Todos os capítulos de 今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか: Capítulo 21 - Capítulo 30

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第21話

美里が箱を開けると、中に入っていたのはゴールドのネックレスだった。「お前に似合うと思って昨日買ったんだ」「わ、私に……?」美里は戸惑いを隠せなかった。前世で宗助に貰ったものといえば結婚指輪くらいで、他に彼から何かをプレゼントされたことはなかったからだ。驚いた美里は、後ろに控えていた秘書に目をやった。彼は微笑ましい様子で宗助と美里を眺めているだけだった。「……俺が着けさせてもいいか?」「……え、ええ」美里は困惑しながらも頷いた。彼女の反応を確認した彼は、箱に入っていたネックレスを手に取り、慎重に美里の首に着けた。彼女の首元で、彼がプレゼントしたネックレスが光り輝いていた。「やっぱり、お前によく似合ってる」「……!」宗助は予想通りだというように、口元に笑みを浮かべた。それはかつて、彼が萌子に見せていた笑みとそっくりだった。美里は目をぱちくりさせながら宗助を見つめていた。いつも冷たい表情を崩さない彼が、こんな顔をするだなんて。その優しさを、美里は素直に受け止めることができなかった。***ネックレスを着けたまま放心状態で家に帰った美里に、美穂が驚いたように声をかけた。「あら美里、そのネックレスはどうしたの?あなた、ブランド物に興味なんてあったかしら?」「実は……宗助から貰ったの」「え!?宗助くんが!?」美穂は驚いて思わず声を上げた。「今日、宗助と二人で食事に行ったのよ」美里はリビングにいた両親に、今日あった出来事を全て話した。宗助が突然美里をディナーに誘ったこと、彼女のために一番良い席を予約したこと、そして帰り際にネックレスをもらったことまで全て。「宗助の考えがわからないの……彼はどうして私をそこまで繋ぎ止めようとするのかしら……」美穂と政則は美里が抱いている疑問の答えを知っていたが、あえて本人には知らせなかった。既に婚約破棄を固く決意している美里にそのようなことを伝えても、彼女の負担になるだけだと思ったからだ。美里は新しい道を歩き始めている。そんな彼女が宗助の気持ちを知ってしまったら、どうなるかわからない。二人は必死で知らないふりをした。「そうだな……永山家との繋がりを持てるのは、宗助くんとしてもメリットが大きいから……ではないかな」「そうそう、それに美里は美人で良い女だしね!」「そういうものなのかしら……」
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第22話

翌日の午後。「……本当にここで間違いないの?」「美里ったら、私の情報を疑っているわけ?」「そ、そういうわけじゃ……」白羽区から北東に車を二時間ほど走らせた場所に、美里は瑠璃子と共に訪れていた。しかし、彼女はただ大学時代の友人と旅行をしにきたわけではない。ある人物に会うためだった。「本当にここに、今野萌子がいるというの?」「間違いないわ、彼女は今ここに住んでいる」そう、美里は今野萌子の暮らす彼女の故郷へ来ていた。彼女が身を寄せている地域は、白羽区よりもだいぶ田舎で、あたり一面に田んぼが広がっている。十一月とは思えないほどの寒さだった。実はここへ来るのも楽ではなかった。宗助を説得するのにかなり時間がかかったのだ。瑠璃子の協力もあり、美里は何とか彼女との二人旅を遂行できたのだ。「今は両親と、母方の祖母と一緒に住んでいるらしいわ。仕事は……カフェの店員をしているようね」「そう……何だか申し訳ない気持ちになってくるわ」萌子は大学ではとても優秀な生徒だった。そんな彼女の未来が壊されたことを思うと、胸が痛くなった。思い悩む美里を励ますように、瑠璃子が肩に手を置いた。「そんなこと考えていたって仕方が無いわ。萌子さんが追い出されたのは城田くんの両親のせいでしょう。美里は何の関係もない」「それはそうだけど……」美里と瑠璃子は話しながら、萌子の家の前まで来ていた。「美里、ピンポンしに行きなさいよ」「え、い、いきなり!?両親か祖母か出たらどうすれば……!」「そんなこと気にしてる場合?萌子さんの知り合いですって言えばいいのよ。話したことあるんでしょう?」「でも相手が私を覚えているかなんて……」「――ウチの前で何をしていらっしゃるんですか?」「「……!」」美里と瑠璃子は背後から聞こえた声に固まった。「も、萌子さん……!」「あら、私を知っているんですか?って、あなたはもしかして……美里さん?」外出から帰ってきたのだろう、カバンを肩にぶら下げた萌子が立っていた。数年ぶりに見る彼女はあのときと変わらず、美しいままだった。「……お久しぶりです、萌子さん」「あら、本当ですね。一体何年ぶりでしょう……」萌子は嬉しそうに笑った。「ところでそちらの方は?」「あ、私……美里の友達の山本瑠璃子です」「瑠璃子は私の大学時代の友人なんです」「大学
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第23話

バスで十分ほど移動したところに、隠れ家のような喫茶店が一軒存在していた。美里と瑠璃子、そして萌子の三人は喫茶店に入り、コーヒーとケーキを一つずつ注文した。「わぁ、良い雰囲気ですね」「でしょう?ここに来ると落ち着くんです。日々の疲れを癒してくれるのでお気に入りです」美里と瑠璃子の向かいで、萌子がコーヒーを一口飲んで言った。「本当に素敵な場所ですね。ケーキも美味しいし」「萌子さんは良いお店を知っているんですね」「地元の人ならだれもが知っていますよ」萌子はフフッと笑った。愛する人と引き離されたというのに彼女は明るく生きていた。美里は萌子のそのようなところが尊敬に値すると感じた。「萌子さんは……今何をしていらっしゃるんですか?」「カフェで働きながら両親と祖母と一緒に暮らしています。お二人は何をされているんですか?」「私は……普通に一般企業に勤めています」「私は探偵を……」「まぁ、探偵さんだったんですね」萌子は目を丸くしながら、フォークを置いた。「ここにいると、白羽区の情報は入ってこないものですから……美里さんの現状を知れて嬉しいです。何だか懐かしい気持ちになりました」「私も萌子さんが元気そうで安心しました」「心配をかけたようですね、でも私は平気です。見ての通り、ピンピンしていますよ」萌子は美里たちを安心させるように笑った。「ところで……宗助は元気にしていますか?」「……!」美里と瑠璃子がピクリと反応した。萌子から宗助の名前が出るのは予想外だった。「ええ……今は父親の会社の役員として働いています。忙しいようで、最近は私もあまり会っていません」「そうですか、美里さんは彼とは幼馴染でしたね」萌子が視線を下げて口を開いた。「……羨ましいです」「……」美里は何も言うことができなかった。彼から愛されていたにもかかわらず、身分違いで結ばれることができなかった萌子と、彼から愛されていないのに、身分が釣り合っていたから結ばれた美里。二人の立場は正反対だった。自分が萌子なら、これほど悔しいことはないだろうと美里は思った。「すみません、今のは忘れてください」「は、はい……」萌子はうっかり失言をしてしまったかのように口元を手で押さえた。「ここにはどれくらい滞在する予定ですか?」「二泊三日です。ホテルはもうとってあるんです。ここ
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第24話

美里、瑠璃子と別れた萌子は一人、帰路についた。美里と話したときとは違い、彼女の表情はひどく暗くなっていた。萌子がそうなった原因は、彼女の家族にあった。「あら、おかえりなさい。遅かったのね」「……」声をかけてきた母親に、萌子は返事をしなかった。「ちょっと、何か言ったらどうなのよ!」「うるさいわね、私がどれだけあなたたちを恨んでいるか……忘れたわけじゃないでしょう?」萌子は冷たく返した。いつも穏やかで上品な彼女とは別人のようだった。「何だ、まだあのことを根に持っているのか」「そうよ、全て終わったことだわ」「あの事件が無ければ、私は大学をやめることもなかったはずよ!そして宗助ともずっと一緒にいられたのに……」「何を言っているの、今の私たちがあるのは全て城田夫妻のおかげよ。あのお方には感謝してもしきれないわ」「……」萌子は何も言えなかった。母親の言っていることは間違いではなかったからだ。萌子は大学時代を思い浮かべた。六年前、白羽区に住んでいた萌子は努力の甲斐あって有名私立大学に進学した。そこで出会ったのが同い年の城田宗助だった。宗助は城田家の御曹司で、萌子とはあまりにも身分が違う人だった。しかし宗助は萌子に惚れこみ、次第に萌子のほうも彼を好きになっていった。そこから二人はすぐに恋人となった。萌子にとって彼と過ごす時間は楽しかった。宗助は萌子を何度も知らない世界へ連れて行ってくれたし、周囲から羨望の眼差しを向けられるのも気持ちがよかった。萌子は次第に、彼との結婚を強く望むようになった。自分は城田家の御曹司に愛されており、社長夫人になる女だと、そう信じて疑わなかった。しかし、宗助の両親はあからさまに萌子を嫌っていた。萌子は一般家庭の生まれであり、城田家の御曹司である宗助とはどう考えても釣り合わなかったからだ。宗助の両親はどうにかして息子と萌子を引き離そうとしていた。しかし、宗助は萌子に深く惚れこんでいた。何度も萌子を両親から守ってくれた。「あの事件さえなければ……」萌子は拳をギュッと握りしめた。かつては大学一の美女と言われ、あの城田家の御曹司の恋人だった自分が、今はこんな田舎で慎ましく暮らしている。萌子は周囲には明るく振舞っていたが、実際には心療内科に通うほど心を病んでいた。そして今日、萌子は久々に美里の姿を見た。彼女
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第25話

その日の夜。美里は瑠璃子と宿泊先のホテルの部屋でくつろいでいた。「萌子さん、良い人そうだったね。よかったよかった」「そうかしら?ああいう外面の良い女ほどドス黒い本性を内面に隠しているものよ」「ちょっと考えすぎよ瑠璃子……」瑠璃子は探偵業をしているため、人間の裏の顔をこれまで嫌というほど見てきていた。「そんなことないわ。会社からも周囲からも評判の良かった美人妻がゲス不倫していた――なんて話、これまでたくさん見てきたわ」「瑠璃子……」「美里は昔から他人を信用しすぎなのよ」「……」瑠璃子の言っていることは的を得ていた。前世で宗真にはめられたのも、結局彼女が愚かにも周囲の人間を信じたせいだった。「美里、私は今野萌子のことをあまり信用しないほうがいいと思うの」「瑠璃子!彼女は被害者よ?何も悪いことはしていないわ」「それはその通りだわ。でもね、私が萌子の立場なら……あなたを引きずり下ろそうとするはずよ」「……!」それは美里に対する警告だった。この先、何かの拍子に萌子が宗助と美里の婚約が決まっていることを知ってしまったとしたら。彼女はどんな気持ちになるだろうか。きっと美里に宗助を略奪されたと思うに違いない。「……私はできるだけ萌子さんと仲良くしたいと思ってる」「それは私も同じよ。でもね、宗助くんのことがある以上、あなたたちはそう簡単に相容れないはずだわ」「瑠璃子……」美里は今世では宗助と萌子の仲を邪魔する気はまったくなかった。むしろ応援したいと思っているくらいだ。そのためには萌子と仲良くなり、宗助と引き合わせる必要がある。宗助と自分に何の関係もないことをアピールすれば、萌子も美里に敵意を抱くことはないだろう。美里は瑠璃子の警告を頭の片隅に置きながらも、自分の計画はきっとうまくいくはずだと言い聞かせて眠りについた。***翌日の夕方。「美里さん、瑠璃子さん!」「萌子さん!」駅で待っていた二人の元に、仕事を終えた萌子が現れた。「今日は来てくれてありがとうございます」「こちらこそ、誘ってくれてありがとうございます」美里は上品に笑う萌子をじっと見つめた。やはり彼女が悪人であるようには見えなかった。「では、行きましょうか」「はい」三人は電車に乗り、目的地へと向かった。「どちらへ向かっているんですか?」「どこを案内しよう
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第26話

「わぁ、本当に綺麗ですね!」「近くにある海を一望できるんです」駅から少し歩くと、すぐに目的地に到着した。普段車移動で職場も家からそれほど遠くない美里はあまり体力がない。そのため、駅チカというのは彼女にとってありがたいことだった。美里たちが訪れた場所は県内でも有名な場所だった。さすがは恋人の聖地と呼ばれるだけある。中央にはハートのモニュメントが建てられていた。「というか、それより……」瑠璃子がおもむろに口を開いた。「――聞いた話と随分違うわね。恋人だらけなんだけど」「ま、前に来たときはそんなことなかったんだけどなぁ……」 萌子は気まずそうに目をそらした。実は瑠璃子は二年付き合っていた彼氏を寝取られたという過去がある。彼女が探偵業を始めるきっかけとなった事件だった。「まあまあ、いいじゃない瑠璃子。こんなにも景色のいい場所に来られたんだから!」 「それはそうね。ありがとう、萌子さん」 「いえいえ!」 三人はフェンスのそばまで行くと、横並びで海を眺めた。冷たい冬の風が、何故か心地よく感じられた。 「あーここにいると私も彼氏欲しくなってきた」 瑠璃子が周囲でいちゃつくカップルを見ながらつぶやいた。美里はそんな瑠璃子を慰めるように肩をポンポンと叩いた。 「早く素敵な人と巡り会えるといいわね」 「少なくとも、今私の周囲にはいないわね」 「たしかに!」 アハハッと美里と瑠璃子は笑い合った。 そんな二人の姿を、萌子は複雑な眼差しで見つめていた。「すみません、私……少しお手洗いに行ってきますね」「わかりました、ここで待ってます!」「ごゆっくりー」萌子が駅のトイレへ向かったあと、美里は明るい顔で口を開いた。「旅行なんて久しぶりだわ」「そうね、たまにはこういうのもいいわね」美里は友人と旅行というものをほとんど経験したことがなかった。宗助は旅行に興味なんてなかったし、恋人でもない流星と行くのは憚られた。「こうやって美しい景色を前にすると、小さな悩みなんてどうだってよくなるわ」「宗助くんとの婚約とか?」「そうそう!」「……」少し離れた柱の陰で、萌子は息を潜めて二人の会話をじっと聞いていた。***その後、近くで夕食を済ませた三人は帰りの電車に乗り込んだ。時刻は夜の九時を過ぎていた。「奢ってくれてありがとうございます……
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第27話

瑠璃子との旅行から戻った美里は、翌日になりいつも通り会社に出勤した。出社した彼女の手には、旅行先で購入したお土産の紙袋が握られていた。人々が注目する中で、美里は意気揚々と声を張り上げた。「いつもお世話になっている皆さんにお土産を買ってきました!」「わぁ~」仲のいい同僚、まだ入社したばかりの後輩、いつもは厳しい先輩までもが嬉しそうに美里の元へと駆け寄った。「永山さん、旅行行ってたんだ~」「はい、二泊三日で大学時代の友人と」そのとき、お土産のお菓子を食べていた美里の後輩・井上春奈(いのうえはるな)が横から割り込んできた。「へぇ……先輩、大学時代の友人ってそれ、城田家の御曹司じゃないんですか!?」「えっ、ち、違うわよ!」美里は慌てて否定した。「でも社内で噂になってますよ。美里先輩が城田家の御曹司の宗助さんと恋仲だって」「え……………ええ!?」驚く美里をよそに、春奈は続けた。「この間なんて、城田家の御曹司にディナーに誘われたんですよね?城田家の人間がウチにわざわざ来たって、社内で話題になってましたよ!見たかった!」「あれ、アンタそのときいなかったっけ?」「ちょうどお手洗いに行ってたんです……」「そう、それは残念ね。いつも偉そうな社長がペコペコしてて面白い光景だったのに」ショックを受ける春奈を見た同僚たちがクスクスと笑った。「こ、今回は本当に違うのよ!大体宗助が私をディナーに誘ったのも、友人としてだし……」「あら、そうなんですか?」「そうそう、私たちは幼馴染でお互い気兼ねなく話せる存在だから!」本当は宗助との婚約が決まっている状態だったが、彼女はそんなこと口が裂けても言えなかった。「じゃあ先輩は、城田家の御曹司のこと何とも思ってないんですか?」「そうね……相手の気持ちを考えずに行動するのはもう嫌なのよ」美里が前世から学んだことだった。「先輩は謙虚なんですね。私が城田家の御曹司と知り合いだったとしたら、たとえ相手が既婚者だったとしても猛アタックしますよ」「何言ってるの、アンタなんか結婚してなくても相手にされないわよ」「せ、先輩!ひどいです!」オフィス内にどっと笑いが起きた。”既婚者だったとしても”美里は春奈のその言葉が引っかかった。もしかすると前世の萌子もそのような気持ちで宗助との関係を持ったのかもしれない。しか
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第28話

「へぇ、それで今野萌子をとうとう白羽区に呼んだってわけか。美里さん、なかなかやるじゃん」「……まだ返信は来てないんです。だから来てくれるかどうか……」仕事終わりの夜、美里は宗真といつもの個室レストランでお互いの近況を話していた。「あ、これはお土産です」「俺に?ありがとう」宗真は笑顔で美里の持っていた紙袋を受け取った。「さっき返事はまだ来てないって言ってたけどさ……兄貴が白羽区にいるわけだし、まぁ普通に考えたら来るんじゃない?」「そうでしょうか……」「そうそう!だからあんまり心配しなくていいと思うよ」宗真はお土産のお菓子を口に運んで幸せそうな笑顔を浮かべた。美里は礼儀として宗助にもお土産を渡そうと思ったが、あいにく彼は甘いものが好きではなかった。「まぁ、もし誘いに乗らなかったとしても別の方法を考えればいいだけだしね。そんな悩む必要はないよ」「それもそうですね……」「俺は今すごい幸せだよ。あとちょっとで口うるさい両親が海外出張でいなくなるからね」「そういえば、もうそんな時期でしたね」宗助と宗真の両親――城田社長夫妻は美里も苦手だった。厳格で古風な考えを持つ夫妻は、二人の息子に厳しすぎる教育を施し、息子の愛する女性にまで危害を加えた。宗助の宗真の兄弟仲を悪化させたのも、元はと言えば社長夫妻の子供に対する接し方が原因だった。二人は宗助を次期社長として、宗真をそのスペアとして扱っていたからだ。幼少期から宗助の傑出した才能に目を付けた夫妻は、彼に特別目をかけ、弟である宗真のことは見なくなった。宗真は兄である宗助が自分と違って両親から愛されていると、そう思い込んでいるのだ。実際、宗助も夫妻から愛されているとはいえなかったが。もし、夫妻が二人をもっと平等に扱っていたとしたら、宗真はあんな風にはならなかったのではないか。美里にはそう思えてならなかった。美里はそのことを考えると、仇であるはずの彼が何だか可哀相な存在に思えてきた。「宗真くん、辛いと思うけど負けないでくださいね」「美里さん……」彼女の言葉に、宗真は嬉しそうに微笑んだ。やはり美里は宗助にはもったいない。彼は目の前にいる彼女を見てそう思った。宗真にとって、美里ほど優しい女性はほかにいなかった。「……今日はここらへんで終わりにしよう。美里さん、明日も仕事があるだろ?」「ええ、
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第29話

「……これは何だ?誰か旅行に行ってきたのか?」城田家の邸宅にて。宗真が美里から貰ったお土産の入った紙袋を見た宗助がつぶやいた。「ああ、それは……美里さんから貰ったんだよ。最近旅行に行ったみたいでね」「……美里が?」宗助は不快感を隠しきれなかった。何故婚約者である自分には渡さずに、弟の宗真には渡しているのか。眉をひそめる宗助に、宗真がニヤニヤ笑った。「羨ましいのか?兄貴。でも残念だったな、兄貴は甘いもの食わないだろ」宗真は宗助の目の前で彼女からのお土産を一つ口にした。挑発するかのような宗真の行動に、彼はもう我慢できなかった。「あ、兄貴……?」「……」宗助は宗真から箱を奪い取り、中に入っていたクッキーを口に運んだ。彼がお菓子を口にしているところを初めて見た宗真は驚きを隠せなかった。「……………甘い」「なに当たり前のこと言ってるんだよ、兄貴」宗助は昔から甘いものが苦手で、これまでほとんど口にしたことがなかった。しかし何故か、美里からのものなら食べれるようなそんな気がしたのだ。「美里は元気にしているか?」「ああ、兄貴が心配しなくても美里さんは元気だったよ」「……そうか」宗助はあのディナー以来、美里には会っていなかった。彼女に会いたいという気持ちが無いわけではなかったが、元々多忙を極めている彼はそう簡単に彼女に会いに行くことができなかったのだ。「……近いうちに美里に会いに行く」「そう、好きにしなよ」宗助はそのまま宗真の前から立ち去り、自室へと戻った。部屋に入ると、彼はベッドに横になった。日々働き詰めの彼にとって久々の休息だった。「――宗助、いるのか」「……父上?」そんな中、扉の外から宗助に声をかけたのは、城田家のトップであり、彼と宗真の父親だった。彼は慌ててベッドから起き上がった。血の繋がった父親とはいえ、彼にとっては遠い存在だったからだ。宗助は着崩していた服を整え、父親を部屋に招き入れた。「もうすぐ私が海外出張に行くことは知っているな?」「はい、存じています」「その間はお前に城田家のすべてを任せることになる」その瞬間、彼の目の色が変わり、部屋に緊張感が走った。「――いいか、絶対に城田家の名に泥を塗るようなことはするなよ」「……………はい」宗助はうなずいた。この人は昔から何も変わらないな、と彼は心の中で
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第30話

「彼氏が欲しい!彼氏が欲しい!彼氏が欲しい!」「……急にどうしたのよ」会社の昼休憩。外で後輩の春奈とランチをしていた美里は、突如叫び出した春奈に思わず手を止めた。「先輩気付いてないんですか!?もうすぐクリスマスですよ!」「……それが何だって言うのよ」「せ、先輩……!」春奈は衝撃を受けたような顔で美里を見た。「クリスマスと言えば恋人同士で過ごす年に一度の一大イベントじゃないですか!先輩ったら、もう!」「……そういえばそうだったわね」美里は毎年クリスマスは家族で過ごしていた。宗助と過ごしたいなと思う気持ちはあったものの、多忙の彼のことを考えると誘う気にはなれなかったのだ。「今年こそは恋人を作って一緒にクリスマスパーティーをするんです!先輩は知らないでしょうけど、クリスマス前に出会いを求めている人は多いんですよ?」「でもそういうのってクリスマス終わると大体別れてる気が……」「細かいことはどうだっていいんですよ!大事なのはクリスマスを恋人と過ごすということです!」美里は誰でもいいから付き合いたいという春奈の考えをあまり理解できなかった。好きでもない人と付き合うことに何の意味があるのか。「というわけで、飲み会しましょうよ、先輩!」「……飲み会?」「はい、男女5:5で!これまで先輩は城田家の御曹司と付き合っていると思ってて誘わなかったんですけど……先輩みたいな美人が来てくれたら、きっとみんな喜ぶと思いますよ!」「私は恋人を作る気は……」「何も絶対作らないといけないってわけじゃないですよ!ただの飲み会だと思って参加すればいいんです!息抜きにもなるし!たまにはこういうのもいいんじゃないですか?」「息抜き……」結局美里は春奈の押しに負け、飲み会への参加を決めたのだった。***「乾杯!!!」その声と同時に、ジョッキがぶつかる音が盛大に響き渡った。「先輩、今日は楽しみましょう」「そうね、あなたは良い人が見つかるといいわね」美里と春奈が来ていたのは会社から少し歩いたところにある居酒屋だった。テーブルを挟んだ先には五人の男が並んで座っている。そんな彼らの視線は美里に固定されていた。今日集まった五人の女性の中で、美里は圧倒的に輝いていたからだ。突如現れた美女に戸惑いを隠せないようだった。美里の真正面に座っていたスーツ姿の真面目そう
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