千暁はそれ以上何も聞かず、車を方向転換させると、咲夜をカフェまで送っていった。咲夜は車を降りようとしたとき、何気なく尋ねた。「あきも一緒に来る?」「君は行ってきて。俺は車で待ってる」そう言われ、咲夜もそれ以上何も言わなかった。カフェに着くと、星奈はすでに店の隅にある窓際の席に座っていた。遠目に見ただけでも、その表情に焦りが滲んでいるのが分かる。咲夜は星奈のいる席へと歩いていった。「咲夜さん、来たのね」星奈はすぐに咲夜の姿に気づき、さっと立ち上がった。そして、今の咲夜がもう杖を必要としていないことに気づくと、心から嬉しそうな顔をした。「ずいぶん回復したみたいね。本当によかった」星奈が本気で咲夜の怪我を心配していたことが、その様子からも伝わってきた。咲夜は少し申し訳なさそうに彼女と目を合わせた。「ごめん、遅くなって」だが、言い終わるより先に、星奈が歩み寄って咲夜の体を支えた。あまりにも甲斐甲斐しく世話を焼かれ、咲夜のほうがかえって恐縮してしまった。星奈は咲夜を席まで支えて座らせると、自分も元の席に戻った。二人は向かい合って座り、星奈はにこやかに尋ねた。「何を飲む?たしか、ラテが好きだったわよね」咲夜は驚いて星奈を見た。まさか自分の好みまで、こんなによく知っているとは思わなかったのだ。咲夜が断る間もなく、星奈は店員を呼び、カフェラテを一杯注文した。店員が立ち去ると、星奈は改めて咲夜へ視線を向けた。顔にはまだ笑みを浮かべていたが、その笑顔の奥にある気まずさを、咲夜ははっきりと感じ取っていた。それだけではない。どこか、何か別の思惑があるようにも感じられた。結局、咲夜のほうから話を切り出した。「今日、私に会いに来たのは、何か用があったから?」星奈は笑った。「たまたま景浦市を通りかかったから、咲夜さんの顔を見に来ただけじゃ駄目?」「えっと……」咲夜は一瞬、どう返せばいいのか分からなかった。星奈自身も、自分の答えがいささかわざとらしかったことに気づいたらしい。少し気まずそうな表情を浮かべた。「実は、本当に聞きたいことがあって来たの」そう言うと、星奈は咲夜の顔をじっと見つめながら、慎重に尋ねた。「咲夜さんは景浦市で生まれ育ったの?子供の頃、ご両親と遠くへ出かけたこととか、どこかで迷子に
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