「!!」クローとコハクは二つの意味で固まった。事実への驚きと、聞いてはいけないことを聞いてしまったという失敗と後悔で。「その男はバーバラの夫になりました」理事長は平然と続ける。相変わらずの笑顔がたまらなく不気味だ。「で、でも」と今度はコハクがクローを助けるように声を上げる。「現在のお二人の関係は良好なんですよね?」「それはもちろん」嘘をついているようには見えない。とりあえずコハクとクローは理事長の返答に胸を撫で下ろした。しかし安心したのも束の間、にわかに理事長の表情には言いえない哀しみがきざす。それを敏感に察したコハクとクローは思わず沈黙する。二人は暗黙のうちに、彼女の次の言葉を待つことにした。「結果的にはバーバラのほうが辛い思いをしたでしょうね」理事長が言った。思いのほか口調は穏やかだ。「息子のナイジェルが産まれた数年後には、最愛の夫を亡くしてしまったのですから」理事長は机にあったカップを手に取り口に運ぶと、一口だけ啜った。「理事長は〔マギアヘルム〕に、いたことがあるのですか?」クローが訊く。理事長は机にカップを置いた。「いたもなにも、十代の頃は〔マギアヘルム〕に住んでいた
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