良太の部屋・夜 質素な部屋。 机の上には、並べられたフィギュア。 レイラがそれを見ている。 静止しているようで、視線だけが動く。 レイラ 「それ、現金化できるわ」 良太 「やめろ。それ俺のだ」 一拍。 レイラ 「一時的に借りるだけ」 良太 「は?」 レイラ 「対価は払うわ」 間。 良太 「……いくらだ」 レイラ 「五百万」 沈黙。 良太 「……本当に払えるのか」 レイラは答えない。 視線だけが、わずかに遠くを見る。 無音。 切り替わる。 回想 歌原レイラ(28)──裁判を終えた直後、死まで、あと28日。 ──三日間、熱に伏せていた。 裁判の勝訴の安堵と同時に、身体は容赦なく悲鳴を上げる。 姉であり続けるにも、 プロであり続けるにも、 体力が要る。 もし私に何かあれば、彩はまたひとりになる。 その想像だけで、胸が締めつけられた。 だから決めた。 ──備えを、残す。 私の不在が、あの子の未来を閉ざさないように。 彩名義の資産を。 それは弱さからの選択だった。 だが、結果としてそれは──“未来の条件”になる。 この時の私は、まだ知らない。 それが、どこで誰に使われるのかを。 1 銀行・個室ブース 静かなロビーの奥。 薄明かりの個室。 黒いサングラス、ロングコート。 足音は小さい。 銀行員 「“歌原 彩”様名義の新規口座、贈与契約に基づき開設いたします」 印刷機が動く。 通帳が吐き出される。 残高表示。 ¥500,000,000 銀行員 「本件は未成年名義の高額資産となりますので、歌原様は法定代理人として手続きを行っていただきます」 一拍。 銀行員 「なお、当該資産は受贈者ご本人の所有となります。相続財産には含まれません」 レイラは静かに頷く。 署名。 通帳と印鑑が、手元に置かれる。 レイラ(心) 形式に守らせれば、誰にも奪われない。 一拍。 レイラ(心) ──でも、形式だけでは守れないものもある。 彩が自分で未来を選ぶ日まで── これは確かな保障になる。 2 不動産会社
Last Updated : 2026-05-06 Read more