それから数日が経ち、萌子が故郷へ帰り、社長夫妻が海外出張から戻ってきた。美里は今日こそ社長夫妻に宗助との婚約破棄を告げることを心に決めていた。いつまでも先延ばしにしておくわけにはいかない。城田家の本邸へと訪れた美里を、社長夫人・城田真奈美(しろたまなみ)が出迎えた。前世で彼女の義母だった人だ。社長夫人はすでに五十を過ぎていたが、年齢のわりには若々しく、華があった。あの宗助と宗真の母親なだけある、と美里は思った。夫人は元々大企業の社長令嬢で、後に城田財閥の長男だった社長と結婚した。「あら、美里さん。久しぶりね」「お久しぶりです、社長夫人。社長はいらっしゃいますか?」「あの人なら部屋にいるはずよ。呼んできましょうか?」「はい、お願いします」社長夫人はお茶を淹れると、部屋を出て行った。美里がしばらく客間でじっとしていると、扉が開いた。「あ……」「よく来たね、美里さん」社長夫人と共に入ってきたのはスーツを着た初老の男性だった。ひげを生やし、威厳を保っているその姿は、まるで三十年後の宗助のようだった。「お久しぶりです、社長」宗助と宗真の父親であり、城田財閥のトップ――城田和寿(しろたかずとし)だ。「そうかしこまらないで、楽にしてくれ」「は、はい……」和寿は口元に笑みを浮かべながらそう言ったが、美里はまったく安心できなかった。彼がどれだけ厳格な人であるかを彼女はよく知っていたからだ。「社長、私……宗助との婚約をなかったことにしたいんです」「何ですって!?」真っ先に反応したのは真奈美だった。「美里さん、あなた自分が何を言っているかわかっているの!?この婚約は城田家と永山家の間で決められた――」「落ち着け、真奈美」そんな妻を、和寿が止めた。慌てふためく妻とは対照的に、和寿は冷静だった。「美里さん、婚約を破棄したいということはそれなりの理由があるんだろうな?」「……はい、もちろんです」「聞かせてもらおう」和寿が机を指でトンッと叩いた。この人は昔から何を考えているかわからない。美里は彼のそのようなところが苦手だった。「……私は城田家の妻には相応しくありません。私よりも適任がきっといらっしゃるはずです」美里は宗助と萌子のことはあえて言わなかった。二人を婚約破棄の理由にしてしまえば、きっと社長夫妻は再び彼らを引き離そうとするだろ
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