1.UTAHARA OFFICE・会議室/午前レイラの死から、数日後。UTAHARA OFFICE。白い壁。磨かれた床。壁に飾られた、過去のキャンペーン写真。その中心にいるのは、どれも歌原レイラだった。けれど今日は、空気が違っていた。スタッフは全員、会議室に集められている。チームレイラ。マネージャー・加納。スタイリスト・井原。カメラマン・黒瀬。SNS担当・南条。メイク・安藤。ディレクター。レタッチャー。そして、柳田真悠。事務所No.1マネージャー。その他、事務、経理、アシスタントたち。誰も、雑談をしない。椅子のきしむ音だけが、やけに大きく響いていた。ドアが開く。入ってきたのは、歌原和人。黒いスーツ。だが、喪服ではない。その後ろに、代理人弁護士が二人。さらに、事務担当らしき男がひとり。和人は会議室の前方に立つ。一度、室内を見渡す。その視線は、人を見ているようで、数を数えているようだった。代理人が一歩前に出る。代理人「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」誰も返事をしない。代理人「歌原レイラ氏の逝去に伴い、相続および会社支配権に関する正式な手続きを進めております」紙がめくられる。代理人「現時点で有効な遺言書等は確認されておりません。そのため、法定相続人であるご両親が、歌原レイラ氏の財産および関連権利を承継する方向で手続きを進めています」加納の拳が、膝の上でわずかに握られる。黒瀬は目を閉じたまま、動かない。柳田は、表情を変えない。代理人「それに伴い、UTAHARA OFFICEの代表権についても整理を行います」一拍。代理人「正式な手続き完了後、歌原和人氏が代表取締役に就任する予定です」室内の空気が、音もなく冷える。南条が、唇を噛む。和人が軽く咳払いをする。和人「……まあ、そういうことだ」誰も見ない。誰も頷かない。和人「正直に言う」和人は、ゆっくり口を開いた。和人「俺と娘のレイラとの関係は、良くなかった」会議室の奥で、誰かが目を伏せる。和人「裁判の報道もあった。世間も、そこは知ってるだろう」淡々とした声。けれど、その淡々さが逆に薄かった。和人「だが、それでも俺はレイラの親だ」和人は壁の写真を見る。そこには、黒いドレスをまとったレイ
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