ヴィクトリアはアルベールに切られた首を処置してもらっていた。綺麗な傷だそうで、それほど時間もかからずに治るだろうと言われた。「リュージュは入院することになった」 他の者と離された後、処置を受けた小部屋に一人残されて、そのままずっと考え事をしていたヴィクトリアは、やって来たウォグバードにそう告げられた。 ウォグバードはリュージュの様子を見に寄ってから、ヴィクトリアの所に来たようだ。 酷い怪我を負わされた上に限界まで体を酷使したのだから、入院になるのは当然だと思った。「アルベールはあの様子だとまたあなたを襲うかもしれないから、理由を話して地下の囚人用の病室に入れてもらった。鍵は牢屋と変わらない仕様だからしばらくは出てこない。 だが、そこにいられるのは怪我が治るまでの間だけだ。その後については、あなたに危害を加えないような方法をまた別に考えよう」「ありがとう」 安堵したヴィクトリアはウォグバードの働きに感謝した。しばらくの間限定ではあるが、確実にアルベールに襲われることがないとわかっているだけで心の安寧度が全然違う。 アルベールが退院した後、自分の安全を確保するための方法をまた別に考えなければいけないから頭は痛いが。 できればアルベールにはもう二度と会いたくない。だが里にいる以上は接触は避けられないのかもしれない。 今はアルベールと離れられているが、離れて実物がそばにいない方が本人への恐ろしさがより増していくように感じられた。アルベールから向けられた情欲混じりの微笑みを思い出すだけで背筋が寒くなってくる。 オニキスが言っていたように、里を出た方がよいのかもしれないという考えが頭をもたげてくる――「それからアルベールの両親があなたに謝りたいと言っているが、どうする?」 ヴィクトリアは恐縮しながら強く首を横に振った。アルベールの両親は本日は医療棟で夜勤だと言っていたから、息子の行いが耳に入ったのだろう。 息子はあんなのだが、彼の母親はヴィクトリアの母の主治医だったこともあって、子供の頃はよく面倒を見てくれた。父親も過去にアルベールによるヴィクトリアへの意地悪をいさめてくれたことがあって、まともな両親だ。「謝罪はいらないわ」 アルベールのことはもう本当に考えたくない。家族と会って彼のことを否応なく意識してしまう時間すら持ちたくなかった。(
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