しかし、コハクは生きた。はたしてコハクを支えたのは、まもなく出会った親友の存在だった。その男は、やたらとモテるイケメンで、女にだらしない男だった。なのに不思議と憎めない同級生、ハヤテ。彼は良い意味でも悪い意味でも拘りのない男で、周りの目など気にすることなくコハクをイジメから救った。後になってコハクが「あの時なんで助けてくれたの?」と訊いた時、ハヤテから返ってきた答えは「女みたいに可愛い顔してるから」というものだった。本音なのか照れ隠しなのか判然としないが、コハクを救ったことは紛れもない事実だった。それからほどなくして、コハクにもうひとつ、良いことが起こる。本当の意味で新しい家族となってくれる家に、迎え入れられたのである。それは遠く海外に在住していた従姉妹の家族で、コハクの両親が存命中には会う機会もなかった。だが、そのときコハクが住んでいた同市内に帰国・転入して来たことをきっかけに、彼らはコハクの現状を知った。そしてわざわざコハクの元まで迎えに来てくれたのだった。最初はコハクにも抵抗があった。それまでのことがあったから。そんなコハクの心をやさしく解きほぐしてくれたのは、従姉の杏奈だった。彼女はコハクを本当の弟のように想ってくれて、その想いはコハクにも確かに伝わった。いつしかコハクは彼女のことを「アン姉」と呼ぶようになった。高校を卒業する頃には、暗い過去などは微塵も感じさせないくらいコハクは明るさを取り戻していた。ハヤテと杏奈のおかげだった。大学に入ってからは、心置きなく大好きな女装やコスプレに興じることもできるようになり、コハクは自分らしく生きられるようになった。ちなみに、コハクが自らアレンジして作った衣装を着て得意な料理を振る舞うという「コハクの女装キッチン」は、仲間内ではちょっとした評判になっていたという。コハクの人生はまさにこれからだった。青春もまだまだこれからだった。これからだったのに......死んでしまった。修羅場に巻き込まれた挙句の刺殺。しかもそうなる原因を作った張本人が、かつてコハクをイジメから救った親友だったというのは、人生の皮肉としか言いようがない。いずれにしても、コハクにはまだまだやりたいことがたくさんあったし、離れがたい大切な人達もいた。どれもがかけがえのないモノだった。それらのことを思うと......胸が張り裂ける想い
آخر تحديث : 2026-02-13 اقرأ المزيد