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ep51 協力

「そっか、遠い親戚だったんだね」すべてが判明し、コハクは普段通りの笑顔を取り戻した。エリザ・グレーアムは、クロー・グレイシャの遠縁に当たる人物だった。「私とクローは、昔から何かと協力し合ってきたの。貴族には貴族ならではの様々な事があるから」エリザの笑顔も柔らかくなった。本当にクローとは親しいようだ。そんなクローの婚約者だからこそ試すような態度をとったんだな、とコハクは合点がいった。「コハク」隣に座っているクローの視線がこちらへ向く。「今後、私たちはエリザにも色々と協力を仰ぐことになる」「うん」「差し当たっては魔法大学」「魔法大学?」「ああ」クローの視線が向かいに座るエリザへ移される。「私はクロー・グレーアムとして、魔法大学へ赴任することになる」「身分を隠すって言ってたもんね。それについてエリザさんにも協力してもらうと」コハクはふむふむと頷く。「まったくの架空よりも効果的なんだ。虚偽の中に事実が混ざると、より嘘だとわかりづらくなる。エリザの協力があれば偽装もほとんど完璧な形になると言っていい」「なるほど。あっ、そういえばボクはどうなるの?」「コハクには魔女の末裔であることを隠してもらう。ただ、マギアヘルム出身ということは隠せないが」「どうして?」「それはね、コハクちゃん」エリザが人差し指を立てた。「マギアヘルム出身だということが付加価値となって特別入学が許可されたことになっているのよ。これは周りの学生たちを納得させる材料にもなるの。だから致し方ないのよ」「それと」クローが付け加える。「名前は少しだけ変えてもらう」「コハクじゃダメなの?」「コハクは問題ない。念のため、コハク・インフェスと名乗ってもらう。一般社会ではインフェルドと名乗っても問題ないが、何せ魔法大学という専門機関だ。そこは慎重になっておこう」 「うん、わかった」コハクはグッと拳を握って見せた。昨日までは魔法大学と聞いて驚くばかりだったが、徐々に楽しみな気持ちが芽生えてきていた。それに大学生活は、クローとの距離を縮める良いきっかけにもなるかもしれない。「ではコハク」クローが会話を締めるようにこちらへ体を向けた。「これから私とエリザには別の話がある」はい、と頷いてからコハクはすっくと立ち上がった。「エリザさん、ボクはこれで失礼します」「今日は会えて嬉しかったわ。コハ
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ep52 意味

彼女はもう一度、入り口の方を見て、コハクがいないことを確認する。「エリザ?」とクロー。「私が何を言わんとしているのか、わかっているでしょう?」エリザはクローの蒼い瞳をじ〜っと見つめる。「ああ」クローは静かに答える。「わかっている」「あのコハクって娘、中々カワイイし、悪いコでもなさそうね」「そうだな。まだ知り合って短いが、コハクは素朴で純粋な女...だと思う」「そんな娘を、あなたはどうするつもりなの?」「どうするつもりも何も、ルーの病気を治すために力を貸してもらう...」「そうじゃない」エリザが遮るように言う。「近い将来、正式に妻として迎え入れるかどうかと訊いているのよ」「マギアヘルム領主は、コハクを連れていくにあたり婚約を条件とした」「だからそういうことを言ってるんじゃない。ハッキリ答えなさい」「というと?」「ハァー、これだからあなたって男は......」「......」「あなたの気持ちはどうなのかって訊いているの」「気持ち......」「私の見立てでは......」エリザは腕組みをする。「コハクちゃんは、まんざらでもなさそうよ?」「そう...だろうか」「気づけないのか、気づかないようにしているのか、クーちゃんの本音はわからないけれど」「......」「私はいつだってクーちゃんとルーちゃんの味方よ。それは変わらない」「感謝している」「だからこそ、口を挟まずにはいられないの」「わかっている」「クロー・グレイシャの妻として迎え入れることが何を意味するのか、改めて言うまでもないだろうけれど」「わかっている」「それだけルーちゃんを救うために必死だということは理解できる。私だって応援しているし協力も惜しまない」「ああ」「でも、今回のように一人の女性を婚約までして連れてくるとなると......少なくとも、クーちゃんはそういうことをする男ではないと思っていたわ」「コハクの力を見て、確信のようなものを感じたんだ。そしてこの機会を逃したら、もうルーのことを救ってやれないんじゃないかと、そう思ったんだ」クローはあくまで真剣だった。軽はずみな気持ちは一切うかがえない。「とにかく......」エリザは大きく吐息をついた。「しっかりと考えているならいいわ。クーちゃんがいい加減な男だとは思っていないわ」「ああ」「もっ
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ep53 魔法授業

  【9】エリザが訪問した日の翌日からだった。クローの日常業務の合間を見て、コハクは彼から魔法を習うことになった。言うまでもなく魔法大学へ通うための準備だ。「コハクは深焔の魔女の娘だから、炎魔法が得意なんだよな」「うん、そうだと思う。実際、ワイバーンを炎で撃退したしね」クローによる魔法授業は毎日午後の一時間、屋敷の外の庭広場で行われた。ここなら万が一のことが起こっても器物損傷の心配もない。「では、始めるか」クローによる魔法授業が開始する。「お、お願いします」コハクは最初、緊張していた。色々な意味で不安があったからだ。ちゃんと魔法を身につけられるだろうか。また炎を暴走させてしまわないだろうか。クローをがっかりさせないだろうか......。しかし、コハクの不安がただの杞憂に終わるまでに、たいした時間はかからなかった。まず第一に、コハクは異常なほどに飲み込みが早かった。確かに前世でも器用だったし人一倍物覚えは良かった。つまりはそのセンスが、魔法という未知なるものにまで遺憾なく発揮されたのである。「記憶を失くしてしまったとはいえ、さすがは伝説の魔女の娘だな......」とクローも舌を巻くほどだった。もっとも、コハクの学習を一番に助けたことは、実はそういうことではない。何よりも、クローの指導が懇切丁寧だったことが大きい。クローは、基礎的なことから実にわかりやすく教えてくれた。言葉による説明はもとより、文字通り手取り足取り教えてくれたのだ。「もっと力を抜いて......そうだ」「う、うん」時には息のかかる距離まで接近してきて体で説明してくれた。普段は引き締まっていて細身に見えるクローの身体も、密着してみると確かな男らしさを感じる。「コハク? どうした?」「ううん、な、なんでもないよ!」コハクは自らの胸の鼓動を感じながらも、一生懸命に魔法授業に取り組んだ。楽しくて、ドキドキして、でもやっぱり楽しくて、毎回あっという間に時間は過ぎた。いっそのこと、このまま二人きりの魔法学校がずっと続けばいいのに......などと考えてしまったことは一度や二度ではない。そうしてその日のクローの魔法授業が終わると、コハクはルーの部屋に訪れる。それは自然と決まった毎日のスケジュールだった。「コハク、それはね?」とルーは魔法について語り出す。そう。ルーは病に冒される
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ep54 お願い

ある日、またいつものようにクローの魔法授業のあと、コハクがルーの部屋へ訪れた時のことだった。 「魔法大学入学まで、あとわずかだね」ルーは窓際まで車椅子を動かしていくと、外を眺めた。この日はクローの都合で魔法授業の時間が繰り下がったため、空はすでに赤みがかっていた。「クローとルーのおかげで、今は不安より楽しみが勝ってるよ」コハクもルーに連れ添って窓際に立った。斜めに射し込む夕陽が顔にかかってくる。「僕は不安だけどね」「えっ?」コハクは一驚してルーの顔を見る。ルーは変わらず窓の外に目をやったまま。「魔法大学に行けば、若い人たちがたくさんいるでしょ?」「それはそうだね.....?」コハクは話の意図がわからず語尾が疑問形になる。「ねえコハク」ルーの顔がおもむろにこちらへ向けられた。「アレを今、やってくれないかな?」「えっ、今??」コハクは戸惑う。ルーの言ったアレとは、コハクがルーの魔力を吸収することである。実は、初めて行われたあの時以来、今日に至るまですでに数回が試みられていた。だからルーの要求は決しておかしなものというわけではない。ただ、あまりに脈絡なく唐突だった。「お願いしたいな」ルーはまるでねだるように言う。「でも......」困惑する。その理由はハッキリしている。アレを行う際は、クローと医者の立ち合いを必須としているからだ。そして問題は、今ここに医者はおらず、クローも所用で外出中ということ。何をどう考えてもアレを行うに相応しい状況ではない。「大丈夫だよ」ルーは微笑を浮かべる。「普段よりも半分以下の力で、時間もほんの数秒で構わない。それなら、今のコハクであればまったく問題ないよ」「でもそれだと効果が薄いんじゃない?」「症状にはね」ルーの淡黒いノワールの瞳が、コハクの紅い瞳をじっと見据える。側面から夕陽を浴びる病の美少年の顔は、儚くも美しい絵画の如くコハクの目を焼きつける。「ご、ごめん。ルーが何を言いたいのかが......」「ねえコハク、お願い」ルーは折れそうになかった。かといって特別ワガママを言っているようにも見えない。「ええと......」コハクは考える。ルーの気持ちを。おそらくは......こうだろうか。自分が行くことの叶わない魔法大学に、兄とコハクが行くことになるのを寂しく(あるいは悔しく)思っているのかもしれない
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ep56 深焔の魔女、魔法大学へ入学する。

第三部~魔法大学編~   【1】 コハクとクローが通うことになる魔法大学は、グレイシャ家から車を走らせて二時間の所にある。元々は魔法を中心とした研究機関だったが、種々の理由で数年前から大学(教育機関)としての機能を併設することになり、そのタイミングで魔法学科が創設された。したがって、魔法大学としての歴史は浅い。それゆえまだ学生も教員も少なく、どちらも積極的に募集していた。コハクとクローはいわばそこへつけ込んだ形となる。いずれにしても、コハクは晴れて魔法大学生となる。これから彼女は週五回(授業の関係で午後のみ)、一学生として規定のローブを羽織り、魔法大学に通うことになるのだった。「グレイシャ家の屋敷近辺とそんなに変わらないんだね」いよいよ初登校日となった昼、大学付近の街並みを眺めながらコハクは歩を進めていく。コハクの希望で、あえて手前で車を降りて二人は街を歩いていた。「都心部からはやや離れた所にあるからな」クローも街並みを眺めながら言う。「グレイシャ家の屋敷がある辺りと同様、この辺も自然が多い。といっても〔マギアヘルム〕には遠く及ばないが」「あそこは完全に田舎だからね」「皮肉で言ったわけではないぞ?」
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ep57 勘違い

事務室で初日の簡単な手続きを済ませたコハクは、フランツとメアリーと別れ、職員の案内通りに該当する講義室に入っていった。そこは広い階段教室になっていて、他の学生たちが散り散りに着座している。学生数は多くないものの、いかにも大学といった雰囲気だ。コハクはひとり心細さを抱えながら遠慮気味に後ろのほうの席へ着いた。他の学生たち数人が、コハクのことをチラチラと気にしている。今日から新たに編入してきたコハクに興味があるようだ。しかしコハクは彼らのことを気にしていなかった。なぜなら、取り急ぎもっと気になることが存在するからだ。「えっ、あれが今日から来るって言ってた新任の魔法講師?」にわかに学生たちがザワつき始めた。ひとりの新任講師が教室に入ってきたからだ。彼は教壇の中央までやって来ると、学生たちのほうへ向いて教卓の上に手を置いた。「若いし、すごいイケメンだよね?」女子学生たちの目が一段と輝く。スラリと背の高い新任講師は、眼鏡をかけた黒髪の美男子だった。眼鏡の奥には、凛々しくも美しい蒼い瞳が光っている。「皆さん、初めまして。本日から本学で教鞭を執らせていただくことになりました、クロー・グレーアムと申します。よろしくお願いします」女子学生たちからは乙女の溜息が漏れる。男子学生たちも、年の若い青年講師に期待の眼差しを向けている。そんな中、ひとり頭を抱えていたのはコハクだった。
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