バレンタインチョコくれてたのだって、俺めちゃめちゃ嬉しかったんだからな」「はいはい、分かったから」 直也くん、本当にあたしのこと大好きなんだなぁ。そう思うと何だか心がポカポカと温かくなる。毎年のバレンタインチョコだって、実は申し訳ないけれど義理だった。今なら本命に変わっているかもしれないけれど、そうなるためにはまず、幸樹さんと別れる必要が不可欠だ。あたしには二股をかけるシュミなんてないから。「……あ、ところ
last updateÚltima atualização : 2026-03-02
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とりあえずの安息 PAGE1

 直也くんはその後、あたしに簡単な護身術も伝授してくれた。どんなに屈強な大男でも、手首を捻られると弱いらしい。これで少しは自分の身も守れるかな?「――ねえ直也くん、〈アポロ〉ってランチ営業もしてるっけ?」「してるよ。ランチは予約なしでも大丈夫だからな。つうか、今日来る感じ?」「ううん。今日は社食でお昼食べるつもりだけど、一度ランチでも行ってみたいなぁと思って。昨日と同じく、玲奈も誘って」 ディナー営業の時間と違って、ランチタイムならより気楽にお店に行ける気がする。従業員さんだって、ランチタイムでは顔ぶれが違うだろうし。「そっか。俺は大歓迎だぜ。ただし、彼氏への牽制はキッチリしとけよ?」「うん、分かってるよ。直也くん、今朝も美味しいゴハンありがと。じゃあ、行ってきます!」「おう、行ってらっしゃい」  今日も直也くんが、爽やかな笑顔であたしを送り出してくれた。もしあたしたちが付き合っていたら、これって半同棲的なことになるのかな。イケメンで優しくて、そのうえ料理上手な彼氏って最高じゃない? 本当にもう、どうしてこの人が彼氏じゃないんだろう。(……でも、もう少しの辛抱よ、由衣) あたしは直也くんが好きなんだと、もうハッキリと自覚した。だから、今日紹介してもらったNPO法人にも支援してもらって、最悪は警察にも介入してもらって、幸樹さんと別れることができたら、あたしは直也くんの気持ちを素直に受け止めるんだ。   * * * *「――おはようございます、幸樹さん」 商品デザイン部のオフィスに出社すると、あたしはとびっきりの作り笑顔で彼に挨拶した。その明るさに怯んだ様子の彼を見て、しめしめと思う。直也くんという強い味方ができたあたしが、いつまでも彼にひれ伏していると思ったら大間違いだ。「お……、おはよう。その……由衣、手のケガは大丈夫か?」(よく言うよ。自分がケガさせたくせして、他人事みたいに) 内心ではそう毒づきながらも、あたしは笑顔を崩さない。少しでも怯んだ様子を見せたらこっちの負けだ。「ええ、ご心配なく。ちょっと切っただけですし、大したことありませんから。――ところで幸樹さん、昨日のワイシャツって持ってきてます?」「えっ? ……ああ、持ってきてるけど」「じゃあ、それを持って給湯室で待ってて下さい
last updateÚltima atualização : 2026-03-03
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とりあえずの安息 PAGE2

「ありがと。心配してくれるのはありがたいけど、ホントに大したことないから。直也くんに話聞いてもらって、慰めてもらったからもう落ち着いてるし」 「そっか、それならいいんだけどさ」  こんなに心配をかけるくらいなら、直也くんの帰りを待ってる間に玲奈にも連絡しておけばよかったな。 「ごめんね、昨夜のうちに連絡しとけばよかったよね」 「ううん、いいよ別に。あんた、それどころじゃなかったでしょうよ。幸樹さんに部屋ん中で暴れられて、怖い思いもした後だったんでしょ?」 「うん、まぁ……。正直、そんなこと考える余裕なかったかな」  あの時あたしの頭の中にあったのは、「直也くん、助けて!」という気持ちだけだった。付き合いの長い親友をも差し置いて助けを求めるなんて、彼はあたしの中ですでに誰よりも大きな存在になりつつあるようだ。 「でも、ケガが大したことないならよかったよ。っていうか、その保冷バッグはお弁当? ……じゃなさそうだね」 「うん。今日のお昼は社食で食べるつもりだから。これはねぇ、大根おろし」 「は? 大根おろし?」  キョトンとなる彼女に、あたしは直也くんから遊部教えてもらったシミ抜きの方法を話した。途端に、彼女の口から大きなため息が漏れる。 「…………あんたさぁ、どんだけお人好しなのよ。だいたい、シャツの袖に血が付いたのだって幸樹さんの自業自得じゃん」 「玲奈、直也くんと同じこと言ってる。でもね、あたしあの人にシャツの弁償まで言われたんだよ。言いなりになって自腹で弁償するよりはよくない?」 
last updateÚltima atualização : 2026-03-04
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とりあえずの安息 PAGE3

「な……っ、何だとこの……、いてててっ!」  涼しい顔で繰り返すと、逆上した幸樹さんが掴みかかってこようとした。でも、あたしは冷静に彼の手首を捻ってやった。直也くん直伝の護身術で。 「……っ、わ……分かったよ、分かった! 距離を置けばいいんだな?」 「分かってもらえればいいんです。というわけで、お願いがあるんですけど。あなたがあたしのスマホに入れてる所在確認アプリ、今ここで消してもらえませんか?」 「何だって?」  さっきのが相当痛かったらしい幸樹さんは、食ってかかっては来たものの、さすがにまた手を出すようなことはしなかった。少しは懲りたのかな? 「距離を置くなら必要ないでしょう? っていうか、こういうアプリってお互いの信頼関係があってこそ利用できるものじゃないですか。あたしたちに信頼関係なんてありましたっけ?」  彼があたしの行動を監視したがるのは、あたしのことを信頼していないからだ。それじゃ本末転倒だろう。 「君は……どうしてこう、勝手なことばかり……」 「たまにはあたしの思いどおりにしてくれたっていいでしょう? いつもはあたしばかりあなたの思いどおりになって、あたしの思いどおりにしてくれたことなんて一度もないんですから」 「…………っ」 「いきなり『別れて下さい』って言われるよりはマシでしょう? これでもあたし、譲歩してる方なんですよ」  正論でまくし立てると、彼はぐうの音も出ない。今回ばかりは白旗を揚げた
last updateÚltima atualização : 2026-03-05
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とりあえずの安息 PAGE4

「――ただいまぁ」 意気揚々とオフィスに戻ると、玲奈が隣のデスクからこっそり声をかけてきた。「どう? シミ抜きはうまくいったの?」「うん、もうバッチリ。そのついでに、『しばらく距離を置いてほしい』って言って、所在確認アプリも消してもらった」「あー、なるほどね。それで幸樹さんがあの仏頂面かぁ」 ご機嫌なあたしとは対照的に、幸樹さんは眉間にぶっといシワが刻まれた思いっきり不機嫌な顔をしている。あたしの方から『距離を置こう』と言われたことがそうとう不本意だったらしい。「幸樹さん、あくまでもあたしを服従させるつもりだったのに、あたしに主導権を握られたことが気に入らなかったみたいね。彼のプライドが許さなかったのかも」「ああ、そうかもねぇ。彼、一年前にこの部署に来る前はマーケティング部にいたでしょ? その頃にあたしたちより一年先輩の営業事務の女子社員と付き合ってたらしいんだけど。その彼女も彼からのDVに耐えかねて会社辞めちゃったらしいんだよね」 玲奈は顔が広いので、そういう情報にはけっこう精通しているのだ。ちなみにこの「顔が広い」というのは、男性からモテるというのとほぼイコールの意味である。「へぇー……。あたし意外にも、あの人の被害者がいたんだ」「うん。もしかしたら他にもいるかもね。その点、あんたは強いよ。彼からどんなにひどい目に遭わされても、会社辞める気だけはないんだもん」「それはさ、就活の時にここ一社だけに狙いを定めてたから。どうしても入りたくて入った会社なのに、たかだか一人の社員から迷惑かけられたせいで辞めるなんてもったいなくない?」「まぁ、そうよねぇ。好きで始めた仕事なのに、後から引っかき回されるのも癪だしね」「そうそう。それに、あたしには強い味方がいて、ちゃんと心の休まる場所もあるから大丈夫なの」 それすなわち、どちらも直也くんのことだけれど。玲奈はすぐにそれが誰のことを言っているのかピンと来たようだ。「なるほど、そういうことね」「うん、そういうこと。さ、仕事仕事!」 ちょうど始業のチャイムが鳴ったところだ。あたしたちは仕事道具であるタブレット端末やパソコンの電源を入れた。 あたしたち商品デザイン部の仕事は文字どおり、この会社から販売されている雑貨商品のデザインをすることだ。とはいってもデザイナーと呼ばれる
last updateÚltima atualização : 2026-03-06
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とりあえずの安息 PAGE5

「花柄……は女子受けはいいけど、男性はちょっと手に取りにくいか。可愛いは可愛いけど」  玲奈の呟きで、あたしは閃いた。 「花だけじゃなくて、ボタニカル柄はどうかな? それもゴテゴテしたやつじゃなくて、さりげない感じの。それなら派手すぎないし、性別を問わず取り入れやすいんじゃない?」 「ああ、いいかもね。それなら一つの商品の中でもバリエーション増やせるから、買う側も選ぶ楽しみができるよね」 「でしょ? あたし、さっそくそれでデザイン考えてみる」  思い立ったら即行動。あたしはさっそく、植物をモチーフにしたデザインをいくつか描いてみる。 それにしても、不思議で仕方がない。幸樹さんには絵心というものがまったくないし、元々はデザインと無縁の部署にいたというのに、どうして商品デザイン部に異動してきたんだろう? もしかして、さっき玲奈から聞いた元カノへの暴力問題が原因で左遷されてきたとか? だから自分がデザインで役立たずな分、優秀なあたしのデザインを横取りして手柄を上げたがっているのかも。そう思うとしっくりくる。……まあ、デザイン部には提案書や企画書を作成する仕事もあるにはあるので、そちらでは彼も役に立ってはいるのだけれど。 「……わぁ、やっぱり由衣って絵うまいね。いいんじゃない? その柄。シンプルだけど温かみもあって可愛い」 「ありがと。そういう玲奈は、どんな柄にするつもりなの?」 「う~~~、それ訊かないでよ。あたし、あんたほど絵うまくないんだから。一緒
last updateÚltima atualização : 2026-03-07
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とりあえずの安息 PAGE6

「多分、あたしのことそうやって叱ってくれるの、玲奈と直也くんだけだと思う。……直也くんにはさっきのこと言ってないけど」「直也さんだってきっと、由衣のさっきの言葉聞いたらあたしとおんなじこと言ってたと思うよ」「……だね。あたしもそう思う」 あたしのことを本当に心から心配してくれている彼だからこそ、叱咤してくれそうだ。「……で? とりあえず幸樹さんと距離を置けることになったとしてよ。その間に直也さんと付き合い始めるっていうのは、あんたとしてはアリなの? ナシなの?」「……えっ? う〜ん、それはナシかな」 あたしの選択のさらに先を行く質問をしてきた玲奈に、あたしは少し悩みながらも答える。「なんでよ? 彼ならきっと、由衣のこと大事にしてくれるよ?」「……しっ! 玲奈、ちょっと声大きいから! 幸樹さんに聞こえたらどうすんの!?」 玲奈はだんだん興奮してきたのか、声のボリュームが少し思う大きくなった。あたしは慌ててそんな彼女をたしなめる。「あ……、ごめん!」「だから、よ。直也くん、あたしから『付き合おう』って言ったら絶対に即オッケーしてくれると思うの。だからこそ、あたしは幸樹さんのことでちゃんとケジメつけてから彼と付き合いたいんだ」 距離を置くということは、事実上幸樹さんとの関係は続くということ。そのうえで直也くんとも付き合い始めたら、二つの恋愛関係が一時的にでも同時進行してしまうことになるのだ。 あたしはたとえ一時的でも、二股をかけるようなことはしたくない。それはどちらの相手に対しても不誠実だと思うからだ。――まあ、別れる予定の幸樹さんにまで誠実である必要があるのかどうかは疑問だけれど。「なるほどねぇ。由衣は真面目だね」「えっ、そうかなぁ?」「あたしなら、今カレと距離を置くって決めた時点でもう次の恋に走るけどね」「……玲奈って今、彼氏いたっけ?」 彼女はあたしを含めた他人の恋愛事情には首を突っ込みたがるわりに、こと自分の恋愛関係となると奥手でなかなか彼氏ができないことが悩みらしいのだ。「いないけど! もしあたしが由衣とおんなじ立場なら、っていうたとえで言ったの」「ああ、なぁんだ。一瞬、『いるならなんで教えてくれなかったの? 水臭い!』って思っちゃった」 それはあたしの早合点だったけれど。今
last updateÚltima atualização : 2026-03-08
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茶話会と次の恋 PAGE1

「――ねえ、玲奈。あたし気づいちゃったんだ、自分の気持ち」「ん?」 お昼休み、社食で玲奈と仲よくボロネーゼパスタを食べながら、あたしは彼女に正直に自分の心の中を打ち明けた。 ウチの会社の社員食堂は外部委託ながら、メニューも豊富でしかも低価格。それでいてどれも美味しいのだ。「あたし、直也くんのこと好きみたい。だからこそ、中途半端な状態で彼と付き合いたくないんだ。ヘンに期待させて、彼のこと傷つけちゃいそうで」 幸樹さんとこのまますんなりと別れられるとは思えない。泥沼に陥る可能性だってある。その時に直也くんとの関係も同時進行していたら、あのまっすぐで優しい彼のことまで巻き込んでしまう。あたしにはそれが耐えられないのだ。「……なるほど。やっぱりあんたは真面目だよ。そういうの、由衣らしいね」 あたしの今の素直な気持ちを聞いた玲奈は、フフッと小さく笑った。   * * * * ――そして日曜日。この日も朝ゴハンは直也くんの部屋で食べさせてもらって(今日のメニューはチーズオムレツとソーセージとマカロニサラダだった)、茶話会の会場にもなるという、渋谷の〈止まり木〉本部へ向かった。 茶話会は十一時からだったので、かなり早く渋谷に着いてしまい、時間まではウィンドウショッピングを楽しみながら街中をブラブラ歩いた。 所在確認されないって、こんなに身軽だったんだなぁ。今までは街歩きをしたくても、幸樹さんから監視されていると思うと息が詰まりそうであまり楽しめなかった。あたしは今、やっと手に入れた自由を心から楽しむことができているのだ。それもこれも全部、直也くんのおかげだ。 十一時少し前になって、あたしはようやく〈止まり木〉の本部が入っている四階建ての雑居ビルを見つけた。お目当ての場所は、この建物の二階に入っているらしいとNPO法人のウェブサイトで確認済みだ。ちなみに、茶話会は飛び入り参加も歓迎らしい。 「――あの、今日時十一時からの茶話会に参加したいんですけど……」 受付に座っている四十代くらいの女性に、勇気を振り絞って声をかけた。この人が、この団体の代表である小野田さんらしい。「はい。ようこそ、〈止まり木〉へ。――茶話会に参加されるんですね? お名前を伺ってもよろしいですか?」「一ノ瀬由衣です。ここのこ
last updateÚltima atualização : 2026-03-09
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茶話会と次の恋 PAGE2

「――みなさん、こんにちは。今月も茶話会の日がやってきました。こうしてまたみなさんとお会いできて、わたしは大変嬉しく思います」  代表の小野田さんが挨拶をすると、あたし以外の女性たちからたちまち拍手が送られた。今日ここにいるのは、レギュラーとまではいかなくても何ヶ月もここに通っている人たちばかりで、飛び入り参加者はあたしだけみたいだ。 年齢層はざっと見た限り、二十代から三十代が多い。中にはまだ十代の子もいるかもしれない。 「さて、今回は飛び入りで茶話会に参加して下さる方がいらっしゃいます。こちらにいる、一ノ瀬由衣さんです」 「みなさん、初めまして。一ノ瀬由衣といいます。年齢は二十六歳で、雑貨メーカーで商品デザインの仕事をしてます。よろしくお願いします」  こうして自己紹介をしていると、まるで転校生か会社に中途採用で入った人みたいだ。実際には、あたしは転校した経験もないし、新卒で今の会社に入って転職したこともないのだけれど。 「ありがとう、一ノ瀬さん……いえ、『由衣さん』とお呼びしてもいいかしら? ここにいる人たちはみんな、下の名前で呼び合っているの。わたしのことも、『史絵さん』って呼んでくれて構わないから」 「分かりました、史絵さん。大丈夫です」 「そう。それじゃ、由衣さん。あなたは絵美さんの隣にどうぞ。彼女は由衣さんと年齢も近いから、話しやすいと思うわ」 「由衣さん、私の隣にどうぞ」 「はい、ありがとうございます」  絵美さんと呼ばれたストレートのロングヘアーの女性が、あたしのために隣の椅子を引いてくれる。あたしは遠慮なくそこに座らせてもらうことにした。
last updateÚltima atualização : 2026-03-10
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茶話会と次の恋 PAGE3

「義務感? っていうと、ご実家が医療機関だからってこと?」「うん。両親がね、将来的にはわたしに婿を取って、クリニックを継いでほしがってるみたいで。わたしは看護師っていう仕事を辞められなくなっちゃったの。……まあ、この仕事好きだし、辞めるつもりはないんだけどね」 親の期待に応えて看護師を続けているなんて、絵美さんは尊敬に値する人だ。でもイヤイヤではなく、好きで続けているというのだからすごい。「でも彼氏が……、『俺と結婚したら、仕事辞めて家庭に入れ』って。『お前の家に婿入りはしない。俺の家の籍に入ってもらう。それが常識だろ?』って言ってて。わたしが『それは困る』って言ったら暴力振るってくるの。多分、わたしの方が自分より収入がいいもんだから、それが気に入らないんだと思う」「ああ~、なるほどねぇ。男ってみんな、何故かムダにプライド高いよねぇ。あたしの彼氏もそうなの。おんなじ部署の先輩なんだけど、あたしの方が仕事できるから、それが気に入らなくてあたしの手柄、横取りして自分のものにしちゃうんだよ。さすがにガマンならなくて、上司に報告した」「えー? 由衣さん、強いね」「そうかな? そんなことないと思うけど」 それはあたし自身が強いからじゃなくて、あたしには直也くんという強くて頼もしい味方がいるからだ。「そうだよ。それにオシャレだし羨ましいな。DV受けてると、服選びに苦労しない? 肌の露出したら、アザとか傷痕とか気になっちゃって」「確かにね。あたしも普段はパンツばっかりなの。スカートなんてもう半年ぶりくらいに穿いたよ」 今日のあたしのコーデは、タートルネックのニットにチェック柄のロングスカート、黒のタイツに茶色のショートブーツ、そして普段来ている白のショートダウン。 スカートを穿く時には濃い色のタイツを合わせれば、脚の傷痕やアザの跡も目立たなくなるんだと今日初めて気がついた。それなら、明日から出勤の時にもスカートで行ってもいいかなと思うけれど、そうすると幸樹さんがうるさいのだ。「他の男に媚びている」とか何とか。 そのことを絵美さんに話すと、彼女はひどく驚いてから、「わたしたちって似た者同士だね」と言った。「お互い、面倒な彼氏を持って大変よね」「そうだね。でもね、あたしは数日前から彼氏と距離を置
last updateÚltima atualização : 2026-03-11
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