「だって、シャツを弁償してやるよりはマシでしょ? そこまでやったらあたし、ホンモノのお人好しだよ」「……まあ、確かになぁ」 わざわざ自腹を切って新しいワイシャツを買ってあげるくらいなら、タダでできる大根おろしでシミを抜いてあげる方がだいぶマシだと思う。直也くんもそこは理解してくれたみたいだ。「でも、こうして一緒に朝ゴハン食べてるとさ、なんか直也くんの方があたしの彼氏らしいよね。一緒にいて落ち着くし」「そうか? 由衣にそう言ってもらえたら俺も嬉しい」 幸樹さんと一緒に食事をすることもあるけれど、何だか落ち着かないのだ。特に、お酒が入った時には彼がいつ機嫌を損ねて手を上げてくるかとヒヤヒヤしてしまう。「あたし、もっと早くに直也くんと再会してたらよかったなぁ……。そしたら、間違ってもあんな人を好きになることなんかなかったのに」「で、俺と付き合ってたかもって? 後悔してるんだ? そいつに惚れちまったこと」「まあ、多少はね。あたし、今まで人を好きになって、『こんなはずじゃなかった』って後悔したことなんかなかったの。幸樹さんが初めてなんだよね」 あたしも一応、二十六年生きてきた中で何度かは恋をしたことがあった。幸樹さんに出会う前に交際にまで発展した人もいる。でも、その相手とは割と後腐れのない別れ方をしたので、後悔はなかった。「平気で人に暴力を振るうような人を好きになったの、彼が初めてだったからさぁ」「まあ、相手の本性なんて付き合ってみるまで分かんねえもんな。俺も一応、何人かと付き合った経験はあるけど。結局誰ともうまくいかなかったよ。やっぱり、由衣がいつも心の中にいたからかなって」「…………そっか。直也くんって一途だったんだね」「お前、今ごろ気づいたんかい。俺は小さい頃からずーーーっと、お前一筋だったっつうの。毎年バレンタインチョコくれてたのだって、俺めちゃめちゃ嬉しかったんだからな」「はいはい、分かったから」 直也くん、本当にあたしのこと大好きなんだなぁ。そう思うと何だか心がポカポカと温かくなる。毎年のバレンタインチョコだって、実は申し訳ないけれど義理だった。今なら本命に変わっているかもしれないけれど、そうなるためにはまず、幸樹さんと別れる必要が不可欠だ。あたしには二股をかけるシュミなんてないから。「……あ、ところ
Última atualização : 2026-03-02 Ler mais