Alle Kapitel von 獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~: Kapitel 211 – Kapitel 220

224 Kapitel

10 私の酷い番

「……リア、ヴィクトリア」 目を開けると心配そうなレインの顔がすぐそばにあった。「よかった、気がついて」 レインはやや笑顔を浮かべてほっとした表情をしているが、ヴィクトリアは覚醒しながらも目の前の男に何をされたのか思い出して、全身を総毛立たせた。 今はお互い全裸でレインに組み伏された状態である。 性器にあの忌まわしいものは入っていないが、途中で気絶して、意識のない間にレインのものでも犯されていたようだ。数度体内で射精された残り香があって、股の間から白濁液がこぼれている。 前の時のように上書きを試みたのかもしれないが、器具で犯された時の感触と悲しみと絶望と苦痛はまだはっきりと覚えている。ヴィクトリアは悲鳴を上げながら上に乗る男を押しのけようとしたが、やはり打たれた薬のせいで大した力は出なかった。 レインは拒絶されたことに驚いたようだったが、すぐに暴れるヴィクトリアを押さえて脚を開かせてくる。何をしようとしているのかなんて予想がついた。「大丈夫だ、嫌な記憶もすぐに忘れるから。ちゃんと元に戻ろう。俺たち、仲直りだ」 そんなの無理――(この人はやっぱり私のことなんて愛していないのよ。愛している相手にあんな仕打ちができるはずがない。何をしても抱けば戻ってくると思っている)「殺して……」 しぼり出すように言うと、ヴィクトリアと結合しようとしていたレインの動きがピタリと止まる。「殺して…… もう生きていたくない」「なんでそんなこと……」 流石のレインも一瞬ためらったようだったが、止めていた腰を進めて、ヴィクトリアの中に自身を侵入させた。「う、うっ……」 レインの怒張が体の中を進む圧迫感に、いつもなら歓喜して受け入れて快感を感じるのに、今は嫌悪感しかなかった。「抜いて……っ! 挿れないで……!」 ヴィクトリアの懇願を無視して、レインは腰を振りたくる。「死ぬなんて言わないでくれ! 俺を置いて行かないでくれ! 君がいなくなったら俺は……っ! 君が死ぬなら俺も死ぬ!」 レインは泣きながらヴィクトリアを犯す。ヴィクトリアは穿たれる度に、器具でされていた時と変わらない苦痛を感じて悲鳴を上げ続けた。「いやああああっ! 誰か! 誰か助けてっ……!」「誰かなんていない! ヴィクトリアには俺だけだ! 俺だけなんだ!」「ああああああっ!」 拷問に近い
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11 昼間の男

 ヴィクトリアはリビングの椅子に座り、テーブルの上に置かれた結婚写真を見つめながらじっとしていた。 やはり何もする気にならない。ただ、レインが帰ってくるのを待つだけの日々だ。 ここから逃げ出そうなんて考えはとうの昔にどこかへ消え失せてしまった。 最初の頃はそれでも、一階へ続く扉の番号式の鍵は六桁の数字の組み合わせなのだから、レインが不在にしている最中に全てを試せば、どこかで開くだろうと考えたこともあった。 けれど一度も試さなかった。だって、自分はレインなしでは生きられないのだから。酷い事をされても、それでもそばにいたい。 器具を使われたのはあれっきりだったし、レインはもうしないと言っていたが、そんなことは信じられない。彼はきっとまた同じことをするだろう。 レインのことをはっきりと憎んで嫌いになれればいいのに、そんな風にはなれなかった。 獣人の性なのか、体を繋げる相手に湯水のように好意を寄せてしまう。嫌いになれない。こんな体が恨めしい。 ヴィクトリアは何度目かわからないため息をこぼしつつ、写真に写るレインを愛おしく思いながら、彼の顔の部分を指先でそっとなぞった。 異変が起こったのはその時だった。 レイン以外誰も訪れることのなかった地下室に、人の気配が現れた。レインではない。この匂いは―― ヴィクトリアは勢いよく立ち上がった。その拍子に座っていた椅子が音を立てて倒れる。 ヴィクトリアは飛びつくようにしてサンルームへと続く扉へ走り寄り、その扉を開けた。「ジュリアス!」 サンルームの淡い光の中にたたずむその人は、最後に会った時と変わらない隊服姿で、神々しいほどの美貌を誇りながら、ヴィクトリアに向かって微笑んだ。 ジュリアスの姿を視界に認めたヴィクトリアは涙をあふれさせた。(この場所に来てから初めてレイン以外の人に会えた!) 泣きながら抱きつくヴィクトリアをジュリアスは広い胸の中で抱きしめてくれた。「ごめんね、もっと早く来ればよかった」 密室であるこの地下室にどうやって入ったのだろうという疑問すら浮かかずに、ヴィクトリアはジュリアスの腕の中で号泣し続けた。「ヴィクトリア…… 痩せてしまったね……」 ひとしきり泣いて落ち着いた頃にジュリアスがそう声をかけてきた。「どうして…… どうやってここに?」 落ち着けば泣いていることも抱きつ
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12 魔法の力

 目を覚ますとジュリアスの姿は既になかった。部屋の照明はついたままで、地下にいると昼か夜かもわからなかった。  ヴィクトリアは自身にかかっていた毛布を取って上体を起こした。 (ジュリアスがかけてくれたのかしら?)  ヴィクトリアはソファから立ち上がってサンルームへ向かった。  サンルームは夜の闇に包まれていて真っ暗だった。  ティナがレインの妹だと聞いた時に取り落としたはずの、ジュリアスがくれた花束も消えていた。  もしかしたら都合のよい夢でも見たのだろうかと思ったが、マリーゴールドとは違うその花々の匂いと、懐かしく感じるジュリアスの匂いは残っていて、確かに彼が自分に会いに来てくれたのだとヴィクトリアは確信した。  ******  翌日の昼間の時間帯にジュリアスはまた地下室に来てくれた。 「気分転換に少し外に出ようか」  一瞬、そのまま連れ出されてレインと別れさせられてしまうのではと警戒したが、ヴィクトリアのそんな思惑に気づいたらしきジュリアスは否定した。 「ヴィクトリアの同意なくレインと引き離したりしない。俺はヴィクトリアのことを応援しているし、幸せになってほしいんだ。俺は君が苦しんでいる時に助けてやれなかった負い目もあるから。  レインには絶対にばれないようにするし、ちゃんと最後はここに戻ってくる。ずっと地下にいたら気が滅入るし、少しでも外の空気を吸った方がいいよ」  ジュリアスは「姿替えの魔法」なるものを使ってヴィクトリアと自身の容姿を別人に変えた。 「髪と目の色と、それから顔つきも似ている感じにした。兄妹っていう設定でいこう」  鏡を見てびっくりしたが、これなら外でレインとばったり会っても気づかれないだろうと思った。 「姿替えの魔法」を使っても、薬指に結婚指輪をつけたままのジュリアスの手を握ると、次の瞬間にはどこかの草原に立っていた。  瞬間移動だ。  ジュリアスは本当に魔法が使えるのだなとヴィクトリアは感心した。  空はよく晴れていた。暑さも和らいで過ごしやすく麗らかな気候の下、ジュリアスと腕を組んで周囲をしばらく散策する。外を歩いているだけで楽しくて、野生の花や小川を眺めては癒やされた。  しばらく歩くと、薄紫色の可愛らしい花びらが、蝶のような形に見える花が群生した場所に出た。 「わあ、綺麗」 「クレオメだね。
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13 眠る

「睡眠薬?」 薬がほしいとレインに言うと、彼はかなり怪訝そうな顔をした。大量に摂取すれば死ぬこともあるわけで、そんなものはあまり渡したくないとレインが考えているのは、手に取るようにわかった。「もう随分前から眠れないの。寝つきも悪いし、ようやく眠れても眠りは浅くて、夜中何度も目が覚めるのよ。ほら、目の下にすごいクマができてるでしょう? 睡眠が不十分だから体も疲れているみたいで、気力も出ないし、この際薬でも何でもいいから頼って寝たほうがいいと思うの」 本当は現在不眠症に悩まされてはいない。以前は本当に不眠の兆候があったが、ジュリアスが現れて適度に外に連れ出してもらえるようになってからは、快眠続きだった。 ジュリアスは仕事も忙しいし家庭もあるから頻繁には来れない。しかも現れるのは昼間の時間帯だけで、遅くとも夕刻にはヴィクトリアの前から去ってしまう。 けれど、それでも彼がたびたび来てくれることで、ヴィクトリアは自分自身を保つことができていた。 ジュリアスは色々な場所へ連れて行ってくれた。都内の名所を案内してくれたり、約束の肉料理店や他の飲食店にも何度も連れて行ってくれた。 最初に観劇に連れて行ってもらった時は、話の内容と舞台の出来栄えの素晴らしさに、こんなもの見たことないと衝撃を受け、感動してずっと泣いていた。 ヴィクトリアはジュリアスの奥様に悪いと思いつつも、外で過ごす時間を楽しむことで、英気を養っていた。 里で自由を制限されて、今もレインに囲われ続けているヴィクトリアには、目に映る街の風景全てがキラキラと輝いて見えた。ジュリアスと過ごす時間は珠玉のひとときだった。ジュリアス様々である。 彼が来てくれなかったら、自分はとっくの昔におかしくなっていたと思う。 適度な気分転換のおかげでヴィクトリアは現在心身に深刻な不調はないが、今はわざと睡眠時間を一、二時間に減らして不眠を装っていた。 睡眠薬を手に入れるために。「もしかしたら少しでも外に出られたら、気分転換になって薬がなくても眠れるようになるかもしれないんだけど……」 本当はレインと一緒に外に出かけたい。少しの可能性に賭けてみたが、返ってきた答えは「否」だった。レインは外に出すくらいなら、薬を用意すると言った。 ****** 次にレインが帰ってきた時には睡眠薬が用意されていた。これでようやく
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《リュージュバッドエンド 輪廻の輪は正しく巡らない》1 『番の呪い』攻略法

エンド説明:《『番の呪い』前編》の「31 別れと再会」話の途中からの分岐です。ヴィクトリアがリュージュから逃げなかった場合。ホラー&メリーバッドエンドルートですのでご注意ください。  ********** 「リュージュ……」  ヴィクトリアは自ら脚を刺して怪我をしてしまったリュージュを――大切なリュージュを――そのまま置き去りにしてここから去るなんて、できなかった。  ヴィクトリアは、流す血で衣服を濡らしているリュージュの痛々しい患部に、手を伸ばそうとした。 「ヴィクトリア、やめろ」  拒否の言葉の中に、本当はそばにいてほしいというリュージュの心を悟ったヴィクトリアは、構わず彼の脚に手を添えた。 「リュージュ、ごめんなさい…… 傷つけてごめんなさい……」  ヴィクトリアは短剣の刺さった箇所に触れないようにしながら、リュージュの脚に抱きついた。  リュージュはそんなヴィクトリアを見下ろしながら、無言だった。 「医療棟へ行きましょう。歩ける?」  現在は夜中だが、医療棟には交代制で夜勤の医師がいるし、先ほどヴィクトリアも首の傷を手当てしてもらったように、急でも怪我の治療はしてくれるはずだ。  顔を上げたヴィクトリアは、目が合ったリュージュの瞳の中に、強い意志のようなものを見た気がした。 「リュ……」  呼びかけようとした言葉は、リュージュの唇に吸い込まれて消えた。リュージュは素早くかがみ、ヴィクトリアを逃さないように抱きしめてキスしていた。 「んっ! んっ……!」 「うっ……」  いきなりのキスに驚いたヴィクトリアは、抵抗しようと体を動かすが、そうするとリュージュの太ももに刺さったままの短剣に自分の脚が当たってしまい、彼が苦痛の声を上げる。  しまったと思ったヴィクトリアは、動きを一旦止めた。  リュージュの唇が自分から離れる。  ヴィクトリアを片腕で抱きしめたままのリュージュは、短剣の柄に手を伸ばすと、それを抜いた。  太ももから血があふれて、衣服に広がる赤色の量が増えていく。  ヴィクトリアはリュージュの傷の深さを思い知ると同時に、早く医者に診せなければと焦った。 「リュージュ、血が……」 「大丈夫だ、こんなの。縛っとけば血も止まるし、そのうち塞がる」  リュージュは短剣を床に置くと、自身の衣服を脱いで上半身裸になっ
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2 解呪

 ――ああぁぁぁぁ…… ヴィクトリアは自分が喉の奥から出す絶叫をどこか他人事のように聞いていた。 ヴィクトリアは長い絶頂から降りてくる最中で、快感に翻弄されて何もわからない状態だったが、体の中心部に走る重苦しい痛みによって、快楽の渦から引き戻され、視界に映る様子と密着するリュージュの素肌の感触から、リュージュと性器を繋げたことを知った。 その瞬間ヴィクトリアの目からぶわっと涙があふれ、頭の中では自然と黒髪の青年の姿が思い浮かんでいた。 番以外に聖域を開け渡してしまった途方もない苦しみと、身を引き裂かれるような悲しみと後悔が、身の内に押し寄せる。 けれどそれと同時に、女の部分を男の証で満たされる初めての快感と、ずっと好きだったリュージに選ばれて愛されている喜びも感じた。これまで欠けていた部分が満たされて、自分自身の生きてきた全てが報われて認められたような、幸福な思いも抱いた。(私はずっとこんな風に、たった一人の誰かに愛されたかった……) 頭の中でガラスが割れるような音が響いた直後に、カチカチカチという音を聞いた。レインへの『番の呪い』が解けて、リュージュと番になったのだと何となくわかった。 絶叫が止み、ヴィクトリアの声が甘い喘ぎに変わる。ヴィクトリアの変化を感じ取ったのか、最奥を突いたまま彼女の体を抱きしめてじっとしていたリュージュが、ゆっくりと腰を動かし始めた。「あっ…… ん……っ はんっ…… あんっ…… リュー、ジュ……」「ヴィクトリア…… 大丈夫か?」 破瓜の血の匂いが広がり、心配した様子のリュージュから吐息まじりの色っぽい声で問われて、ヴィクトリアは涙をにじませながらコクコクとうなずく。「リュージュ…… 愛してる……」 気持ちを伝えると、リュージュが嬉しそうに微笑んだ。「『呪い』が解けたんだな、よかった……」 結合しながらリュージュがヴィクトリアを力強く抱きしめてくるので、ヴィクトリアも嬉し涙をこぼしながらリュージュの体を抱きしめ返した。「
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3 また夜が来る

 目が覚めた時、ヴィクトリアはリュージュの家の一室にいた。 部屋には家具も荷物も何もなくて、ヴィクトリアが寝かされていたベッドがあるだけだった。ベッドからは、それをこの部屋まで運んできたリュージュの匂いしかしなくて、サーシャの匂いはしなかった。 閉められたカーテンの隙間から差し込む光は暗さを帯びた橙色で、現在の時間は既に夕刻から夜になろうとする時間帯のようだった。 ヴィクトリアの体には、リュージュが眠る彼女の裸身を清拭した匂いが残っていた。 ヴィクトリアはリュージュに体を綺麗にしてもらって服も着させてもらい、新しく持ち込まれたサーシャの匂いのしないベッドの上でずっと寝ていたらしい。 昨夜は明け方まで絶倫化したリュージュに揺さぶられ続けていて、それでなくても昨日は劇的なことが何度も起った目まぐるしい一日だったので、ヴィクトリアは疲れ果ててこんな時間までぐっすりと寝入ってしまったらしい。 ドロドロにされていた下腹部もリュージュによって綺麗にされていたが、膣にはまだ何かが挟まっているような変な違和感があって、昨夜リュージュと番になったのは夢でも何でもなくて、現実のことなのだとヴィクトリアは自覚した。(もう、処女ではないのね……) 番を得たヴィクトリアがこの先リュージュ以外の男性と性交することはおそらくない。 獣人は番と死別した場合に二番目の番を得ることもあるようだが、もしもリュージュに先立たれてしまったとしても、ヴィクトリアはウォグバードのように、リュージュだけを思って生涯を閉じるつもりだ。 ふと、脳裏に黒髪の青年の姿が思い浮かぶ。 昨夜リュージュに抱かれて愛されまくったヴィクトリアの中からは、それまでレインに感じていた恋い焦がれる気持ちはほとんど消えていた。 レインに対しては、愛情、というよりも、償うことが出来なかったという罪悪感だけが強く残った。「ヴィクトリア」 ベッドから出ようとして床に足をつけた所で、寝室の扉が勢いよく開き、満面の笑みのリュージュが現れた。「起きたか、おはよ
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4 特別な日

 ヴィクトリアが目を覚ました時、部屋のカーテンの隙間の向こうに光はなく、暗闇が見えるばかりで、既に夜になっていた。(もう夜なのね…… 昼夜逆転の生活になってしまったわ……) ヴィクトリアは昨夜も一晩中リュージュと交わり愛されて、いつの間にか気絶するように眠りに落ちていた。寝た時の記憶はなかった。 ヴィクトリアは気怠い体を起こしてベッドから出た。昨日と同様に体はリュージュの手で綺麗にされていたが、蓄積した疲れを取りたくなったヴィクトリアは、湯船に浸かってゆっくりしようと浴室へ向かった。 リュージュは出かけているのか、家の中には誰もいなかった。時計を見れば、日が落ちて夜になったばかりの時間帯だった。 リビングを通りかかる際、「ぶち込むだけですぐ出来る」というリュージュの得意料理である肉煮込み料理の美味しい匂いが漂ってきて、ほぼ丸一日食事をしていなかったヴィクトリアのお腹がぐうっと鳴った。 匂いにつられて台所と続きになっている広めのリビングに入ると、テーブルの上に肉料理の入った鍋と、そのそばに何かが書かれた紙があるのを見つけた。「……りんじ、しゅうかい、行く。休め。食え」 ヴィクトリアは、少し乱雑ではあるが、出会った頃のミミズが這ったような字体からは、かなり整ってきたリュージュの書き置きを眺めた。可愛かった昔のリュージュを思い出してほっこりしつつ、単語だけを並べたようなその文面を声に出して読む。 書き置きからリュージュがヴィクトリアに伝えたかったことは、「里の臨時集会に行ってくるが、自分が参加しておくから、ヴィクトリアは体を休めてご飯を食べておけ」ということのようだ。(臨時集会……) それは滅多にはないが、里の住人全員を対象に招集をかけて開かれる大きな集会だと思った。 里のほとんどの者たちが呼ばれるその大規模な集まりが行われるのは、里にとって重大な何かが起った時だけだ。 ヴィクトリアはそこで、半分寝ぼけていた頭を急に鮮明にさせ、近くにあった窓に視線をやった。 窓にかかったカーテンの隙間からは
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5 リュージュの懸念 1

 脱衣所でリュージュに体や髪の毛を拭いてもらう。 振動が伝わりプルプル揺れる乳房をリュージュが食い入るように見ていたので、揉まれたり食べられたりするのだろうかと思ったが、タオル越しに触れる以外でリュージュが何かをしてくることはなかった。 リュージュは服が濡れてしまったので自分も風呂に入ると言い、浴室に消えていった。ヴィクトリアは脱衣所にリュージュがあらかじめ置いていた服に着替えた後、リビングに向かった。 リュージュが作ってくれた鍋料理を台所に持ち込んで温め直す。お腹はペコペコだったが、リュージュが来てから一緒に食べようと思った。 鍋の火を止め、ソファに座って休憩していると、それほど時間も置かずにリュージュが現れた。「なんだ、先に食べていてよかったのに」「一緒に食べたかったの。それに臨時集会のことも気になるし、食べながら話を聞こうかなって思って。リュージュの話って集会のことよね?」「えーっと…… まあ、それもある……」 リュージュの返事はどこか歯切れが悪かったが、ヴィクトリアが肉料理を皿に盛りつけようとすると、リュージュもそばに寄って来て、二人で仲よく食事の準備をした。 ****** リュージュによれば、やはりシドの処刑は予定通り執行されたそうだ。 そのことを聞いた瞬間にヴィクトリアは目を伏せてポロポロと涙を流した。 相向かいに座っていたリュージュは食事を止めて席を立つと、「大丈夫か」とヴィクトリアを抱きしめて、落ち着くまでそのままでいてくれた。 リュージュは涙こそ出さなかったが、ヴィクトリアに感化された様子で、少し目が赤くなっていた。 酷い父親だったが、リュージュにとっては実父であり、悼む気持ちはあるのだろう。「しょうがないよ。あいつは、それだけのことをしてきたんだから」 ヴィクトリアがひとしきり泣き、落ち着きを取り戻した頃に、リュージュが冷めてしまった料理を小鍋を使って温め直してくれた。食事を再
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6 リュージュの懸念 2

「お前、やっぱり…… レイン――」「そんなことないわ!」 リュージュの口から「レイン」の名前が出た途端、ヴィクトリアは話を遮るようにすかさず口を開いた。「私が愛してるのはリュージュだけよ! リュージュ以外の人には、抱きしめられるのもキスされるのも無理だったもの!」「無理だった、なんて、経験してきたような口振りだな?」 リュージュがいぶかしげな表情で言うのを受けて、ヴィクトリアは動悸を感じた。(今日のリュージュは冴えてるわね!) 夢の中に現れたレインは怖い顔をしていて、なのに、ヴィクトリアを抱きしめてキスしようとしてきた。「ゆ、夢の中の話よ? 夢の中でレインが襲いかかってきて、抱きついてキスしようとしてきたけど、腕を振り払ってすぐに逃げたから、何もされてないわ」 そしてその後追いかけっこが始まったが、撒いてやった。夢の中の話だが。「お前がレインじゃなくて俺を一番に愛してくれているのはわかってるよ。 実はさっきお前に『愛してる』って言われるまでは、もしかしたら『番の呪い』が解けてないんじゃないかって、心配になってたけど…… なあ、一番最初に俺と体を繋げた時に、頭の中で『カチカチカチ』って音がしなかったか?」「そういえば…… そんな音がしていたわ」 ヴィクトリアの答えを聞いたリュージュはうなずいた。「俺にも鳴ったよ。その音は番を得た時に自分の頭の中だけで鳴るらしい。相手と番になったことを示す印みたいなもんだ。 でも、中には体を繋げても音がしないこともあるって聞いたことがあったから、ちょっと心配になってた」「そうなのね……」 母を思春期前に亡くして、里の交友関係も狭かったヴィクトリアは、そんな話は誰からも聞いたことがなかったし、本で読んだこともなかった。 ヴィクトリアはふと、『番になる音』が鳴る前に、ガラスが割れるような音を聞いていたことも思い出した。(もしか
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