執務室で仕事をしていたヴィクトリアはペンを走らせていた手を止め、顔を上げた。 ヴィクトリアの視線の先、外の風を入れるために開けていた窓から入ってきたのは、不審者ではなくて、この国の王だった。「ちょうどよかったわ。キャンベル家から資材の引き渡しの件で書面が来ていたから、目を通しておいてもらえる? それから、これと…… あとこれも……」 ヴィクトリアは言いながら必要な書類を取り出すと、背後からの風を背に受けて、自由人そのままの雰囲気で窓枠に脚をかけてだらしなく座るシドの手元まで、魔法を使って書類を運んだ。 以前はシドの番たちに物凄く憎まれ恨まれていたために、阻害されて魔法が使えなかったヴィクトリアだったが、「番解消の魔法」発動後は、彼女たちのヴィクトリアへの恨みの感情の大部分が消え、魔法が使えるようになった。 学校環境を整えるなどして頑張っている最中だが、獣人たちの識字率はまだまだ低く、文字を使って仕事ができる者も限られていて、そのためにヴィクトリアは「国」の重要な案件を含む書類と格闘する、とても忙しい日々を過ごしていた。 あの日ジュリアスから、「国を作ってほしい」と頼まれて以降、色々なことがあった。 様々な問題を乗り越えつつ、もちろん言い出したジュリアスやキャンベル伯爵家の協力も得て、時には反対する人間たちとの血なまぐさい衝突も皆無だったわけではないが、苦しみを乗り越えて、ヴィクトリアたちは国を作った。 この絶倫大魔王じゃなくて獣人王シド率いる獣人の里と周辺一帯の魔の森は、悲願叶い、「獣人の国」として人間社会からの独立を果たしている。「まあいいんじゃないか」 書類を読み条件を確認したシドがそう言った。「良いなら一番下の欄にサインをしておいてくれる? あっ! あなたのサインが必要なものが他にもあるのよ。ええと、これと、これと…… これもそうね。あとこれも――」「ヴィクトリア」 ふよふよと次々に書類を空中に浮かせて机回りのことばかり気にしていたヴィクトリアは、気づけばいつの間にか瞬間移動ばりの高速でそ
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