涼から一度離れた湊斗は、近くにいた一人の若い女に尋ねた。「――お前」「は、はい……!」女は密かに湊斗を狙っていた。初めて見る彼の美貌の虜になり、あわよくば彼の愛人になりたいとさえ願っていた。湊斗と本妻の瀬奈の不仲は有名だった。上手くいけば愛人から本妻に……なんてこともありえるだろう。意中の相手に話しかけられたことで、彼女は舞い上がっていた。湊斗は女を前に、ニコッと笑みを浮かべた。「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」「な、何でしょう……?」笑顔を向けられたことで、彼女は顔を真っ赤にした。一体何を聞かれるんだろう、もしかしたらこのままホテルにでも連れて行かれるのだろうか。胸がドキドキした。「さっき、そこにいた顔を隠した女についてなんだが……」「女……?」彼女は期待外れの問いにがっかりした。しかし、湊斗はそんな彼女の頬に優しく手を添えた。彼の大きな骨ばった手が、頬に触れた。「……!」その時点で、彼女はもう彼の前で嘘なんてつけなかった。女はうっとりした顔で湊斗を見上げた。「あの女の素顔を見たか?」「はい」彼女は何かに導かれるように首を縦に振った。湊斗の問いかけは続いた。「どんな女だった?」「ロングヘアの綺麗な女性でした……」「歳は?」「年齢は二十代後半くらいだったと思います……」「……そうか」そこで湊斗は女からパッと手を離した。彼女は突然夢から覚めたかのように困惑した。「しゃ、社長……?」「貴重な情報感謝するよ」呆然とした女を一人置いたまま、湊斗は彼女の前から去って行った。(二十代後半か……ならアイツではなさそうだな……)瀬奈の年齢は三十八歳だった。しかし、彼女は二十代にも間違われるほどの美貌の持ち主だ。湊斗はそのことに気付かなかった。ようやく瀬奈を見つけたと思ったのに、と湊斗は落胆した。まぁ、仮に彼女が瀬奈だったとしても、既に遠くへ行ってしまっただろうから何の意味もない。女に興味を失った湊斗は、そのまま主催者である泰西の元へと向かった。「――湊斗、久しぶりだな。元気にしていたか?」「……お久しぶりです、暁さん」泰西は瀬奈の兄で、彼にとっては義理の兄にあたる人だ。「いやぁ、湊斗が参加してくれるとは思っていなかったから驚いたよ」「……そうですね」普段なら暁家のパーティーなんて絶対に参加していなかっ
Dernière mise à jour : 2026-04-03 Read More