Todos os capítulos de 今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか: Capítulo 51 - Capítulo 60

93 Capítulos

第51話

「まぁ……!」真奈美と商人の二人が驚きで声を上げた。もちろん美里も例外ではなかった。「宗助、あなたなかなかやるじゃない!さすがは自慢の息子よ!」「何て素敵なんでしょう……!まるで目の前でプロポーズを見ているみたいです!」宗助が選んだ指輪は有名ブランドのもので、真ん中に大きなダイヤモンドがセッティングされており、まるで婚約指輪のようだった。前世で美里は彼から婚約指輪をもらわなかった。彼はそのようなものは気にしていなかったし、美里もとくにねだるような図々しい真似はしなかった。「――美里」彼は美里の左手をそっと取ると、薬指に指輪をはめた。偶然か、リングは美里の指にピッタリとはまった。「……」彼女は自身の薬指で輝くダイヤモンドをじっと見つめていた。ふいに彼を見上げると、照れたように視線を逸らした。「美里さん、よかったわね!」真奈美が美里の肩をポンポンと叩いた。***その日、美里は夜になるまでずっと、宗助からプレゼントされた指輪をはめたままだった。断らなければいけなかったのに、結局彼からの贈り物を受け取ってしまったのだ。「宗助」「美里……?」美里は夕食後、一人になった宗助を呼び止めた。最近の彼の行動には驚かされてばかりだった。美里は彼の口から直接真意を聞きたかった。大事なことを何も言ってくれないのはもうこりごりだったからだ。「あなたは……どうして……」美里が口を開きかけたそのとき、宗助が彼女の言葉を遮った。「――お前は俺がまだ萌子に想いを寄せていると思っているのか」「……!」宗助の顔は不満げだった。「あの日、萌子さんと会ったでしょう」「彼女とは何もなかった。俺はもう、萌子を過去のものとしてしか見ていない」「……」美里は驚愕した。てっきり宗助はまだ萌子を好きだとばかり思っていたからだ。「最近、夢を見るんだ」「夢……?」「お前が俺の胸の中で死んでいく夢だ。夢で見るお前は血まみれで、何故かいつもすごく悲しそうな顔をしている」「それって……」もしかして、宗助も前世の記憶を持っているのか。美里は疑念を抱いたが、どうやら彼はただの夢だと認識しているようだ。そんな彼に前世の記憶を持っていることを話したところで、きっと理解してもらえないし、頭がおかしくなったと思われるだけだろう。「正直まだよくわからないんだ。俺がお前をどうし
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第52話

「冗談……だよね……?宗助……今さらそんなこと言っても私、嬉しくないよ……」「美里、俺は本気だ」宗助は美里を壁際に追い詰めた。「嫌、来ないで!」「美里」美里は愛の告白をした彼を拒絶した。「宗助、あなたも知っているはずよ。忘れたとは言わせないわ」美里は涙目で宗助を見上げた。「あなたはかつて私にどれだけ今野萌子を愛しているかを平然と語り、婚約しても私のことは見ようともしなかった!」「……」「あなたはいつだって私に無関心だったわ!何を言っても決まった返事しか返さない。今野萌子がいなくなってからは余計に……」美里の悲痛な叫びに、彼は何も言えなかった。たしかにそのような過去が存在したからだ。彼は美里が婚約破棄を申し出るまで、まともに彼女を見たことがなかった。彼は美里が永遠に自分の傍にいてくれるのだと、心のどこかで勝手に思っていた。そんなことあるはずがないのに。「今になって愛してるだなんてそんなこと言わないで、宗助。いいえ、城田さん」「美里……」美里はこれまでずっと、彼が婚約破棄を渋る理由は永山家にあるのだと思っていた。城田家のことを考えれば、永山家と繋がりを持ちたいと思うのは当然のことだったから。城田さんとあからさまに他人行儀な呼び方をされた宗助はショックを受けた。「城田さん、この話は聞かなかったことにするわ。あなたは私を愛してなんていない。さっきのはあなたの勘違いよ」「美里、待ってくれ!」走り去る美里を追いかけようとした宗助を、突如激しい頭痛が襲った。「ッ……」彼は痛みで頭を押さえた。目を閉じた彼の頭の中に、走馬灯のように知らない記憶が流れた。自身と美里が共に暮らし、ただお互いにすれ違っていくだけの日々。記憶の中の美里は夢と同じように切ない瞳で笑っていて。胸がギュッと締め付けられた。「…………何だ?今のは……」目を開けると、既に美里はいなくなっていた。夢で見た知らない記憶が、突然頭に流れてきたのだ。困惑しないはずがない。彼はわけもわからないまま、一人廊下に取り残された。***一方、美里は城田家の廊下を早足で歩いていた。今は彼の顔を見たくなかった。本音を言うと、今すぐここから出て遠くへ行きたかった。できるだけ遠く、宗助の手が及ばない場所に。そんなことを考えながらしばらく歩いていると、曲がり角である人物とぶつかった
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第53話

どうして社長がここに。社長は仕事で遅くなると聞いていた美里は、目の前にいる和寿を見て驚きを隠せなかった。「社長……」「何だ?私の顔に何か付いているのか?」「あ、いえ……ただ仕事で遅くなると聞いていたものですから……」帰宅したばかりなのか、和寿はまだスーツ姿だった。近くで見てみると、本当に宗助にそっくりだと美里は思った。見た目も性格も、宗助は父親によく似ていた。「家内から美里さんが泊まりに来ていると聞いたからな。仕事を早めに切り上げてきたんだ」「あ……そうでしたか……」「ところで何故泣いている」美里の目からは既に涙が引っ込んでいたが、彼の目は誤魔化しきれなかったようだ。和寿は二人の息子や社員たちに対しては厳しく接していたが、嫁いできた美里や他人に対しては比較的柔和な人だった。「どうやら宗助と何かあったみたいだな」「あ、いえ、違うんです……」美里は慌てて否定しようとしたが、それより先に和寿が動いた。彼は秘書に何かを短く命じると、再び美里に向き直った。「美里さん、時間はあるか?――少し話そう」***美里は初めて和寿の書斎に入った。前世でも彼と関わる機会はほとんどなかったし、宗助に必要以上にキツく当たる姿を日ごろから見てきていたせいか、あまり好きにはなれなかった。目の前に座る和寿の背後には秘書が付き添っており、部屋に緊張感が走った。出されたお茶を飲んだところで落ち着かなかった。彼がどのような意図で美里をここへ連れてきたのか。和寿はしばらく何も言わずに、美里を見つめていた。「落ち着いたようだな」「あ、はい……」どうやら美里の気持ちが落ち着くまで待っていたようだ。「美里さん、君がそのような姿を見せるなんて珍しい。前に婚約破棄を申し出たことと言い……今の君はまるで別人のようだな」「あ……」たしかに美里はかなり変わった。自分に興味なんてないと思っていた和寿がそのようなことを口にするのは意外だった。「宗助は気に入らないか?」「い、いえ、そんな!滅相もございません!」美里は慌てて首を横に振った。彼は誰から見ても完璧な人だったし、何より父親である和寿の前で彼の不満を言うわけにはいかない。「……君の言いたいこともわかる。宗助は無愛想で口数が少ないからな」「社長……?」「――ただな、親としては大切な息子をちゃんとした女性と結婚さ
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第54話

「……私は本当は城田家の後継者ではなかったんだ」城田和寿は、先代社長の次男として生を受けた。彼には三つ上の兄がいた。幼い頃から冷たく無愛想だった彼とは正反対で、兄は明るく誰に対しても気さくな人だった。そのため、彼を始めとした数多くの人から慕われていた。和寿は社長になるつもりはなかった。冷酷な自分より、穏やかで心優しい兄のほうが相応しいと思っていたからだ。「兄は人が良いせいで、多くの人間に付け込まれた。愛していた婚約者にも裏切られ……最後は精神を病んで亡くなってしまった。兄の抱えていた悩みに気付いたのは、彼が亡くなったあとだった」「社長……」兄が亡くなったことで彼は次の社長に就任した。残忍さを持ち合わせた彼は、自身の兄を追い詰めた者たちを何の躊躇もなく次々と処断していった。「城田家の人間として生まれた以上、悪意のある人間たちが寄ってくるのは避けられない。宗助にも宗真にも、そのことをよく知っておいてほしかった。優しさだけでは、その座は務まらないのだ」社長の言っていることには説得力があった。「あの子は次の城田財閥を背負って立つ男だ。立派な後継者として育てたかったし……何より兄のような末路を迎えてほしくなかった」「……」美里はずっと城田和寿という人間を誤解していたことに気が付いた。彼は悪い人ではなかった。二人の息子に厳しくしていたのは彼なりの愛情表現だったのだ。そのことを知った途端、美里の緊張がほぐれていくようだった。「……社長は、ご夫人とは政略結婚だったと聞きました」「ああ、そうだな」「お二人はとても仲がよろしいですよね!」「……そういう風に見えるのか」「よろしければ、お二人の昔の話をお聞きしたいです!」キラキラした目で見つめる美里に、和寿は断ることができなかった。「そうだな、第一印象はあまり良くなかったな……」「え!?そうだったのですか!?」真奈美は城田財閥と肩を並べるほどの有名企業の社長令嬢だった。そんな二人は愛で結ばれたわけではなく、政略結婚だった。真奈美のことは和寿も知っていた。彼女は我儘で気位の高いお嬢様として有名だったからだ。「社長、恐れ入りますが……真奈美様との婚約はお断りするべきかと……」「何故だ?」「何故って……彼女の噂を知らないのですか?」「知っているさ、別にどうだっていい。他に結婚したい人がいるわ
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第55話

和寿は驚きで固まり、彼の秘書の顔が青くなった。真奈美はそんな彼を見て不思議そうに首をかしげた。「ちょっと、どうして黙っているのよ?」「……」和寿はこみ上げてくる笑いを必死で抑えた。今まで彼にこのような無礼な態度を取る人間は見たことがなかったからだ。逆に新鮮で面白かった。真奈美は噂通りの我儘なお嬢様だった。「あなた、この私と結婚できるなんて運が良いわね」顔合わせの日、彼女に良い印象を抱いたわけではなかった。しかし、このくらい気の強い女のほうが城田家の妻として相応しい。そう思った和寿は結婚の準備を進めた。二か月後、和寿と真奈美は結婚した。真奈美の望み通り、結婚式は盛大に行った。和寿はそのような催しに興味がなかったが、夫として妻の希望はできる限り叶えてやりたかった。別に彼女を愛していたというわけではない。ただ愛を与えてやれないかわりに、彼女を妻として尊重したいという和寿なりの気遣いだった。「社長!奥様の浪費が激しいです!」「……好きにさせておけ、私は興味が無い」真奈美に負い目があった彼は、彼女の浪費に口出しすることはなかった。真奈美は我が強く、一緒にいて疲れを感じるようになると、次第に家に帰ることも減っていった。そんな彼を咎めたのは母親だった。「和寿、あなたいつになったら子供を作る気なの?」「母上……」和寿は子供を持つつもりはなかった。自分が子を作らなかったところで、城田家の血が完全に途絶えるわけではなかったからだ。亡き父には兄弟が何人もいるし、城田家の血を引く者はたくさんいる。しかし、親として孫の顔を見たいと思うのは当然のことだった。「和寿、真奈美さんのことが気に入らないの?」「母上、そういうわけでは……」「そうね、なら別の女を用意するわ」「母上……?」その日から、母は彼にたびたび愛人を紹介するようになった。「城田社長と縁を持つことができてとても幸せです。私なら社長の子を立派に育てられると思います」「……」猫撫で声で彼に身体を寄せる女たちに、彼は嫌悪感を隠しきれなかった。野望を隠し、彼に媚びを売るその姿は兄を捨てた婚約者にそっくりだった。彼女たちよりかは真奈美のほうが百倍マシだと、和寿は思った。この頃から、彼は少しずつ家に帰るようになった。「あら……旦那様、お帰りなさい」真奈美は久しぶりに帰宅した和寿を見
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第56話

真奈美は幼い頃からどうしようもないくらい我儘な女だった。彼女がそのことに気付いたのは和寿と結婚したあとだった。結婚して早々、彼が家に帰ってこなくなったからだ。「どうして旦那様は家に帰らないのかしら……」実は真奈美は初めて和寿と会った瞬間から、彼を好きになっていた。彫刻のように整った顔立ちの彼に一目惚れしたのだ。彼との結婚を強く望んだのは真奈美のほうだったのだ。しかし彼は彼女を愛していなかった。真奈美も薄々そのことに気が付いていた。「いいわねぇ、毎日家にいるだけで。和寿の心を掴むこともできないくせに……」「お義母様……」おかげで義母からは毎日のように責められ続けた。何かあるとすぐに真奈美のせいにされ、作った料理は美味しくないと残される。おまけに愛する夫は家に帰らない。彼女の結婚生活は幸せとはいえなかった。そこで真奈美はようやく、自分のこれまでの行いを見直した。彼女は常に上から目線で、彼の気を引きたいがために散財を繰り返していた。自分が和寿の立場なら、そんな女を愛することなんてできないだろう。やっとそのことに気付いたのだ。「旦那様、お茶を淹れますね」「ああ」彼女が心を入れ替えると、彼との仲も次第に縮まっていった。それから三年後に真奈美は妊娠し、宗助が生まれた。その二年後には第二子となる宗真が。「知りませんでした……夫妻にそのような過去があったなんて」「私たちの結婚は周囲に絶対にうまくいかないだろうと言われていた。お互い、性格に難アリだったからな」和寿は苦笑した。普段無愛想な彼からは想像もつかないほど穏やかな笑みだった。「だがな、人生は何があるかわからない。数年以内に離婚すると言われていた私たちも今年で結婚三十年目だ」美里は彼の話をじっと聞いていた。「最初はすれ違いばかりだったが……私はね、彼女のような人と結婚できてよかったと……今ではそう思っているよ」真奈美もちょっと前に似たようなことを言っていたのを思い出した。自身の名誉ばかりを重んじていると思っていた彼が、そのようなことを思っていたなんて。美里は和寿の言葉に驚きを隠せなかった。「社長夫人はずいぶん変わられたんですね」「そうだな、昔に比べると今はだいぶ落ち着いたな。まぁ、結婚を機に変わったのは私もだが」和寿はお茶の入ったティーカップをそっと机に置いた。「美里さん、私
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第57話

「美里様、お部屋まで案内します」和寿の書斎を出た美里は、彼の秘書と二人で邸宅を歩いていた。美里は心ここにあらずだった。彼があのようなことを口にするのは意外だった。家庭を顧みず、会社のことしか考えていないと思っていた和寿が実際は息子のことをちゃんと気にかけていたのだ。「私は……何も知らなかった……」そう考えると、何だか自分が情けなく思えてきた。「美里様、こちらがお部屋になります」「……じょ、冗談ですよね?」「いえ、奥様からはこちらの部屋に美里様をとうかがっております」美里が案内されたのは、なんと宗助の自室だった。「社長夫人……私と宗助に一線を越えさせようとしているのね……」「奥様は美里様と宗助様の仲が深まるようにと……そうおっしゃっておりました」秘書が一礼すると、彼は美里の前から去って行った。二人での時間を存分に楽しめという意味だろう。仕方なく美里は扉をノックした。「……美里?どうかしたのか?」扉から顔を覗かせた宗助は、驚いた顔で彼女を見つめていた。あのようなことがあったあとだから、驚くのは当然だった。「夫人からこの部屋を使うようにと言われたの」「母上が……?」宗助は母の意図を知り、彼女を部屋へ招き入れた。美里が彼の部屋へ入るのは、以前宗助に強引に連れてこられたとき以来だった。あのベッドに押し倒されたことを考えると、彼女の顔が赤く染まった。普段スーツを着ている宗助の寝間着姿に加え、彼女はドキドキしっぱなしだった。時刻は既に深夜の一時。いつもならとっくに寝ている時間だ。「……私はソファで寝るわ」部屋にあるソファへ向かう美里の手を宗助が掴んだ。「美里、お前はベッドで寝ろ」「あなたと同じベッドで眠れるわけがないでしょう?」「俺がソファで寝るから、お前がベッドを使え」「……何ですって?」それだけ言うと、宗助はさっさとソファに横になった。彼は美里をどうしてもベッドで寝かせたかったようだ。「……腰痛になっても知らないわよ」美里の彼のベッドに横たわった。こうしていると、あのときのことが頭に浮かんだ。宗助が彼女をベッドに押し倒し、上から覆いかぶさったときのことだ。彼女の細い手首を押さえた彼の骨ばった手の感触が今でも残っていた。彼女は早く忘れたいという一心で、目を閉じた。しかし、いつになっても睡魔は襲ってこない。「……
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第58話

「あら二人とも、その顔はどうしたのよ!」 「「……」」 朝になり、目の下に大きなクマを作って現れた美里と宗助に、真奈美が心配そうに声をかけた。 昨日はお互いによく眠れなかった。美里は一睡もできず、宗助も夜中何度も起きてしまったほどだ。 「まぁ色々あったのだろう、詮索はよしなさい」 何となく事情が想像つく和寿は、初々しい二人に思わず苦笑した。 「何でもありませんから心配しないでください、母上」 城田家では久々に穏やかな朝の時間が流れていた。今日は宗助も美里も仕事がある。あと一時間後にはそれぞれ出勤しなければならなかった。 そのことに気付いた真奈美が名案を思い付いたかのように声を上げた。 「せっかくだし宗助、美里さんを車で職場まで送っていってあげたら?」 「え、そんな……そこまでしてもらう必要はないですよ」 宗助には普段城田家の運転手が付いているが、彼がドライブを趣味としていたことは美里も知っていた。多忙を極める今でもなお、週に一度は必ず運転をしているのだという。 「わかりました、母上」 「宗助、あなた今日寝不足でしょう。運転は控えたほうが……」 美里がそう言うと、彼は不満そうに眉をひそめた。 「お前は俺が事故を起こすような男に見えるか?」 「い、いいえ……」 昔から何でも完璧にこなす天才肌の宗助は運転がかなり上手かった。彼は自分の運転の腕に絶対的な自信があった。 「長距離運転するわけでもないんだから平気だ。すぐに着くさ」 宗助は車のキーを受け取ると、美里についてこいと目で合図した。 *** 宗助の愛車は城田邸の車庫に何台かあったが、彼が美里を乗せたのは真っ黒なSUVだった。 目立たないよう後部座席の乗ろうとしていた美里に、彼は助手席に座るよう指示した。 彼がエンジンをかけ、車を発進させた。美里はそんな彼を横目でチラチラと見つめていた。宗助の運転する車に乗るのは久しぶりだった。 彼は常に一人で運転することを好み、助手席に誰かを乗せるのをあまりしたことがなかったのだ。 「この道で合ってるよな?」 「ええ、わざわざあなたが送ってくれるだなんて優しいのね。ありがとう」 「……」 宗助はハンドルを握って視線を前に固定したまま、美里に話しかけた。 「……お前はまだ俺との婚約を破棄したいのか」 「……ええ、そうね」 美
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第59話

それから少しして、車は美里の職場へと到着した。美里は宗助の車から降り、彼に礼を言った。「送ってくれてありがとう」「ああ」美里は軽く手を振ってビルへ入って行った。宗助は彼女が見えなくなるまでその後ろ姿を眺めたあと、車を発進させ、来た道を戻って行った。そんな二人の様子を、物陰からある人物が見つめていた。「やっぱり……あの二人付き合っているんだわ……」美里の勤務先のビルの柱の陰に身を潜めていたのは里奈だった。彼女は唇を噛み、わなわなと握りしめた拳を震わせていた。里奈はあのパーティーのあと、噂の真偽を確かめるために探偵を雇い、宗助のことを徹底的に調べさせた。その結果、美里と宗助の婚約が決まっているということを知ったのだ。「宗助は美里のことなんて何とも思ってないって……そう思ってたのに……」里奈は爪を噛んだ。彼女は宗助と美里の仲の良さを昔から知っている。仲がいいとは言っても主に美里の一方通行で、宗助はまったく相手にしていなかったが。里奈は中学時代の美里を思い浮かべた。幼いながらに生まれ持った美貌は目立っていて、当時から異常なほどの男子人気を集めていた。里奈はそんな美里を見るたびに激しい嫉妬心を抱いた。同じ女である里奈から見ても、彼女は本当に美しかったからだ。里奈はこれまでどれだけ自分が彼に認識してもらえなくとも平気だった。美里という自分より惨めな存在が身近にいたからだ。しかし――ついさっきまで美里の後ろ姿を見つめていた宗助の目。あれは何とも思っていない人間に向ける視線ではなかった。どこか切なげで、恋焦がれているかのような……。「あれじゃまるで……彼が美里を愛しているみたいじゃない」里奈はその事実を認められないまま、車に乗り込んだ。彼女は父親の経営する食品会社で社員として働いている。社員とは言っても名ばかりだった。社長令嬢である里奈に与えられる仕事はほとんどなく、彼女は昼間から堂々と遊び歩いていた。「そういえば……宗助には弟が一人いたわよね?」そのとき里奈は中学時代に何度か見た宗助の弟・宗真の存在を思い出した。「弟?城田家に次男なんていたんですね。まったく知りませんでした」宗助とは違って知らない人も多いほど影の薄い弟だった。見た目はちょっとだけ似ているが、それ以外は正反対で、兄弟仲もあまりよくないという噂を里奈は聞いたことが
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第60話

「姉さん、結局最後まで部屋から出てこなかったなぁ……」「あの子にも困ったわね」一方今野家の邸宅では、修人が両親と最後の挨拶をしていた。「もう行ってしまうの?」「ああ、明日からまた仕事が始まるからね」「そうか、寂しくなるな」「そんな顔しないでくれ、一年に一回は帰ってくるからさ」修人は両親に見送られながら挨拶を済ませ、実家を出ようとした。そのとき、突然二階から慌てて階段をおりてくる音が聞こえてきた。「修人!私も行くわ!」「ね、姉さん……!?」おりてきたのは姉の萌子だった。萌子は一体いつ準備を済ませたのか、大きなスーツケースを抱えていた。「私も一緒に連れて行って!」「何を言っているんだ萌子!」止めようと伸ばされた父親の手を、萌子が掴んだ。「お父さんお母さん、私引きこもってる間によく考えたの。このままじゃいけないと思って」「萌子……?」「私ね、やり直したいの。ここは田舎で出会いもほとんどないでしょう?だから修人の暮らす田島区で新しい生活を始めたいのよ」「……」父と母は顔を見合わせた。ついさっきまで心を病んで部屋に閉じこもっていた萌子を送り出すのが不安なのだろう。「そんなに心配しないで。修人だっているんだし!私も向こうでちゃんと就職するつもりだから」「そうだな……」両親は自らの過ちで娘に大学を中退させてしまったことに負い目を感じていた。だから彼女が望むことならできる限り叶えてやりたかった。もちろん、そうすることで過去が消えるわけではないが。「そこまで望むなら仕方ない。向こうでしっかりやれよ」「ありがとう、お父さん!」萌子は満面の笑みで父親に抱き着いた。***萌子は修人の車に乗り込み、二人で彼の暮らす田島区へと向かった。運転席に座った修人は、助手席から外を眺める萌子にチラチラと視線を送っていた。「……姉さん、一体何を考えているんだ?」「何のこと?」萌子はとぼけたが、修人は姉が何かを企んでいるような気がしてならなかった。修人の暮らす田島区から白羽区まではそれほど遠くはなく、電車で二十分もすれば着く。元々白羽区に住んでいた萌子がそのことを知らないはずがない。「俺にも言わないつもりか」「あなたが私に何を思っているのかわからないけれど……私に対する罪の意識があるのなら、私の行動に口を挟まないでくれないかしら?」
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