咲夜と真澄以外には、千暁が今使っている電話番号を知る者すらほとんどいなかった。千暁はスマホで最新の動きを確認しながら、表情をさらに険しくした。「まだ騒ぎは広がってる。しばらくは収まりそうにないな。景浦市だけじゃない。桜ノ宮市でも大騒ぎになってる。智哉から何があったのかって連絡が来た。今回の件は川治さんの父である鷹司剛さん(たかつかさ つよし)の耳にも入ったらしい」鷹司家は桜ノ宮市でも指折りの名家であり、絶大な影響力を持っていた。そんな家で二十年以上も実の娘として育ててきた星奈が、実は出生時に取り違えられた子供だったと明らかになったのだ。これほどの大事件が地元で大きな波紋を呼ばないはずがない。千暁の表情はいっそう重くなる。事態はすでに、収拾のつかない方向へ進み始めていた。そのとき、千暁のLINEに、星奈が新しい友だちとして表示された。どうやら「仲良し家族」のグループチャットから、千暁を友だち追加したらしい。一方、鷹司家の面々はホテルに押しかけた人々に囲まれ、外へ出ることすらできなくなっていた。そこでようやく、星奈と咲夜の出生をめぐる事実が世間に流出したことを知ったのだ。川治のもとには剛からも電話がかかってきて、厳しく問い詰められたうえ、今すぐ戻って事情を説明しろとまで言われていた。事態がこれほど急速に広がるのを見て、紗智子が何より心配したのは咲夜のことだった。だが咲夜のスマホは電源が切られており、メッセージを送っても返事がない。花江家の両親とも連絡が取れなくなっていた。鷹司家の人々も、さすがに完全に慌てていた。ほかに方法がなく、最後は「仲良し家族」のグループチャットから千暁を友だち追加してみることにしたのだ。千暁が星奈に追加された途端、彼女からLINE通話がかかってきた。千暁は咲夜と雅紀、真奈美に目を向けた。「星奈からだ。出るか?」咲夜は頷いた。「出て」このタイミングでかけてきたのなら、おそらくトレンド入りしている件についてだろう。鷹司家のほうも、きっと大勢に取り囲まれているに違いない。千暁は通話ボタンを押し、そのままスピーカーに切り替えた。すると、電話の向こうから川治の声が聞こえてきた。「咲夜、俺だ。鑑定結果が流出した件はこっちでも確認した。まず伝えておきたいんだ
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