瑠璃子が帰ったあと、美里は軽く服を着替えて外出していた。目的は、宗助との結婚に向けての準備だった。(結婚式の日だってそう遠くはないし……今からでも自分磨きをしておかないとね……)美里は十分美しかったが、やっぱり一生に一度の結婚式は最高の姿で臨みたいものだ。今からエステにでも行こうか。そう思っていたそのとき、突然口元をハンカチで押さえつけられた。「ウッ……」彼女の視界がぐるりと回り、意識を手放した。最後に見えたのは、知らない男の顔だった。***再び目を開けると、知らない天井が視界に広がった。(ここはどこ……?)起き上がると、ズキッと頭に痛みが走った。美里は額を手で軽く押さえながら、立ち上がった。早くここから出ないと。このままいればきっととんでもない目に遭う。彼女の直感がそう言っていた。あの日、宗真に拷問されたときと状況が瓜二つだったからだ。美里は唯一の出入り口であろう部屋の扉を開けようとするが、固く閉ざされていてビクともしない。(どうして開かないのよ……)小さな部屋には窓もなく、長年誰にも使われていなかったのか埃っぽかった。どうやらどこかの部屋に閉じ込められているようだ。美里は今になってようやくそのことを悟った。(そういえば私……誰かに気絶させられて……)そこまでは記憶に残っていたが、それ以降のことがまるでわからない。このような手口は宗真が前世で美里を誘拐した方法と酷似していたが、彼はきっと犯人ではないだろう。宗真はすでに宗助と和解し、薬物中毒も克服したのだ。美里を狙う理由なんてどこにもない。なら、一体誰が?美里はじっと考え込んだ。元々敵を作るタイプではない彼女のことだ。このようなことをする人間はかなり限られてくる。思考を巡らせた結果、一人の女が頭に浮かんだ。(ええ……信じたくないけれど、やっぱり彼女しかいないわ……!)美里の脳裏に、美しい女の歪んだ笑みが浮かんだ。――今野萌子。彼女以外には考えられない。(瑠璃子に言われたばかりだというのに……私ったら……)まんまと萌子の策略に嵌まってしまったこと、彼女を甘く見ていたことを美里は酷く後悔した。そのとき、外から足音がした。「……!」音はだんだんこちらへ近付き、閉ざされていたはずの部屋の扉が開いた。「……あなたは」入ってきたのは、知らない男だった。「起きたようだな」
Last Updated : 2026-04-21 Read more