無駄にだだっ広いのに、やけに気詰まりだった空間から解放された私は、「はあああっ」大きく肩を落として、息を吐いた。 後から出てきた穣が、冷ややかな目で私を見ている。「あ。なに、その目。『あんたはなにもしてないだろ』って言いたい?」くるっと回れ右をして、腕組みをしてふん反り返った。「ああ」躊躇いなく肯定されて、「う」と口ごもる。「まあ……その通りだから、なにも言えない」頬を引き攣らせて、足を踏み出そうとして……。「穣」背後で短く呼ぶ声を聞いて、ピタッと動きを止める。「……実可子」穣が、名前で呼んで応じた。 それを聞いて、私は一度大きく息を吸って、そっと振り返った。私たちの後から、会議室から出てきた立花さんが、ドア口に立っていた。 彼女の上司が私の横を通り過ぎ、先を行く。 私は、反射的に頭を下げて見送って……。 正面向いて対峙している二人を、視界の真ん中で留めた。「っ……」ズキッと痛む胸に手を当て、一歩後ずさった。 気配に気付いたのか、穣が私に横目を流す。彼につられた様子で、立花さんもこちらを見ている。「あ。ええと……」二人から注視される居心地悪さに、私は目を伏せた。「氷室君、お疲れ様。遅番の勤務時間過ぎてるし……私、帰るね」取ってつけたような早口で言って、その場から立ち去ろうとした。 ところが。「待って」穣が、私の肘を掴んで止めた。「え?」驚いて、弾かれたように仰ぎ見る。 穣はムッと唇を結んで私を見下ろし、「予告しておいただろ。片付いたら、って。忘れたの」やや不機嫌に顔を歪めて、しれっと言った。「……っ」意図せず、ひゅっと喉が鳴った。 もちろん、忘れてない。 それどころか、彼と久しぶりに会ってしっかり意識してしまい、業務が始まっても煩悩に苛まれた。だけど、立花さんの前で迷いなく口にされて、なんて答えていいかわからない。 穣は、なにも言えずに口をパクパクさせる私から目を逸らし、声に出して溜め息をつき、「み……立花さん」彼女を名前で呼びかけて、一応私を気にしたのか、言い直した。 立花さんは私と彼を交互に見遣り、腕組みをする。「私を置き去りにして出ていった原因は、彼女?」小気味よく首を傾げて、目を細める。 穣は悪びれることなく、「そう」と頷いた。 立花さんが、ちょっと不快げに眉根を寄
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