「……くだらない内容ならすぐに帰るわ」「お前のそういうとこ、昔から変わらないな」近くの個室レストランに移動した二人は、テーブルを挟んで座った。不貞腐れた様子の萌子に、海星は笑った。かつて恋人同士だったとは思えないほどピリピリした空気だった。萌子にとって海星は多くいる元カレの一人にすぎなかった。海星の父親は警察の上層部で、実家が裕福だった。そして海星もそんな彼女の美しさに惹かれたから付き合っていただけのこと。美しい女を横に連れて歩きたいと思う男は多いのだ。萌子は交際していた当時から、何かと乱暴な海星に呆れていた。ただ地位があって見た目がそこそこよかったから関係を続けていたのだ。「お前、どうやらまだ城田家の御曹司を諦めていないようだな」「……」萌子はそっぽを向いたまま答えなかった。図星だったからだ。「驚いたよ、お前がそこまで一人の男を熱烈に愛することができるなんてな」「何が言いたいの?宗助への負け惜しみ?」「……」宗助は海星が絶対に勝てない相手だった。萌子はそのことを知っていて彼を煽っているのだろう。「あんな仕打ちを受けてなお、城田家の御曹司を諦められないだなんて……俺はむしろ感動したよ」「どういう意味よ」「――面白い噂を聞いたんだ、萌子」海星は眉をひそめる萌子に、ニヤリと笑った。「城田家の御曹司と永山家の令嬢が恋仲だって噂……」「……」机の上に置かれていた萌子の拳に力が入る。「まぁ、たしかに永山家の令嬢なら城田財閥の御曹司とも釣り合ってるし、何よりお似合いだよな」海星は美里を知っていた。大学時代、萌子と同じくらい彼女は有名人だったから。そして萌子が美里を快く思っていないことも、よく知っていた。海星は彼女のそういうところが自分にそっくりだと思った。自分が宗助を気に入らないように、萌子もまた、美里のことが気に入らなかった。宗助と美里、萌子、そして海星。同じ暁星大学に通っていたこの四人は何とも複雑な鎖で結ばれていた。海星は萌子が宗助に乗り換えたあとも、たびたび彼女と会っていた。そのため、萌子が恋人の傍をうろつく美里を警戒していることを知っていた。だからきっと、今回の彼の企みにも喜んで協力すると思ったのだ。「宗助と美里を引き離したいと思わないか?」「私たちに何ができるっていうのよ。相手は城田家と永山家よ」萌子は海星の
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