LOGIN初恋の相手である城田宗助(しろたそうすけ)と結婚した永山美里(ながやまみさと)。 しかし夫の昔の恋人であり、初恋の相手・今野萌子(こんのもえこ)が帰ってきた。宗助を貶めたい何者かの手によって美里は拉致され、壮絶な拷問を受けることとなる。結局、宗助は最初から萌子のことしか頭になかったのだ。絶望のまま命を落とした美里は、目を開けると宗助と結婚する前に時間が戻っていた。 今度こそ貴方と結婚したりしない。しかし、美里が距離を置こうとすればするほど宗助が近づいてきて……?
View More美里を抱いたまま家に帰った宗助に、真奈美は嬉しそうにはしゃいだ。「あら、宗助!今日のあなたはまるで王子様みたいね!私も若い頃旦那様にしてもらったことがあるわ!今はさすがにできないけど、お姫様のような気分だったのをよく覚えているわ」「……」真奈美の言葉に、美里は顔をさらに赤くした。(そ、そんな風に言われるとすごく恥ずかしい……!)彼女は宗助の胸に顔をうずめた。「あらあら、そんなに恥ずかしがらなくたっていいのよ。どのみち年を取るとできなくなるわけだし」「母上、からかうのはやめてください」宗助はそこでようやく美里をおろした。(い、生き返った……)宗助に抱き上げられるのは初めてだからか、何だか変な感じだ。「美里さん、なかなかやるわね。宗助にお姫様抱っこさせるだなんて」「わ、私がさせたわけではありません!」耳元で囁いた真奈美に、美里は慌てて反論した。お姫様抱っこは宗助が勝手にやったことであり、彼女は無関係だ。とはいえ、運んでもらったことに変わりはない。「宗助……ここまで運んでくれてありがとう」「ああ」宗助は短く返事をすると、少し後ろにいた美里に呼び掛けた。「美里、行くぞ」「あ、うん!」彼女は慌てて彼のあとをついて行った。そんな二人を見た真奈美が、大声で叫んだ。「宗助、美里さん!このあとは二人きりのお楽しみなのね!いつの間にそんなに仲良くなったのかしら?」「ち、違いますから!さっきから変な誤解しないでください!」何かを勘違いしているのか、目を輝かせる真奈美の視線に耐えかねた美里は、彼女から顔を背けた。(ホント、社長夫人は前世と何も変わっていないわ……)そう思っていたそのとき、前を歩いていた宗助が、振り向くことなく彼女に話しかけた。「母上に困らされているようだな」「あ……いや、そんなことはないわ。夫人は明るくて素敵な人だと思っているわ」「本当か?」そこで宗助はチラリと美里を見た。「ええ、社長とも仲が良いし……あの二人も元々は政略結婚だったんでしょう?」「そうみたいだな、両親の過去の話については俺もよく知らないが……」「あら、宗助ったら。知らなかったの?」「……お前は知っているのか?」宗助が立ち止まって美里を見つめた。(……もしかして、聞きたいのかしら?)興味津々な目でこちらを見つめる宗助を、美里は何だか可愛
結局、宗真のことが気になってたまらなかった美里は一睡もできなかった。翌朝になり、美里は宗真を尾行することを決めた。(本当にこんなに朝早く出かけているのね……)早朝に家を出た宗真は、真っ直ぐに喫茶フィルムへと向かっていた。喫茶フィルムへ向かう彼の顔は生気が抜けていて、糸で操られている人形のようだった。(やっぱり変だわ、何かあったのよ)美里の知る宗真は、あのような顔をする人ではなかった。いつだって研究に熱心に取り組み、他人にも優しく接する明るい人だった。美里はバレないように宗真の後ろをついて歩いた。そのとき、彼が突然走り出した。彼女は慌ててついて行った。曲がり角を曲がると、すでに宗真の姿はなくなっていた。「あれ?どこに行ったんだろう?」そう思って辺りを見渡したそのとき――「キャアッ!」「――こんなところで何をしている?」突如背後から現れた宗真が美里の首を掴んだ。彼の目は血走っていて、美里に対する憎悪が見て取れた。「宗真くん……!」宗真は美里の首を鷲掴みにしている手に力を込めた。彼女は苦しそうにうめき声を上げた。(この顔……まるで前世のあのときのようだわ……!)美里は今目の前にある宗真に見覚えがあった。前世で美里を拷問したあのときと同じ目をしていたからだ。「宗真くん……やめて……手を離して……お願い……」美里は目に涙を溜めて訴えたが、宗真は聞かなかった。「お前らのせいで……お前らのせいで俺がこれまでどれほど辛い思いをしてきたか……」「宗真くん……」「どうしてみんないっつも兄貴ばっかりなんだよ……!俺だって……俺だってこんなに努力してるのに……」宗真は泣きそうな顔をしていた。美里はそんな彼を見て胸が締め付けられた。自分の首を掴んで離さない宗真の手にそっと触れた。「宗真くん、私はあなたのことをちゃんと見ているわ」「何だと……?」宗真の手の力が緩んだ。「あなたが毎日のように研究に熱心に取り組んでいることも。困っている人を放っておけなくて、世話を焼いてしまうところも。――宗助に憧れて、彼を兄として慕っているところも。全てあなたの良いところだわ」「……」宗真は目を見開いた。そのとき、路地裏に突如大きな声が響いた。「――宗真!何をしているんだ!」「あ、兄貴……!?」慌てた様子で走ってきたのは宗助だった。どうして彼がこ
「宗真くん、帰ってたのね!」「……」夜、帰宅した宗真に美里が声をかけた。しかし、彼からの反応はない。「……宗真くん?」美里は再び彼を呼んでみるも、返答はないまま彼は部屋へ戻って行った。(……具合が悪いのかな)美里はしばらく立ち止まり、彼が入って行った部屋の扉をじっと見つめていた。そういえば最近、宗真が家を空ける頻度が増えたような気がする。それに加えて、夕食や朝食の席にもあまり姿を現さないようになった。そのことをさりげなく社長夫妻に尋ねたが、彼らは特に気に留めていないようだった。『彼女でもできたのかしらね、あの子ったら恥ずかしくて隠しているんだわ』『宗真ももう二十三だ、私生活に親が口を挟む年齢でもないだろう』二人はそう言っていたが、美里は宗真のことが気にかかった。明らかに変わった彼の態度も、何かがあるような気がしてならない。「――宗真様、最近何だか変わられましたね」「あなたは……」立ち尽くしていた美里に声をかけたのは、家の執事だった。彼は普段宗真についており、彼の変化を最も近くで見ていた。「宗真くん、最近よく外出しているみたいですけど、どこへ行っているんですか?」「とある喫茶店へ行っていると聞いています。そこで女性と会っているとも」「女性と……ですか?」宗真には長い間恋人がいなかった。彼は普段大学院で研究に没頭していて、恋愛にあまり興味がなかったからだ。(彼女が出来たということかしら……)宗真の彼女。美里は頭の中で宗真が女の子と遊んでいるところを考えてみたが、まったく想像つかなかった。そんな彼女の心の中を見透かしたのか、執事が付け加えた。「それが……どうやらその女性と恋愛関係にあるというわけではないようなのです」「では、交際している女性ではないと?」彼女でもない女の人と、何故毎日のように会っているのか。いや、恋人ですら毎日は会わないのが普通だ。美里は宗真とその女性の関係性が気になった。「ええ、会うのはいつも同じ喫茶店ですから……恋人ならもっといろんなところに行くはずですよね」「いつも同じ喫茶店で会っているんですか……?」宗真はある喫茶店の常連客となっているようだった。研究以外に興味のない彼が、そんなにも夢中になるだなんて、一体どんな場所なのか。「その喫茶店の名前は何ていうんですか?」「喫茶”フィルム”というとこ
「アンタ、私にこんなことをして……覚えてなさいよ」「俺はお前のせいで親父に嫌われたんだよ。あのときは親父の権力で何とかなったけどさ……今じゃ顔すら合わせてくれないよ」「当然でしょう、私がアンタがあそこまでするとは思わなかったのよ。ただちょっと、懲らしめてくれればよかったのに……」「あれは事故だよ事故。アイツが先に手出して自分から落ちたんだよ」修人が仕事に行っている間、萌子は海星を家に入れて二人で話をしていた。海星が来ることは当然、修人は知らない。萌子は弟の願いよりも自分の利益を優先するような人間だった。足を伸ばした海星が、部屋の中を見回しながら口を開いた。「それより、せっまい家だな。お前今こんな場所に住んでるのか」「ホンット、私には合わないわ。城田家の御曹司の恋人だった私が、どうしてこんな場所に……」「よくお似合いじゃねえか、性格の悪いお前にな」萌子は眉をピクリと上げた。「それで、何か考えはあるの?」「そうだな……お前の知り合いで誰か駒にできそうなやつとかいねえのか?――たとえば、たくさんいる元カレたちとか」「…………どこで何をしているかすら知らないわ」萌子には宗助と付き合う前にも、恋人が多くいた。海星もその一人だった。「仮に知り合いだったとして、こんな馬鹿げた計画に付き合ってくれるとは限らないでしょう?」「それはどうだかな。俺は六年前、まんまとお前の言うことを信じて馬鹿やっちまったけどな」「……」黙り込む萌子に、海星はニヤリと笑った。六年前、二人の通っていた暁星大学では転落事故により死亡した学生がいた。事故として処理されたあの一件には、実は萌子と海星が深く関わっていた。死亡した学生は萌子の元恋人だった。海星と付き合う前に交際していた男だった。家柄も良く、将来有望な男だったが、真面目すぎて萌子にはつまらなかった。そんなときに出会ったのが、どこか危険な香りのする海星だった。萌子はつまらない元カレより、男としての魅力を持ち合わせる海星に強く惹かれた。そのため、彼を捨てて新たに海星と付き合ったのだ。当然、彼が納得いくはずがない。彼は浮気を知ってもなお、萌子が自分の元に戻ってくることを強く望んでいた。萌子はそんな彼を疎ましく思った。そしてある日、海星の耳元で囁いた。『海星、アイツは私たちを恨んでいるわ。近いうちに復讐しに来るは
美里が箱を開けると、中に入っていたのはゴールドのネックレスだった。「お前に似合うと思って昨日買ったんだ」「わ、私に……?」美里は戸惑いを隠せなかった。前世で宗助に貰ったものといえば結婚指輪くらいで、他に彼から何かをプレゼントされたことはなかったからだ。驚いた美里は、後ろに控えていた秘書に目をやった。彼は微笑ましい様子で宗助と美里を眺めているだけだった。「……俺が着けさせてもいいか?」「……え、ええ」美里は困惑しながらも頷いた。彼女の反応を確認した彼は、箱に入っていたネックレスを手に取り、慎重に美里の首に着けた。彼女の首元で、彼がプレゼントしたネックレスが光り輝いていた。「
美里は宗真を完全に信じたわけでなかった。彼がどのような事情を抱えていようと、美里を前世で殺したことに違いはなかったからだ。「美里さん、よく来たね」「……話だけを聞きに来ました」「そう、まあ別にどんな理由だってかまわないさ」宗真が美里を呼び出したのは、都内にある高級レストランの一室だった。完全予約制のここは、多くの芸能人関係者が通うことでも有名なのだという。さすがにこんなところまでは城田家の人間も入ってこられまい。「宗助との婚約破棄を協力してくださると聞きました」「ああ」「どうしてですか?」美里は宗真の意図が読めなかった。「私に協力したところであなたには何のメリットもない
「お父さん、お母さん!二人に感謝の気持ちを込めて、今日は私が朝食を作ったのよ!」「美里……」「あら、まぁ……」テーブルの上に並べられた栄養バランスの整った和食に、両親は驚いた。美里がこれほどまでに料理ができたということを二人はまるで知らなかった。「お前、料理なんてできたのか」「こ、こっそり練習してたのよ」前世、美里は宗助と結婚してから料理教室に通い、必死の思いで料理を習得した。宗助は会食嫌いで有名だったが、美里の手料理だけはよく食べていた。美里はそのことが嬉しくて、毎日のようにご飯を作っては彼の帰りを待っていた。忙しくて帰ってこない日もあったが、それでも美里は毎日必ず彼の晩
「婚約破棄……?何を言っているんだ……?」「宗助、あなたには悪いと思っている。だけどね、私たちが結婚しても幸せにはなれないと思うの」「幸せだと?急に何を言い出すんだ」「あなたは今でも今野萌子さんのことを想い続けている。そうでしょう?」「……」宗助は黙り込んだ。それがまさに肯定を意味していた。彼はしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。「俺たちの結婚に愛なんてないのは当たり前だろ」「……!」胸がチクリと痛んだ。美里は宗助が自分を愛していなかったことを知っていたが、本人の口からハッキリと言われるのは辛かった。この結婚は宗助にとってはただの政略結婚にすぎなかったようだ。
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