仕事が終わり、古書店を後にしたナディアが家の前まで帰ってくると、窓には明かりが灯っていた。食欲をそそる良い匂いが家の中から漂ってくる。 「ナディアちゃーん♡ おかえりなさーい♡」 ナディアが玄関の鍵を開けて扉を開けようとすると、それよりも早く内側から扉が開き、いつもの少年姿のシリウスが両手を広げて喜色満面で飛び出して来た。 抱きついてこようとするのはいつものことなので、ナディアは毎回それを完璧に避けきることを訓練だと思って己に課しているが、この男に触れられずに家の中に入れたことが一度もない。今もナディアの動きを上回る素早さを発揮したシリウスによっていつの間にかお姫様だっこをされて、そのままの帰宅となった。 仏頂面のナディアに対してシリウスはにこにこと上機嫌だ。 「今日もお仕事お疲れ様♡ お風呂にする? ご飯にする? それとも俺とイチャイチャする? 俺とお風呂のコースでもいいよ♡」 この男の戯言も毎度のことだった。「俺とイチャイチャ」と「俺とお風呂」な展開にはならないように気をつけているつもりだ。 お風呂はシリウスが帰ってからでないと絶対に入らないようにしている。でないとナディアの入浴中にシリウスが風呂場に侵入してくるからだ。もうこれ以上自分の将来の番に申し訳ないことはしたくない。 「ご飯」 「はーい♡」 ナディアが短く要望を伝えると、シリウスはナディアをソファに座らせてからキッチンに向かう。シリウスが背を向けた姿も喜びに満ちていて、たぶん尻尾が生えていたら思いっきり振り回していると思われる。 すぐに食事の支度が整ってナディアはテーブルについた。とても美味しそうな料理が並んでいて、お腹が空いていたナディアは早速ナイフとフォークを使って食べ始める。 「美味しい?」 「うん」 「じゃあご飯が美味しいことを記念して俺と結婚しようか」 「ヤダ」 どんなに好意を寄せられても、最初に意識のない状態で襲ってきたことが最悪すぎた。早くお金を貯めてシリウスから離れなければと思っている。 ただ、シリウスは食事の用意をしてくれたり他のことも色々と世話を焼いたりしてくれる。 普段から陽気で優しいし、そんなに悪い奴でもないのかなと思うようにはなっていた。変態だけど。 ****** 「ありがとうございました」 お客さんからお金を受
Zuletzt aktualisiert : 2026-03-19 Mehr lesen