そう言うと、千暁は咲夜に薬の記録をスクリーンショットで自分に送ってくれるよう頼んだ。それを聞くと、咲夜は直接見せた方が早いと思い、そのままスマホを良太に手渡した。良太は画面を一つひとつ丁寧に確認し、終始唇を引き結んだまま、一言も発しなかった。すべての服薬記録に目を通し終えると、彼は咲夜に向かって言った。「記録を見る限りじゃ問題はなさそう。ただ、本当に記録どおりの薬を飲んでたかまでは分からない。だからこそ、できるだけ早くお父さんを病院に連れて行って検査を受けてもらいたいんだ」「分かった。明日の朝、父を連れて検査に行く。その時は、また力を貸してね」咲夜は素直に良太の提案を受け入れた。夏樹を疑っているわけではない。だが、ここまで状況がそろってしまえば、慎重にならざるを得なかった。良太は微笑みながら答えた。「力になれるなら喜んで協力するよ。奥さんもあんまり心配しすぎないで。案外、そこまで悪い話じゃないかもしれないし。すべては検査結果が出てからだから」今、一番重要なのは検査だった。その温かな励ましを聞き、咲夜の目には安堵の色が浮かぶ。話を終えると、良太は立ち上がり、別れを告げた。さすがに、二人の間で邪魔者になるつもりはない。こんな時こそ、千暁の出番だ。咲夜との距離を縮める絶好の機会なのだから。そのくらいの空気は、良太もちゃんと読めていた。良太が帰ったあとも、咲夜の表情は晴れなかった。心の中では、すでに答えは出ている。こんなことをするのは、森崎家しか考えられない。雅紀が回復しないこと、あるいは二度目の脳卒中を起こすことこそ、森崎家にとって最も都合がいいのだ。目的のためなら手段を選ばず、こんな卑劣で人目を避けるようなやり方に頼る森崎家を思うだけで、咲夜は吐き気を覚えた。そんな彼女の怒りを察した千暁は、そっと歩み寄り、冷え切った小さな手を優しく包み込む。「安心しろ。森崎家の思いどおりにはさせない」彼もまた、咲夜と同じ結論にたどり着いていた。真っ先に頭に浮かんだのは森崎家だった。雅紀に何か起きることを誰より望んでいるのは、森崎家以外にあり得ない。咲夜は顔を上げ、千暁の涼やかな瞳を見つめた。「あなたも、森崎家だと思うの?」まさか彼まで、自分とまったく同じ考えに至っているとは思わなかった。
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