視線も声も届いていると思うのに、氷室君は一度も振り返らずに、下膳台の方に歩いていった。 まるで、自分の身代わりみたいに、前の席に私の参考書を置き去りにして。休憩から戻った後、氷室君は相変わらず無表情で、淡々と仕事をこなしていた。 だけど、午後一時十五分発の、岡山行き101便のフライトプランを確認した『鬼機長』久遠さんから、オンラインブリーフィングで、搭載燃料量の修正の相談があり――。『飛行ルート付近で、積乱雲が発生する予報が出ている。着陸許可を待って、低空飛行や待機旋回が長引き、燃料消費量が増える可能性がある』実際にコックピットで操縦桿を握るパイロットの、『現場』の意見は貴重なもの。
Last Updated : 2026-02-02 Read more