All Chapters of 今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか: Chapter 101 - Chapter 110

135 Chapters

第101話

里奈は自分が宗真にしたことを全て認め、宗助はそのことをメディアに告発した。彼女の醜い本性が露わになり、世間は騒然とした。里奈はこれまで父親の庇護の下、かなりの悪事に手を染めていた。既婚者との不倫なんて可愛いものだ。学生時代に気に入らない女子生徒を男子数人に襲わせたり、気に入らなかった一人の女子生徒を退学に追い込むなど、挙げたらキリがなかった。里奈の父親である神城フーズの社長は急遽記者会見を開き、彼は社長の座を辞任せざるを得なくなった。彼女があのような人間になったのは父親が甘やかしていたせいなので、彼も責任を負うべきだろう。里奈の母親は父親と速やかに離婚をし、財産分与で一生不自由なく暮らしていけるほどのお金を手に入れたという。母親と離婚した父親はというと、長年愛人だった女性との再婚を望んだ。しかし、彼女は社長の地位を失ったうえに、財産もほとんど残らなかった彼に興味など無く、再婚の提案は断ったようだ。新しい社長が就任してからは立場を失い、追い出されるようにして会社を出て行ったのだという。そして、里奈は――「……迷惑かけたわね」「……里奈」醜聞にまみれた彼女は、もはや白羽区にはいられなくなっていた。外へ出るたびに軽蔑の眼差しを向けられ、自宅には脅迫文までもが届いた。そのため、母方の祖父母が暮らす田舎に身を寄せることになった。かつての今野萌子のように。美里は最後に、白羽区を出る前の里奈に会いに行った。みっともなく泣き喚くようなこともせず、彼女は淡々と自身の運命を受け入れていた。「里奈、私はあなたをずっと親友だと思っていたわ」「……やめてよ、そういうこと言うの」その言葉に、里奈は辛そうに顔を背けた。「……私はあなたを友達なんて思ったこと一度もないわ。むしろ嫌いだった」「……」美里はその言葉を信じていなかった。嫌いならどうして、あそこまで自分を気にかけてくれていたのか。それが情ではないなら、一体何だというのか。「これから私のことは忘れて生きなければならないわ」「里奈……」里奈は美里を最後まで突き放した。彼女はたしかに宗真を酷い目に遭わせたが、美里にとってはかけがえのない親友だったわけで。「……宗助くんと仲良くするのよ」「……」里奈はほんの一瞬だけ、美里に笑いかけた。昔、彼女がよく見せていた朗らかな笑みだった。駅には美里だけではなく
last updateLast Updated : 2026-04-11
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第102話

その頃、自宅で城田家と神城家に関する新聞をじっくり読んでいた萌子はポツリと呟いた。「ふぅん……神城フーズの令嬢を上手く返り討ちにしたのね……」新聞には神城フーズの社長、そして令嬢の裏での悪行が掲載されていた。城田家の次男である宗真が被害に遭ったということも。萌子は冷めた目で読み進めていた。「あの女……なかなかやるじゃない……」記事には名前が出ていなかったが、萌子にはわかった。きっと今回の一件には、美里が関わっている。宗助と宗真の仲を取り持ったのもきっと彼女だろう。そのことを考えると、萌子の胸に悔しさと美里に対する敵対心がこみ上げた。「私が宗助の一番だと思っていたのに……」彼女の脳裏に、かつて自分を誰よりも深く愛していた彼の姿が浮かんだ。萌子はフッと口角を上げた。あの女、本当に気に入らない。大体私が白羽区を出て行きさえしなければ、あの女は宗助の婚約者になどなれなかったのだ。――私は何一つ悪いことなんてしていない。ただ、自分のものを取り戻そうとしているだけだ。萌子は自身の行為を正当化する言葉を並べ立てた。「……今はそんなことを考えていても仕方が無いわ」萌子は今、海星と協力関係にある。二人の目的は宗助と美里を引き裂くこと。萌子は過去に犯した罪を盾に、脅迫されるような形で彼の計画に協力していた。しかし、美里を気に入らないのは事実だったので別にかまわなかった。(あの女を痛い目に遭わせるなら……そのための駒を探さないと……)萌子は昔から何事も、自分の手を汚すことを極度に嫌った。やらせるなら自分に盲目な男などがちょうどいい。萌子は類まれな美貌を持ち合わせており、それは様々な面でとても役に立った。――だから今回もきっとうまくいくはずだ。彼女はそう確信していた。城田家の妻の座に相応しいのは私であって、あの女ではない。今は底辺まで落ちた萌子だったが、日の目を見ることになるのも近いだろう。そのことを考えると、何だかとても気分が良くなった。萌子は一人の部屋でアハハッと声を上げて笑った。その瞳は狂気じみており、いつもの穏やかで上品な彼女からは想像もつかない姿だった。「今に見てなさいよ……美里……」――絶対お前を、その座から引きずり降ろしてやるからな。そんな彼女の呟きを、外から聞いていた人物がいた。「美里……?引きずり降ろす……?姉さん、一体何を考
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第103話

里奈の件が一段落つき、美里は城田家へ戻っていた。(何とか無事に終わったみたいでよかった……)宗真もそれほど重症ではなく、このまま治療を続けていればすぐに回復するだろうとのことだった。今回の一件を機に、宗真は変わるだろう。疎遠だった両親や兄との関係もきっといい方向へと向かうはずだ。(もし全快したら宗助とたくさん話せるといいわね……)宗助も過去の態度を反省し、変わろうとしているようだった。――絶対に前世と同じことは繰り返さない。彼が違うから。宗助がその約束を忠実に守ろうとしているということが伝わってきた。二度と、あのような末路を迎えることはない。「里奈が白羽区を出て行ったし……あとは萌子だけね……」――今野萌子の隠された本当の姿。美里には、そこだけがどうしても引っかかっていた。宗助が言っていたように、やはり萌子には何かあると美里は確信していた。前に見た、彼女の敵対視するかのような目。おそらく、彼女は未だに宗助を想っているのだろう。『美里、私が今野萌子の立場ならあなたを引きずり降ろそうとするはずよ』前に瑠璃子に言われた言葉が頭をよぎった。あのときはあんなに穏やかで優しい萌子がそのようなことをするわけがないと気にもしていなかった。しかし、何故か美里はいつまで経っても嫌な予感を拭えずにいた。白羽区にいないから安心、はできなかった。居ても経ってもいられなくなった美里は、宗助に会いに行った。それほど遠くない彼の書斎の扉をノックし、中に入った。「……美里?」椅子に座っていた宗助が顔を上げた。「宗助!」彼の姿を見ると、美里はとても安心できた。宗助は不安げな表情の美里を抱きしめた。彼の胸に抱かれると、この世の全てから彼が守ってくれるような気がして落ち着いた。「お前が急に来るなんて珍しいな。何かあったのか?」「ううん……ただちょっと不安だったの」美里は彼の胸に頬をすり寄せた。宗助はそんな彼女をじっと見下ろした。「何がそんなに不安なんだ?俺がいるだろう?」「萌子さんのことが気になって……」「彼女のことは俺がどうにかするから心配するな」宗助は萌子に対する未練は既にないようで、キッパリと言い切った。彼は萌子のことを過去だと割り切っていた。「嬉しい……私ずっと宗助が好きなのは萌子さんだけだと思っていたから……」「……」美里の言葉に、彼は顔
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第104話

美里は宗助の声に顔を上げた。あれほどまでに盲目的に萌子を愛していた彼の口から、そのような言葉が出てくるとは。彼が何の根拠も無しにそのようなことを言うわけがないということを美里はよく知っている。「宗助……それは一体どういう……」「……今、萌子のことについて詳しく調べているんだ」宗助は美里に前世の話を聞いたあの日から、萌子について秘書に調べさせていた。内容は主に家族構成や彼女の過去。細かいことまで一つ残さず報告させた。そこで彼は、萌子の裏の一面を知った。「調べれば調べるほど……不審なことばかりが出てくる」「……どういうこと?宗助」宗助は萌子の過去を調べてからというもの、眠れない日々が続いていた。横で眠る美里のおかげで何とか悪夢を見ずには済んでいるが。「……萌子は俺やお前が思っているような女ではなかった」「宗助……」美里も薄々感じていたことだった。大学時代の萌子は、誰から見ても優しくて聡明な、まさに春の女神のような女性だった。いつも宗助の隣で美しく微笑む女性。美里はそんな彼女を羨ましく思い、同じ女として憧れもした。もちろん宗助だって、彼女のそんなところを愛していたはずだ。美里は彼の気持ちを悟り、胸が締め付けられた。彼は申し訳なさそうな顔で呟いた。「美里……すまない……俺のせいでこんなことになってしまって……」「気にしないで、宗助」美里は笑顔で彼の頭をポンポンと撫でた。「宗助、過去のことをどれだけ悔やんでいても仕方が無いわ」「美里……」大切なのはこれからだ。美里は宗助と横並びで部屋にあるベッドサイドに座った。彼女は宗助の背中をそっと撫でた。「あなた一人ですべてを抱え込む必要はないわ。辛いことは二人で分け合いましょう。私たち……恋人同士なんだから」”恋人”と美里はキッパリ言い切った。少し前の彼女なら、彼のことをそう思うなんて到底できなかっただろう。だけど今は違う。美里は既に彼を受け入れた。「美里……」彼女の温かい言葉に、宗助は一筋の涙を流した。あれほど深く傷付けたというのに、何故ここまで人に優しくできるのか。宗助は自身を見つめる美里の頬にそっと手を触れた。顔をゆっくりと近付けると、彼女が目を閉じた。そのまま口付けをし、美里をベッドに押し倒した。彼女は自身に覆いかぶさる宗助を見上げたまま微動だにしなかった。彼の背中をギュッと
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第105話

その頃、瑠璃子のいる探偵事務所では、とある人物が依頼者として訪れていた。「それで……息子さんの転落事故の真相を調べてほしいということですか?」「はい……あの事故は不自然な点が多すぎるんです」瑠璃子は目の前で涙をハンカチで拭いながら話す一人の女性を向き合っていた。彼女はその手に、今は亡き息子の写真を持っている。「具体的に話を聞かせていただけますか?」「はい……六年前、息子が通っていた暁星大学で男子生徒が転落する事故が起きました」「ぎょ、暁星大学ですか……!?」瑠璃子は驚きを隠せず、声を上げた。暁星大学といえば、彼女や美里、宗助と萌子が通っていた大学だったからだ。(もしかして、彼女はあの事故で亡くなった男の子の母親……!?)あの事故に関しては瑠璃子もよく知っていた。自らの在学中に起こったことだ。当時はかなり話題になった。たしか、自殺か事故かの二択で意見が割れていたはずだ。あのあと警察はあっさりと事件性無しと判断していたし、ニュースになることもほとんどなかった。今は人々の記憶から忘れ去られていた出来事だった。しかし、遺族は違う。彼女の息子を失った悲しみはいつまで経っても消えないのだ。「警察からは自殺の可能性が高いと言われたんです……ですが、あの子に限ってそんなことは絶対にありえません!」「お母様がそのようにおっしゃるということは……何か根拠があるんですね?」真剣な表情で問いかける瑠璃子に彼女は頷き、語り始めた。「まず、息子は……とても家族思いで優しい子でした。共働きの私たちに代わって幼い弟たちの世話をよく見てくれる……私にとっての自慢の息子でした」「お母様……」彼女の息子の陽大(ようだい)はとても努力家だった。安定した職業に就いて両親を楽させてあげたいという思いを強く持ち、勉学に励んだ彼は難関の暁星大学に合格することができた。「大学生活は順調そうに見えました……明るい性格の息子は友人も多くいて……初めての恋人ができたとも……」そこで、彼女は悔しそうに膝の上に置かれた拳を握りしめた。「今思えば……そこから息子は壊れていったのだと思います……」「壊れた……?」恋人ができたことが壊れるきっかけになるだなんて。それほどまでに、とんでもない女と付き合ってしまったということだろうか。「どういうことですか?」「息子の初めての彼女は……物
last updateLast Updated : 2026-04-15
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第106話

「こ、今野萌子……!?」瑠璃子はその名前に大きく反応した。今野萌子のことはよく知っている。何ならついこの間美里と一緒に会いに行ったばかりだ。(ど、どうして彼女の名前が……)瑠璃子は萌子のことを警戒していた。彼女が宗助に未練があり、美里のことを狙っているのではないかと。しかし、そこまで危険な人ではないだろうと特に自分から動くことはなかった。何より、城田家と永山家相手に一般庶民の彼女に何ができるというのか。(困ったわね……)もし彼女のその話が本当なら、萌子は相当危ない人物ということになる。美里を蹴落とすためなら何をするか……「詳しく話を聞かせていただけますか?」「はい……息子は大学一年生の頃……亡くなる数か月前に今野萌子という女性と出会いました」萌子は一年生の頃から、大学一の美女としてその名を知られていた。彼は同じ学部で何かと関わる機会の多かった萌子に、一瞬にして心を奪われた。それからというもの、彼の猛アタックにより二人は付き合うことになった。彼は美しい萌子にゾッコンで、彼女のためなら何だってやってのけた。「いつからか……息子は笑わなくなりました……」「どうして……」念願かなって愛する女性と付き合えたというのに、陽大は明るくなるどころか逆に憔悴していったという。「それだけではなく、次第にやつれていって……事故が起きる数日前には部屋に引きこもるようになりました」「そうだったんですね……」彼女は目にたまった涙をハンカチで拭った。「亡くなる前にそんな様子だったこともあって、警察は自殺だと言っていました。ですが、それはありえません」「と、いいますと?」「――息子の遺体には、暴行を受けた跡があったんです」瑠璃子は息を呑んだ。暴行を受けた跡があるのに、自殺?警察は一体何を考えているんだ。「そして、あの子が亡くなる数時間前、今野萌子と一緒にいるところを見た生徒がいるんです」「……」「その女生徒は警察にそのことを証言しているのですが……結局何も変わることはありませんでした」何か、裏で大きな権力が動いているかのようだった。瑠璃子はゾッとした。このことを明らかにしようと動けば、彼女自身の身も危なくなってしまうかもしれない。だが……目の前で涙を流す母親を見ていると、そんな考えはそれほど気にならなかった。「お母さん、わかりました。私が何と
last updateLast Updated : 2026-04-16
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第107話

数日後、美里は久しぶりに実家に帰り、両親と話をしていた。数ヵ月ぶりに見る実家のリビングだ。当たり前だが、住んでいた頃と何も変わらない。美里の正面には母親の美穂が座っている。「それで、宗助くんとはうまくやれているの?」「ええ、宗助は私のことを本当に愛しているみたい……すごく大切にしてくれているわ」美里は宗助のことを考えながら、僅かに微笑んだ。彼女は既に宗助の全てを受け入れた。この先どんな困難があろうとも、彼の傍を守り続けるだろう。「でも驚いたわ……あれだけ婚約を解消するって騒いでたのに、帰ってきた途端宗助くんと結婚するなんて言うから」「お母さん、迷惑かけちゃってごめんなさい」「いいのよ、私たちにとって一番大事なのはあなたの幸せなんだから」両親は何よりも美里の幸せを願っている。彼女の選択なら、どんなものであっても反対する気はない。「お母さんは……宗助の気持ちを知っていたの?」「ええ……私も最初は気付かなかったわ。でもね、あの人はずっと前から知っていたみたい」美穂の言うあの人とは彼女の夫であり、美里の父親のことだ。彼は宗助の美里を愛する気持ちに最初から気付いていた。それでも美里に伝えなかったのは、そのことが彼女にとって重荷になってしまうと考えたからだろう。両親の愛に、美里は胸が熱くなった。「さすがお父さん……私のことも宗助のこともよくわかっているのね」「同じ男だからかしら。そういうのがわかるみたい」美里は母親の淹れたコーヒーを一口飲んだ。やはりいつ飲んでも落ち着く味だ。すぐに空になったカップを置いた美里に、美穂がニヤニヤしながら尋ねた。「――ところで美里、宗助くんとどこまでしたの?」「な、何を急に……!」突然の質問に、彼女は顔を真っ赤にした。いきなり何てことを聞くのか。美里は前世を含め、二十五歳になってまで一度も経験が無かった。つまり、この間の彼との行為は美里にとっての初めてだったのだ。あの日のことを考えると、さらに顔が火照った。「そんな顔するってことは、もう一線は超えたのかしら?」「ちょ、ちょっとやめてよお母さん!」慌てふためく娘の姿に、美穂はケラケラ笑った。二人は婚約者なのだからおかしいことではないが、そうやって言われるととても恥ずかしい。「い、一回だけよ……一回だけ……」「あら、まぁ……」美穂は驚いたように口元を手
last updateLast Updated : 2026-04-17
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第108話

母親の元を一度離れた美里は、今度は父の書斎まで来ていた。「宗助くんとは上手く話がついたようだな」「はい、宗助の気持ちを受け入れることにしました」美里が今回実家へ帰ってきたのは、両親にきちんと自分で結婚報告をしたかったからだ。二人には、宗助との婚約解消などでかなり迷惑をかけてしまった。その分、きちんとお詫びもしたかったし。父の政則は、母親の美穂と同じように美里の意思を尊重した。「お前の決めたことなら、私たちは反対しない。それに、今の宗助くんなら安心してお前を任せられる」「ありがとうございます、お父さん」美里は父親にニッコリと笑いかけた。「そういえば、近いうちに宗助が挨拶に来るそうです。義理の両親となる方にきちんと挨拶をしておきたいんだと」「そうか、楽しみだな」両家顔合わせの日も近いだろう。結婚の準備も本格的に始めなければならない。「あと数ヵ月で美里のウエディングドレス姿を見られるのだと思うと……すごく楽しみだ」「……」父親のその言葉で、美里は前世の結婚式のときのことを思い出した。あの日、美里はあまりにもドキドキしすぎて夜も眠れなかった。翌日になり、真っ白なドレスに身を包んだ美里はワクワクした気持ちで宗助の前に現れた。彼は私のドレス姿を見て何て言うのだろうか。もし、綺麗だと一言でも言ってくれたとしたら――そんな美里の期待は、彼によって粉々に打ち砕かれた。『……早く行こう、式が始まる』宗助はそれだけ言うと、すぐに美里に背を向けた。彼にとっては美里のウエディングドレス姿などどうだってよかったのだ。そのことを考えると、美里は急に不安になった。「……お父さん、私本当に宗助と結婚してもいいのかな……」「どうしたんだ?急に」彼女の不安げな表情に、父は目を見開いた。「いつか彼の気持ちが変わってしまいそうで……前の冷たい宗助のこともよく知っているし……」「美里……」父は彼女の傍まで歩み寄ると、そっと肩に手を置いた。「心配なら、今から宗助くんの元へ行って来たらどうだ?」「……」父は、俯く美里に優しい言葉をかけた。「何なら今からでも結婚をやめてもいいんだ。私も妻も反対なんてしないさ」「……いいえ、それはやめておくわ」美里はあえて、父の提案を断った。彼には会いに行かないし、結婚をやめるようなこともしない。「――私は宗助を信じるっ
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第109話

美里が実家に帰省してから数日が経った。彼女が今暮らしているのは城田邸であり、ここには一週間ほど滞在する予定だ。三日目、そんな彼女に来客があった。「――美里、お客さんが来ているわよ」「私に……?」一体誰だろうと疑問に思いながらも玄関へ向かうと、瑠璃子が立っていた。「あら、瑠璃子!」「……美里、久しぶりね」久々の再会に顔を輝かせる美里とは対照的に、瑠璃子は何故か浮かない顔をしていた。美里はそんな瑠璃子の異変にすぐに気付いた。「瑠璃子……どうかした?」「……美里、ちょっと話があるの」そう言うと、瑠璃子は額を手で押さえた。よく見たら、彼女は今日とても疲れ切ったような顔をしていた。目の下の大きなクマを見るあたり、何日も眠れていないのだろう。彼女は心配そうに見つめる美里と目を合わせた。「――覚悟して聞いてほしい」「……」美里はゆっくりと頷き、瑠璃子を奥にある部屋に通した。「瑠璃子、落ち着いて。ゆっくりでいいから」「ええ……ありがとう」美里は瑠璃子を落ち着かせるため、温かい紅茶を出した。彼女は震える手で紅茶のティーカップを持ち、中身を一口飲んだ。「実は……今野萌子のことなんだけど……」「萌子?」彼女の口から出てきたのは、予想外の人物の名前だった。瑠璃子は切羽詰まったような顔で、美里に警告した。「――美里、あなた今すぐにでも行方をくらましたほうがいいかもしれないわ」「え、ど、どういうこと!?」美里は思わず立ち上がった。萌子が危ない女だということは知っていたが、そこまで……?「今野萌子……あの女は私たちが思っているよりもずっと危険な女よ……」「瑠璃子……何があったの……?」彼女の様子を見るに、何かとんでもないことを知ってしまったようだ。美里は瑠璃子の言葉を待ち続けた。「……一週間前、私の元へ新しい依頼人が来たの」瑠璃子は青い顔で話し始めた。「美里、あなた六年前に暁星大学で起きた死亡事故について知ってる?」「え、あぁ……たしかそんなことあったよね……」あの事故は当時大学内でかなり話題になったことだったから、美里も当然知っていた。「思い悩んでいた男子生徒の自殺だって聞いたけど……」当時学内にいる生徒たちは自殺だの事故だの様々な憶測を立てていた。しかし、結局は警察によって事件性は無いと処理されたため、それ以上話題になることも
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第110話

美里は衝撃を受けた。六年前に暁星大学で起きたあの事故のことは当然、彼女も知っていた。しかし、それに萌子が関わっているということは初めて聞いたからだ。「関わっているって……どういうこと?もしかしてあの男子生徒をやったのは……」「えぇ、私の調査によると被害者の男子生徒は今野萌子の元カレだったのよ」「元カレ……」美里は宗助から、萌子は恋人が途切れたことがないという話を事前から聞いていた。しかし、そのときはそれほど驚かなかった。萌子はあんなにも美しいのだから、彼氏がいないほうが不思議なくらいだったからだ。「だけど、女性の萌子一人で男性を突き落とすだなんて不可能じゃない?彼女、華奢だし」「ええ、そうね。だからおそらく、協力者がいたのよ」「協力者……」瑠璃子は美里の前に、一枚の写真を置いた。そこに写っていた顔に、美里は見覚えがあった。「この人……もしかして、法学部の久間田君!?」「あら、知っていたのね」写真に写っていた男は大学時代の美里の同級生・久間田海星だった。実家が裕福なうえに顔も整っており、宗助には及ばずとも、彼もそこそこ女子生徒から人気があったはずだ。「久間田君は有名人だったもの……当然知っているわ……」「まぁ、悪い意味でだけどね……」美里だけではなく、瑠璃子も海星を知っていた。彼は素行が悪いことで、大学内では有名だったからだ。「久間田君と萌子に親交があったの?」「ええ、二人は元恋人同士のようね。被害者の後に付き合って宗助君と交際する前にお別れしたみたい」「そうだったんだ……」ハイスぺな男性ばかりと付き合う萌子の恋愛遍歴には驚かされてばかりだ。(一度宗助みたいな完璧超人と付き合ってしまったから、もう他の男はいけないんでしょうね……)彼女が宗助のことを本気で愛していたのかすら、今となっては怪しい。「なら、久間田君と萌子の共犯で彼は亡くなったということ?」「ええ、おそらく……久間田君の父親は警察の上層部にいるし。警察が杜撰な捜査をしたのも納得がいくわ」「人が亡くなっているのに……何てヤツらなのかしら……」怒りに震える美里を、瑠璃子が宥めた。「美里、落ち着いて。私ももちろん、この件を放っておくつもりはないわ。何より、被害者の男子生徒のお母さんがとても悲しんでいるし……」「瑠璃子……」彼女は母親と対面したときから、絶対に事
last updateLast Updated : 2026-04-20
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