まるで他人事のように、淡々と語る……彼の心には、さざ波すら立っていない。 だけど――。「……やっと吹っ切ったんだよ。好きになるのと同じだけ時間かけて、やっと……」言っているうちに、彼は徐々に俯いていく。 声帯が圧迫されて、その声は力を失い小さくなって消え入った。 普段の彼からは信じられないくらい、弱々しい声――。なのに、抑揚を殺した口調だから、かえって、彼が恋に破れて心に負った傷が、痛々しいほど浮き彫りにされる。唇に腕を当てたせいで、吐き捨てるような言葉がくぐもって聞こえる。 胸が詰まり、私は言葉を失った。「なのに、さ」氷室君が、ポツリと続けた。「あの人……半年くらい前から、縁りを戻そうって言い出して」「……っ、え?」聞き返した声が喉につかえたのは、瞬時に理解できなかったからだ。 氷室君は、片足をベッドにのせて抱え込み、肩越しに私を振り返った。「なあ。八巻さんも、さ。俺って、そんなにいい?」皮肉げに口角を上げて問われた意図がわからず、戸惑って瞬きで返す。 特段、真面目な回答を求めていたわけじゃないようだ。 彼は私の返事を待たず、顔を正面に戻した。 抱えた膝に顎をのせ、小さく背を丸めて、「旦那じゃ満足できないから、俺がいいんだって。……男としちゃ、光栄だな」なにかを蔑むようでいて、自虐的にふっと鼻で笑う。「っ、氷室君」なにを言おうとしたかは、わからない。 だけど、氷室君が立花さんのことを本当に好きだったのがわかるから、彼女の言葉に惑わされているなら止めなきゃ、という思いで気が逸った。「ダメ、そんなのダメ」ベッドに突いた彼の腕を、両手でギュッと握りしめた。 力がこもり過ぎて、血の気を失った手が、カタカタと震える。 氷室君は、顎を引いてそこに目を落とし――。「言われなくたって、わかってる。だから、ちゃんと突っ撥ねた。……それはこの間、あんたも見ただろ」溜め息交じりの声を聞いて、私はそっと彼の横顔を見上げた。「ただ……わからない。わからないんだよ、俺には。自分の将来設計には必要ないって切り捨てておいて、今さら……あの人がなに考えてんのか」自分の言葉に同調するように、彼の瞳が揺れる。「わからなすぎて、この半年、気付くとあの人のことを考えてる。……本当に、もう好きじゃないんだ。縁りを戻す気も、サラサラない。だけど
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-02-02 อ่านเพิ่มเติม