Todos os capítulos de 今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか: Capítulo 41 - Capítulo 50

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第41話

それから数日が経ち、萌子が故郷へ帰り、社長夫妻が海外出張から戻ってきた。美里は今日こそ社長夫妻に宗助との婚約破棄を告げることを心に決めていた。いつまでも先延ばしにしておくわけにはいかない。城田家の本邸へと訪れた美里を、社長夫人・城田真奈美(しろたまなみ)が出迎えた。前世で彼女の義母だった人だ。社長夫人はすでに五十を過ぎていたが、年齢のわりには若々しく、華があった。あの宗助と宗真の母親なだけある、と美里は思った。夫人は元々大企業の社長令嬢で、後に城田財閥の長男だった社長と結婚した。「あら、美里さん。久しぶりね」「お久しぶりです、社長夫人。社長はいらっしゃいますか?」「あの人なら部屋にいるはずよ。呼んできましょうか?」「はい、お願いします」社長夫人はお茶を淹れると、部屋を出て行った。美里がしばらく客間でじっとしていると、扉が開いた。「あ……」「よく来たね、美里さん」社長夫人と共に入ってきたのはスーツを着た初老の男性だった。ひげを生やし、威厳を保っているその姿は、まるで三十年後の宗助のようだった。「お久しぶりです、社長」宗助と宗真の父親であり、城田財閥のトップ――城田和寿(しろたかずとし)だ。「そうかしこまらないで、楽にしてくれ」「は、はい……」和寿は口元に笑みを浮かべながらそう言ったが、美里はまったく安心できなかった。彼がどれだけ厳格な人であるかを彼女はよく知っていたからだ。「社長、私……宗助との婚約をなかったことにしたいんです」「何ですって!?」真っ先に反応したのは真奈美だった。「美里さん、あなた自分が何を言っているかわかっているの!?この婚約は城田家と永山家の間で決められた――」「落ち着け、真奈美」そんな妻を、和寿が止めた。慌てふためく妻とは対照的に、和寿は冷静だった。「美里さん、婚約を破棄したいということはそれなりの理由があるんだろうな?」「……はい、もちろんです」「聞かせてもらおう」和寿が机を指でトンッと叩いた。この人は昔から何を考えているかわからない。美里は彼のそのようなところが苦手だった。「……私は城田家の妻には相応しくありません。私よりも適任がきっといらっしゃるはずです」美里は宗助と萌子のことはあえて言わなかった。二人を婚約破棄の理由にしてしまえば、きっと社長夫妻は再び彼らを引き離そうとするだろ
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第42話

「驚いたわ……こんなにもすんなりと婚約破棄を受け入れてもらえるだなんて……」「城田さんは昔から何を考えているかわからないからな」城田家の邸宅から戻った美里は、婚約破棄の件について前向きに検討してもらえていることを両親に報告していた。「社長夫人は納得していないようだったけれど……社長を説得できたのは大きいわ」全ての決定権は社長にあるのだ。彼が決めたことなら夫人も反対することなどできないだろう。「宗助くんは納得しているのか?」政則の問いに、美里は最後に見た彼の姿を思い浮かべた。萌子が宗助に抱き着き、彼が優しく彼女を受け止める姿。その姿を思い浮かべると、美里は今でも胸がチクリと痛んだ。彼女は自分のその気持ちに気付かないフリをした。何の意味もないものだと、彼女はよく知っているからだ。「まだきちんと話していないけど……宗助は萌子さんに再会して心が揺れているようだったわ、きっとすぐに婚約破棄を望むようになるはずよ」笑顔でそう言った娘の姿に、両親は何も言えなかった。美里が宗助への未練を未だ断ち切れていないことに彼らは気付いていたからだ。「そ、そういえばもうすぐクリスマスだな」父親の政則は場の空気を明るくしようと、話題を変えた。今日は二十三日で、クリスマスまではあと二日だった。クリスマスという言葉に、美里は顔をパァッと明るくした。「実はね、二十五日に流星たちを呼んでクリスマスパーティーをするつもりなの」「あら、それはいいわね」「これまでとは違ってこじんまりとしたパーティーなんだけど……久しぶりだからとっても楽しみ!」いつもの調子に戻った娘に、両親は安心した。***白羽区から故郷へ帰った萌子は、あの日からずっと仕事を休んで部屋にこもっていた。祖母や両親が外から声をかけても、何の返答もない。宗助の両親が未だに金銭的な援助を続けているので、萌子が仕事に行かなかったところで何の問題もなかった。萌子は宗助の冷たい目を未だに忘れられずにいた。「どうして……どうしてあの人は変わってしまったの……」萌子はこの五年間、ずっと宗助を想い続け、カフェの客や近所の男たちに言い寄られても断ってきた。いつか社長夫妻が亡くなり、二人の間にあった障害が消えたとき、きっと彼は自分を迎えに来てくれる。彼女はそう確信していた。だからこんな慎ましい暮らしにも耐えてこられた
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第43話

クリスマス当日。美里は白羽区にあるレンタルスペースを貸し切り、クリスマスパーティーを開いていた。彼女が招待したのは流星と瑠璃子の二人だ。「二人とも、日ごろ私の我儘に付き合ってくれるお礼よ!今日は存分に楽しんでいってちょうだい!」「クリスマスに誰かと過ごすなんて何年ぶりかしら……」「こういうところでのパーティーも、たまには悪くないな」テーブルの上にはチキンやホールケーキ、ピザやポテトなどの料理が並んでいた。「これ、全部美里が作ったの?」「もちろん!二人のために作ったんだから!」「す、すごいな……美里、こんな料理できたんだ……」料理は美里の特技の一つだった。前世で宗助を喜ばせたくてたくさん練習した腕が今でも残っていた。「美里の手料理が食えるなんて……なんて幸せなんだ」「この時期になるといつもあの人と過ごした記憶がよみがえってくるわ……私も慣れない料理をたくさん練習したっけ」「二人とも、乾杯しよう乾杯!」カシャンッとワイングラスのぶつかる音で、美里たちのクリスマスパーティーが幕を開けた。「ところで美里、宗助くんと過ごさなくてよかったの?」「宗助?どうして?」瑠璃子の問いに、美里はきょとんとした。「クリスマスって普通恋人や婚約者と過ごすものでしょう?そんな大事な日を、私たちと一緒にいていいのかなって……」瑠璃子と流星は不安げな顔で美里を見た。美里はそんな二人を安心させるように笑った。「気にしないで、宗助は今日も仕事で忙しいみたいだから」美里は宗助にとってクリスマスなど何の意味もないことをよく知っている。彼は彼女との結婚後、クリスマスもイブも彼女と顔を合わせることはなかった。あまりにも放置されすぎている彼女に、城田家の人間はあらゆる噂を立てた。宗助には外に愛人がいるに違いないだとか、美里は不妊症だのなんだの。心無い言葉たちに、彼女がどれだけショックを受けたか。宗助は特に関心がなかったのか否定も肯定もしなかったため、余計に噂は広まり、美里の立場は無くなるばかりだった。とにかく今は宗助のことを考えたくなかった。「そんなことより早く食べましょう、料理が冷めちゃうわ」***パーティーから一時間。酒が入り、顔を真っ赤にした瑠璃子が机をドンドンと叩いた。「アイツ、二年も付き合って同棲までしてた私を捨てて浮気相手の元へ行ったのよ
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第44話

夜の十一時を過ぎた頃、美里たちのパーティーはお開きとなった。酔っ払って眠りについた瑠璃子の身体を、流星が支えて外へ連れ出した。「美里、今日はありがとう。楽しかったよ。久々に羽を伸ばせた気がする」「こちらこそ来てくれてありがとう、流星」美里は彼らのおかげでとても有意義な時間を過ごすことができた。「瑠璃子、今日は家まで帰れなさそうね。彼女、一人暮らしだし……。永山家の車を呼ぶわ。瑠璃子の家まではちょっと遠いけれど、心配だから家まで送っていくわ」「そうだな、そのほうがいい。お前一人に任せるわけにはいかないから、俺も付き添うよ」「――その必要はない」そのとき、すぐ傍から声が聞こえた。「宗助…………?」「どうしてここに……」驚く美里と流星をよそに、彼は淡々と背後に控えていた秘書の青山に命令を下した。「彼女を車に乗せろ」「はい、宗助様」青山は宗助の命を受け、瑠璃子を傍にとめてあった車に乗せた。「瑠璃子!」「彼女のことは俺たちが責任をもって家まで送り届けるから安心しろ」「宗助……」瑠璃子に向かって伸ばした美里の手を宗助が掴んだ。「お前はさっさと帰れ、俺が譲歩してやれるのはここまでだ」「宗助……」流星は納得がいかない顔をしながらも、渋々帰路についた。瑠璃子を乗せた車は彼女の家の方向へと去っていき、すぐに暗闇の中へ溶け込んでいった。あっという間に一人残された美里は、宗助と向き合った。「宗助、どうしてここに――」彼女が事情を尋ねる前に、宗助は彼女の言葉を遮った。「楽しかったか?」「う、うん……」「そうか、ならいい」近頃、宗助は美里を束縛しなくなった。彼がそのような行動を取るようになったのは近頃頻繁に見る夢のせいだった。このままだと、美里を失ってしまうような気がしてならなかったのだ。あの不思議な夢の正体が何なのかは今でもよくわからない。だからといって気にしないわけにもいかなかった。宗助は美里の手を引いたまま歩き出した。そこで彼は、美里が大きな袋を抱えていることに気が付いた。「……これは何だ?」「あ、これは……私が作ったケーキ」中身はクリスマスパーティーで残ったケーキだった。「よかったら食べる?……って、宗助は甘いもの嫌いだったよね……」「……」宗助は袋からケーキを取り出し、なんとその場で食べ始めたのだ。「そ、
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第45話

美里は口元のクリームを手で拭う宗助をじっと見つめていた。その姿はあまりにも美しく、彼女は思わず見惚れていた。「宗助、今日はどうしてここへ……仕事が忙しいはずじゃ……」美里の疑問に、宗助は予想外の返答をした。「クリスマスだから」「…………え?」彼は当たり前のように言った。「今日はクリスマスだろ。だからお前に会いに来たんだ。ギリギリになっちゃったけど……」「宗助……」時刻は既に十一時半を過ぎていた。あと少しで日付が変わる。それでも彼は美里のために時間を作ったのだ。「忘れていると思ってた、今日がクリスマスだってこと」「忘れてた。でもなぜかお前の姿が思い浮かんだんだ」「私を……?」美里は驚いて目を見開いた。宗助が今日という日に、萌子ではなく美里を思い浮かべたということが彼女にとって信じられなかった。彼はたしかに萌子と恋に落ちたはずなのに。美里は宗助が萌子の存在を既に過去のものとして捉えていることなど知る由もなかった。「雪が降ってきたな」「雪……」美里は宗助の言葉に、顔を上げた。空から降ってきた雪が、美里の頬に触れた。「何年もずっと降っていなかったのに……」美里が住む白羽区は一月二月になっても滅多に雪が降らない地域だった。美里は普段ほとんど白羽区から出ることがない。雪を見るのは随分と久しぶりだった。『クリスマスと言えば恋人同士で過ごす年に一度の一大イベントじゃないですか!』ふと、後輩の春奈の言葉が脳裏をよぎった。「恋人同士……」美里はすぐ隣に立っていた宗助を見上げた。遠くを見つめる彼の真っ黒な瞳は、相変わらず何を考えているかわからなかった。***「あーホンット最近つまんない!美里は遊んでくれないし、仕事は退屈だし!」「里奈、近頃ずっとそればっかりだね」ちょうどその頃、高級ホテルの一室で友人と飲んでいた里奈はワインを片手に口を膨らませた。「美里って永山家のお嬢様のことよね?そんな子と知り合いだなんてすごい!」「ふふふ……でしょう?あの子は私の言うことなら何だって聞くのよ」美里と里奈は中学時代の同級生で、親友だった。しかしそう思っているのは美里だけで、里奈は彼女を都合のいい駒として扱っていた。里奈の実家の神城フーズは地元でそこそこ名の通った食品企業だった。里奈は社長令嬢として父親から溺愛され、何不自由なく育てられ
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第46話

クリスマスの夜、萌子の暮らす今野家にて。「久しぶりだなぁ……」萌子の実の弟で今野家の長男である今野修人(こんのしゅうと)は邸宅の前でポツリと呟いた。萌子には五つ下の弟がいた。修人は高校を卒業してすぐ就職し、今は実家を出て都内で一人暮らしをしている。インターホンを鳴らすと、母親が彼を出迎えた。「修人、帰ってたのね」「もうすぐ正月だし、しばらくはこっちにいる予定だよ」「そう」リビングに入り、上着を脱いでいた修人は姉の姿が無いことに気付いた。「姉さんは……」「部屋にこもってるわ。いくら呼んでも出てこないの」「姉さん……」修人は家を出てからというもの、姉のことがずっと気にかかっていた。彼の姉・萌子は昔から強欲で気位の高い人だった。類稀なる美貌を持って生まれ、周囲からチヤホヤされていた萌子は次第に我儘な性格になっていった。萌子と修人が生まれたのは一般家庭だった。普通に暮らしていければいいと考えていた修人とは違って、彼女はその境遇に満足していなかった。二人が生まれ育った白羽区はお金持ちが多く、萌子は何かと友人たちと自分を比較していた。『私は将来絶対お金持ちの人と結婚するんだから!』幼い頃からの萌子の口癖だった。大学時代、萌子は城田財閥の御曹司と交際していた。とうとう昔からの夢が叶ったのだ。彼と付き合っていた頃の彼女はとても幸せそうだった。しかし結局、彼女の夢のような生活は一年あまりで終わってしまう。父親が起こした交通事故により、萌子は大学を退学せざるを得なくなった。修人は萌子がずっとそのことを引きずっているのを知っていた。「俺が呼んでくるよ、母さん」「あらそう?修人が呼びに行ってくれたらきっと萌子も部屋から出てくるわ」修人は萌子の部屋がある二階への階段を上がった。「――姉さん、俺だ。いるのか?」「……………修人?」中から萌子の声を聞いた修人は、安堵の息を吐いた。「父さんも母さんも姉さんを心配しているよ。顔ぐらい見せたらどうだ」「……あんな人たち、どうだっていいわ」「姉さん……」萌子は両親を恨んでいた。彼女の恨みを聞くたびに、修人は胸の痛みを感じた。萌子が大学をやめなければならなくなったことに、修人がまったく関係ないわけではなかったからだ。父親が事故を起こした当時、修人は十五歳で私立高校への進学を控えていた。両
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第47話

「クリスマスを研究室で過ごす羽目になるとはな……」美里がパーティーを楽しんでいた頃、宗真は大学院の研究室で研究に明け暮れていた。何気ない彼のつぶやきを聞いた友人・坂下勇樹(さかしたゆうき)がアハハと笑った。「俺も驚いてるよ。今年こそは彼女と過ごしたいなって思ってたけどな、結局去年から何も変わってない」「クリスマスを彼女とか……いいな、それ。オシャレなディナーとか二人で行きたかったな」勇樹が驚いた顔をした。「お前、そういう感情あったんだな。ならお前に想いを寄せてる大学の女誰か連れて行けばよかったんじゃねえか?」「馬鹿、誰か一人選んだら暴動起きるわ」「我が友ながらムカつくな……」彼の手に握っていた紙がグシャリと握りつぶされた。「そういえば、お前はあんなに女子から人気あるのにずっと彼女いないよな。俺からしたら理解できないんだが」「そうだな……」宗真は学内でいつも自分を追いかけ回す女子たちの群れを思い浮かべた。彼を見る瞳はギラついていて、我先にと宗真に話しかけようとする。もし彼女たちが宗助に出会ったらどのような反応をするだろうか。きっと宗真よりも魅力的だと感じ、すぐ乗り換えようとするに違いない。彼は思わず自嘲した。「お前はああいう女の子たちと付き合いたいと思うか?」「いや……」宗真の問いに彼は苦笑した。宗真のファンクラブのメンバーがどれほど肉食で過激かを彼はよく知っていたからだ。「まぁ俺は好きなことを学べればそれでいいかな。兄貴みたいに父親の会社を継がないといけないわけでもないし」「すごいなそれ、尊敬するよ」ダラダラと話しているうちに、時刻は夜の十一時を過ぎていた。真っ暗になった夜の空を見た勇樹がつぶやいた。「もうこんな時間か……今日は研究室で寝るの確定だな」電車で遠くから通学している勇樹は、時間が遅くなる日はいつも大学に泊まっていっている。「いいな、お前みたいに毎日送り迎えのお坊ちゃまは」「俺も一緒に付き合うよ。どうせ家に帰っても誰もいなさそうだし」「本当か!?」勇樹が目をキラキラと輝かせた。一人ぼっちで寝るのは寂しかった。「ちょっとトイレ行ってくる」「ああ、いってらっしゃい」席を立った宗真が研究室を出ると、窓から雪が降っているのが視界に入った。「……」雪を見るのがずいぶん久しぶりだった宗真は思わず立ち止まっ
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第48話

「――と、いうわけで!我が城田家の未来の嫁、美里さんを歓迎して乾杯!」「……」正月が過ぎた頃、美里は何故か城田家の邸宅にいた。彼女の目の前には宗助と宗真が座っており、隣には社長夫人・真奈美がニコニコ笑顔で立っている。ちょうど社長は仕事でいなかった。「美里さん、ウチに泊まるなんて初めてでしょう?「は、はい……」「そんなに緊張しなくてもいいのよ。宗助と結婚すれば毎日ここで過ごすんだから」「ふ、夫人……」ご機嫌な様子でシャンパンを手に持つ真奈美を、二人の息子は冷めた目で見つめていた。――何故こうなったのか。事の発端は三日前に遡る。***「社長夫人、あけましておめでとうございます」「美里さん、あけましておめでとう」新しい年を迎え、美里は宗助の両親に新年の挨拶をしに邸宅へ訪れていた。婚約破棄の件を伝えてからというもの、美里は社長夫妻に会っていなかった。「美里さん、宗助との婚約破棄の件、考え直してくれたかしら?」「社長夫人……」「あなたほど城田家の妻に相応しい人はいないわ。あなたは謙遜しすぎなのよ」社長夫人は美里と宗助の婚約破棄を認めていなかった。釣り合う身分であれば誰でもいいと考えている社長に対し、夫人は美里がいいと譲らなかった。「いえ、私では宗助さんの妻は務まりません。彼にはもっと相応しい方が――」「――もしかして、今野萌子のことを気にしているのかしら?」「……!」美里はビクリと肩を上げた。まさか萌子が白羽区に来たことを夫人も知っているのか。心臓がバクバク音を立てた。「……今野さんのせいではありません、夫人」「ならどうして急に婚約を破棄したいだなんて言い出したの?」夫人は社長よりも今野萌子を嫌っていた。彼女が宗助の持つ地位や財力に執着していたことに薄々勘付いていたからだ。「私はね、あなたと宗助はきっと良い夫婦になれると思っているの」「夫人……」真奈美は正面に座る美里に近付くと、彼女の手をそっと握った。「あなたの気持ちはわかるわ。私もここに嫁いでくるときそうだったもの」城田社長夫妻は前世の宗助と美里のように政略結婚だった。「旦那様は宗助にそっくりで無口で何を考えているかまったく読めない人だった。懐かしいわね」最初からすべてが順調だったわけではなかった。苦労もしたし、辛いことだってたくさんあった。「でも今はお
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第49話

美里はこの日から一週間、城田家の本邸で宗助や宗真、そして彼の両親たちと過ごさなければならなくなった。「美里さん、城田家の邸宅は気に入ったかしら?」「は、はい……とても素敵です……」美里は緊張で食事が喉を通らなかった。昔から城田家との付き合いがあるとはいえ、彼女は泊まりに来たことなど一度もない。前世では宗助との結婚を機に、ここで暮らすことになったものの、あまり良い記憶はなかった。宗助はあまり家に帰らず、一人ぼっちで夜を過ごす日が多かったからだ。「美里さんにそう言ってもらえて嬉しいわ!私のことはお義母様と呼んでくれてもいいのよ?」「き、気が早いですよ夫人……」宗助と宗真は黙々と料理を口に運んでいるだけで、一言も喋らなかった。美里の助けてほしいという感情は彼らには届いていないようだ。「二人の結婚まではあと三か月でしょう?色々と準備をしておかなくっちゃいけないわね」「……そうですね、母上」ようやく宗助が口を開いた。「美里さんはとってもスタイルがいいでしょう?だからマーメイドラインのウエディングドレスがきっと似合うわ。ねぇ、宗助もそう思わない?」「……」宗助がフォークを持つ手を止めた。「いえ、美里にはプリンセスラインのほうが似合いますよ」「あら、そう?私はマーメイドラインがいいと思うのだけれど」二人の会話に、美里と宗真は置いてけぼりになっていた。そんな中、宗真が勇気を出して二人の会話に割って入った。「で、でもさ!別に美里さんが必ずしも兄貴と結婚しないといけないってわけではないだろ?たとえばこの先何かがあって二人の婚約が破棄――」「「――それは絶対にない」」宗助と真奈美が口を揃えて言った。二人の気迫に、宗真はこれ以上は何も言えなかった。「母上が心配せずとも、ちゃんと考えていますよ。城田家と永山家の婚姻ですから、結婚式は盛大にやるつもりです」「そうね、それがいいわ。私もそうだったもの」「……」美里は結婚について淡々と話す宗助の顔をじっと見つめていた。どうして彼は未だに美里との結婚に拘っているのだろう。この間萌子と会ったはずなのに。美里の頭の中で、胸に飛び込む萌子を優しく受け止める宗助の姿がまだ鮮明に残っていた。彼は萌子に惹かれたのではなかったのか。ふと、視線に気付いた宗助と目が合った。「!」彼は美里を見て僅かに口角を上
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第50話

その日の夕方、城田家にはデパートの外商が訪れていた。「あら、これなんて美里さんにとっても似合いそうだわ!」「夫人……そんなことは……」「いいえ私の目は間違いないわ!着てみなさい、絶対に似合うから」美里はもはや真奈美の着せ替え人形と化していた。次から次へとハイブランドの服や装飾品を身につけさせられ、休む間もない。「お客様はお目が高いです!そのドレスは人気商品なんですよ!」「あらやっぱり!さぁ美里さん、次はこれを着てみなさい!」「……」美里は前世からブランドものに関心がなかった。しかし義母となった真奈美は真逆で、常に全身をブランドもので固めているような人だった。宗助との結婚後も真奈美に何度もデパートに連れていかれたほどだ。城田家の本邸には何と真奈美がこれまで購入したブランドバッグを飾る部屋まで存在していた。「美里様はお綺麗ですもの、きっと何でも似合いますわ」「やっぱりそうよね、私もそう思うもの」真奈美と商人の会話に、美里はついていけなかった。自分とはあまりにも住む世界が違いすぎたからだ。「美里さん、何か欲しいものはある?結婚祝いとして何でもプレゼントするわ」「いえ、特には……」「あら、遠慮しなくてもいいのに」真奈美は納得いかない様子だったが、宗助と結婚するつもりもないのに贈り物を受け取るわけにはいかない。それに美里は永山家のお嬢様だ。わざわざ買ってもらわずとも、両親に頼めば手に入れることができる。美里はそのような理由からやんわりと断りを入れた。しかしちょうど、予期せぬ来訪者があった。「宗助!宗助もこっちに来なさい!」「…………宗助?」驚いて振り返ると、扉の傍に立ってこちらを見つめる宗助の姿が目に入った。いつの間に部屋へ来ていたのか、美里はまったく気付かなかった。母親の手招きに彼は素直に応じ、ズカズカと歩いてきた。「宗助、このドレスはとっても美里さんに似合うと思わない?プレゼントするって言ってるのに美里さんったら遠慮するのよ」「……」宗助が美里をじろじろと眺めた。そこで彼女は自分がドレスを着たままであることに気が付き、顔を真っ赤にした。パーティーでもないのに、彼の前でこのような格好をしているのが少し恥ずかしかった。「…………よく似合ってる」「……」「そうでしょう!?」息子の言葉に、真奈美は嬉しそうに笑った。
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