Tous les chapitres de : Chapitre 61 - Chapitre 70

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ep61 理由

「!!」クローとコハクは二つの意味で固まった。事実への驚きと、聞いてはいけないことを聞いてしまったという失敗と後悔で。「その男はバーバラの夫になりました」理事長は平然と続ける。相変わらずの笑顔がたまらなく不気味だ。「で、でも」と今度はコハクがクローを助けるように声を上げる。「現在のお二人の関係は良好なんですよね?」「それはもちろん」嘘をついているようには見えない。とりあえずコハクとクローは理事長の返答に胸を撫で下ろした。しかし安心したのも束の間、にわかに理事長の表情には言いえない哀しみがきざす。それを敏感に察したコハクとクローは思わず沈黙する。二人は暗黙のうちに、彼女の次の言葉を待つことにした。「結果的にはバーバラのほうが辛い思いをしたでしょうね」理事長が言った。思いのほか口調は穏やかだ。「息子のナイジェルが産まれた数年後には、最愛の夫を亡くしてしまったのですから」理事長は机にあったカップを手に取り口に運ぶと、一口だけ啜った。「理事長は〔マギアヘルム〕に、いたことがあるのですか?」クローが訊く。理事長は机にカップを置いた。「いたもなにも、十代の頃は〔マギアヘルム〕に住んでいた
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ep66 魔女?

ベッドに仰向けになったコハクは、先ほどから穴が開くほど天井を見つめ続けている。魔法学校初日で疲れているはずなのに、就寝時間になっても一向に眠る気にならない。「なんなんだ今のボクの状況は......」ルーに告白されたことは、クローは当然のこと、他の誰にも話していない。当事者同士が秘密を貫けば、これから先も誰かに知られることはない。「お互い黙っている限りは、表向きは何も問題はないんだけど......」額に手の甲を乗せ、屋敷に帰って来てからのことを改めて思い返す。ルーの部屋から出た後、クローとフランツから心配そうにルーの様子を尋ねられた。どう答えたものかとコハクは悩んだ。とりあえず「思ったより大丈夫みたい」と当たり障りなく誤魔化しておいた。しかし案の定、クローもフランツも納得してくれなかった。「でも、そのあとルーがフツーに夕食の席に着いてくれたんだよね......」正直これには驚かされた。まるであのことはなかったかの如く、ルーは極めて普段通りの振る舞いで夕食を共にしたのだ。兄のクローに対してはおろか、コハクに対しても普段通り極まりない態度だった。コハクとしてはもはや驚きを通り越して呆然どころか拍子抜けしてしまうほどだった。 「気まずくならなくて良かったけど......」と半ば安堵しつつも、コハクはカッと目を見開く。「ルーがわからない!」
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ep68 関係

コハクは一瞬「?」となる。それからすぐにハッとする。失敗した。距離感を間違えた。そう気づいた途端、今度は焦ってくる。せっかく仲良くなれそうなクラリナに、このままでは嫌われてしまう。「ご、ごめん。ボクたちまだそこまでの関係じゃないもんね。ボクばっか先走っちゃったね。アハハ......」コハクは精一杯に笑顔を作って返した。どうにかして気まずくならないようにしたい。「あっ」クラリナが何か重大なことに気づいたように、態度を一変させる。「ご、ごめんなさい! わたし、なんて失礼な物言いを」「全然そんなことないよ!」コハクはさらに焦り出した。「あの言い方では、まるで私がコハクちゃんのお誘いを嫌がってるみたいに聞こえて当然ですよね......」「じ、じゃあ、そういう意味ではないってこと?」コハクがおずおずと尋ねると、クラリナは必死に何度も首を振った。「も、もちろんです!」コハクはほっと安堵する。危うく華のキャンパスライフに早くも影を落としてしまうところだった。何事もなさそうで良かった。いや待て。コハクは思う。本当に何事もないのなら、先ほどのクラリナのあの反応は何なんだ? 何もないのにあの反応は逆に不自然だ。
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ep69 疑問

誤解はすぐに解けた。さすがにクラリナも半信半疑だったようで、授業間の短い休憩時間、最低限の説明で充分だった。ただ、今回のことでひとつ問題が浮き彫りになってしまった。「でもまさか、コハクちゃんとグレーアム先生が同じ屋敷に住んでいるなんて」クラリナは素直に驚いた。そうだよね、とコハクも思った。思いながら、クローと一緒に登下校するのはマズイかも......と気づく。事情を知らない者から見れば、良からぬ想像が働くのも無理はない。ましてや学生たちは色恋沙汰に敏感な年頃だ。むしろなぜ今頃になって気づいたのか、遅きに失したと言わざるをえない。コハク自身はもちろんのこと、クローやフランツやメアリーからも言及がなかったのが不思議なぐらいだ。「と、とにかく、ボクとクロ......グレーアム先生は何でもないから」言いながら、コハクは何だか哀しくなってきた。確かに愛人関係ではない。しかしまったく男女の関係ではないと言えば嘘になる。婚約関係。それはすなわち将来の夫婦関係だ。肉体関係こそないものの、友人以上の関係であることは間違いないはずだ。「コハクちゃん?」クラリナが隣から顔を覗き込んできた。「あっ、な、なんでもないよ」あわててコハクは笑顔を作った。できたばかりの新しい友人の目の前で落ち込んでいる場合じゃない。「気にしないで」そもそも身分を隠して入学しているのだから仕方がない。言えない
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