UTAHARA OFFICEの小会議室。 ガラス越しに、先ほどまでいた応接スペースが見える。 南条は外に残っていた。和人もいる。代理人が間に入り、こちらへ入ってこないよう話をしているのが見えた。 室内にいるのは、彩と良太だけ。 そして、彩には見えない黒いドレス姿のレイラ。 良太は古い鞄を机の上へ置いた。 擦れた角。少し歪んだ持ち手。安物の金具。 この事務所には似合わない鞄だった。 けれど、その中には、レイラが生きている間に残したものが入っている。 良太は口を開けた。 封筒。 通帳。 印鑑。 契約に関する書類。 不動産の名義を確認できる資料。 ひとつずつ、机の上へ置いていく。 彩は黙って見ていた。 書類に並んでいる言葉は難しい。 契約。 贈与。 登記。 名義。 十五歳の彩には、それぞれの意味よりも、自分の知らないところで姉が何かを準備していたという事実の方が先に入ってきた。 良太が一枚の書類を彩へ向ける。 「これは、レイラさんが生前に用意していたものです」 「……お姉ちゃんが?」 「はい」 彩は書類を見る。 「まず、マンションがあります」 「マンション?」 「今、彩さんが住んでいるところとは別です」 彩が顔を上げた。 良太はレイラから聞いたことを思い出しながら、できるだけ分かりやすく続ける。 「親権のことが片づいたあと、レイラさんと一緒に暮らし始めましたよね」 「……はい」 「でも、今までレイラさんが住んでいた家は、もともと一人で仕事をする前提で使っていた場所だったそうです」 彩にはすぐ分かった。 衣装。 仕事の資料。 身体を整えるための道具。 レイラの生活は、モデルという仕事と切り離せない。 彩が一緒に暮らし始めてから、自分のための空間も作ってくれた。 けれど、最初から姉妹二人の家として選ばれた場所ではなかった。 良太が言う。 「だから、新しく買ったそうです」 彩の目が止まる。 「……買った?」 「はい」 少し間を置く。 「彩さんと、これから先も一緒に暮らすために」 彩は何も言わなかった。 良太が書類の一か所を指す。 「学校にも通いやすくて、仕事にも動きやすい場所だそうです。最初から彩さんの部屋も用意されています」 彩の視線が、その先で止まった。 そこには自分
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