瞳は違った。彼女はこれまで琉安に、少なく見積もっても数千万円はつぎ込んできた。もっとも、その金額を細かく計算したことは一度もない。恋人だった頃、自分が納得して使ったお金なのだからと、気にも留めていなかったのだ。でも、琉安がわざわざ自分を不快にさせようというのなら、こちらだってやり返しても文句は言わせない。咲夜は、瞳がかつての情を引きずって琉安に手を出せないのではないかと少し心配していた。だが、瞳が即座に反撃したと聞いて、思わず手を打って喜んだ。「よくやった!」「いい気になって、私の前で調子に乗って気持ち悪いことしてくるんだから」瞳は深く息を吸い、気持ちを落ち着かせようとした。「ダメ。このムカつき、まだ収まらない。買い物でもして気分転換しないと」琉安の、あのいかにも未練たっぷりな芝居がかった顔を思い出すだけで、吐き気が込み上げてくる。前までは、恋をすると周りが見えなくなるのは咲夜のほうだと思っていた。けれど今になって思えば、自分だって人のことは言えなかった。幸い、二人ともようやく目が覚めたのだ。ちょうど千暁へのプレゼントを買いたいと思っていた咲夜は、もちろん瞳の提案を断らなかった。二人はワールドトレードタワーに着くと、真っ先にメンズフロアに向かった。「これ、お兄ちゃんに服を買うつもり?」咲夜が真剣な表情で服を選んでいる姿を見て、瞳は驚いたように尋ねた。――二人、そんなに急接近してたの?私、一体何を見逃してたんだろう。咲夜はすでに鮮やかな色合いのカジュアルウェアを何着も選び終え、今はネクタイを手に取って品定めをしていた。口元を緩めながら言う。「彼、服が黒と白、あとグレーばっかりで、ちょっと地味すぎるのよ」フォーマルな場ならスーツだから構わない。でも、千暁は肌が白いぶん、その三色ばかり着ていると実年齢より大人びて見えてしまうと咲夜は思っていた。まだ二十六歳にもなっていないのに。そう言われてみると、瞳も兄のワードローブには思わず苦笑してしまった。瞳は咲夜の腕を引っ張りながら、兄の服装について散々あれこれ言いながら、その勢いで他の色の服も次々と選んでいく。最後に咲夜が選んだのは、最新モデルの星空デザインの腕時計だった。有名ブランドが「十二刻」をモチーフにした限定コレクションで、
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