Todos os capítulos de 今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか: Capítulo 11 - Capítulo 20

93 Capítulos

第11話

「お疲れ様です、お先に失礼します」「永山さん、お疲れ様」翌日の夜、残業を終えた美里は帰路についた。外はすでに暗くなっていて、今日は迎えの車も呼んでいない。真っ暗な道を歩きながら、美里はつぶやいた。「何だか久々に仕事をした気分だわ……」前世で彼女は宗助との結婚で勤めていた会社を寿退社している。宗助の両親が、嫁は家庭に専念するべきだと美里に退社を勧めたのだ。彼の両親に気に入られたかった美里はそれを受け入れた。「今世は結婚せずにバリキャリになるってのもいいわね……」そのとき、ゆっくり歩いていた美里のすぐ横に一台の車がとまった。運転席の窓が開き、中から若い男が顔を出した。「――お嬢さん、一人?こんな夜中に歩いてたら危ないよ。よかったら俺が家まで送っていってあげるよ」「……いえ、結構です」美里は当然、すぐに断りを入れた。しかし相手もなかなか退かなかった。「女の子が一人で歩いてたら危ないって!」「いやいやあなたのが百倍危ないから!」「俺いい人だよ?」激しい言い争いをしていると、ふいに男が美里の腕を掴んだ。「ちょ、ちょっと何するのよ!」「――こんなにも綺麗な子は初めて見たんだ」その瞬間、男の目が豹変した。いやらしい目つきで美里の身体を眺め始めたのだ。「さっき仕事で上司にキツく叱られてさ……ムカついてたんだよな……」「な、何を……」「女遊びでもしないとやってらんないんだよ!」「いや、やめて!誰か助けてください!」「この道は昼でも人通りが少ないからな、誰も助けになんて来ないさ」男が美里を車に引きずり込もうとしたそのとき――「――その人を放せ」「……!」突如背後から聞こえてきた低い声に、美里は背筋が凍った。聞き覚えのある声だったが、まったく安心できなかった。それどころか、体が石のように固くなっていく。美里はゆっくりと後ろを振り返った。「そ、宗真……くん……」前世で美里を拉致し、激しい拷問をした張本人――宗真だった。「何だ?知り合いか?」「お前、彼女が誰か分かっていてこんなことをしているのか?」「し、知らねえよ!」「彼女は永山家のお嬢様の美里さんだ。お前、バレたらただじゃ済まないだろうな」「な、永山家だと!?」永山家の名前を聞いた男の顔がみるみるうちに青くなっていく。そして顔が青くなったのは美里も同じだった。
Ler mais

第12話

美里と宗真は、すぐ傍の公園のベンチに並んで座った。お互いに口を開くことはなく、静寂があたりを包み込んだ。前世で義理の姉弟だったとはいえ、美里は宗真とあまり関わりがなかった。だからこそ、何を話せばいいか分からなかった。「宗助は……元気ですか」重い空気に耐えられなくなった美里は、適当に話を振った。宗真は何かを思いついたかのように彼女の方を向いた。「兄貴……そうだ、兄貴のことで美里さんに聞きたいことがあったんだ」「宗助のことで……ですか?」「――美里さん、兄貴と喧嘩でもしたのか?」「え、ど、どうしてですか……!?」「同窓会から帰ってきてからというもの、兄貴の様子が変なんだ」宗真はポツリポツリと宗助の変化について話し始めた。「心ここにあらずって感じでボーッとすることが増えてさ。兄貴、仕事のときにほかのことを考えているなんてことこれまで一回もなかったんだけど、最近はやたらと物思いに耽るようになって……」「そんな……宗助が……」美里は宗助の現状に驚きを隠せなかった。宗助はストイックで、仕事中に考え事をするなんてありえなかったからだ。「兄貴があんな風になるだなんて、美里さんと何かあったのかなーって……」「……」美里はまったく心当たりがないわけではなかった。喧嘩ではないものの、あの同窓会で宗助とは軽く言い争いをしている。しかし、それが原因だとは考えづらい。宗助は仕事に支障をきたすほど、美里を気にかけたことはなかったからだ。「……宗真くんの勘違いじゃないですか?宗助が私のことで悩むことなんてないはずですよ」「……美里さん」「きっと何かほかに原因があるんですよ。何かは私にはわかりませんけど……」「……そうだろうか」宗真は納得いかない様子だったが、これ以上聞いてくることはなかった。「美里さんは、もうすぐ兄貴と結婚するだろう?」「……」美里は何も言えなかった。宗助と結婚するつもりなどなかったのだから。「兄貴にはこれまで、何回か縁談の話が持ち上がってたんだけどさ……兄貴、全部断ってたんだよ」「宗助が……?」美里は驚いた。宗助が美里以外の女性との結婚を断っていたとは。萌子以外なら誰だってよかったのだと、彼女はずっとそう思っていた。宗真は驚く美里をよそに、話を続けた。「もちろん、俺にも縁談の話は来てたんだけどさ……顔合わせをした
Ler mais

第13話

「美里さん、今日は色々とありがとう」「いえ、こちらこそ……助けてくれてありがとうございました」宗真に家まで送ってもらった美里は、門の前で彼に礼を言った。「美里さんとたくさん話せて嬉しかったな」「私も宗真くんと話せて楽しかったです」いくら彼が複雑な事情を抱えているからといって、美里の前世の恨みが消えたわけではない。「送ってくださってありがとうございました」「ああ、また機会があったら話そう」美里は手短に挨拶を済ませ、鍵を開けて中へ入っていった。永山家の邸に入っていく美里の姿を、宗真はしばらくじっと見つめていた。そして彼女の姿が完全に見えなくなったあと、ポツリとつぶやいた。「やっぱり兄貴が選ぶ女性なだけあるなぁ……」宗真は公園で見た美里の姿を思い浮かべた。実は彼が今日、美里と会ったのは偶然ではなかった。宗真は美里に会いたくて彼女の勤務する会社の近くまで来ていた。美里に会いたかった理由はただ一つ。これまでずっと縁談を断り続けていた兄が選んだ女性と話をしてみたかったのだ。宗真は美里と知り合いではあったものの、会話をした記憶はほとんどない。宗真は兄と仲がいいわけではなかったし、美里はいつだって宗助と一緒にいたから。いつも兄の隣にいる美しい女性。それが宗真の美里への印象だった。「しかし不思議だな……今日の彼女からは兄貴への想いをまるで感じられなかった」宗真は美里がどれだけ宗助を愛していたかを知っていた。美里を知る者なら、彼女が宗助を深く愛していることくらい誰だって知っているだろう。しかし、今日会った彼女は宗助のことを話すとき、複雑な表情を時折見せていた。諦念に似たようなものだ。『宗助が私のことで悩むことなんてないはずですよ』美里はそう言っていたが、兄の変化はやはり彼女が原因に違いない。宗真にはそう思えてならなかった。「――お呼びでしょうか、お坊ちゃま」城田家の迎えの車を呼んでいた宗真の背後から、彼の執事が姿を現した。「……一つ頼みたいことがあるんだけど」「頼みたいこと……?」「――永山美里の動向を監視してほしいんだ」***「おかえり、美里。今日は遅かったわね」「今日は残業があってね……ちょっと遅くなっちゃった」帰る途中で襲われそうになった、なんて言ったら過保護な両親は卒倒するにちがいない。「あぁ……それと……実は途
Ler mais

第14話

「お父さん、お母さん!二人に感謝の気持ちを込めて、今日は私が朝食を作ったのよ!」「美里……」「あら、まぁ……」テーブルの上に並べられた栄養バランスの整った和食に、両親は驚いた。美里がこれほどまでに料理ができたということを二人はまるで知らなかった。「お前、料理なんてできたのか」「こ、こっそり練習してたのよ」前世、美里は宗助と結婚してから料理教室に通い、必死の思いで料理を習得した。宗助は会食嫌いで有名だったが、美里の手料理だけはよく食べていた。美里はそのことが嬉しくて、毎日のようにご飯を作っては彼の帰りを待っていた。忙しくて帰ってこない日もあったが、それでも美里は毎日必ず彼の晩御飯を用意していたのだ。宗助の喜ぶ顔が見たい、その一心で。「美味しいわ、美里」「ああ、優しい味がするよ」「よかった」今日は休みの日だ。美里は優しい両親に、前世ではできなかった親孝行をしたかった。「今日は流星くんと会うんだろう?」「ええ、彼の家に招待されたの。流星のお母さんとも久々に会いたいし」「そうか、楽しんできなさい」今日、美里は午後から流星の家に行く予定があった。数日前の夜、流星から近いうちに家に来ないかというメールが届いたのだ。彼が美里を家に誘うのは珍しいことだった。「流星ったら、彼女でも紹介してくれるのかしら?」昼食を終えたあと、美里は永山家の車に乗り込んだ。「流星の家までおねがい」「はい、お嬢様」美里の家から流星の暮らす萩田家までは車で二十分ほどだ。「到着しました、お嬢様」「ありがとう」車から降りた美里は、家のチャイムを鳴らした。しばらくして、足音と共に扉が開いた。「流星!急に呼び出すだなんて一体どうし――」邸宅の中から現れた人物を見て美里は固まった。いるはずのない人がそこにいたからだ。「そ、宗助……!?どうしてあなたがここに……!」「久しぶりだな、美里」萩田家の邸宅から出てきたのは流星ではなく、宗助だった。宗助と流星は小中学校の同級生で、幼なじみだ。しかし、少なくともお互いの家を行き来するほどの仲の良さではなかった。そんな宗助がどうして流星の家にいるのか。予想だにしない展開だった。「宗助……」固まったまま動けなくなった美里に、宗助がゆっくりと近付いた。「美里、俺という婚約者がいるのにほかの男に家に来るとはな…
Ler mais

第15話

しばらくして、車が城田家の邸宅の前でとまった。現在、宗助と宗真、そして両親の城田社長夫妻が暮らす家だ。美里は困惑した。次にここへ訪れるのは宗助との婚約破棄を社長夫妻に伝えるときだけだと心に決めていたからだ。「美里」宗助は車外から美里に手を差し出した。手を取ってくれという意味だろう。「……」美里は宗助の差し伸べた手を無視した。おとなしくついていくわけにはいかない。美里なりの抵抗だった。流星のこともあり、カッとなっていた宗助は自身を拒絶する美里の手首をつかんで車の外に引っ張り出した。「キャッ!」その勢いで転びそうになった美里の身体を、宗助が支えた。「……」美里は彼の胸に頬があたっているのを感じ、慌てて身体を離した。「宗助、やめて。家に帰して!」宗助は美里の声を聞かずに、彼女の腕を掴んだまま、邸宅の中へ入っていく。「――あれ、美里さん」「そ、宗真くん……!」邸の中で最初に出くわしたのは宗真だった。彼は物珍しそうに宗助と、彼に腕を掴まれている美里を見ていた。「これってどういう状況?」「宗真、そこをどけ」「あ、はーい」美里が宗真に視線で密かに送っていた助けてという気持ちは、うまく伝わらなかったようだ。宗真は宗助に道を譲り、去っていく二人の後ろ姿をしばらく見つめていた。「あれ、本当に兄貴だよな……?美里さんを拉致してきたのか?」仕事に身が入っていないことに加え、最近の宗助の様子は異常だった。今野萌子と引き離されたときですら、ここまでではなかったはずだ。「ふぅん……兄貴、美里さんに振られたことがそんなに悔しかったんだ……」宗真は手元の紙を眺めながらつぶやいた。***「キャアッ!」美里が連れてこられたのは二階にある宗助の部屋だった。殺風景な彼の自室が美里の視界を埋め尽くした。「宗助、何するつもりか知らないけれど、こんなこと……」宗助は美里が言い終わる前に、彼女をベッドに押し倒した。「宗助……!?」宗助は美里の顔の横に手をつき、彼女に覆いかぶさった。「……」美里はこの状況に困惑していた。宗助がここまで冷静さを欠くのを見たのは初めてだったから。「美里、お前は……アイツのことが好きなのか?だから俺との婚約を破棄したいのか?」「アイツ……?流星のこと?流星は婚約破棄とは何の関係もないわ」宗助は美里の答えに納得し
Ler mais

第16話

城田家からの帰り、美里は車内でついさっきの出来事を思い浮かべていた。宗助にベッドに押し倒され、はっきりと婚約は破棄しないと言われた。すべてがうまくいくと信じて疑わなかったのに、予期せぬ事態だった。しかめっ面で窓の外に目をやる美里に、運転手が笑いながら声をかけた。「宗助様は美里様のことをとても大切にされているようですね」「大切に……?そんなことないですよ、ただ世間体を気にしているだけでしょう」「……美里様にはそういう風に見えるんですね」運転手は困ったように眉を下げて笑った。運転手は城田家に仕えて長い。美里よりも前からずっと宗助のことを見てきている。「本当に私のことを思っているのなら、私の意思を尊重してくれると思いませんか?宗助ったら、自分勝手なんだから」「……宗助様は不器用なんですよ。あの方はあまり人前で感情をあらわにされないことは美里様もご存じではありませんか」「……それはそうですけど」宗助があれほど動揺している姿を、運転手は久しぶりに見た。彼女は幼い頃から両親からの愛を得られず、寂しい思いをしていた宗助のことを不憫に思っていた。そして美里なら宗助を幸せにしてくれると確信していた。今野萌子は宗助の初恋だったが、彼女は城田家の妻に相応しいと言える女性ではなかった。「さぁ、着きましたよ。美里様」「ありがとうございます」車から降りた美里は運転手に礼を言い、邸宅へ入っていった。「美里様……どうか宗助様をよろしくお願いします……」運転手は遠ざかっていく彼女の背中に向かってそうつぶやいた。***家に帰った美里は、真っ先に流星にメールを送った。彼が宗助に何かされていないか不安でたまらなかった。本当は会いに行きたかったが、城田の家の人間が美里についている今、勝手な行動はとれない。流星に会いに行っていることがバレたら、今度こそ何をされるかわからなかった。それから少しして、美里のスマートフォンが鳴った。流星からの返事が来たのだろうと開いたが、そんな期待は外れていたようで、別の人物からのメールだった。相手は何と――「宗真くん……?」メールの相手は宗真だった。何でも、話したいことがあるから今から電話をかけてほしいのだという。美里は宗真の携帯電話番号を知っていた。しかし、かけたことは一度もなかった。「もしもし、宗真くん」「ああ、
Ler mais

第17話

美里は宗真を完全に信じたわけでなかった。彼がどのような事情を抱えていようと、美里を前世で殺したことに違いはなかったからだ。「美里さん、よく来たね」「……話だけを聞きに来ました」「そう、まあ別にどんな理由だってかまわないさ」宗真が美里を呼び出したのは、都内にある高級レストランの一室だった。完全予約制のここは、多くの芸能人関係者が通うことでも有名なのだという。さすがにこんなところまでは城田家の人間も入ってこられまい。「宗助との婚約破棄を協力してくださると聞きました」「ああ」「どうしてですか?」美里は宗真の意図が読めなかった。「私に協力したところであなたには何のメリットもないのに……どうして宗助の意にそぐわないようなことを……」「……」宗真は黙り込んだ。宗助にこのことがバレたら弟とはいえ、彼もただでは済まないだろう。それでも美里に協力しようとする理由は一体何なのか。それが知りたかった。「理由は自分でもよくわかんないんだけどさ……」そこまで言うと、宗真は美里と目を合わせた。「――俺、欲しいものができたみたいなんだ」「……欲しいもの?」「ああ」彼は照れたように目を逸らしながらうなずいた。「それは、私が宗真くんに与えられるものですか?」「そうだな……美里さんにしか与えられないものだ。だから君に協力したいと思ったんだ」それで納得してくれないかな、と宗真は笑った。美里は悩んだ。宗真は美里の仇も同然の相手。しかし、ここで城田家の人間である彼の協力を得られるのは大きかった。「……宗真くんのことを信じたわけではありませんが、それで婚約破棄できるのなら」美里は宗真に手を差し出した。「……決まりだな」宗真は彼女の手を取り、二人は固く握手を交わした。「協力すると言いましたが、具体的にはどのようなことをするのですか?」「……俺に良い考えがあるんだ」「良い考え?」宗真は妙案を思いついたように、ニヤリと笑った。「――今野萌子を、白羽区に呼び戻すんだよ」「……………萌子を?」そのとき、美里の中である記憶がよみがえった。――『お前、今野萌子を白羽区に呼び戻した張本人が兄貴だって知らねえの?』死の間際、宗真に言われた言葉だった。美里は体が硬直し、冷たくなっていくのを感じた。「美里さん?どうかしたのか?」「あ、い、いえ……何でも
Ler mais

第18話

宗真と会った日の夜、美里はある疑いを抱いていた。前世で萌子を白羽区に呼び戻したのは宗助ではないのではないか……というものだった。あのときは心に余裕が無くて、宗真が嘘をついているという可能性を考えなかったのだ。何より、宗助の不倫現場を自らの目で見てしまったあとだった。しかし、宗助でないのなら一体誰が……?宗真が萌子を呼び戻したところで何のメリットもない。前世の彼は宗助を憎んでいたのだから、彼のためになるような行動を取るとは考えにくい。結局答えは出てこなかった。真相を知っているのは前世の宗助と萌子だけだ。「呼び戻したのが宗助ではなかったとしても、妻に内緒でこっそり会ってたのは理解できないわ!」しかも宗助は萌子の暮らすマンションにまで出入りしていた。そんな彼を信じることなどできなかった。美里は宗真との最後の会話を思い浮かべた。『俺は兄貴を呼び出すからさ、美里さんは萌子さんを呼び出す役な、決定!』『え、ちょ、まっ……噓でしょ!?』宗真が宗助を呼び出すのと、美里が萌子を呼び出すのでは全く難易度が違うことに彼は気付いていない。美里と萌子は大学時代特別仲が良かったわけではなかった。彼女が今どこで何をしているかすら知らないのだ。ただ聞いているのは、大学を退学したあとに故郷に身を寄せているという情報だけだ。困り果てた美里はスマートフォンを取り出し、ある場所に電話をかけた。「もしもし、瑠璃子?」「あら、美里。久しぶりね」電話の相手は美里の大学の同級生・山本瑠璃子(やまもとるりこ)だった。彼女は今探偵事務所を設立し、探偵として浮気調査などの多くの依頼を受けている。「瑠璃子、お金はいくらでも払うからちょっと調べてほしいことがあるの」「あら、いつになく真剣ね。もちろん、美里の頼みなら何でもやるわ」「――今野萌子という女性が今何をしているのか、どのようにして暮らしているのか。徹底的に調べ上げてほしいの」***同時刻、城田家の邸宅。「ただいま……って、兄貴。帰ってたんだ」「……」帰宅した宗真は、エントランスで宗助と出くわした。宗助は返事をしなかった。相変わらず無愛想だなと思いながらも、宗真は彼のあとについて行った。「兄貴、仕事は終わったのか?どうせ明日の朝にはいなくなってるんだろうけど」既に社会人として父親の会社で働いている宗助と違い、
Ler mais

第19話

「美里様、宗助様が今日の夕食をご一緒したいとおっしゃっています」「宗助が……?」その日、いつも通り出社していた美里の元に来客があった。相手は城田家の人間だった。勤務先にまで人を寄越すとは、一体宗助は何を考えているのだろう。美里は彼の考えが読めなかった。オフィス内にざわめきが広がった。「宗助って……まさかあの城田家の御曹司……!?」「そういえば美里さんは永山家のお嬢様だったわよね」「彼と一体どういう関係なのかしら……」美里と宗助との婚約はまだ誰にも知られていないことだ。当然、会社の人たちにも報告していない。彼との関係が噂にでもなってしまったら大変だ。美里は仕事を理由に断ろうとした。「仕事が立て込んでいていつ帰れるかわかりません。ですから今日は……」「永山くん!仕事のことは気にせず行ってきなさい!」「しゃ、社長!?」そのとき、突然どこからか社長が現れた。一体いつ来たのか、ずっと話を聞いていたのだろうか。「社長、ご無沙汰しております」「いえいえ!城田さんにはいつもお世話になっています!」「……」どうやら社長と宗助との間で既に話がついていたようだ。美里は何だかはめられた気分になった。「そうですよ美里さん!私たちのことは気にしないでください!」「御曹司様とのデート、楽しんできてくださいね!」「……」***夕方になり、社長に促され、いつもより早めに退社した美里はシンプルなパーティードレスに身を包んでいた。宗助が予約していたお店は普通の店ではなく、高級ホテルのレストランだった。当然、ドレスコードがある。「髪の毛は……面倒だしこのままでいいわ」「ですが美里様……せっかく城田様からのお誘いなのに……」「いいのよ、あなただって忙しいでしょう。急に押し掛けてしまってごめんなさいね」美里はもはや宗助の前で着飾ることに意味を見出せなかった。アイロンもかけることなく、ストレートヘアのまま美里は迎えの車に乗り込んだ。城田家の車で移動するのは未だに慣れなかった。「美里様、今日はとてもお綺麗ですね」「ありがとうございます、お世辞でも嬉しいです」運転手はそう言うが、美里はただドレスを着ているというだけで、それ以外は普段とまったく変わっていない。それでも輝いているように見えるのは彼女の元々の美貌のせいだろう。「お世辞ではありません、美里
Ler mais

第20話

宗助はホテルの前で美里を待っていた。見慣れた黒いスーツ姿の彼は、特段いつもと変わったところはないように思えたが、よく見ると髪型がほんの少しだけ違った。美里のために気を使ったのか、それともたまたまか。もはや彼女にとってはどちらでもよかった。「行こう、美里」「ええ、宗助」宗助は美里に手を差し出した。「宗助、そんなことして噂にでもなったらどうするつもり?」「何か問題があるのか?俺たちは婚約者なんだから」「……そうね」美里は悩んだ末に彼の手を取った。ここで反論したところで何の意味もないことを彼女はよく知っていた。宗助は一度決めたことは曲げない人だった。だから美里との婚約破棄も受け入れないだろう。それこそ、萌子のような彼の心を動かす存在が現れたのなら話は別だが。二人はホテルに入り、エレベーターを使ってレストランへと向かった。すれ違う人々が美里と宗助をチラチラと見ていた。そうなるのは不自然なことではなかった。二人は類稀なる美貌を持ち合わせていたのだから。「さっきの男、お前のことをチラチラ見ていたな」「あら、そう?まったく気付かなかったわ」宗助は不快そうに眉根を寄せた。美里は誰から見てもとても美しい女だった。男たちが彼女に向ける熱を帯びた視線は、宗助にとっては不愉快極まりないものだった。「ところで、さすがは有名ホテルといったところかしら。ここは従業員を含め綺麗な人が多いわね。何だか女としての自信をなくしてしまいそう」「……そうか?」宗助は美里の言葉を理解できなかった。今ここにいるどの女性よりも美里は美しかったからだ。それに、宗助は既に美里と萌子という絶世の美女を二人も知ってしまっている。今さら、他の女に目移りなどするわけがなかった。美里は宗助といる時間が苦痛だった。前世の辛い記憶が嫌でも頭に浮かぶからだ。しかしこれも、萌子が白羽区に帰ってくるまでの辛抱だと思うと何とか耐えることができた。レストランに到着すると、スタッフが美里と宗助を席まで案内した。彼が予約したのは、パープルを基調とした、上品で開放感のあるレストランだった。スタッフから軽く説明を受けたあと、美里たちの元に料理が運ばれてくる。宗助と二人で食事をするのは久しぶりだった。城田夫妻が亡くなったあと、宗助は多忙を極め、二人でゆっくりとする暇などなかったのだから。「気に
Ler mais
ANTERIOR
123456
...
10
ESCANEIE O CÓDIGO PARA LER NO APP
DMCA.com Protection Status