アルベールを抱えて走るヴィクトリアの背中に、炎の刃が迫った。「!」 ヴィクトリアがハッとして振り返った時には、既に炎が目前まで来ていた。 それはレインが戦線離脱したことに気づいたアークによる火魔法攻撃だった。 ヴィクトリアは咄嗟に氷魔法で壁を作ったが、灼熱の炎の一部は壁が出来上がる前にそこを通過してしまった。 ヴィクトリアは一瞬肝が冷えたが、炎がヴィクトリアたちの体を焼くことはなく、解毒剤と治癒魔法の効果で命の危機を脱したアルベールが、ヴィクトリアの体を抱きしめて、間一髪のところで炎を避けさせていた。 ヴィクトリアはすぐに氷の壁を自分たちの周囲に量産して炎を防いだが、氷壁の外側はアークの魔法で火の海になってしまい、ヴィクトリアたちは一歩も動けなくなってしまった。 氷壁が炎で溶けないように補強しつながらも、追い詰められたと感じたヴィクトリアは、再び転移魔法の発動を試みたが、やはり魔法は発動しなかった。 ――魔法使いに覚醒したばかりのヴィクトリアは、「転移魔法封じの魔法」をアークに使われていることに気づけない。 ヴィクトリアは、やり方が間違っているか自分には転移魔法の才能がないと思い込み、転移魔法を使う選択肢を頭の中から消してしまった。 ヴィクトリアは危機感を募らせたが、しかし、炎はいきなり何の前触れもなく、一瞬にして全て消え去った。 ヴィクトリアたちが妙な技で攻撃されていると気づいたオニキスが、それまでの戦いで炎を操っていると見当をつけていたアークの元に高速で移動し、またしても指一本だけでアークを気絶させたため、彼の火魔法は消えた。 同時に、身体能力を高められていた銃騎士たちも、アークが気絶したことで「身体強化の魔法」の効果が切れて、その場に昏倒して動かなくなる。「ヴィー! 行こう!」 ひとまず命の危機は脱したと安堵したヴィクトリアは、氷壁を破壊して走り出したアルベールに手を引かれるがまま、彼と共に処刑場広場の外へ出た。 ****** オニキスは、ヴィクトリアとアルベールの二人が手を繋いで処刑場広場の向こう側へ行ったことを確認した後に、シドの首を奪取した。 シドの胴体も持ち帰ろうと周囲に目を走らせたオニキスは、ふと、シドの娘ナディアの亡骸をただ延々と抱きしめ続けていた白金髪の美しすぎる男が、ここにきて初めて動きを見せたことに気づい
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