All Chapters of 獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~: Chapter 91 - Chapter 100

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23 されど消えぬ思い火

 ヴィクトリアはアルベールに切られた首を処置してもらっていた。綺麗な傷だそうで、それほど時間もかからずに治るだろうと言われた。「リュージュは入院することになった」 他の者と離された後、処置を受けた小部屋に一人残されて、そのままずっと考え事をしていたヴィクトリアは、やって来たウォグバードにそう告げられた。 ウォグバードはリュージュの様子を見に寄ってから、ヴィクトリアの所に来たようだ。 酷い怪我を負わされた上に限界まで体を酷使したのだから、入院になるのは当然だと思った。「アルベールはあの様子だとまたあなたを襲うかもしれないから、理由を話して地下の囚人用の病室に入れてもらった。鍵は牢屋と変わらない仕様だからしばらくは出てこない。 だが、そこにいられるのは怪我が治るまでの間だけだ。その後については、あなたに危害を加えないような方法をまた別に考えよう」「ありがとう」 安堵したヴィクトリアはウォグバードの働きに感謝した。しばらくの間限定ではあるが、確実にアルベールに襲われることがないとわかっているだけで心の安寧度が全然違う。 アルベールが退院した後、自分の安全を確保するための方法をまた別に考えなければいけないから頭は痛いが。 できればアルベールにはもう二度と会いたくない。だが里にいる以上は接触は避けられないのかもしれない。 今はアルベールと離れられているが、離れて実物がそばにいない方が本人への恐ろしさがより増していくように感じられた。アルベールから向けられた情欲混じりの微笑みを思い出すだけで背筋が寒くなってくる。 オニキスが言っていたように、里を出た方がよいのかもしれないという考えが頭をもたげてくる――「それからアルベールの両親があなたに謝りたいと言っているが、どうする?」 ヴィクトリアは恐縮しながら強く首を横に振った。アルベールの両親は本日は医療棟で夜勤だと言っていたから、息子の行いが耳に入ったのだろう。 息子はあんなのだが、彼の母親はヴィクトリアの母の主治医だったこともあって、子供の頃はよく面倒を見てくれた。父親も過去にアルベールによるヴィクトリアへの意地悪をいさめてくれたことがあって、まともな両親だ。「謝罪はいらないわ」 アルベールのことはもう本当に考えたくない。家族と会って彼のことを否応なく意識してしまう時間すら持ちたくなかった。(
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24 リュージュとヴィクトリア 1

「あなたは、自分がシドの娘ではないことは知っているか?」  問われたヴィクトリアは涙を止めて、ウォグバードを見上げた。 「どうしてそれを?」 「知っていたのか。いつ知った?」 「知ったのは今日よ。里から逃げた先で、ある銃騎士隊員から聞いたの」  ヴィクトリアはまたレインのことを思い出す。 「そうか。知っていたのなら話は早い。あなたの番になるのは、リュージュでは駄目だろうか?」  ヴィクトリアは驚いてウォグバードを見つめた。ヴィクトリアの涙は完全に引っ込んだ。 「あなたはずっとリュージュを愛してくれていただろう?」 「ウォグバードにまでバレていたのね……」  これまでの発言などを踏まえると、シド、レイン、アルベール、ウォグバードの四人にはヴィクトリアの気持ちを知られていたようだ。結構な人数である。  当の本人は全然気づいていなかったが。  人の気持ちを読むのが上手いシドと、『番の呪い』により、ヴィクトリアを注視していた様子のアルベールが勘付くのはわからなくもない。  レインに関しては諜報員から聞いたのだろう。だとすると、諜報員をしていたらしきオリオンはもちろん、ジュリアスだってヴィクトリアがリュージュを好きなことを知っていたかもしれない。  ただ、ウォグバードにまで気づかれていたとなると、表情操作による自分の気持ちの隠し方が上手かったというよりは、リュージュが相当鈍感だったのではないかと思ってしまう。 「あれは人の気持ちに疎いところがある。許してやってくれ」 「そうね…… そうだったわね……」  出会った頃のリュージュはこちらの戸惑いなどお構いなしで、何度もヴィクトリアのそばにやって来ては、幼気な笑顔を常に振りまいていた。  ヴィクトリアはその親しみやすさと可愛らしさにいつの間にかメロメロになっていたが、リュージュはほぼ距離感ゼロのまま、ヴィクトリアの孤独な心に遠慮なく踏み込んで来た稀有な存在だった。 「リュージュのことは今でも好きよ。リュージュと番になれたら、きっとこれから先ずっと幸せに暮らしていけると思うわ。  でも私、今『番の呪い』にかかっているの。相手はリュージュじゃない……   リュージュにもこのことは話してあるけど、『呪い』を解かない限り、リュージュと番になんてな
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25 リュージュとヴィクトリア 2

リュージュは先程の治療された部屋にいた。ベッドに寝転んだままだが、ウォグバードが現れても天井をじっと見たまま微動だにせず、何事かを考えている様子だった。 それまでの意見を覆し入院すると言い出したのはリュージュ本人だ。もうすぐ入院用の部屋に移動になるだろう。「リュージュ、サーシャと暮らすはずだった新居の鍵を借りるぞ。今日はヴィクトリアをそこに泊まらせる」 ウォグバードに目を向けたリュージュは、ぎょっとした顔をしてベッドから上体を起こした。「ウォ、ウォグ! ちょっと待て!」 一言だけ声をかけた後、やけにゆっくりと踵を返しかけたウォグバードを、リュージュは必死で呼び止めた。「何だ? ヴィクトリアのことなど別にどうでもいいのだろう? 新居に残る『サーシャとの残り香』を嗅がれたところで、痛くも痒くもあるまい」 リュージュは青ざめた。リュージュが危惧しているのはまさにそれだった。(ヴィクトリアには嗅がせたくないし、知られたくない!) 他の女性とねんごろにしていた現場の匂いなんて嗅がれたら、完全に恋愛対象から外れて二度と回復しないおそれがある。「どうでもいいなんて言ってないだろ!」「同じことだ。『俺が守る』と言ったくせに姉ではないとわかった途端に放り投げたじゃないか」「放り投げたわけじゃない! ただちょっと、顔を合わせづらくなっただけで……」「……お前はいつも肝心な所で決めきれない奴だな」 だからサーシャにも逃げられたんだ、という言葉は流石に辛辣だと思い言わないでおいた。「お前が護衛しないのであれば彼女は今晩一人でいるしかない。他の男に取られても知らんぞ」「姉じゃないんだから一晩一緒になんて過ごせるわけないだろ。俺の代わりにウォグが守ってくれよ」「俺は入院中の身だ」「医者もびっくりするくらいの回復力で明日には退院するかもとか言われてたじゃないか」「いや、まだ色々と節々が痛い。歳かな」「嘘つけ! さっきめちゃくちゃ機敏に動いて戦ってただろうが!」「それでもアルベールを取り逃がした。万全ではない。お前も同様かもしれないが、彼女がそばにいてほしいのは俺ではなくてお前のはずだ」「違う。あいつが思っているのは俺じゃなくて、人間の男だ」「『番の呪い』を気にしているのか? あれのほとんどは紛い物だ。稀に本物もあるが…… まあ、大丈夫だろう。
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26 リュージュとヴィクトリア 3

 リュージュに手を取られて歩きながらヴィクトリアはしきりにリュージュの怪我の具合を心配していた。 その度にリュージュは「大丈夫だ」と返していたが、アルベールと戦う前だって同じことを言っていたのに、本当は手や足まで痛めていたことは教えてもらえなかった。 ヴィクトリアはリュージュが無理をしているのではないかと心配になった。「そんなに言うならヴィクトリアが俺のこと看病して。入院するよりそっちの方が早く治りそうだ」 リュージュがヴィクトリアの顔を覗き込むようにして距離を詰めてくる。こちらを見つめながら微笑む顔が大人びていて妖しく見えてしまい、虚をつかれたようにヴィクトリアはリュージュを見返した。(いつもと雰囲気が違うような…… 上手く言えないけど)「リュージュの看病ならいつでもするわよ? むしろさせてほしいもの」「ありがとう。じゃあ俺もヴィクトリアが具合が悪くなった時は看病でも何でもするよ。してほしいことがあったら遠慮なく俺に言って。 ――俺、ヴィクトリアのためなら何でもするからさ」 こちらをじっと見てくる視線に真摯なものを感じる。優しい微笑みと声音はいつものリュージュなのに、胸がざわざわする。「私のお願いなら何でも聞いてくれるの?」「そうだよ」「じゃあまずは体をよく治してちょうだい。入院をしないんだからその分無理をしないで、意識してよく休んでね」 リュージュは破顔する。「わかったよ。無茶なお願いでもよかったのに。ヴィクトリアのそういうとこ優しくてすごく好きだよ」 リュージュが朗らかな笑みを浮かべながらそう言ってくれるので、ヴィクトリアも自然と笑顔を返す。 リュージュと繋いでいる手が温かくて、心まで温かくなってくる。 ヴィクトリアにとってリュージュはこの里で頼れる唯一の、かけがえのない存在だ。これから先もずっとリュージュと一緒にいたいと思う。(『番の呪い』さえ解ければ……) ――ヴィクトリアはリュージュに連れられてウォグバードの家まで戻って来た。新居はサーシャとのことを思い出すからあまり行きたくないとリュージュは言う。 けれどウォグバードの家はアルベールのせいで玄関の扉は壊れているし、浴室の窓だって割られて破片が散らばっている。 リュージュは玄関については「もし誰か来ても俺が追い返すから大丈夫だ」と言うものの、浴室はすぐには使えそ
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27 ウォグバード

 リュージュはヴィクトリアを抱えたまま新居へ向かうと、彼女を脱衣所に連れ込んだ。リュージュはヴィクトリアの服を脱がしにかかる。 離れた所からそれを『嗅いで』いたウォグバードは、そこで踵を返し彼らから離れた。 ウォグバードが向かった先は…… ――ウォグバードは地下へと続く階段を下りていた。階段を一段ずつ下りる度に地下独特の冷やりとした空気が濃くなっていく。 階段を下りた正面の部屋、檻の中にある白いベッドの上に、金髪の男が寝かされていた。 ウォグバードは檻の扉を開け放ち、眠るその男へと近づく。  腰の剣とは別に手に握っていた剣を鞘から抜くと、廊下からの薄明かりを受けた白刃が鈍く光った。 ウォグバードは剣を下向きに持ち替えると、男の心臓目がけて一気に振り下ろす―― しかし、ウォグバードが剣を振り下ろそうとした刹那、けたたましい音が響いて階段上の扉が開いた。  目にも止まらにぬ速さで何かが飛んできて、ウォグバードが持っていた剣が音を立てて弾き飛ばされる。 飛んできたのは、ナタだった。 激しい音に寝ていたはずのアルベールも目を覚まし、状況を理解してベッドから飛び退り身構えた。 カツッ、タン、カツッ、タンと不規則な音を立てながら松葉杖の男が階段を下りてくる。「おいおいおい、ウォグさんよお、涼しい顔して考えることはおっかねえよなあ。仲間殺すなよ」 オニキスの登場にウォグバードは内心で苛立っていた。オニキスはウォグバードでも勝てないくらいに強い。 邪魔をしてくる相手が悪すぎた。これでは目的を果たし得ない。「やめとけ。こいつが嬢ちゃんにしたことはちょっとやりすぎてたけど、だからって命まで奪うのはやりすぎだ」 オニキスの発言を受けたアルベールが強くウォグバードを睨む。 ウォグバードは反論もせずに無言だった。ウォグバードのアルベールに対する害意は明らかで、弁解の余地はない。 リュージュとヴィクトリアは番になる。それを知ったアルベールがリュージュを殺害しようとするだろうことは容易に想像できた。  ウォグバードとしては、不穏な芽は早めに摘んでしまうに限ると思っての行動だった。「ウォグさんが親バカなのは知ってるけど、裏でこんなことやるつもりだったなんてリュージュに知られたら、軽蔑されるぞ」 オニキスが釘を刺す。 ナタの投擲によって弾き
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28 本音

 ヴィクトリアは抱えられたままリュージュたちの新居に入った。 脱衣所に連れて来られて下ろされたまでは良かったが、いきなり服に手をかけられてぎょっとした。「一緒に入ろうよ」「ちょっ…… それは…… 恥ずかしいから一人で入りたいわ」「ヴィクトリアの裸ならさっき見たよ」 かなり慌てているヴィクトリアに比べれば、ヴィクトリアと番になると決めたリュージュは、わりと落ち着いているようだった。 リュージュは嫌がるヴィクトリアの抵抗を安々と抑え込み、素早く彼女のシャツを脱がせると、背中に手を回して下着の合わせを外してしまった。手慣れ感が酷い。 下着を取られてしまうと体に突き刺さるような視線を感じてゾクッとした。これまでリュージュに怖いなんて感じたことは一度もなかったが、胸を隠しながら小刻みに体が震えてしまう。 リュージュはシドを嫌っているからこんなことは言われたくないだろうし言ってもいけないと思うが、その視線がシドに似ていた。 ヴィクトリアはリュージュの顔を見ていたくなくてぎゅっと目を閉じた。脳裏に黒髪の青年の姿が浮かぶ。(レイン……)  スカートにリュージュの手が伸びてきて、衣服を全部脱がされた。 ヴィクトリアは泣いていた。 リュージュが服を脱ぐ衣擦れの音が響いた後、ヴィクトリアは頬の涙をぬぐわれて抱きしめられた。「ごめんな、アルベールにあんなことされたばっかりで男に触られるのはまだ怖いよな。今日はもう遅いし番になるのは別の日でもいいんだけど、ただ、この風呂場を使うなら俺と一緒じゃないと使わせたくないんだ。ごめん」 抱きしめられて少しだけ安心する。声はいつものリュージュだ。「大丈夫、よ……」 逃げるわけにはいかない。リュージュと性的なことをするのを嫌だと思ってしまっているのは、『番の呪い』のせいだ。『呪い』にかかる前、リュージュを一番に好きだった頃に、もし一緒にお風呂に入るなんてことになっていたら、恥ずかしく思いながらも幸福を感じすぎて舞い上がり、この上ない嬉しさに浸っていたことだろう。(レイン以外の男性に触れられることに慣れて、『番の呪い』を解かなければ……) ヴィクトリアはそのまま浴室に引っ張り込まれた。 ――浴室に入ると、リュージュが最初に浴室を使うのを渋った理由がわかった。(リュージュ、サーシャとここで一緒にお風呂に入ってい
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29 愛しい人

 石鹸を泡立たせたリュージュの手がヴィクトリアの両胸に触れている。リュージュはヴィクトリアの全身を泡だらけにしていて、先ほどから体中の色んな所に触れていたが、ヴィクトリアはずっと体を強張らせていた。 リュージュは胸に触っている時だけ、ヴィクトリアの反応が違っていることに気づいて以降、執拗に胸ばかり責めていた。 ヴィクトリアは顔だけではなくて全身の肌を真っ赤にしていて、うつむいたまま声をずっと我慢していた。「ん……っ」 泡をつけた指の腹でクリクリとやさしく乳首を撫でられて、思わず声が漏れてしまう。(恥ずかしい) 変な声を出してしまうのもそうだけど、リュージュとこんなことをするのは、自ら望んだこととはいえ、卑猥すぎる。「ヴィクトリア、声我慢しなくていいから」「で、でも……」「恥ずかしいことじゃないよ。気持ちよかったら素直に自分を出してほしい。ヴィクトリアの甘い声をもっと聞きたい」 リュージュの手が足の間にも伸びてきて、ヴィクトリアは慌てた。「ここも綺麗にしよう」 リュージュはヴィクトリアの正面にいて、銀色の繁みの中に手を滑り込ませてくる。ヴィクトリアは再び体を硬くしたが、リュージュを咎めることはしなかった。 そこは先ほどアルベールにもてあそばれてしまった場所だから、リュージュに上書きしてほしかった。 泡で付近を撫でた後、指先が秘裂に触れようとする。 二人は対面で立った状態のままだったが、ヴィクトリアの腰が引けてしまい、リュージュから離れようとする。「ごめん、リュージュ、やっぱり私……」「……」 リュージュは無言のまま、再度手を伸ばした。今度は秘裂ではなく、その上の方を探り始める。「ヴィクトリア、逃げるな」 ヴィクトリアはまたリュージュから離れそうになるが、彼の真っ直ぐな瞳に見つめられて押し留まる。『番の呪い』を解くためには、
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30 本当の初恋

 意識を失っていたヴィクトリアは、揺れを感じて目を覚ました。  ヴィクトリアは素肌にタオルをかけられただけの状態で、リュージュに抱き上げられて運ばれていた。 どうしてこうなっているんだっけ、とぼうっとした頭で考え始めて、すぐに赤面する。  リュージュはサーシャにしていたように、あんなことやそんなことをヴィクトリアに対しても行った。 リュージュは弟ではなくて、男だった。 ヴィクトリアは途中嫌がったが、リュージュに鼻をつままれてからは違った。膣内に埋まるリュージュの指が気持ち良くて、達するのと同時に意識を手放した。 意識を失っていたのはそんなに長い時間でもなかったようで、気づけば浴室から運び出されていた。 ちらりと盗み見るようにリュージュを見上げると、なぜか眉根を寄せてどこか不機嫌そうな表情をしている。「リュージュ……?」 呼びかけたけれど、返事はなかった。 リュージュはリビングに来るとヴィクトリアをソファに横たえた。  寝室に行かなかったのはそこにもまだサーシャの匂いが残っているからだろうと思った。 リュージュが覆いかぶさってきてキスしてくる。強く抱きしめられたので、ヴィクトリアもリュージュに抱きついた。「ヴィクトリア、俺は誰だ?」 リュージュが変なことを聞いてくる。「? リュージュでしょ?」 首をかしげながら答えると、リュージュが真剣な顔でヴィクトリアを見ながらうなずく。「そうだ。俺はリュージュだ。忘れるなよ」 リュージュがヴィクトリアの体を覆っていたタオルを取ってしまった。リュージュは現れた双丘に手を添えると、先端を指で弾いた。「んっ……」「今度は自分で鼻をつまんでろ」 ヴィクトリアはリュージュの言う通りに自分の手で鼻をつまんだ。  心臓が早鐘のように打ちつけている。ヴィクトリアはぎゅっと目を閉じた。 脚を大きく割り開かれて、未だぬかるむ秘裂の中にリュージュの指が入ってくる。「ああっ……」「ヴィクトリア、目を閉じるな。目を開けてこっちを見てくれ。俺だけを見ててくれ……」 ヴィクトリアは涙を流しながら目を開けて、リュージュを見た。  ヴィクトリアは何も着ていないのに、リュージュは自分だけ下服を身に着けていたので、ちょっとずるいと思った。 先程の浴室でのように、最初は一本だった指が増えていく。指をヴィクトリアの
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31 別れと再会

浴室から出たヴィクトリアは体にタオルを巻いた状態でしばらく床に座り込んでいた。 自分の体からはつけられたばかりのリュージュの匂いが濃い。ヴィクトリアは何も考えられずにただ呆然と時を浪費するだけだった。 シャワーを浴びた体は既に冷えきっていて、ヴィクトリアは一つくしゃみをした。 ヴィクトリアはどちらかといえば暑さが苦手で寒さにはそこそこ耐性があった。自分では冬生まれのせいなのではないかと思っていた。 それでも湯上がりで体もよく拭かずにほぼ裸のままでずっといたら風邪をひく。流石にいつまでもこのままこうしているわけにはいかない。(こんなところでずっと座り込んでいては駄目よ) ヴィクトリアは立ち上がった。 ヴィクトリアは脱衣所の床に置かれたままになっていた手提げバッグに手を伸ばした。 中にはリュージュがヴィクトリアの部屋から持ち出してくれた服や下着が入っている。 ヴィクトリアは新しい服を着込みながら、やっと、これから自分がどうするべきなのかを考え始めた。(とにかく、朝になったら里から出てレインに会いに行こう) リュージュには本当に申し訳ないことをしてしまった。けれどヴィクトリアとしては、もう一度レインに会って自分の気持ちを確かめない限りは誰とも番になれないと思った。 もし、自分が本心からレインを望んでいて彼と番になりたいのならば、レインの自分への憎しみも酷い所も全部引っくるめて彼を受け入れなければいけないと思う。 そして何より自分の罪と向き合い、なにがしかの禊をすませる必要があるだろう。 まずはレインに会って謝罪がしたい。謝った程度で簡単に許されることではないし、奴隷になるしか贖罪の道がないのなら、誰にも束縛されずに自由に生きていきたいという自分の望みを犠牲にしてでも、それを受け入れなければならないと思った。 本当にそれでいいのかどうか、自分の一生をレインに捧げて尽くす覚悟があるかどうか、もう一度レインに会って確かめたい。 罪を告白すれば、レインに家族を見殺しにしたことを許してもらえず、拒絶されて二度と会うことができなくなる可能性もある。 叶わぬ思いを抱えて長い間アルベールのように耐えなければいけなくなるかもしれない。 でも、それが罰だというなら、それでもいいのかもしれない。(レインのことを思ってずっと生きていく)
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《『番の呪い』後編》1 血の繋がり

 香ばしい匂いがする。ヴィクトリアの意識は緩やかに覚醒していった。まぶたがゆっくりと開く。ヴィクトリアは半覚醒の状態で室内を見回した。(ここは……) いつもの見慣れた自分の部屋じゃない。数日過ごした九番隊砦の小屋でもない。ここはナディアの部屋だ。 寝ていたのはナディアの匂いの香る一人用のベッドだった。掛け布団の柄はピンクの花柄で大変可愛らしい。部屋の中奥に小さなテーブルと椅子がある。 壁際の一角に大きめの本棚があり、本がぎっしりと並んでいた。そのほかにはクローゼットがあり、鏡台には化粧品が並んでいる。部屋のそこかしこからナディアの匂いがした。 ヴィクトリアがいる部屋の隣に続き部屋があり正面には小さめの玄関があった。続き部屋はキッチンになっているようで、肉が焼ける香ばしい匂いはそこから漂ってきていた。ナディアが料理をしている最中のようだ。 寝起きでまだ頭がぼうっとするヴィクトリアは眠る前の記憶が少し乱れていたが、これまでのことをゆっくりと思い出していた。ヴィクトリアはリュージュと別れたのだ。 レインを探しに戻って来た街でナディアと思いがけず再会できたが、ヴィクトリアはずっと泣いていて話ができるような状況ではなかった。 ナディアはこのままでは目立つからとヴィクトリアをなだめながら自分が住んでいる集合住宅の一室に連れて来てくれた。 ヴィクトリアがふらついているのを見て、一睡もしていないと聞いたナディアは、とにかく休みなさいとヴィクトリアを自分のベッドに寝かせてくれたのだった。「ナディア……」 キッチンに近づいて声をかけると、ナディアは皿に料理を盛りつける直前だった。フライパンを持ったエプロン姿の彼女はくるりと振り返ると、ヴィクトリアを見て明るい笑顔を見せた。「あ、おはよう姉様。すごくよく寝入ってたけど体はもう大丈夫? ちょうど食事の支度ができたけど食べられそう? もう昼過ぎよ」 ヴィクトリアはお腹に手を当ててみる。匂いにつられて目覚めたくらいなのでお腹はすいていた。 ナディアに促されるままテーブルに座る。彼女はてきぱきと食事の支度をしていた。何か手伝おうかと問えば、「姉様はゆっくりしていて」という答えが返ってきた。ナディアは里にいた頃から面倒見が良かった。 ナディアの手によって肉のステーキとスープ、小魚の素揚げが食卓に並ぶ。「姉様は野菜は
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